番外編２：哀れな歌姫

2013/07/24（水）21：42：54（11年前） 更新

オーストラリアの自然豊かな島。ここで私はアネットお姉ちゃんと暮らしていた。暮らしには何一つ不自由がなかったけど、ひとつだけ、私が昔から望み続けたことがある。

それは、たくさんの人に私の歌を聴いてもらうこと。

私は、歌を歌う事が昔から大好きだった。誰もいない泉、家のなか、ジャングルの中…私はいろんなところで歌を歌った。歌を聴いた人達も、アネットお姉ちゃんも、私の歌をすごく褒めてくれた。はっきり言って、なんでもできるアネットお姉ちゃんより、唯一秀でているところだと思ってる。

ある日、お姉ちゃんが小さなチラシのようなものを手に、私に言った。
「シェリー、あなた、アイドルにならない？そうすればたくさんの人に歌を聴いてもらえるわ。」そのチラシのようなものは、アイドル事務所のオーディションのチラシだった。私にとって、これ以上ないくらいのチャンスだった。

数日後、アイドルオーディションの結果が届いた。
結果は合格だった。私は、アイドルになれるんだ。すごく嬉しかった。

でも、アイドルとしてデビューするための準備があるからもう数日時間が必要と言われたので、もうちょっとの間家にいられるようになった。
「良かったわね、シェリー。」アネットお姉ちゃんが散歩している時に言ってくれた。でも、その目は少し寂しそうだった。

「ねえ、アイドルになった後は…」お姉ちゃんが言ったその時だった。
知らない、この島の人じゃない科学者らしき人たちが、私とお姉ちゃんを捕まえた。「ははははは！捕まえたぞ！」ヒゲの生えた科学者が言った。「やめて、離して！」お姉ちゃんは叫び、ヒゲの生えた科学者の腕を振りほどき、私を捕まえている別の科学者に掴みかかった。
と、その時、ヒゲの生えた科学者がお姉ちゃんに針を刺した。お姉ちゃんは糸がきれたマリオネットのように地面に倒れた。「お姉ちゃん！お姉ちゃん！」私は叫んだ。「お前も早く来い！」そう言われて私はお姉ちゃんと共に連れて行かれた。

気がつくと私は、実験台に縛り付けられていた。頭上に大きな機械が見え、横にはヒゲの生えた科学者と、なぜかお姉ちゃんの姿があった。お姉ちゃんは、ヒゲの生えた科学者のことを、コルテックス様、と呼んでいた。

どうしてそいつをそんな風に呼ぶの？どうして私を助けてくれないの？どうしてそんな虚ろな目をしているの？どうしてそいつの言うことを聞くの？
……いつもみたいに助けて　いつもみたいに悪い人を、そいつをやっつけて　いつもの綺麗な赤い目でいて　…私を助けて。

いろんな思いが頭の中を巡った後、機械のスイッチが入った。
そして、目の前で爆発が起きた。意識が、ふっとなくなった。

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