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親愛なる友達 ~プレッツェ~
2012/04/30(月)20:12:55(12年前) 更新
・・・まだ日は昇っていない。だが、もう時間だ。
彼女はベッドから体を起こし、間接照明をつけて、クローゼットの前に立った。
そして、地味な寝巻きを脱ぎ、クローゼットから白のブラウスと黒のをズボンを取り出して着始めた。
次にその上からチェックの青いエプロンをつけて、最後に黒のリボンを首元につけた。
もう少し、地味なエプロンはないのだろうか。
彼女は心の中でそう思った後、ふと隣のベッドを見た。
彼女の隣のベッドには黒髪で短髪の女性が、そしてその隣のベッドには、茶髪で髪の長い女性がぐっすりと眠っていた。
「・・・ん・・・そんなに食べれないよ・・・」
と、黒髪の女性が寝言を発した。
「・・・私も、もうお腹一杯・・・」
と、茶髪の女性もまた寝言を発した。
「フッ、二人して食事をとる夢を見ているのか」
と、彼女は小さな声で呟いた。
二人が起きなければ、また仕込みは自分の担当だ。だが、ぐっすりと眠っている二人を無理やり叩き起こすなんて事はしなかった。
彼女は寝室を後にして、厨房へと歩いていった。
いつも通りの平和な一日、これを手に入れるまで一体どれだけの時間がかかったのだろうか。彼女はそんなことを想いながら廊下を歩いた。
――――彼女は幼い頃から二人の親友とずっと毎日遊んでいた。
身分、人種、貧富の差・・・全てが違った三人が、毎日公園でいろんな遊びをして楽しんでいた。
大人たちの馬鹿な差別なんて三人には一切関係なかった。
「今日は何するー?」
「何でもいいけどー」
「・・・パン屋さんごっこは?」
「それ、いいねー!じゃあ私が店長ー!」
「じゃあ私は・・・何しようか」
「私はパンを作る役がいいかな」
だが、月日が経つにつれ、各々が自分の道を進む為に、一時は離れることになった。
一人は自分の夢を叶える為に、遠くの学校に進学した。
一人は特に夢もなかったため、親に言われたとおりに名門校へ進学した。
そして、残った彼女は貧しい家庭だったために進学できず、無理やり親に働かされた。
金を稼ぐために、親に様々な職をさせられた。嫌な職であっても、彼女は反論できずに懸命に働いた。
そして、彼女は様々な職を転々とした結果、最も稼げる職にたどり着いた――――
気がつくと、既に彼女は厨房に着いていた。
物思いにふけるのはやめて、仕込みの作業をしよう。彼女はそう思って厨房に入っていった。
だが、厨房に只ならぬ殺気を感じる。彼女は前の職業柄、人の気配を感じることに慣れていた。
彼女はとっさに厨房に置かれていたパン切り包丁を手に持ち、気配のする方向を探した。
しかし、それよりも早く、彼女の後ろに何者かが立った。
彼女はとっさに振り返ろうとしたが、その前に何者かが彼女の首に手を回した。
必死にもがいて振りほどこうとしたが、腕は太く中々外れない。
「遂に見つけた・・・組織を潰された恨み、ここで晴らしてやる!」
と、何者かが言った。声からして中年の男のようだ。
「・・・お前の恨みなど、知ったことか」
彼女はそう言って、包丁を男の腕に突き刺した。
男は一瞬腕の力を緩めてしまい、その隙に彼女は男から離れた。
「貴様・・・!これで終わりだ!」
男はそう言って腕から包丁を抜くと、銃を取り出して彼女に構えた。
この距離からだと、どうあがいても銃に打ち勝つことは出来ないだろう。彼女は無駄な抵抗をせずに、目を瞑った。
結局、元の職業から逃げることなんて出来ない。彼女はそう思った。
――――元々は親に半ば騙される形で、とある殺し屋グループに加入することになってしまった彼女。
だが、そこで徹底的に殺し屋として鍛え上げられ、まだ小学生ほどの年齢だというのに銃を扱える位にまで成長することとなった。
だが、銃以上に彼女は一つの武器を非常に気に入っていた。それは、レイピアと呼ばれる刺突剣だ。
彼女はその武器を手に持ち、リーダーの命令どおりに仕事をこなし、そして大量の金を得ることが出来た。
今まで以上の収入により、家族の借金はどんどん減っていった。だが、それと同時に彼女の中から人間らしさもどんどん減っていった。
元々人と話すことがあまり得意ではなかった彼女だが、この職についてからは更に人間不信に陥り、もはや自分から人と話すことなんて全くしなくなっていた。
それから何年も過ぎ、彼女は大人になり立派な殺し屋として、自分の店を構えるほどになっていた。
毎日のように殺しの依頼が彼女の元に来る。その依頼を淡々とこなし、金を得ていた。
彼女自身、はっきり言って金なんてもう必要なかった。親は元々年老いており、彼女が成人する頃に亡くなってしまっていた。
それに、今まで幾多の数の人を殺してきたため、それに関わる莫大な数の人から彼女は恨まれていた。はっきり言って、いつ誰に殺されてもおかしくない状況だった。
しかし彼女には殺し屋の仕事をやめることの出来ないある理由があった。社会には彼女の居場所が存在しなかったのだ。
まともな教育を一切受けず、殺し屋としてずっと過ごしてきた彼女には普通の社会で生活していくことなんて到底出来なかった。
彼女は毎日嫌々、レイピアで人の体を貫いていた。やりたくない、しかしそれしかできない。
そんなある日、彼女の元に一通の手紙が送られてくる――――
「そーれ、どーん!」
突然そんな声が聞こえ、彼女はとっさに目を開けた。
目の前には、前に倒れこんだ男の姿と、その後ろに一人の女性の姿があった。
「クロワ・・・起きていたのか?」
と、彼女が言った。
「男の人の声が聞こえたから何かなーって思って来てみたんだ。それよりも、これ受け取ってー!」
クロワはそう言って、彼女に向かって鞘に入ったレイピアを投げた。
彼女はそれをキャッチした後、素早くレイピアを鞘から抜いた。
細く美しい刀身の先を男に向けて、彼女はレイピアを構えた。
「・・・わ、悪かった!お前を殺そうとしたことは謝る!」
と、男は倒れたまま叫んだ。
「そんなことを謝るな・・・店を汚したことを、私の親友に謝れ・・・!」
彼女はそう言った後に、男の頭をレイピアで素早く貫いた。
男は痛みに悶え苦しんでいる表情を浮かべた後、力が抜けてその場で死んでしまった。
彼女はレイピアを引っこ抜き、血を払った後に鞘に戻した。
「一体どこから入ってくるんだろうねー。戸締りちゃんとしたはずなんだけどなー」
と、クロワが言った。死体が前にあるにもかかわらず、特に驚いたりする様子はない。
「・・・クロワ、すまない。私のせいでいつもこんなことに・・・」
と、彼女が言った。
クロワがいなければ、恐らく自分の人生は殺し屋のまま終わることになっていたであろう。クロワの、あの手紙のおかげで今の自分がいる。
――――手紙にはこう書かれていた。
『クロワだよー、覚えてるー?住所探すのとっても苦労したんだからー。
実はね、最近パン屋さんを開いたんだー!でねー、今働く人を募集してるんだー!
もしも、働いてもいいよーって言ってくれるんだったら、この住所まで来てね!』
その手紙は名前も聞いたこともないような場所から送られて来ていた。
彼女は今が自分の人生を変えるチャンスだと直感的に思った。かつての親友からの誘いなら、決して悪いほうには転がらないだろう。
手始めに彼女は殺し屋時代に手に入れた様々な物を全て捨てた。依頼者リストに、武器の領収書、更には殺しで稼いだ金も全て捨てた。
しかし、どうしても捨てられないものが一つあった。それは彼女がずっと使ってきたレイピアだった。
彼女にとってこのレイピアは、自分の人生を共に歩んできた相棒のようなものだった。彼女はそれだけは持って行くことにした。
必死に住所を探し、飛行機や船を乗り継ぎ、着いた先には小さな一戸建ての家と、小さな小麦畑があった。
彼女が家に近づくと、近くの小麦畑から巨大な鎌を持った女性が出てきた。
一瞬彼女はレイピアを構えようとしたが、女性の顔を見てすぐにやめた。
「クロワ・・・久しぶりだな」
と、彼女が言った。一体何年ぶりに自分から言葉を発しただろうか。親友であるクロワに対しては、何のためらいもなく話すことが出来た。
「来てくれたんだー!嬉しいー!」
「まぁな・・・それよりも、そんな物騒なものを持ってどうした?」
「これ?小麦を刈るのに便利なんだよー。やっぱり、どうせやるなら本格的なほうがいいと思ってねー。いい小麦とかを育てる為に、自然科学のお勉強したくらいだしさ」
「そういう意図があって態々遠くの学校に進学したのか。それで、今の所着ているのは私だけか?」
「もう、先に一人来てるよー」――――
「仕方ないって、気にしてないよ」
クロワがそう言ったとき、厨房にポニーテールの女性が入ってきた。
女性は手に薙刀を持っており、頭にはねじり鉢巻をつけていた。
「敵、どこ?」
と、女性が言った。それを見たクロワは笑った。
「シュトーレ、もう敵さんはいないよー」
「え、嘘・・・せっかくお稽古の実践が出来ると思ったのに」
と、シュトーレは言った。
「シュトーレは薙刀をやっていたんだったな」
と、彼女が言った。
「お母さんがね、武術ってのを習ったほうがいいって言ってたからさぁ、やってたんだ」
シュトーレはそう言った後に、鉢巻を取った。
彼女のもう一人の親友シュトーレ。此処でシュトーレと再会できた事も、彼女はとても嬉しかった。
――――「シュトーレも、ここで働くことにしたのか」
と、家の中で彼女が言った。やはり親友のシュトーレに対しても普通に話すことが出来た。
「うん、別にやりたいこともなかったから、だったらクロワのところで働こうと思って」
と、シュトーレが言った。
「・・・だが、私もシュトーレもパンなんて作ったことないし、本当に働くことなんて出来るんだろうか」
彼女がそう言った時、厨房からクロワがバスケットに山盛りのクロワッサンを入れてやってきた。
「見て見てー!これ私が全部手作りしたんだよー!」
クロワはそう言って、バスケットをテーブルの上に置いた。
「おいしそう・・・食べていい?」
と、シュトーレが言った。
「うん。二人とも、一杯食べてねー!」
クロワがそう言った後、二人は熱々のクロワッサンを食べ始めた。
「・・・おいしい」
と、彼女が言った。
「ホント!?良かったー!」
「でも、私達にこんなおいしいパンなんて作れるの?」
と、シュトーレが言った。
「パン作りなんて簡単だってー!チャッチャッチャっと手順覚えれば大丈夫!それよりもね、一つ悩んでることがあるんだー」
と、クロワが言った。
「クロワが悩むことなんてあるのか。珍しい」
と、彼女が言った。
「実はねー、お店の名前、まだ決めてないんだー。どんな名前がいいと思う?」
「うーん、何がいいだろう・・・」
と、シュトーレが言った。
「・・・Dear Friends、何てどうだ?」
と、彼女が言った。
「Dear Friendsかぁ・・・いいねー!シュトーレはどう思う?」
と、クロワが言った。
「私もそれがいいかなぁ」
「それじゃあ、お店の名前はDear Friendsで決まりだねー!」――――
「厨房が汚れてしまったな。私は後処理をするから、二人は仕込みをやっておいてくれ」
彼女はそう言った後に、死体に近づいた。
「何だか、すっかりパン屋さんらしくなったねー」
と、クロワが言った。
「毎朝仕込みをしていれば、嫌でも身に付く」
「いつも、起きようとは思ってるんだけど、いざ朝になったら起きられなくて・・・」
と、シュトーレが言った。
「別に仕込みは私がやればいい。その分二人には接客なんかをしてもらったほうが有難い」
「裏でせっせとパンを作るなんて、店長さんみたいー」
と、クロワが言った。
「おいおい、店長はクロワじゃないか。私に店長なんて似合わない」
彼女はそう言った後、死体を持ち、引き摺りながら厨房を出て行った。
「・・・今日も、変な人が来ちゃったね」
と、シュトーレが言った。
「そうだねー。これで何人目だろう?」
と、クロワが言った。
「どうにかして、変な人が来ないように出来ないかな・・・」
「それは、多分無理かなー。でも、別に今のままでいいじゃん」
「え、何で?」
「私はシュトーレやプレッツェがいるだけで、とっても大満足だから!」
「そうだね。三人一緒にいれるだけで、幸せだもんね」
――――自分の夢を叶えることに成功したクロワ
夢はないけれど、親友と共に人生を歩むことにしたシュトーレ
そして殺し屋という過去と決別する為に親友の元にやってきたプレッツェ――――
そんな親友三人が経営している郊外のパン屋「Dear Friends」。
少しパンが血生臭くたって、それも一つのアクセント。
三人はそんなお気楽な考えの元、今日も元気にパン屋を開店している。
終わり
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