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誓約 ~シエラ・ミルヒーユ・ペルシャ~
2012/04/08(日)17:54:31(12年前) 更新
私はシエラ・ミルヒーユ・ペルシャと言う。そして双子の姉にアミュータ・ミルヒーユ・ペルシャと言う科学者がいる
そんな私も薬剤の分野の科学者であり、ニトラス・ブリオの研究所に雇われて生活をしている
ブリオは私の母校の先輩だった、憧れていた時もあったっけ…
「シエラさん、ァァ早くタッ棚にあるァァあの薬剤を取ってきてくださいッ…ムフッフッ」
ブリオは急かしているか笑っているのか分からない口調で私に声をかける
「はっ、はいっ!ただいまお持ちしますっ!」
私もそれに答えて指示された薬剤を取りに行く
私とアミュータは、ワルワルスクールを卒業するまで、ずっと一緒に暮らしていた
30年以上前、私たちは幼い頃に両親を亡くした。その時、私は善悪も分からない初心な子供だった
見守ってくれる大人がいなくなった私たちは、母親の姉の家に引き取られた
しかし其処は、安らぎのある場所ではなかった
私たちの食料は飼われている犬のドッグフード、それも1日1食だけ。水さえも十分に与えてくれなかった
妹である私は叔父の酒や煙草を買ってくる。姉のアミュータは叔母の家事を全て任されていた
あの夫婦は仲間を集めては麻雀ばかりしていた
私が買ってきた酒が不味かったらあの男は怒り、グラスの酒を私にかける
私が泣いたらあの女は「泣く子は悪い子だ」と顔を叩かれる。それは姉であるアミュータにも、被害が及ぶ
「妹が泣き虫なのは姉である御前がちゃんとしないからだ」叩かれる音は私の時よりも高く、大きい音
それを見て泣く私は叩かれ、アミュータも叩かれる。日中はそんなことの繰り返しだ
だから太陽は嫌いだ。太陽が空にあれば、私やアミュータが叩かれ、悲しい思いをする
唯一安心できる時間はあの夫婦が眠る時間
私は部屋の隅でアミュータとお互いに抱擁しながら、ひっそりと涙を流す
アミュータは泣かなかった、叩かれる時もそうだが、二人で居るときも
私の涙を拭っては、「いつか終わりは来るのですよ」と私を諭しながら…
夫婦が眠っている時間は私のかけがえの無い時間
アミュータが私を慰めてくれる、彼女も辛い筈なのに…
ある日、アミュータがやぶから棒に私に話しかけてきた
「シエラ!私たちにも救いの手が差し伸べられたのですっ!」
アミュータは持っていた紙を私に差し出した。…ワルワルスクールという学校のパンフレットだ
「悪を養成する学校…?お姉ちゃん、悪の道に進むのですか?」素朴な質問をするとアミュータはチッチと指を振った
「これを見るのです」アミュータが指差したのは奨学生の欄だった
『入学試験の点数の上位10名は無償で学校の入学を許可する』
「この学校って全寮制なのです、そこで生活すればあの叔母達の目から離れることが出来るのですよ!」
「本当ですか?やったぁ!」私は大いに喜んだ。阿鼻叫喚な私たちの生活から脱する方法は発見された
私たちはその日から、夜は勉強することが日課になった
そんな私たちの行いを、叔父叔母は目敏く見つけてドメスティックバイオレンスは激しくなった
掌で叩かれた物が、拳になっていた。ドッグフードも水も少なくなっていった
でも私たちは勉強することを止めなかった
アミュータに慰めてもらう時間も惜しんで、涙を流さず勉強した
そして入試本番、私たちは叔父叔母が起きる前に家を出た
もう家には二度と戻らない、戻ってきたら何をされてもおかしくない
私たちは急いで遠くにあるワルワルスクールを目指した
ワルワルスクールの入試会場は緊迫とした雰囲気があった
そこに居る受験者は服も身なりも整っている。私たちは叔父叔母に作られたあざでいっぱいだった
「では…はじめっ」
薄毛の教師が開始の合図をすると、一斉に沈黙して鉛筆の音が響く
私も今後の人生の為に全力で取り掛かった
試験が終わると、アミュータと落ち合い、近くの空き地で身を潜めていた
合格発表の時になるまでに、あの男たちに見つからないようにする為に
もし見つかっていたら暴力なんて生易しいものでは済まないだろう
もっと恐ろしい…俗に呼ぶなら地獄だろう
誰の目に見つかるのも恐れて、二人で抱擁し合い、身を隠した
合格発表は誰よりも早く向かった
私は胸が高鳴りと落ちた時の恐怖を同時に感じていた
ワルワルスクールの合格発表より、2時間も早く辿り着いた
足が地に着かない私をアミュータはただ黙って見つめている
合格発表の時刻になると後ろにも生徒が集まり、騒がしくなる
そして、合格発表の時は訪れた
試験会場にもいた、薄毛の教師が小さな封筒を渡す
アミュータがそれを受け取り、中身を取り出す
アミュータ・ミルヒーユ・ペルシャ 合格
アミュータの紙には手書きで『第2位』とも書き足されていた
アミュータは何百人と言う受験生の中でベスト3に入った
私もそれに続けるか、続いて欲しい、神様に祈りを捧げた
シエラ・ミルヒーユ・ペルシャ 合格
合格した…しかしそれは問題ではない
問題は奨学生になれたかどうか…
手書きの順位は何処にも書かれていない
無機質な文字が羅列しているだけだ
私は第何位かも分からない
教師に直訴した
「貴方は合格しましたが、奨学生ではありません」
その教師に聞くと、私の得点は第11位だったらしい
私は壊れた、叫んだ
涙腺は既に枯渇していた
涙にもならない悔しさ、悲しさ、無慈悲な世界
お金のない私には不合格も同然だった
しかし、アミュータが一生懸命校長先生と対談し、1年だけ無料で入学を許可した
アミュータの体は体罰を受けてボロボロになっていた
そんなことまでしてアミュータは私を護ってくれた
私は「一年だけの亡命です」と自嘲した
しかし、アミュータは黙りこくっていた
真剣な表情で、何か考えていたらしい
そしてワルワルスクールに入学した
合格した生徒は此処で羽目を外すが、アミュータは勉強を続けた
寮内でアミュータを見に行っても、勉強している姿しか見なくなった
1ヶ月2ヶ月と経っていくにつれ、アミュータは飛び級していった
3月を迎える頃には、10歳以上離れている上級生と共に卒業した
「お姉ちゃん、何で勉強を続けたのですか…?」
卒業したアミュータに私は問いかけた
「私は…寂しかったのです、お姉ちゃんが私のことも目に留めず暮らしていたことが…
何時も自分の机の前に座って、ひたすら問題を解いて…
一年で卒業しちゃったら、もうこの学校にいられないのですよ…?
またあの養父母の家に戻ってしまうのです、そんなの嫌です…」
私は涙を流さずに入られなかった
既に枯渇していたと思った涙が溢れていく
何処にこんな水分があったのだろう、溢れ出す涙が頬を伝っていく
アミュータは私を真剣に見つめて口を開いた
「誓ったのですよ」
そして彼女は言葉を続けた
「シエラ、私は1年前に誓ったのです、シエラを護っていくと誓ったのです。
シエラが傍にいる限り、私は泣かずにいられて、頼もしい存在なのです。
シエラを脅かす存在を私は許さないのです。だから卒業してこの学校に就き
卒業するまでシエラを護っていくのです」
アミュータは私の方に手を置いた
「シエラは…私の心を支えてくれた存在、だから今度は私がシエラを護りたいのです」
アミュータの頬に涙が伝った、アミュータの目には涙が溢れていた
初めて見せてくれた涙
私たちは互いを抱擁し、泣いた
だからそれに答えるように一生懸命に勉強し、ワルワルスクールを卒業した
私もアミュータも、大人びた姿になった
「シエラ、卒業おめでとうなのです」
アミュータが私を見て、笑顔を見せてくれた
アミュータはワルワルスクールの数学教師として、宣言通り私を護ってくれた
私はアミュータの手を握った
「今まで…私を護ってくれて…本当に…有難う…なのです…有難う御座いました…」
アミュータは私の頭を撫でてくれた
「これで…お別れなのです」
アミュータから突然放たれた一言
「…どういうことですか」
私は悟った、『卒業』とは、「ワルワルスクールの卒業」と同時に、「姉からの卒業」を意味していた
「嫌なのですっ!」
私は頑なに拒否をした
「今まで私たちは二人で一つでした…それなのに何で此処で…そんなことを言い出すのですか」
アミュータは言い放った
「…だからですよ、私たちは二人で一つだから、此処で一つずつに分かれなければならないのです
二人で一つで居たら、唐突に分かれたとき、一つの存在としていられなくなるのです」
「でも…でもこんなの…ないですよ
私はお姉ちゃんとずっといたのです…ずっとずっとずっとずっといたいのです…」
突然、アミュータが私を叩いた
初めてアミュータに叩かれたのだ
そして、アミュータが涙を流し、叫んだ
「私の方が嫌なんですよ!!…何で此処で別れなきゃならないんですか!!
理不尽すぎますよ…可笑しいですよ…私の方がシエラと別れたくないのです!!
…ずっといられたらどれ程幸せか、二人で一つで居続けられたらどれだけ幸せか…」
アミュータはその場で泣き崩れた
私は無意識にアミュータを抱擁した
多分これが私たち姉妹の最後の抱擁
アミュータも強く私を抱きしめてくれた
何時でも強く、心の支えになってくれたお姉ちゃんの抱擁もこれが最後
私はこれから自立していかなければならない
だから、私はこの誓いをしました
『強くなります』と…
その後、私はブリオに御願いをして、働かせてもらえるようになった
ブリオの研究に協力して、己の生活を賄っている
ブリオもその働きぶりに関心しているらしく、今では一番信頼されている
お姉ちゃん
お元気ですか
私は今でもあの時の誓いを忘れていません
だから、何時かまた、私を…
私を、もう一度だけ抱きしめてください
それが私のたった一つの最後のおねがいごとです
~完~
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