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クラッシュ・バンディクー 死亡短編集
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その5
2017/01/18(水)21:17:00(7年前) 更新
~本編~
「そんでさ、壺からようやく出してもらえたと思ったらさぁ、いきなり緑の髪した可愛こちゃんが、なんか手からニトロ箱出してきて、それをぶつけてきたんだよぉ~!んで、その後青い髪した男の人連れてきてさ、オイラの残機を取ってったかと思ったら、またさっきまでのコトを10回くらい繰り返してきて…」
「クラッシュ、怖かったし痛かったのはわかったから、もうその話はやめんか。今ので10回目じゃぞ。あとお主、喋り方が女の子っぽくなっとるぞ。気色悪いからやめんか」
このやりとりももう5回目くらい。でも、怖かったものは怖かったんだもん。女の子みたいな口調になるのも仕方ないと思う。あの時の可愛こちゃんと男の人の嫌なニヤけ顔、ニトロ箱ぶつけられる恐怖と激痛。あと990回くらいはずっとこのやりとりを出来る自信が今オイラにはある。
「だって怖かったんだも~ん!アクアク爺さんはニトロ箱での爆発をくらったコトがないからそんなコト言えるんだよ!」
「タイムアタックの時、お主の前方不注意が原因で何度もくらっとるわい」間髪いれずにアクアク爺さんが返す。確かに、よそ見しながら走って、ニトロ箱に突っ込み、やり直し…というのを、最近オイラはかなりの頻度で、しかも全ステージにおいてやってる。アクアク爺さんのいうコトは間違いなく正論だ。
「うっ…」
さっきのアクアク爺さんの正論に言い返すことが出来ず、半泣きで夜のアラビアの街を歩いていると、おばさんが心配そうに、壁の窓から顔を出して声をかけてくれた。
「ちょっとアンタ、男の子でしょ?何があったのかは知らないけど、もう泣くのはおやめ。ほら、元気だしな!」や、優しい…♡このおばさん超優しい…!
「おばさん、ありがt」
そう言いかけた時、隣の窓からおばさんが勢いよく火炎瓶をブン投げてきた。破片ちょっとこっち飛んできたし、近くで火炎ビンによる炎があがっていた。…危ないんですけど。火炎瓶投げてきたおばさんが大きな声で、優しいおばさんに言う。
「オラァァァ!ちょっとあんた、サボってんじゃないよ!目の前にターゲットがいるんだから、仕事仕事!ただでさえ最近旦那の稼ぎが悪いんだから、このパート頑張んないと生活できないよ!そうだろ!?」
「そ、そうだね。そーゆーコトだから、アンタも死なない程度に避けなさいよ!」
そう言って優しいおばさんも火炎瓶を勢いよくブン投げてきた。それが割れ、火種が大きくなって炎となり、オイラにクリティカルヒットした。そのせいでアクアク爺さんがまた綺麗に砕け散った。羽がふわふわ舞う様は何度見ても綺麗だ。でも、そんなコトより…
「大人って酷いよぅ…あの緑の髪の可愛こちゃんと青い髪の男の人もそうだけど、生活のためならこんなに可愛くていたいけなバンディクーも平気で殺せるんだ…」
「自分で可愛いと言うか」とか、そういう突っ込みを期待したが、そんな声は聞こえてくるはずがなかった。
自分の発言に突っ込まれず、一人寂しく歩いていると、なんか壺をたくさん持った人が目の前にいた。あの壺は見覚えがある。そうだ、あの時オイラを吸い込んだあの壺だ。そうとわかると、背筋がぞわっとした。その人は、壺が重いのか前に数歩、後ろに数歩とよろよろしながら歩いていた。しかも、壺を縦に3つも積んで運んでるもんだから、前は見えてなさそうだ。なんだか可哀想に思えてきて、手伝ってあげることにした。
「あの~、もし良かったら、壺運ぶの手伝いましょうk」
そう言って近づいた時、その人は大きくバランスを崩し、積み上げた壺をひっくり返してしまった。しかもその一つは、オイラの方へと飛んできた。飛んできた壺からは、ウィーン…と機械音が聞こえた。運の悪いコトに、スイッチが入ってしまっているようだ。オイラはなすすべなく、あの時のように壺に吸い込まれてしまった。
「いやぁ、助かります~。この掃除機すんごく重いもんですから…って、あれ?…なんだ、いたずらかぁ…おっと!早く運ばなきゃ!コレ運んだら今日のバイト終わりなんだから!」
『テレビショッピング、アラビアンナイト!今回ご紹介するのはこちら!最近話題沸騰中の掃除機、「TSUBO1996」です!こちらですね、丈夫な素材でできているので、叩こうが落とそうが蹴っ飛ばそうがへっちゃら!さらに吸引力が強くてですね、ご覧ください!糸くずにゴミ、ホコリ、さらには絨毯まで吸えちゃうんです!中のモノを出す時にはこの、底にあるボタンを押すだけなので簡単!さらに、吸ったものは特殊空間に収納されるので、振っても落ちたりこぼれたりしないんです!今日はですね、こちら特別価格で…』
「最近テレビショッピングでよく見かけるけど、「TSUBO1996」って、そんなに良い掃除機なのかしら?」テレビの画面を見ながら、ぼんやりとココが呟く。
「最近特に面白いコトも無いし、ヒマだから…試しに買っちゃおうかしら♪」そう言って受話器に手を伸ばした2週間後、「TSUBO1996」が家にやってきた。
「わぁ、コレが噂の「TSUBO1996」かぁ…って、重ッ!?何これ、何か入ってるの?」
そう言ってココは底にあるボタンを押した。押すと中から、何か出てきた。
ごろんっ、どさっ
中から出てきたのは、見覚えのある茶色いスニーカーに手袋、青いズボンから、ピンクの生地にハート柄のプリントされたトランクスがちらりと見える。そして…オレンジ色の毛皮が…
みたいな(笑)あれ、ホラー要素が含まれてますかね、コレって?とにかく、次回も見ていってくださいね!
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