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クラッシュ・バンディクー8 深紅の野望と漆黒の友
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第3話
2015/08/14(金)18:51:11(9年前) 更新
さて、皆さんお待ちかねの本編でございます!w(
「…機器の準備はできたわ」
「ふむ、では改造をスタートするよ」
トロピー、ブリオ、リパー・ルー、トランス、そしてシエラの5人が実験室である改造をする。この改造は先ほど未来から帰ってきたこの5人が捕まえてきた未来のクラッシュをコルテックス側に従わせるために行うものだ。
改造や催眠、洗脳に関する知識がある者を集め、コルテックスはこの5人に改造を任せた。
「いつでもいいわよ…」
「OKランス!」
シエラとトランスがOKサインを出す。
「くそおおおッ、離せよお前らあああぁぁ!!!」
未来のクラッシュは最後の抵抗をしていたが、予め首と手足に錠をかけられていたため無意味だった。
「無駄ですよ?いくら足掻いても…」
「大人しくするのにぇ~~~~!!!!!」
ブリオとリパー・ルーが言い聞かせる。
「…ファースト、ブレインアンドボディーエボリューション……つまり知能と身体能力の進化を促すビームを発射する」
トロピーが軽く説明をする。
「ではトランス、そのボタンをプッシュしてくれたまえ」
「了解でランス!!」
トランスが押すと、奥にあり未来のクラッシュに先端が向けられている不気味で大きな機械に光が集まってきた。そして数秒後、先端に光が集まり、一気に放出された。
「ぐわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
未来のクラッシュの断末魔のような叫びを上げた。そして不意に叫びが途切れ、意識をなくした。
「未来のクラッシュは死に、そして今から生まれ変わるのですね…」
ブリオがそう呟く。
「…とりあえず今のうちに洗脳をかければ?」
シエラが指摘する。
「あぁそうだね…セカンド、ブレインウォッシング……つまり洗脳させるビームを発射する」
「にょにょにょ~~~!そこはアチキに任せてにょほほほほ~~~!!!」
リパー・ルーはそういうとどこからか青い液体の入ったフラスコを出した。
「これを飲ませた後にビームを発射するのにぇ~~~!!!これは洗脳を手助けする薬だにょ~~!!」
「では、飲ませましょうか」
ブリオはリパー・ルーからそのフラスコを受け取ると、未来のクラッシュの口を開けて無理矢理流し込んだ。
「それじゃあボタンを押すランス!」
トランスは先程とは違うボタンを押した。すると今度は未来のクラッシュの頭上にある機械の先端に光が集まってきた。そして未来のクラッシュ目がけて放出された。
「これでひとまずはフィニッシュだね。ネクスト、フューチャークラッシュ自身の準備をしよう」
そうトロピーが言った瞬間、一時的に意識をなくしていた未来のクラッシュが目を覚ました。
「…ん、ここは…?」
未来のクラッシュは5人に訊いた。
「気が付いたようですね。ここは実験室ですよ…それにしてもちょっと怠そうですが大丈夫ですか?」
ブリオが答えと質問を同時にぶつけた。
「なるほど…えぇ、特に怠くはありませんが」
「ふむ、見た感じ知能はだいぶアップしているようだね…IQを計るためにちょっとしたテストをしてみようか」
そう言ってトロピーは奥の実験準備室に一旦消えた。十数秒して紙切れ3枚とペンを持ってきた。
「このクエスチョンを解いてみたまえ」
未来のクラッシュはすぐにその問題を見るや否や、ペンを持ってすらすらと計算式を書き始めた。
「わ、ワタシにはさっぱりですね…一部わかるものもありますが…」
「…これはIQ140~150の範囲の問題かしら…」
ブリオとシエラはその様子を見て呟いた。
「1枚目、終わりました」
未来のクラッシュがそう言うとトロピーに紙を渡し、2枚目に取り掛かった。その場でトロピーは答え合わせを始める。
「ふむ……オールクエスチョン、正解だね。なかなか実験の成果が出ているようだ」
その間にも問題を解いている未来のクラッシュ。
「にょほほほほほほほ~~~~~!!!!!そこの問題は」
「答えを言っちゃダメランス!!っていうか静かにするランス!」
トランスは必死にリパー・ルーを止める。
「…流石にこの問題は…」
そう呟くと、未来のクラッシュのペンの動きが止まり、虚空を見つめながら考えていた。恐らく脳内では激しい計算が目まぐるしい速さで行われていることだろう。
「あぁ、そういうことか」
脳内で答えが出たのか、ペンでその答えを書く。そして2枚目をトロピーに渡す。そして答え合わせをする。
「15問中14問正解……ひえええぇぇ…もうワタシはついていけません」
複雑な問題が多すぎて頭が痛くなったのか、ブリオは頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。
「……これでどうでしょうか」
ついに未来のクラッシュは3枚目の問題も解き終わり、紙とペンをトロピーに渡した。しばらくして答え合わせを終えたトロピーが口を開く。
「…ほう、インタレスティングなリザルトが出たよ。ユーのIQは……167だ」
「す、すごいでランス…」
トランスは思わず本音が出たらしい。
「そうですか…ところで皆さんのお名前は?」
未来のクラッシュは再び5人に訊く。
「アチキはリパー・ルーだにょ~~~~~!!!!!」
「…私はシエラ・ミルヒーユ・ペルシャ」
「オレはエヌ・トランスだランス!」
「ワタシはニトラス・ブリオです…」
「ワタクシはエヌ・トロピー、ユーを作った張本人というわけさ」
順々に名乗っていった。
「覚えておきます。…しかし私の名前は……わかりません」
「名前を決めていなかったわね…」
シエラが呟く。
「そのまま、フューチャークラッシュでいいんじゃないでランスか?」
「そのまま過ぎるのにぇ~~~!!」
「ふ~む…ネームか……こういうのはどうだろう。賢いという意味の『clever』(クレバー)と、従うという意味の『obey』(オウベイ)の過去形『obeyed』(オウベイド)を組み合わせて、『クレイド』というのは」
「トロピーさんらしいですねぇ」
ブリオが微笑む。
「クレイド…ですか」
「あぁ、『クレイド・バンディクー』だよ」
「…わかりました。私の名はクレイド・バンディクーですね。以後その名を呼ばれた場合私だと判断致します」
こうして未来のクラッシュは『クレイド・バンディクー』と名付けられた。
「そういえば、いつの間にか金髪になっていませんか?それに本物のクラッシュと比べて身長も少し高い気が」
「あぁ、それはワタクシが個人的に設定した。ブレインアンドボディーエボリューションの時にね」
「でもこれだと見た目がクラッシュと見分けがつかないんだにょ~~~~!!!!」
「それもそうだね…どうせならもっとオシャレにドレスアップしてみるか」
「は、はぁ」
トロピーの提案に対しクレイドはあまり乗り気ではないらしい。
「ですが、トロピー様がそう仰るのならそう致します」
「…実験の成果が出たわね。上司を様付けだなんて」
「それが私の使命です、シエラ様」
「あら、私も様付けなの」
「勿論でございます」
もはや執事ではないか、とその場にいる者が思ったが誰も口に出しはしなかった。
「ファースト、身なりをチェンジしよう」
またもやトロピーはどこかに行き、黒い帽子と赤い長ズボンを持ってきた。
「あちらで着替えたまえ」
クレイドは試着室のような場所に行き、着替えて戻ってきた。
「なかなか似合ってるでランスね!」
「セカンド、何か武器を持たせねば…」
「それぐらいは後でいいんじゃない…?」
「あとでエヌ・ジンとかに作ってもらうにょ~~~!!!」
皆口々にそう言う。とりあえず身なりは整ったらしい。
「では、武器はアフターに回してここをリーブするとしようか」
「かしこまりました、トロピー様」
「相変わらず丁寧ですね…」
ブリオがそう呟いた。そしてクレイドを含めた6人は実験室をあとにした。
一方こちらは町の郊外にあるパン屋、「Dear Friends」。
ここで3人の女性が働き、店を切り盛りしていた。
「よーし、今日も一日頑張るぞー!」
「いつも通りだな…」
「まぁいいじゃん」
そんな会話をしていた。
「とりあえずシュトーレはレジお願い。私は接客するから、プレッツェはパンを焼いておいて」
「うん」
「わかった、クロワ」
クロワという女性がシュトーレという女性とプレッツェという女性にそれぞれそう頼んだ。
「あ、いらっしゃーい」
クロワが来店してきた客の男に向かって言った。
「…アップルパイ2つ」
長身の男はそう言った。
「お客さん、ここの店は初めて?」
クロワがそう男に訊く。
「ん…あぁそうだ」
男は頷いた。確かに全身に黒い布を纏い、黒いフードを被った黒尽くめの客は今までに見たことがなかった。
「あ、あとガーリックトースト3つ」
男は更に付け足した。シュトーレはレジの傍からその男を見ていたが、この男は普通ではないな、と思っていた。風貌もそうだが、こんな怪しい男がなぜアップルパイなどというちょっと可愛いものを買っていくのか…そちらのほうが気になっていた。
「まぁ誰かにお使いを頼まれているんだろうなぁ」
シュトーレは誰にも聞こえないように呟いた。しかしこの男を見て何か思っていたのはシュトーレだけではなかった。
「あの男…」
厨房からプレッツェはその男の様子を窺っていたが、その男と偶然目が合ってしまった。その時にプレッツェは男の瞳を見て何かを思い出したようだった。
「アップルパイ2つとガーリックトースト3つね」
だがクロワは特に何もなくいつも通り振る舞っていた。
「あぁ、頼む」
男はそう言ってレジに向かった。
「えーっと…初めてきたからポイントカードとかは…」
「いや、ない」
シュトーレの言葉に男は首を横に振ってそう言った。
「じゃあ8ドルね」
男はシュトーレに8ドルを渡し、パンを受け取って足早に店を出て行った。
「ありがとうございましたー」
クロワは元気よく言った。
「…ねぇ、さっきの人…なんか怪しくなかった?」
しばらく客が来ないことを確認して、シュトーレがクロワに話しかけてきた。
「そうー?私は普通のお客さんだと思うけど」
クロワはやはり特に何も思っていなかったようだ。
「あの男…私は何か前に会ったことがあるような気がするんだが…」
プレッツェが厨房から出てきて2人に話しかけてきた。
「そうなの?」
「あぁ…目が合ったときにそう感じた。何か見覚えがある」
「でもせっかく来てくれたお客さんだし、気にしなくていいと思うなー」
「別に店を荒らされたわけじゃないし…大丈夫じゃない?」
クロワとシュトーレはプレッツェにそう言った。
「そうだといいが…」
プレッツェは目線を落として心配するように言った。
「大丈夫、もしあのお客さんが私たちを襲ってきても、一緒に戦ってやっつければいいんだから」
「そうだね」
クロワは自信よく言った。シュトーレもそれに賛同した。
「…あぁ、ありがとう」
プレッツェは2人に礼を言った。
「あ、ほらお客さん来たよ。仕事再開しよー」
3人は再び自分の役割の場所に就いて仕事を再開した。
「やっと終わったか」
待ちくたびれたコルテックスが言葉を漏らす。だが実際改造にかかったのは10分程度だ。
「ユーはテン・ミニッツもウェイティングできないのかい?…まぁいい、イントロデュースするよ。新しくできた手下のフューチャー・クラッシュ改め『クレイド・バンディクー』だよ」
「トロピー様からご紹介に与りました。初めまして、クレイドと申します」
トロピーがクレイドを紹介した。
「…ほう?何か顔が怠そうだが…」
「お主が、未来から参られたクラッシュか?」
「仰る通りです」
「言葉遣いがよろしい。さぞかしお頭の出来もいいのだろうな…」
エヌ・ジンは感心した。
「ススさっすがエヌ・トロピーじゃねぇか!!こんな強スス、そうな奴を作っちまうなんてよォ!」
「全くだな…元のクラッシュの面影がねぇな、こりゃあ」
ジョーとピンストライプも褒める。
「まぁワタクシのブレインにかかればチープな御用だね」
トロピーはこのようなことが当然のことのように言った。
「へっ、そんでコイツはどんぐらい強いんだよ?これだけ評判がいいんだから本物より弱いってこたぁねェよなァ?」
セリカが訊く。
「当たり前だ、これでクラッシュより弱かったらその時点で作戦は失敗だぞ…今からにでもクレイドを連れてクラッシュを倒す」
コルテックスが答えた。
「お待ちくださいコルテックス様。確かに私は改造された身でオリジナルよりも戦闘力は同等かそれ以上かもしれません。しかし私にも何か武器が欲しいのです。それによって私の戦闘力が増幅しますし、何より私も幾分戦闘が楽になります」
クレイドが若干反抗しながらの提案をした。しかしコルテックスは厳しい口調で答えた。
「戦闘が楽になるだと…?ふざけるな!!」
「…はい?」
クレイドが困惑するのを始め、周りの者も視線をコルテックスに向ける。
「戦いとはいつでも本気でするものだぞ?ましてや貴様は今回の作戦の要であり最重要戦力になり得る。そんな奴が武器を使って楽に戦おうとするなど、言語道断だ。ワシらからしてみれば貴様に気を抜かれては至極困るのだ、わかったか?」
「そうだそうだ、オレ様はいつも素手でバトルしてるぜ?武器なんてオレ様には必要ねぇなぁ…コルテックス、所詮アマは戦うべきじゃねぇんだよ、外したらどうだ?そしてオレ様が戦線に入るとだな…」
「アンタは黙ってるんだな」
モーがコングを止める。
「おいおいそれじゃあ武器を使ってる奴らは全員戦力にならねぇっつーのか?そんなんだったら俺は役に立たねぇってことだろ?んじゃ戦線から外させてもらうわ。丁度いい、俺はやりたくてやってるワケじゃねぇし」
フレイが早速戦線を降りようとする。
「誰もそんなことは言ってないだろう!!ワシは戦闘で気を抜くような奴に喝を入れただけだぞ!貴様は戦線を降りるな!!」
コルテックスはなんとかフレイを止める。
「……誰も気を抜くだなんて発言してませんが」
突然クレイドが呟く。
「確かに私の発言には語弊があったかもしれません。しかし私は純粋に、戦闘の手助けになるような武器があることによって戦闘を有利に進められ、更に使用者の体力を温存できるようにしたほうがいいのでは、ということを伝えたかっただけです」
「言い訳はいらん!!…全く、語弊のある言い方をするんじゃない」
「だけどよぉ、この新入りが言うとおり武器はあったほうがいいとオレっちは思うぜ。コイツにもなんか武器を使わせてやったらどうだ?オレっちとこの火炎放射器みたいに、いいコンビネーションが生まれるかもしれねぇぜ?」
「そう言っといてフクロネズミに毎回やられているではないか!!犬っコロは黙っとれ!!!」
「誰が犬っコロだ!!このヤロー!!!」
ディンゴとコルテックスはとうとう取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
「何をやってるのだ貴様らあああぁぁぁぁ!!!!!」
ウカウカまでもついに怒りが爆発してしまったらしい。
「ディンゴ、コルテックス!ケンカ、やめる!」
「おじさん落ち着いて!!」
ディンゴはタイニーが、コルテックスはニーナがそれぞれ止めに入った。
「はぁ…なんでワイたちはこうもチームワークがないのでっしゃろ…」
「これだからユナはコルテックスが嫌いなのよ…」
リラ・ルーとユナがそれぞれ呟いた。
「にょ~~~~~ほほほほほほほほほほほほほ~~~~~!!!!!!」
「お前は黙ってろ!!!」
全員がリパー・ルーに向けて言った。そしてやっとコルテックスたちは冷静さを取り戻した。
「と、とりあえずクレイドの武器は拙者が作りますから少々お待ちを……それで、どのような物がいいのだ?」
エヌ・ジンはコルテックスに向けてそう言った後、クレイドに訊いた。
「個人的には…非力な私でも軽々振り回せるようなものが欲しいですね」
「承知した、では今から作ってやろう」
エヌ・ジンはそう言うと一人専用の研究室にこもった。
「お兄ちゃん…クランチ…一体何してるの?」
「いいじゃん別に~減るもんじゃないし~」
「そうだな」
クラッシュとクランチはソファーに座ってテレビを見ていた。2人の間にフォウヘンを挟みながら。
「…クランチにも、意外とこういう面があったんだな」
ポイズンがそう呟いた。
「おっ、世界チャンピオンのお出ましだ!」
「えっどれどれー?」
フォウヘンは画面にくぎ付けらしい。
「ボクシング界でアイツの右に出る者はいない…それほど強いチャンピオンなんだ」
クランチが自信ありげに説明した。
『ラウンド1、ファイト!』
「おっ、試合始まった!」
テレビの中のレフェリーの声にクラッシュが反応する。
『さぁ始まりました!両者共に様子をうかがっています!』
「けど、やっぱり今回も勝つなこりゃあ」
「そうなの?」
「う~んオイラボクシングはあんまわからないからなぁ…でも凄そうだなぁ」
『おーっとここで仕掛けてきた!!フックを繰り出してくる!』
「頑張れー!」
フォウヘンもまたボクシングは分からないものの、応援しているようだ。
「よし、そこだ!!」
「おぉ~!」
クランチがソファーから立って応援している。とここでクラッシュがクランチと同じように突然立って応援しようとしてバランスを崩してしまった。
「あっ」
なんとかテーブルに手をついて転ぶのは避けたが、代わりにあることが起こった。
「おい!何番組変えてるんだよ!今一番いいとこだろ!!」
クランチが怒った理由は簡単だった。クラッシュが手をついたところにちょうどテレビのリモコンがあったのだ。
「ごめんごめ……!!」
「早く戻せ……!?」
「ん?どうしたの?」
フォウヘンが2人に訊く。
「か、可愛い!!!」
切り替わったテレビの中にはアイドルグループと思われる2人の女の子が歌って踊っていた。
『仲間がいるから強くなれるんだ 心があるから確かめられる』
表示された字幕通り、リズムに乗って歌っている。
「へぇ~…可愛いなぁ。オイラは右の子のほうが可愛いと思うな!」
「何言ってんだクラッシュ!左の子のほうが可愛いだろ!」
「なんだって!?右の子のほうが可愛いもん!!」
「いんや左の子のほうが可愛い!!」
「んだとー!?」
「やるかー!?」
こちらでも取っ組み合いの喧嘩が始まってしまった。しかしこのクラッシュとクランチの喧嘩はだいぶしょうもない理由からだった。
「ちょ、ちょっと2人とも!やめなって!」
流石にフォウヘンも焦って喧嘩を止めようとするが、それもむなしく2人は喧嘩を止めなかった。
「あぁもう………いい加減にしろおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ついにココがキレた。2人にカラテキックをお見舞いし、喧嘩を強制的に終結させた。
「はぁ…」
その様子を見ていたアクアク、ティア、ポイズンは呆れ返っていた。
「な、何も蹴らなくても…」
「いってて…」
「全く、これからコルテックス城に乗り込むってところなのに!!」
「すみません…」
真面目に2人は謝った。
「…にしてもやっぱ、このアイドルちゃん2人はどっちも可愛いよね!」
「あ、あぁ、そうだな!2人とも可愛いよな!」
「ごめんねクランチ、オイラがいけなかったんだよね」
「いや…オレもちょっとヤケになってた。オレのほうこそごめんな」
クラッシュとクランチは互いに謝ったあと、またソファーに座ってアイドルの歌を聴いていた。
「って呑気にテレビ見るなーーー!!!」
またもやココがツッコミを入れるが今度はクラッシュ、クランチ共に完全に無視した。
「あ、歌い終わったね」
『キラキラ☆シスターズでした~!ありがとうございました~☆』
アイドルの2人は歌い終わったあとお辞儀をしてステージから去っていった。
「キラキラ☆シスターズって言うのか…今度からチェックしないとな」
「そうだね~」
「…あ」
クランチは何かを思い出したようだった。
「何?」
「ボクシングのほうすっかり忘れてた」
「あ」
クランチは急いでリモコンを取りチャンネルを戻した。
「…まぁやっぱり終わってるよな、試合」
『今回も防衛を果たしました!パンチ・ザ・ジャンプ選手ーー!!!』
テレビを見ているこちらも思わず耳を塞ぐほどの観客たちの声が聞こえる。
「いやぁやっぱりすげぇなぁ…」
「思わずこっちも拍手しちゃった!」
「こんな強そうな人がオイラたちの味方になってくれればいいのになぁ」
クランチ、フォウヘン、クラッシュはそれぞれ感想を言った。
「まぁそれはそうだね…世界チャンピオンがいれば怖いものなし、ってやつかな」
ココが言った。
「…とりあえずひと段落したところですし、そろそろ出発しませんか?」
「そうだな、相手側もこっちに向かってるかもしれねぇしな」
ティアの提案にポイズンも賛成のようだ。
「その可能性も否定はできんな…そろそろ行くぞい!」
アクアクが全員に呼びかけた。
「うん!みんな、行こう!」
「おー!!」
「よし、出来たぞ」
エヌ・ジンが研究室から出てきた。何やら黒い槍のようなものを持っている。
「お疲れ様です…これは?」
「お主の武器の槍だ。両端に刃がついているだろう?これを振り回して掠るように攻撃するのだ」
クレイドは渡された槍を持ってみた。
「軽いですね……とても使いやすいです」
「軽いだけではない、頑丈にしておいた。ちょっとやそっとの衝撃では壊れるどころか傷一つ付かん」
エヌ・ジンが自信ありげに説明した。
「なるほど…ありがとうございます、エヌ・ジン様」
「うむ」
その話を聞いていたコルテックスが喋りだした。
「よし、これで全ての準備が整った。あとはあの憎きバンディクーをぶっ潰すだけだ……ウワーッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」
「おい、自由な時間の確保、っていう約束も忘れてないよな?」
フレイは自身にとって大切な約束事を確認する。
「あぁ忘れてないぞ?お前らが戦闘に向かってしばらくしたらワシらも様子を見にそっちに向かう。その時にバンディクー共を倒していたら、だ」
「…なら、早速行くぞ」
「しょうがないなぁ…」
「まぁ倒せばいいんですから」
「…チッ」
フレイに促されユナ、舞姫、セリカの3人はコルテックス城を出てクラッシュの家に向かった。フレイもその後に続いた。
「そうだ、言い忘れていた。シエラも向かってくれるか?アイツらのバックアップというか、サポートをしてやってくれ」
「…わかったわ」
「では、私たちも行きましょう、シエラ様」
シエラとクレイドも4人の後に続いた。
「ふぅ…少しはやってくれるだろうな…」
コルテックスが呟いた。
「しっかしよぉ、何なんだ?この『A』とか『S』っていう文字は」
「文字によって色分けされている…というわけでもなさそうね」
男と女が訊く。見た通り、『赤のA』もいれば『青のA』も『青のS』も『赤のS』もいる。
「大方想像はつくだろう?まぁ見てからのお楽しみだ」
男が答えた。
「おーい、今戻ったぜ」
男がどこからか帰ってきた。手にはレジ袋が握られていて何やらおいしそうな香りが辺りに漂う。
「やっと帰ってきたー!アップルパイちゃんと買ってきたよねー?」
すかさず女が男に訊く。
「当たり前だ、ほらよ」
男が女にアップルパイを渡す。
「わーい!!いっただっきまーっす!」
早速むしゃぶりつく。
「あ、あの、あたしの分は…?」
「んあ?あぁごめんない」
「ガーン……」
女は男の答えに落ち込んだ。
「まぁそんなガッカリすんな。今度買ってきてやるよ」
男はガーリックトーストをそのままかじりながら言った。
「ホントですか!?絶対ですよ」
「あぁ」
「やったぁ!!」
女はすぐに立ち直ったようだ。
「はぁ……こうでも言わないとアレだよな…」
「ところでお前店に入ったとき、何もなかったか?」
男が訊く。
「あぁ、別に何ともなかったぜ。布被ってたからな、気付かれてもいないだろう」
「そうか、ならいい。…そのうちヤツも引き摺り戻してやる……」
男が呟いた。
「さて…そろそろ始めるときだ」
男はそう言って近くにあったスイッチを押した。その瞬間、大量の物体の上に大きなブラックホールが発生した。大量の物体はそれに呑まれていく。
「まずは小手調べだ。どんな戦い方を見せる?存分に味わわせてもらうぞ…」
「ん~…なんかここに来るのも久しぶりだな~」
クラッシュ、ココ、クランチ、アクアク、ポイズン、ティア、フォウヘンの7人はある浜辺に着いた。
「へぇ~、ここが『目覚めのビーチ』?」
「そうだよ」
クラッシュとフォウヘンがそう会話していた。ここは目覚めのビーチ。クラッシュが必死の思いで海を泳ぎ、気を失って打ち上げられた場所、そしてかつての恋人、タウナをコルテックスの手から助けるために城へ向かうことを決意した場所。そうフォウヘンに説明した。
「その頃はオイラにも恋人がいたんだ……あぁタウナ、どうしてオイラを見捨てたんだ…見捨てたんだ……」
徐々に気分がどん底に落ちていくクラッシュをココとクランチは見ていた。
「でもまぁ、そのお陰でお兄ちゃんは猛特訓して、今や世界を救うヒーローになったんだよ」
「オレは元々コルテックスに造られた身なんだが、クラッシュが助けてくれてよぉ、今はこうやって家族になってるってわけなんだ」
「ほう…?コイツがか」
ポイズンはイジイジして砂浜に何かを書いているクラッシュを見ながら言った。
「…でもいつまでも落ち込んでる場合じゃないよね!オイラの周りには頼れる仲間がいっぱいいるからさ!」
「そうですね。仲間は素晴らしいものです」
ティアが付け加えた。
「それに、今オイラの近くにはカワイコちゃんがいるし!」
クラッシュはフォウヘンのほうをチラっと見た。しかし本人は満更でもなさそうだった。その証拠に、フォウヘンはクラッシュにウインクを送った。
「…むっ?なんじゃアレは?」
アクアクがふと空を見上げて言った。
「ったくここらは機械ばっかで空が全く見えねぇな!」
「仕方ありません、ここはまだ城の周辺ですから」
フレイと舞姫が会話していた。フレイ、舞姫、ユナ、セリカ、シエラ、クレイドの6人は舞姫の有するスポーツカーに乗っていた。運転席には舞姫、助手席にはシエラ、後部座席にはあとの4人が座っていた。本来なら4人座るとかなり窮屈になるはずだが、両端に座っているフレイとクレイドが若干窓からはみ出ている為にスペースに少し余裕があった。
「…途中でハーゲンダッツ買っていかない?あんなオヤジから貰いたくない」
「あ~、それは確かに言えてるな。俺も自分でハンバーガーを作りたい」
ユナとフレイは妙な部分で意気投合していた。
「それなら、ちょっと近くのコンビニにでも寄りますか?私は待機してますので」
「賛成~」
舞姫の問いかけにユナとフレイは声を揃えて言った。
「じゃあ俺もタバコとビールを補充する」
セリカが言った。因みにセリカはまだ未成年だ。
「…でもあなたが行っていいの?」
シエラがセリカに訊く。
「あ?別にバレやしねぇよ」
「でも、もしバレたらまた面倒なことになると思うぜ?しかもお前だけコルテックスに怒られるオチだな」
フレイが自分で言ったことを頭の中で想像してニヤけながら言った。
「…チッ、確かにあのハゲオヤジに怒鳴られるのは御免だな。仕方ねぇ…だが誰が行くんだ、俺の代わりに」
その問いかけに全員黙って考えた。
「シエラは外見がセーラー服だしな…ユナはまるっきり子どもだろ」
フレイが言う。
「舞姫は大人だけど、背が低いしね」
「…」
ユナの発言に舞姫は少しムッとしたが、事実は事実なので仕方なく黙っていた。
「俺はハンバーガー店に少し寄る。…となると」
全員が必然的にクレイドを見る。
「私ですか?」
「その帽子が大人の雰囲気を醸し出してるかな」
ユナが言った。
「確かにクレイドなら大丈夫そうだな」
「じゃあ頼んだ」
「わかりました。タバコとビールですね」
「ついでにユナのハーゲンダッツも買ってきて!」
クレイドは了承した。しばらくしてスポーツカーはコンビニの駐車場に止まった。
「ハンバーガー店はここから歩いて5分ぐらいのところにあります。では、待ってます」
「ほんじゃ行ってくるわ」
フレイはハンバーガー店に、クレイドはそのままコンビニに入って行った。
「…それにしても、クレイドさんってどんな方なんですか?シエラさんなら分かると思うんですが」
舞姫がシエラに訊く。
「…どんな、と言われてもそのままよ。口調は丁寧で従順、ってところかしら」
「そうですか…」
「けど俺はアイツ、気に食わねぇなァ」
「ユナはあなたの事をそう思ってるけど」
「フン、勝手に言ってろ」
そんな会話をしていると先にクレイドが帰ってきた。
「お待たせしました」
「わーい!」
ユナは早速スプーンを持って食べ始めた。
「おう、ご苦労~」
「ちょっと待ってください、車の中は禁煙ですよ」
舞姫がセリカに忠告する。
「んな事知るか!!」
セリカは舞姫の忠告を無視してタバコを吸い始めた。
「ここで吸わないでよ!ハーゲンダッツがまずくなるじゃない」
「しょうがねェな……後で使うからな?」
セリカは渋々タバコをやめた。と、ここでフレイもハンバーガーを片手に帰ってきた。ハンバーガーは既に半分以上なくなっていた。
「よーし、とりあえず腹ごしらえはできたわ。で、俺にはもう一つしたいことがある」
ハンバーガーを食べながらフレイが言う。
「あぁ、アレですね?」
「そうだ。…じゃあ食い終わったから、車の上に乗るぜ」
舞姫は快く受け入れた。
「フレイさんは何をしようとしているのです?」
クレイドがフレイに訊く。
「んまぁ見てりゃわかるって」
「では出発しますね」
舞姫は車のエンジンをかけ、駐車場を出た。
「だいぶ飛ばしますから、気を付けてください」
「俺にそんな忠告しなくたって大丈夫だ」
フレイは威勢よく言った。そして車のスピードが上がってきたとき、フレイが5人に言った。
「じゃあ空の散歩をするついでに、俺は先に敵の陣地に向かってるぜ。また後でな」
フレイは空気銃の引き金を引き、風圧を利用して上空へ飛んで行った。
「ひゃっほおおおおおおおおお!!!!!!!!」
遥か上空で叫び声が聞こえる。
「では、私たちも行きましょうか」
スポーツカーの後部座席はフレイが抜けたことによりだいぶ楽になったようだった。5人は改めてクラッシュたちのところへ向かった。
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