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精霊の声
2013/10/11(金)21:57:12(11年前) 更新
ここからが本編です
何だろう?今は夜中だ。なのに、何故精霊の寝ている部屋の中で小さな話し声が聞こえる?誰も起きているはずがない。なのに何故、精霊の寝ている部屋の中で、かすかな笑い声が聞こえる?
そっと、俺は精霊たちが眠っているはずの部屋に入った。
今日は、俺が精霊の部屋の見張りをしなくてはいけない日だった。眠かったから、俺は精霊の部屋の前でうとうとしていた。考えてみれば、こんな夜中に弱った精霊が何かをするはずがない。コルテックス、確か
「フェアリーヴォルテックスは『精霊強制離脱・洗脳マシーン』だ」
って言ってたはずだろ?なんで見張りなんて付けんだよ。矛盾しまくりじゃねえか…。せめて見張りを付けるにしても、研究員とか作業員とかにしろよ。あいつら確かロボットだから眠いとかそういうの無いんだろ?だったらそいつらに見張りをさせれば良いのに…こっちは動物なんだから、こんな時間は眠いんだ。今度コルテックスの奴に意見してみるかなぁ…。それにしても……眠い…。もう限界だ…。どうせ精霊は何もしてこないだろう…。
いつの間にか、俺の意識は途切れていた。
小さな話し声が精霊の部屋の中から聞こえた、気がした。その声によって俺の眠気は吹っ飛んでいった。まさか、誰か起きて話しているのか?でも、一体何を?まさか、逃げ出す策を練っているのか?俺は、精霊の部屋の扉に耳を押し付けて、耳に全神経を集中させた。
…笑い声?小さな笑い声も、話し声とともに聞こえる。さらに聞き続けていると、ニトロの声と思われる話し声、笑い声が聞こえる。何故彼女の声が聞こえるのか?詳しいことはわからないが、逃げ出す策ではないらしい。そうなると、一体何を話しているんだ?ここからじゃイマイチよく聞こえない。…部屋の中に入って聞いてみようか?大丈夫だろうか?いろいろな事が頭の中を駆け巡る。そして、ひとつの結論が俺の頭の中で下った。
『部屋に入って、何を話しているか聞いてみよう。』
俺はそっと、精霊の眠っているはずの部屋に入った。扉を開けると、小さく、キィ…と音がした。辺りが静かなせいなのか、扉の音が響く。誰か起きてしまったりしなかっただろうか?…大丈夫なようだ。いつの間にか、笑い声や話し声は聞こえなくなっていた。ふと俺は腕時計で時間を確認する。午前4時。夜中…というより朝だ。どうりで話し声がしないはずだ。
そっと、部屋に足を踏み入れる。できる限り足音をたてないように注意しながら歩いていく。もちろん、精霊は全員眠っていた。俺は、ニトロの姿を探していた。あの声はきっとニトロの声だと思ったからだ。ようやく、ニトロを見つけた。もちろん、ニトロも眠っていた。ニトロは、青い髪の男に寄り添って眠っていた。光線を浴びせられて苦しんでいるときとは別人のような、まるで楽しい夢でも見ているような、幸せそうな顔で眠っていた。…なんとなく、切なくなった。
俺は、そっと精霊の寝ている部屋の扉を閉めた。音をたてないようにゆっくりと。いつも苦しげにしている彼女が、こんなにも幸せそうな顔で眠っているのだ。その眠りを邪魔したくなかった。
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