番外編３：精霊の罪

2013/11/07（木）21：28：42（11年前） 更新

「では、申し訳ないけれど、この子を…アリスをよろしくお願いします、アクアクさん。」
「…こんな小さな子供を、もう引き離すなんて可哀想じゃのう…。」
「仕方ないんです…。ウカウカが、「国を守る秘術」を求めて、ここに来るんですから。私たちはいいとして、この子には…辛い思いをさせたくないんです。ですから…。」

そんな会話が、頭の奥に聞こえた。

「アリス、おぬしはワシの娘ではない。おぬしは、この国の「秘術の守り手」である者と、その妻の娘なのじゃ。ウカウカがその秘術を知ろうとしたから、おぬしに危害が加わらぬよう、おぬしの両親がワシにおぬしを託したのじゃよ。」そんなことを、５歳くらいの時にアクアクさんから聞いた。

「秘術の守り手」というのは、国を守るための手段であり、平和を望むこの国が危機に陥った時に使うという術、「正義ノ笛」というものを知る特別な精霊のことらしい。でも、普段は絶対に使ってはいけないもので、簡単に戦などでつかうことは許されないらしい。

はっきり言うと、そんなことどうでも良かった。どうせ使うときなんて訪れないまま私は生涯を終えられるんだから。（まあ、結局覚えてはおいたけど）私にとって大切なのは、アクアクさんと一緒にいる事。大好きなアクアクさんと一緒にいられればそれでいい。そう思っていた。

実際、アクアクさんは本当の娘ではない私に、とても優しくしてくれる。私のことを可愛がってくれるし、いろんなことを教えてくれる。教えてくれた言葉の中に、「正義」という言葉があった。私はこの言葉が大好きだった。何事も正義感を持って公平に考える、これが何よりも大事だとも教わった。だから私は、何事も正義を持って考えようと努めた。正義のために、平和のために私は、パワーストーン、ダイヤをつくった。
悪い何かが国を滅ぼそうとしたとき、国を守れるように。

ある日、王様から招待状が来た。「ウカウカがこの国の城下町を攻めて来たので、国を守るために、「正義ノ笛」を使え」という内容だった。かなり悩んだが、アリスは「正義ノ笛」を使う決心をした。

これで、国は守られると思っていた。アリスは、そう信じきっていた。

だが、「正義ノ笛」を吹いたあとに私が見たのは、笛の音に狂わされた人々が、互いを殺し合っていた光景だった。

…これが、正義なの？…正義によってなら、みんなが狂ってもいいの？

…こんなものが正義なの？本当に正義ってこんなものなの？こんなものが正しいの？正義で人が狂うの？正義って人を殺すの？
ほんとうにこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものがこんなものが

そう思ったら一瞬、アリスの視界が真っ暗になり、次の瞬間、アリスは狂って人を殺し、建物や宝を傷つけ、破壊の限りを尽くした。
これを見たアクアクは、魔神と共に、アリスを特殊な鎖（力を吸い取る鎖）でぐるぐる巻きにして、地下迷宮に閉じ込めた。
閉じ込めて封印する寸前、アリスは無表情で涙を流して、小さな声で言った。

「こんなものが正義なら、正義なんて必要ない。」

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