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クラッシュ・バンディクー8 深紅の野望と漆黒の友
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第5話
2016/08/29(月)21:13:53(9年前) 更新
さて、皆さんお待ちかねの本編でございます!w(
「『クリムゾン』……?」
「聞いたことあるか?」
クラッシュとコルテックスが全員に訊くが、誰一人として首を縦に振る者はいなかった。
「手荒な真似をしてすまなかったな」
クリムゾンという男は謝ったが、表情を見るにとても詫びてるようには思えなかった。
「おい!!ススさっきのロボットはテメェのシィワザかァ!?」
「そうだ」
ジョーの質問にクリムゾンはあっさりと答えた。
「はァ?ふざけんなよ!」
「…どういうつもりなんです?」
今度はクレイドが訊いた。
「まぁ簡単に言えば…お前たちの実力を計っただけだ」
「俺たちの実力を計って何の意味があるってんだ?」
「…何故だか嫌な予感がするぜ」
続いてフレイが訊き、ポイズンが呟いた。
「……我々は『ホワイト・ピース』、平和を願う団体だ」
「は?おい聞いてんのか?」
「この世に『正義』と『悪』が存在するために争いが起こる」
クリムゾンはフレイの質問を無視し一人で喋っていく。
「??? タイニーよくわからない」
「ちょっと…何言ってるのこの人?」
タイニーもココも、全員が疑問を抱き始めた。
「だから俺は真の平和を求めることにした。そのためにはまず―――」
不意にクリムゾンが黙った。全員耳を凝らす。
「―――お前たちを、殺す」
「な…ッ!?」
「え…っ!?」
ディンゴとフォウヘンは思わず声を上げた。全員驚きを隠せない。
「…ハッハッハ、安心してくれ。何も今すぐ殺すわけではない」
「そういう問題じゃないでしょ!?大体、アンタ一人であたいたち全員倒せる気!?」
「ハッ、いくらお前が強くたってオレ様達全員とやりあってお前が勝てるワケねぇだろ!相当の馬鹿なのか!?」
ニーナとコングは強気になり、挑発した。
「残念だが、俺は馬鹿でもないし弱くもない。それに…その気になれば俺一人で、お前たち全員を葬ることもできる」
クリムゾンは二人の挑発に一切動じず言い切って見せた。
「コ、コイツ一体何者なんだな……」
モーが弱々しく呟く。
「…まぁ俺一人で葬る、なんてことにはならないと思うがな」
クリムゾンは笑った。
「さ、さっき我々って言ってたランス…もしかしてコイツにも仲間がいるんじゃないランスか…?」
「その可能性は十分ありますね……」
トランスとブリオは互いに小声で話し合っていた。
「仲間はいるぞ」
「ヒイィッ!?」
二人の会話はクリムゾンにも聞こえていた。二人は完全にビビってしまった。
「…さて、お前たちは散々俺に質問してくれたな。今度は俺が質問させてもらう」
クリムゾンがそう言うと、全員身構えた。緊張の糸が張り詰める。
「…本当の『平和』は、どうすれば得られると思う」
殆どの者は質問の意味がよく分からなかった。
「そ、そりゃあ『正義』が『悪』をぶっ倒せば、平和になるだろ!?」
「拙者らからすれば、世界征服する拙者らは己の『正義』を貫き、それを邪魔するものが『悪』!そやつらを成敗すれば世界征服という平和が訪れるのだ!!」
クランチとエヌ・ジンはそれぞれの思いをぶつけた。
「…ぶっ倒す?世界征服?馬鹿馬鹿しい……期待外れにも程がある」
クリムゾンは低い声で吐き捨てた。
「何でだよ!!合ってるだろ!?」
「拙者らは何も間違ったことは言っておらぬぞ!!」
「もういい、戯言は十分だ」
クリムゾンは二人の言い分を無視した。
「時間を取らせて悪かったな。では、また会う日を楽しみにしているぞ」
その言葉を最後に、ホログラムは消えた。そしてそれを映していた謎のロボットも、独りでにパーツが外れ、壊れた。
「な、なんやったんや今のは…」
リラ・ルーが呟いた。他のメンバーも驚きと焦りを感じていた。
「アイツ…一体何をするつもりなんだ…?俺たちを殺そうとしてるみたいだが…」
「クソッ、どこの馬の骨かわからねぇヤツに殺されたくねぇぞオレ様は…!!」
ポイズンとコングが深刻そうに言った。
「うーむ……マズいことになった…これは、ワシらで争っている場合ではない…そう思わんか?ウカウカよ」
「…フン、久々に貴様と意見が合ったようだな。ワシの僕を殺されては世界征服もままならんからな」
アクアクとウカウカは話し合っていた。
「…ん?ちょっと待って、ということは…?」
クラッシュは二人の会話を聞いて、何かピンと来たようだった。クラッシュはゆっくりとコルテックスの顔を見た。
「……クラッシュ。どうやらまた…お前と手を組むときが来たようだ」
コルテックスは少し呆れたように笑いながらクラッシュに手を差し出した。
「コルテックス!今回もよろしくな!!」
クラッシュも手を差し出し、二人は握手した。
「待て待て待て!コイツらと仲良く一緒に戦いましょうってか?冗談じゃねぇ、そんなごっこ遊びには付き合わねぇぜ!」
「コイツの言う通りだなァ。テメェらとなれ合うつもりなんかねェよ!」
フレイとセリカは全員に背を向けて勝手に帰ろうとした。
「にょほほほほ!!!お前さんたち、もう二度とハンバーガーやタバコが買えなくなってもいいのかにょ~~~!??!?」
「…は?」
フレイとセリカはほぼ同時に振り返った。
「お前さん達だけで挑んでも返り討ちにされるだけだにょ~~~~~!!!!」
「ふむ、ワタクシはクレイジーリパー・ルーのオピニオンにアグリーね」
「相手は何人いるか分からないしな。それに、さっきの白衣の男もお前らでどうこう出来るようなヤツじゃなさそうだ」
トロピーとピンストライプは意外にもリパー・ルーの意見に賛成した。
「兄貴がそう言うなら私はいいよ!」
「セリカさん…皆さんもこう言ってることですし、協力してみませんか」
ユナと舞姫も手を組むことに肯定的だ。
「チッ、仕方ねぇな……お前が言うなら手伝ってやるよ」
セリカは渋々手伝うことに決めたようだった。
「おい、俺にはそういうのねぇのかよ」
「おめぇは空でも飛んでたらどうだ?」
ディンゴはフレイをからかってみた。
「…犬っコロのクセしやがって」
「んだとコンニャロ!?焼鳥にすっぞ!!」
「はいはーいすみませんでしたー」
「ったく調子乗りやがってコイツ…!」
フレイは適当に謝りつつ全員の元に戻ってきた。全員は砂浜に輪になって座った。
「…それで、手を組んだのはいいのだけれど、これからどうするつもり?」
シエラは全員に向かって訊いた。
「その前にまず、オレ達は互いに互いを攻撃したり裏切ったりしないってことを誓おうぜ」
クランチが提案した。
「そうなんだな。オラ達で無駄に潰し合うなんてまるで意味がないんだな」
モーもクランチの提案に同意した。
「ウカウカ、この戦いが完全に終わるまではお互いに手出し無用じゃぞ」
「フン、貴様の意見に同意するのは癪だが、戦いが終わったら容赦せんからな」
アクアクとウカウカの話し合いに耳を傾けた全員は、お互いに顔を見合わせて大きく頷いた。
「これでオッケーだね。これからどうしようか」
クラッシュは砂浜に寝そべってから訊いた。
「これからの予定について、社長からお話があるそうです」
「え、何?」
ティアがココに話を振ると、クラッシュは即座に起き上がった。全員がココのほうを見る。
「あのさ、これから私達が戦っていく敵って何人いるか分からないじゃない?だから、こっちも準備は万端にしておいたほうがいいと思うの」
「具体的にはどういう準備を?」
クレイドがココに訊いた。
「さっきクリムゾンって人が喋ってた時に気付いたんだけど、映ってた背景がなんかいかにもって感じの研究所っぽく見えたのよね」
「マジかよ!!オレはススそんなこと気にしィてもいなかったぜ!!」
ココの発言にジョーはかなり驚いた。
「ってことは、まさかそこからアイツらの研究所の場所が割り出せるのか?」
ポイズンは期待を寄せた。
「い、いや…流石にそこまではできませんよ…それにそれが出来ちゃったらそこに殴り込んで小説終わっちゃいますよ?」
「…ココ、そういう発言はやめろよ」
「……失礼しました」
クラッシュに何かを気付かされ、ココは誰というわけでもなくとりあえず謝っておいた。
「…で、特定はできないけど、研究所が本拠地の可能性は高いでしょ?だから…」
ココは一旦溜めた。
「わたし達も研究所をつくっちゃおー♪」
「……はぁ!?」
ココを除くその場にいた全員が驚愕した。
「ど、どういう事ですか、社長…?」
秘書であるティアすらもこの事は全く把握していなかったようだ。
「研究所っていうか、なんか秘密基地みたいなのを作って、作戦を練って倒しに行く、って感じかな」
それに対し、ディンゴとトロピーが意見を寄越す。
「要するに、クリムゾンとか抜かすヤツらは一筋縄じゃ倒せそうにねぇから、オレっち達もガチで準備してぶっ潰そうってワケだな?」
「ふ~む…内容はアンダースタンできなくもないが、いかんせんプリペアーする時間が少なすぎないかね?」
「だ・か・ら!今から皆で協力して作るのよ!!」
「えええぇぇぇ~~~!!?」
ココは二人の意見を聞き入れた上で基地の建設を促した。当然皆嫌そうな声を上げる。
「第一、どこに基地を作るというのだ!敵側に知れたらすぐに破壊されるのは目に見えているだろう!」
「そうよ!言うだけ言っておいて、実はそこらへんノープランでした、なんて許さないわよ!?」
コルテックスとニーナもすかさず反論した。
「うるっさいわね、ちゃんと考えてるわよ!」
コホン、とココは軽く咳払いをしてからこう答えた。
「秘密基地は、うちの地下に作りますっ!!」
「え、えぇっ!?」
今度は悪の一味だけでなくクラッシュ達も驚いた。
「え、いやいや、ちょっと待てココ!オイラん家の地下に作るの!?」
「何だ、改造でもするつもりなのか?」
ポイズンが訊く。
「改造というか、増設ですかね?そこに大規模な地下基地を作るんです!」
「…何じゃ、とんでもないことを計画しておるようじゃのう、ココ」
「心配しないでアクアク!前に作ったアレがあるから、それを大きくするだけよ」
「アレってなに?タイニーしりたい!」
「んー、あなたに言っても分からないかもしれないけど……前にあなた達が世界征服を企てたとき、私が独自に作ったワープマシーンよ」
ココに言われた通り、タイニーはあまり理解できていなかったが、コルテックスやエヌ・ジンはピンと来ていた。
「もしや……コルテックス殿がクランチを開発していたときのことではないでしょうか」
「あ、あの時か…あの後は大変だったなぁ……ウカウカのヤツに追い掛け回されて…あぁもう思い出したくもない…」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえいえ!!何でもございませんウカウカ様!ハ、ハハ、ハハハハ……」
コルテックスは自分の失言を隠すために作り笑いをしていた。
「そうか、オレがまだコルテックスに作られて間もない時だったか。確かにオレもあまり思い出したくはねぇな」
「そうそうその時!もう今は使ってないけど、あそこを改良すればもっといい基地になると思うの」
クランチの発言にココは頷いた。
「で、でも今から本当にその地下基地を作るでランスか!?」
「そうよ、さっきから言ってるじゃない!これだけの人数で役割分担して作業すれば、すぐに終わるわよ」
トランスが改めて確認するが、ココは自分の計画を曲げるつもりはないらしい。ちなみに、この場には26人(とアクアク・ウカウカ)が集まっている。
「すぐって、具体的にどれぐらいだよ」
ピンストライプが訊く。
「うーん……大体5~6時間ぐらいかな?」
「あ゛あああぁぁぁぁ~~~~~!!??」
またしても全員嫌そうな声を上げる。先程よりも数倍ボリュームが上がり更に面倒臭さも付与されている。
「オイ!真夜中までやるってのか!?冗談じゃねぇぞ!」
「やってられっかススそんなメンドクセェことをォ!!」
「流石にオラも疲れたんだな…少し休ませてほしいんだな…」
「ワイも体力の限界でっせ…さっきっから戦いまくりやったから…」
コング、ジョー、モー、リラ・ルーも不満を漏らす。
「何言ってんの!?あのクリムゾンとかいう人だって、私たちと同じ時間に休んでるとは限らないのよ!?それに明日、いや今にでも突撃してくるかもしれない。そんな状況で呑気にしていられるの!?」
「……」
ココは凄みを効かせて問いかけたが、全員黙ってしまった。
「あの人たちが本気で私達を殺しに来たら……、リンゴも牛乳も焼肉も、何もかもなくなっちゃうのよ!!」
「それはイヤだ!」
「なくなるのは困るな」
「焼肉がなくなっちまったら、オレっちもう生きていけねぇ…!!」
その例えはどうなんだ、と数人は思ったが、口に出すのはやめておいた。しかし、また別の数人は何かを考えていた。
「それって……ハンバーガーもか…?」
「え…?え、えぇ、ハンバーガーもなくなっちゃうかもね」
「ビールもなくなるのか?」
「えぇ、なくなるでしょう」
「ハーゲンダッツもなくなっちゃうの!?」
「なくなるわよ!」
多少このやり取りにウンザリしたが、ココは何かを感じ取った。
「…セリカ、ユナ」
「なんだフレイ」
「やるぞ」
「…うん!」
「そうこなくっちゃ!」
「いやどういう納得の仕方だよそれは!!?」
3人が意気投合したのを見てココは喜んだ。それにコルテックスを始めとする数人がツッコんだ。
「動機はともあれ、いい心がけだ。普段の作戦でもこれぐらいやる気を出してもらいたいものだな…」
エヌ・ジンが小声で毒づく。
「さ、そうと決まれば」
ココが立ち上がり、場の真ん中に手を差し出す。
「早速取り掛かるわよ!!」
「おー!!」
全員が立ち上がって手を置き、掛け声を上げた。正確にはまだ乗り気でなかった者も多かったが、もう今何を言っても無駄だろうと諦めて周りに合わせたのだろう。
「あ、でも私見たいカンフー映画があったから一回家に戻るね!みんな少し休んでていいよ!」
全員その場にズッコケた。
ここは『ホワイト・ピース』、クリムゾン率いる第三勢力の本拠地である。そこのとある一室に、クラッシュ達とのホログラムを介した会話を終えたクリムゾンが戻ってきた。
「あ、終わったみたいだねー」
「あぁ」
「どうだったのー?」
「別に何もない。予想通りすぎて面白味に欠ける」
女の問いかけにクリムゾンはウンザリした様子で答えた。
「それより、これから会議をしたい。中央ホールに全員集めてくれ。俺はシャワーを浴びてくる」
「うん、わかったー」
「ではワタシは機器の準備をして参ります」
「頼んだぞ」
クリムゾンはそう言うと奥の部屋へと消え、何者かは足早にホールに向かった。残された女は近くにあったスピーカーに顔を寄せる。
「ぴーんぽーんぱーんぽーん!今から会議をするのでー各代表のみんなは中央ホールに来てねー。遅れちゃダメだよー。繰り返しまーす、各代表は中央ホールに来てねー。ぴーんぽーんぱーんぽーん」
そこでスピーカーからの音声は途切れた。
「オラァッ!コイツはどうだァ!?」
「甘い!もう見切ってるわよッ!」
「チッ、やるな!流石、有段者なだけはあるなッ」
「褒めても手加減はしないわッ」
男と女は空いた時間を使って、体が鈍らないようにスパーリングをしていた。と、ここで先程の音声が聞こえてきた。
「ん、待て。会議だって?もっとスパーリングしていたかったが…しゃあねェ、行くか」
「ふう…えぇ、ホールに向かいましょ」
「久しぶりにてめぇとやり合えて楽しかったぜ」
「こちらこそ、またいつでも頼むわ」
男と女はスパーリングを止めてホールに向かった。
「…よし、キリが良くなった!ほら、クリムゾンさんが呼んでるから早く行こ!」
「う、うん……なんか、私、怒られるのかな…」
「そんなことないって!あの人優しいし怒ったりしないよ!」
「…っ、この前クリムゾンさんに怒られる光景を見たの…」
「え、まさかアレが起こったの…?でも大丈夫よ、私だってついてるし。それに外れることもあるんでしょ?」
「外れなら、いいんだけど…」
「もしそうだったとしても、私も一緒に怒られるわ。いつだって2人で頑張ってきたじゃない!元気出して!」
「…うん。心配してくれて、ありがとう」
2人の女はそんな会話をしながらホールに向かった。
「はぁ~、なんであたい達まで行かないといけないの?」
「仕方ないさ、アイツには逆らえない…」
「…そうね。逆らったら後が面倒ね…でもいつかアイツを見返してやるわ…!」
「いつかっていつだよ」
「近いうち。チャンスが来たら、よ」
「そうか、その時は俺も手伝う」
「ありがとう。…じゃあ行こう」
女と男は気だるそうにホールに向かった。
「ったくなんであの女に指示されなきゃいけないのよ!?」
「正確にはクリムゾンからだろうがな」
「そ、そんなこと分かってるわよ!どうせならあの方から命令されたかったわ……」
「コイツやっぱりマゾなんじゃねぇか?」
「誰がマゾよ!あたしは魔女よ!?そこ間違えないでよね!!」
女は2人の男のほうに向きつつ、2人に対してイラついていた。
「すぐキレるところもアイツに似てるな。馬鹿とマゾは意外とお似合いだったりしてな」
「えっ…お似合い?あの方とあたしが…?いやーんもう照れるわーっ!」
「…褒めたつもりはなかったんだがな」
「前見ねぇとあぶねぇぞ魔女、いやマゾ」
「そこ言い直さなくていいからね!?あと、あたしは普段コレ使って移動してるから!転ぶなんてことありえないのよ!?」
「誰も足元だけとは言ってねぇ」
「は?それってどういう意味…」
直後、ガンッ!と女は柱に頭をぶつけた。
「っっったあぁぁぁ~~~!!?」
「……コイツが同僚だと思うと違う意味で俺らも頭が痛くなるな」
「あぁそうだな、馬鹿が移っちまう。先に行こうぜ」
「ちょ、ちょっと待ってってば!少しは心配しろっつーのー!!」
男2人は先にホールに向かった。遅れて女も頭を押さえながらその後をついていった。
「僕たちまで呼ばれるなんて、いよいよ計画が本格的になってきたんですかね…」
「フン、俺はヤツの思想なぞに興味はない。己の欲望を満たせれば、それでいい」
「俺もどちらかといえばコイツに賛成だ。この世界を地獄と化すために、手を貸しているだけに過ぎねぇ」
「でもあなた達は今中央ホールに向かおうとしている。それは彼に付き従っている確固たる証拠」
「揚げ足を取りやがって。貴様の心臓握り潰すぞ」
「嫌なら向かわなくてもいいと思いますよ。それで彼に殺されても僕は責任を取りませんけど…」
「私は彼についていくわ。彼に従っていれば間違いはないでしょうから」
「もういい黙れ、耳障りだ。手を組んでいなければ貴様らなぞ既に斬り刻んでいるところだ」
4人はそう言いながらもホールに向かった。
「急に呼び出してすまない。全員揃ったな?早速始めるぞ」
クリムゾンはプロジェクターの横の椅子に座った。他の者はそれに向かい合うように椅子に座った。
「先程、俺は『この世界で最も邪魔な者たち』とのコンタクトを取った」
クリムゾンが説明を始めた。
「そのときの映像を見せよう。映し出してくれ」
「畏まりました」
何者かがそう答えると、プロジェクターが起動し、映像が映し出された。
「ケッ、なんだこのアホ面とハゲオヤジは」
「アハハハッ!コイツらがアンタの毛嫌いするヤツらだなんて信じられないわ!」
「おいおい人違いじゃねぇのかぁ?笑わせやがって」
他の全員は口々にそう言い、笑っていた。
「フッ、まぁそう笑ってやるな。左はネオ・コルテックス、ワルワルスクールの卒業だ。右のクラッシュ・バンディクーはコルテックスから世界を救ったヒーローだ」
「おいワルワルスクールつったら、俺様達の…」
「…そうだ。先輩ということになる」
「え、このおじさんがクリムゾンさん達の先輩…?」
「この人がヒーローだなんて…ちょっと笑っちゃうかも…」
「っていうか、宙に浮いてるあの2枚の板みたいなのは何?」
「それは精霊の一種だろう…まぁ放っておいても問題はない。それよりも、お前達にはこの24人の抹殺を頼みたい」
「こんなヤツらは俺一人で十分だ。そうだろう、クリムゾン」
「だが侮るな。コイツらの精神力だけは見縊らないほうがいい。後ろにいる取り巻き共も優秀に見える」
それに、とクリムゾンは不意に言葉を繋げる。他の全員はまだ笑っていたが、クリムゾンに注目する。
「恐らく、このクラッシュとコルテックスは手を組むだろう。どうやら前にもそんなことがあったみたいだしな…。また、今後コイツらの仲間も増えていく可能性もある」
「確かに…それは否めませんね」
「そこでだ、我々『ホワイト・ピース』も仲間を積極的に取り込んでいこうと思う。勧誘の仕方はお前達に委ねるとしよう。まぁ判断しかねるなら俺の指示を仰いでもいい」
「了解」
「承知した」
「わかったよー」
「畏まりました」
「…さて、コイツらのことについてはもういいだろう」
クリムゾンはプロジェクターの電源を切り、椅子から立ち上がった。
「次は我々のことについてだ。それぞれが担当する所属部隊の確認、そして同時にコードネームを渡す」
「コードネーム?」
「それは何の為に必要なんだ?」
「これから先、ヤツらと交戦する機会が多くなってくるだろう。迂闊に自分自身の情報を漏らすと敵に感付かれる可能性も否めない。先程の映像の中には、腕の立つメカニックも数人いるようだ」
「なるほどな。こちらの情報は一切渡さず、向こうの情報を収集するわけだ」
「そうだ。まずは情報を制する。決して本来の名前や重要な情報を流すな。これは全員厳守してもらう、細心の注意を払ってくれ」
クリムゾンがそう言うと、全員無言で頷いた。
「では順に発表していく。まず、『最高幹部』Dark Assassin Cyclone Bomber、DACB。コードネームは『ブラック』」
「ん、なんだ俺様か」
DACBと呼ばれた男が答えた。
「次に、『機械兵団代表』Alto Cross。コードネームは『グレイ』」
「ワタシはグレイですね。宜しくお願い致します」
Altoと呼ばれたロボットが答えた。
「『一般戦闘部隊代表』月田亜貴。コードネームは『イエロー』」
「へぇ、あたしイエローなんだ…分かりました!」
亜貴と呼ばれた女が答えた。
「『治療・給仕部隊代表』メシック・ルミナリー。コードネームは『ピンク』」
「はーい。ルミはピンクね」
ルミナリーと呼ばれた女が答えた。
「『科学部隊・生物科代表』レイリー・クリスタル。コードネームは『シルバー』」
「あ、はい…宜しくお願いします…」
レイリーと呼ばれた女が答えた。
「『科学部隊・自然科代表』シンシア・アメジスト。コードネームは『パープル』」
「はい、宜しくお願いします!」
シンシアと呼ばれた女が答えた。
「『魔術部隊代表』トレイア。コードネームは『オレンジ』」
「んー。全員色で固めてるワケね」
トレイアと呼ばれた女が答えた。
「『突撃部隊代表』フェアー・ボアー。コードネームは『ブラウン』」
「あたいブラウンなのか…。まぁいいや、宜しく!」
フェアーと呼ばれた女が答えた。
「『支援部隊代表』クラフティ・スカンク。コードネームは『グリーン』」
「グリーンか、わかった」
クラフティと呼ばれた男が答えた。
「『技術・通信部隊代表』サン・フェリダ。コードネームは『サンブラ』」
「俺は色じゃないのか。まぁ、いいさ」
サンブラと呼ばれた男が答えた。
「ポルトガル語で影という意味だ。『特殊任務部隊代表』南さとり。コードネームは『インディゴ』」
「インディゴ…?藍色って意味だったか」
南と呼ばれた男が答えた。
「そうだ。『特殊任務部隊特別枠』リンネ・アグリッパ・ツィンズチェリー。コードネームは『ゴールド』」
「改めて、宜しくお願いします…」
リンネと呼ばれた男が答えた。
「『突撃部隊特別枠』マルクス・バリクソン。コードネームは『カーキ』」
「肩書に自惚れるつもりはない」
マルクスと呼ばれた女が答えた。
「『技術・通信部隊特別枠』アレクサンドロ・デス・シャドー。コードネームは『レッド』」
「あぁ分かった」
アレクサンドロと呼ばれた男が答えた。
「『科学部隊特別枠』アミュータ・ミルヒーユ・ペルシャ。コードネームは『ブルー』」
「了解したわ」
アミュータと呼ばれた女が答えた。
「…そして俺が『総帥』Crimson Eyes Mad Scientist、『クリムゾン』だ。これで終えたな…そしてもう1つお前達に伝えておくことがある」
「なんだ?」
DACBが訊く。
「俺は仲間の失敗を咎めることはしないし、指示に逆らうのもある程度は許容する。だが…」
クリムゾンはその真紅の瞳を見開いて言った。
「裏切りだけは何があろうと絶対に許さん」
「……」
多くの者はクリムゾンの放つ迫力に気圧されて黙ってしまった。
「…ハハハ、別に誰も裏切ることなんてしねェよ」
「忘れたのか、DACB……一部の者は知らないと思うが、我々の組織にも過去に謀反が発生した」
「そうだったんですか…」
亜貴が静かに訊いた。
「あぁ、一人は現在も逃亡中だ。もう一人は居場所は掴んでいる、如何に引き摺り戻すかを考えているところだ…」
「二人なのか。それなら、そいつらの追跡は俺に任せてくれねぇか?俺は一人のほうが動きやすい」
南が追跡役を買って出た。
「そうか、頼んだぞ。他の者も手が空き次第適度にサポートしてやってくれ。俺からは以上だ」
クリムゾンは話を終えると再び椅子に座った。
「俺からも一つ話すことがある。すぐに終わる」
サンブラが話を切り出す。
「どうした」
「これは俺とアレクサンドロで作製した通信端末だ。まだ試作段階だからここにいる人数分は用意できていないが」
そう言うとサンブラは掌ほどのサイズの端末をポケットからいくつか取り出した。
「ほう……それならマルクス達に持たせたらどうだ?お前達はこの後持ち場に戻るだろう」
クリムゾンが提案する。
「…分かった、一つ貰っておく」
「これで連絡すればいいんですね」
「便利なものね…」
「画面を起動して番号を押せば、その下に書いてある名前宛に通信が繋がる仕組みだ。複数人に繋げる場合は番号を1つずつ長押しすればいい」
マルクス、リンネ、アミュータが手に取り、アレクサンドロが機能を説明した。
「使い心地が良好なようなら人数分用意する。ちなみにカメラ機能をつけるかどうか検討中だ」
「なるほどな、じゃあ俺もこれからお尋ね者を探しに行くから貰ってくぜ」
「緊急時には俺にも連絡してくれて構わん。俺も貰っておくぞ」
サンブラが説明を付け加え、南、クリムゾンも手に取った。
「いいね、それ。あたしも早く使いたいな」
「凄い便利そうじゃーん。ルミもいっぱい写メ撮ろうーっと」
「そ、そういう使い方は推奨してないと思うけどね…でもこんなに小さいのに便利なのね。私も早く欲しいわ」
亜貴、ルミナリー、シンシアは早速興味を持っていた。
「早くDACB様とふたりっきりで電話したいわー!!」
「ふざけんなこの野郎ッ!」
DACBはトレイアの頭に拳骨を喰らわした。
「あらら…もう少し優しくしてあげてはどうですか…?」
「いいんだいいんだレイリー、コイツにはこんぐらい強くやんねェと馬鹿が直らねェからな」
「いったた……で、でも気持ちいいかも…」
「(やはりコイツは魔女ではなくマゾのようだ…)どうやら周りにも好評みたいだな、早速取り掛かるとするか。じゃあ俺の話は終わりだ」
「分かった、他に話すことはないか?ないなら会議はこれで終了だ、各自自由にしてくれ。…南、お前には個別に話がある」
クリムゾンがそう言うと他のメンバーはそれぞれの場所に戻って行った。そこに一人呼び止められた南が残っていた。
「話って二人のお尋ね者のことか?」
「そうだ」
クリムゾンは頷くと、南に一枚の写真を渡した。
「これはその片割れが監視カメラに移っていた写真だ。コイツは名前をコロコロ変える面倒なヤツでな…まぁ顔までは流石に変えないだろうが」
「ほう、覚えておく」
「とりあえずそれらしき人物を見かけたら俺に連絡を入れてくれ。どう対処するかはその時に決める」
「もう一人のほうはいいのか?」
「そっちは名前も居場所も把握しているから後回しだ。近いうちに俺かDACBが脅しに行くだろう。お前は逃亡中のコイツを優先的に探してくれ」
「分かった、いい報せを持ってくるぜ」
「楽しみに待っているぞ」
南はそう言うとホワイト・ピースを飛び出していった。
「さて…貴様の処刑は如何にするかじっくり考えてやらんとな……フハハハハハ…」
クリムゾンは静かに不気味な笑い声を上げた。
「…おい、言いだしっぺのヤツはまだ来ねェのかよ」
「貴様、社長に向かってその態度は何だ。口を慎め」
「あァん?同盟を組んでるからって図に乗ってンじゃねェぞ?」
「貴様が望むのなら今この場で斬り捨ててやってもいい」
ティアがセリカを黙らせようとするが、喧嘩っ早いセリカはすぐさま反発した。
「その辺にしておけ。いらん火種を作るな」
その場を何故かコルテックスが収めようとする。
「チッ」
「……」
セリカは舌打ちしティアも睨みつけた後黙った。
「そうだよー、喧嘩しちゃダメだよ!ココはあたしのお母さんみたいな存在なんだから!」
「は…ッ!?」
コルテックスはフォウヘンの発言に驚愕した。それに釣られて周りのコルテックス一味も話に入ってくる。
「え…ココさんってお子さんがいらっしゃったんですか…!?」
「にょほ~~~!!!これは大スクープだにょ~~!!!××年目の真実だにょほほほ~~!!!!」
「それにしては全く似ていないと思いますが……」
「ほえぇ~初耳でんなぁ!で、お相手はどちらさんです?」
ブリオ、リパー・ルー、クレイド、リラ・ルーが騒ぎ立てる。
「違うって!!フォウヘンちゃんはオイラのカノジョだよ!」
「それも違うだろ」
クラッシュの発言をクランチは即座に否定する。
「なんだ、お前もやっとタウナから卒業できたみたいだなぁ…?」
「ちょ、なんでそこでタウナの名前が出てくるんだよ!!」
「お前が未練タラタラなのが悪いんだろう、明らかじゃねぇか」
「だからフォウヘンちゃんはクラッシュのカノジョじゃねぇって」
ピンストライプとのいがみ合いにクランチが再びツッコむ。
「えぇい喧しいわ!この娘はワシが面倒を見ておく!!ねぇ~ワシのフォウヘンちゃ~ん」
コルテックスは完全にメロメロになっていた。
「それは絶対にないから安心しろ!!」
コルテックス以外のほぼ全員が口を揃えてツッコんだ。
「コルテックスはガールのトークになるとすぅぐこうなるからねぇ……しかしこのガールがプリティーなのもまたトゥルー…」
「お主もかエヌ・トロピー…」
フォウヘンに興味を持ったトロピーに対しても、エヌ・ジンは呆れていた。
「まぁまぁ、基地を作り終わったら本当のことを教えてあげるから!」
フォウヘンのその言葉を聞いて、コルテックスが人一倍やる気を出す。
「よぉしお前ら!全力で基地を作るぞ!!」
「さっきどういう納得の仕方だとか言ってたのは誰だったかな~?」
「…お、渦中のヤツが戻ってきたぞ」
「ホントだ」
フレイはハンバーガー、ユナはハーゲンダッツを頬張りながら戻ってきたココを指差した。
「お待たせ~…って何でこんな盛り上がってるの?」
「細かいことはあ・と・で!早く行こ!」
フォウヘンはココの手を取って駆け出そうとした。
「そ、そうね。じゃあ皆!案内するからうちに来て!」
「ふわぁぁ~~…オイラ眠くなってきたよ…」
「健康の為にはもうそろそろ寝なきゃいけねぇが…今は仕方ないな」
クラッシュとクランチは歩きながらそう言った。
「フン、だらしない…まだ9時を過ぎたばかりではないか。ワシらはいっつも夜遅くまで作戦会議をしているからこれぐらい慣れたものだぞ」
「そうだね。ユーがいっつもアイディアをシンキングせずにモタついているから時間が延びるのさ」
「なんだと!?大体貴様は開始時間ギリギリまで来ないではないか!一時間は早く来て全員を待つワシの身にもなってみろ!!」
「時間にさえ間に合えばノープロブレムだろう?ユーこそそんなにアーリーカミングして何のミーニングがあるのかね?」
コルテックスとトロピーは毎度の通りいがみ合っている。
「ちょっと!ケンカしてる場合じゃないでしょ!」
「…あれ、あのトラックは何ですか?」
舞姫がクラッシュの家の近くに停車しているトラックを指差した。
「あぁ、アレについては今から話すよ」
ココは舞姫にそう説明した。
「着いたわ。ここが私たちの家と、隣にあるのがワープマシーン基地よ」
ココが手を大きく広げながら紹介する。
「じゃあ皆よく聞いて!基地の建設を迅速に行うために、早速役割分担を決めたいと思うわ」
他のメンバーたちはココに注目した。
「まず、掃除係。この基地の元からある最低限の設備を残しつつ不要なものを片づけて整頓していくの。設備の仕分けは私が指示するからそれに沿ってやって欲しいわ。ここにはテキパキ動ける人がいいかもね」
「わかった」
他のメンバーは頷いた。
「次に運搬係。要するに力仕事ね…ここのトラックの中にある機械を基地の中に運ぶ。そして組み立ててもらって、この基地の中に順に設置してね。組み立ては意外と簡単だから心配しないでいいわよ」
「その機械はどっから持ってきたんだ?」
コングが訊く。
「私の会社よ。さっき電話して届けてもらったの」
その発言に対してモーは疑問を持った。
「え?映画を見ていたんじゃなかったんだな?」
「当たり前でしょ!いや映画を見たのは事実だけど、機械の準備をする為に戻るついでに、流石に皆疲れてそうだったから多めに時間を取って少し休ませてあげようと思ったの。私も疲れてたしね」
「そうだったのか。なんか、悪いな」
ポイズンが後ろめたそうに謝る。
「いえ、別にいいですよ…で、最後に機器係ね。設置した機械を起動して色々な設定をするんだけど…ここは正直エヌ・トロピーに任せた方がいいかもしれないわ」
「ワタクシに?」
「タイムマシーンの知識に関してはあなたの方が断然詳しいだろうし」
「まぁ確かにねぇ」
「実はこの機械はタイムマシーンの足場なんだけど……パワーストーンが存在する地点から半径何百キロのところにワープする、みたいなことって出来ない?」
「ワタクシのテクニックならできると思うが…プロブレムがあるとすれば、そもそもパワーストーンがこのワールドにまだ存在するかどうか…」
「でも、あの人たちの野望を止めるには、やっぱり今まで通りパワーストーンを集めなきゃいけないと思うの…他に良さそうな案もないし…」
ココとトロピーの話し合いに他のメンバーも加わってくる。
「今までオイラは世界中を冒険してパワーストーンを集めてきたけど、あと探したことがないところってどこかな…」
「また過去に戻って集めっか?」
「うむ、もはやその術しかあるまい…この時代に現存するパワーストーンはごくわずかだろう…」
クラッシュ、ディンゴ、エヌ・ジンが意見を言った。
「すみません、水を差すようで申し訳ないのですが、パワーストーンとはどういうものなのですか?」
「あ、それあたしも聞きたかった!教えて!」
「私も聞きたいわ…」
クレイド、フォウヘン、シエラが訊く。
「パワーストーンとはな、集めた者の願いを叶える力を持つピンク色の細長い宝石のことだ。集めれば集めるほどより強力な願いも叶うのだ」
「それを集めて彼の野望にピリオドを打つのが、今回のワタクシたちの目的というわけだね」
コルテックスとトロピーが3人に説明した。
「お願いエヌ・トロピー!あなたしかこの仕事は出来ないのよ!」
「全く、ユーもパーソン使いが荒いねぇ…まぁベストは尽くしてみるよ。だがワタクシだけでは体力のリミットがあるから、サイエンティストの諸君はヘルピングして欲しい」
ココの懇願にトロピーは渋々役割を引き受けた。
「本当にありがとう!じゃあこのメモ用紙に自分の名前を書いてね」
ココは持っていたメモ用紙をテーブルに置いた。
掃除係:クラッシュ、ジョー、ティア、ポイズン、フォウヘン、ユナ、フレイ、舞姫、クレイド
運搬係:クランチ、ニーナ、タイニー、ディンゴ、リラ・ルー、コング、ピンストライプ、モー、セリカ
機器係:ココ、コルテックス、エヌ・ジン、トロピー、トランス、ブリオ、リパー・ルー、シエラ
「これでOKね!じゃあ作業開始!!」
ココが開始宣言をするとともに、大規模な作業が始まった。それぞれが皆協力し合えば、どんなことも出来る。それに気付いた皆の団結力は、少し深まった。
日付が変わって午前2時。ココが予想していたよりも早く作業が終わった。
「はぁ……やっとフィニッシュしたね~…。そうそう、勝手ながらこの基地に、我々のキャッスルへと繋がるワープ床をセットさせてもらったよ…」
「そう、そのほうがすぐここに来れるもんね…分かったわ…」
「それでは皆さん、グッナ~イ……ふわあぁ~」
トロピーはそう言うとあくびをしながらワープ床に乗って帰って行った。他のコルテックス軍もそれを使って帰って行った。ココ達も口を押えながら家に戻った。
「私はまだやることがあるんだ…お兄ちゃん達は先に寝てていいよ…」
「まだやることがあるのか…?起きてからのほうがいいんじゃないのか…」
「大丈夫…。それに、どうしても今じゃないといけないの…」
クランチが心配するが、ココは大丈夫と言い張った。
「ココ、最近寝不足気味じゃろう。あまり無理はしないほうがいいぞよ」
「ありがとうアクアク…」
「社長、本日は本当にお疲れ様でした」
「ティア、今日はもう遅いし、うちに泊まっていきなよ…」
ココの発言にティアはかなり驚いた。
「し、しかしそれでは社長はどちらで…?」
「私は大丈夫だって…ベッド使っていいから…」
「じゃあ私と一緒に寝ようね…」
フォウヘンはあくびをしながらティアにそう言った。
「い、いえ私も大丈夫です。フォウヘンさんがベッドを使って下さい。私は社長のお傍にいますので」
「…悪い、俺も今日ここに泊まらせてもらっていいか?その代わり床で寝るからよ」
ポイズンがココに訊く。
「構いませんよ…すみません床でなんて…」
「別にいい、気にしないでくれ。それより、体に気を付けろよ。おやすみ」
「はい、おやすみなさい…」
ポイズンはそう言うと部屋の壁に寄りかかり、あぐらを掻いて目を瞑った。
「ごめんなココ、お前にばっか無理させちゃって…じゃあ、オイラ達は先に寝るよ。おやすみ…」
「うん、おやすみ…」
ココはそう言うと机に向かった。ティアが近くでココを見守る。クラッシュ達はそれを見届けると、寝室に向かった。
「………」
ココがしばらく作業をしていると、かすかに物音がした。
「…?」
「……」
ティアは刀に手をかけようとしたが、姿を確認するとすぐに手を降ろした。
「わぉ~ん……」
「んにゃ~……」
「あら、あなた達……うるさくて起きちゃったのかな…」
ポーラとプーラがココとティアの元にやってきた。
「よしよし、いい子ね…」
ココは2匹を膝の上に乗せると、頭を撫でた。2匹も既に眠かったのか、すぐに膝の上で寝息を立て始めた。
「………」
作業の手を止めて何か考え事をしていたが、睡魔に勝てなかったらしく気が付いたらココも眠っていた。
「お疲れ様でした…。おやすみなさいませ、社長…」
ティアは近くにあった毛布をココの背中にかけた。そして自分も立ったまま壁に背を預け、ココの背中を見守るように眠りについた。
「ぐごおおおおぉぉぉぉ……ぐがああああぁぁぁぁ……」
これはクランチの大きないびきだ。普段彼は掻かないのだが、就寝時間の遅さと疲労のためか珍しくいびきを掻いていた。
「zzz……」
クラッシュは隣のいびきがうるさく、あまり眠れていなかった。しかしここで起きるともう眠れなくなるだろうと思い、目を瞑っていた。
「んん……zzz……」
その様子を見守っている者がいた。
「……」
しかし、その者に足はなかった。
「んん…クランチうるさいなぁ…」
とうとう我慢できずクラッシュは目を開けた。そしてその者と目が合った。
「……えぇっ!?」
クラッシュは大声を上げて飛び起きた。
「……」
「だ…誰…!?」
「どうしたクラッシュ……まだ2時半じゃないか…」
クランチは目覚まし時計を確認しながら言った。クラッシュの声で起きてしまったようだ。
「ク、クランチ!そこに!!幽霊が…!!」
クラッシュが壁を指差す。
「あ…?何もいないじゃないか…」
「そこにいるって!ほら!!」
「どこにもいねぇだろ……全く、もう起こすなよ…」
クランチは微妙に機嫌を損ねるとすぐに寝てしまった。
「ちょ、クランチ…!」
「…そう、俺の名はバール・デイド…」
「!?」
そう名乗ると、そのまま壁の向こうに消えてしまった。
「な、なんだったんだ今の……」
クラッシュは一連の出来事に相当驚いた。恐怖や混乱に頭を支配され、朝まで眠れなかった。
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