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エアゴーグルと空気銃 ~フレイホーク~
2012/07/21(土)17:17:23(12年前) 更新
退屈だ。1つの長テーブルと椅子とホワイトボードが置かれている以外は何もない部屋の中で、フレイはだらしなくその椅子に腰かけていた。つい先ほどこの姿になってから、しばらくこの部屋で待つようにコルテックスという男に言われたのだが、それにしてもこの部屋は何もない。
何か触る物や調べられるものがあればまだ退屈しのぎもできただろうが、ここには特別変わったものなど何もなく、目を楽しませてくれる光景すら1つもない。せめて、窓の1つくらいあってもいいのではないか。
「あ~・・・することなさすぎて暇死にしそうだ・・・来るんならさっさと来いっつーの。もてなしもろくにできねーのかよ」
「残念だったな。貴様は客人などではない」
扉が開く音とともに、反響した奇妙な声が背後から聞こえてきた。フレイはすぐに振り返る。そこにいたのは、顔の半分が機械化しており、その頭にはミサイルが刺さっているという何とも奇妙極まりない井出達をした人物がいた。
「・・・誰だアンタ?つーか生きてんのか?」
「拙者の名はエヌ・ジン。貴様の名は・・・分かっているな?」
「ああ、フレイだろ?あの変なおっさんにそう言われたよ」
変なおっさん、とは十中八九コルテックスの事だろう。エヌ・ジンは何とか訂正したいところだが、あながち否定できないことにもどかしさを感じた。
「・・・とにかくフレイ、貴様はこれから我々の部下として働いてもらうことになる」
「おいおい話が急だな。こっちにゃ聞きたい事が山ほどあんだよ。まずここは・・・」
「急くな。順を追って説明する」
フレイが口を挟むと、エヌ・ジンは急に不機嫌な顔になった。話を止められた事がそんなに不服なのだろうか。
「最初に、我々は世界征服を目標に活動している組織だ。お前は我々の世界征服にあたって、その戦力として生み出された存在なのだ」
ここまで聞いても、やはりフレイにとっては急な話だった。まず、世界征服などという観念は人間だけのものだ。人間の思考を手に入れたからといって、いきなりこの言葉が頭に浸透してくるはずもない。
しかし、そんなフレイの思考をエヌ・ジンが考慮するはずもなく、彼は続けざまに説明してきた。
「そこでだ。お前にも戦闘用に専用の武器を与えることにする」
エヌ・ジンはそう言うと、おもむろに拳銃らしきものを出して手に取った。何処から出してきたのかはよく分からなかった。手品でも見ている気分だ。
「これは拙者が開発したその名も空気銃という武器でだな・・・」
「ああ、知ってるぜ。お前ら人間が大好きな銃ってやつだろ?」
フレイはコルテックスに進化させられる前から銃の脅威を知っていた。今まで何度この銃で鳥が撃ち落とされてきたか知れない。人間には空を飛ぶ力がないから、こういう遠距離武器を好むのだろうとフレイは考えていた。
「フッフッフ、言っておくがこれはただの銃ではない。説明しよう。まずはこれを見るのだ」
エヌ・ジンは、やはり服のどこかから折りたたまれた大きめの紙を取り出し、それを広げてホワイトボードに張り付けた。そこには空気銃の構造を描いた図と、その周りに銃の説明らしき文字がずらずらと並べられていた。
「この構造図を見れば、この銃がただの拳銃でない事は一目瞭然だろう」
ハッキリ言って、まったくわからない。これはフレイが進化したばかりだから、という理由ではないはずだ。
「まずこの銃の弾となるものは、空気だ。空気を極限まで圧縮したものを、超圧力、超高速で押し出すことによって・・・」
フレイの頭の中に入ってきた言葉は、この辺までだった。エヌ・ジンの口はどうやらまだ動き続けているようだが、フレイには徐々に睡魔の影が忍び寄ってきていた。
「・・・そしてこの空気銃には拡散型と集中型の2つのモードがある。拡散型は空気の圧縮が広範囲に一気に解放されることによって台風以上の突風を作りだすことができ、集中型は空気の高速移動によって真空空間を作りだすことでいわゆるかまいたち現象を引き起こすことができる」
「へぇ~・・・」
フレイは朦朧としながらも適当に相槌を打った。
「撃鉄と呼ばれるこの部分は、通常なら弾を装填する時に使われるものだが、そもそもこの空気銃は弾を装填する必要がない。自動で弾倉内に空気が補充される仕組みになっておるからな」
「ほぉ~・・・」
「代わりにここはこの2つのモードを切り替える時に使う。状況によってこれらを使い分けるのだ。覚えておくがい・・・」
ここで、エヌ・ジンはフレイがテーブルの上に顔を伏して居眠りをしている事に気がついた。
「・・・・・・まぁ、実際にその身で体験した方が分かりやすいだろう・・・!」
エヌ・ジンは冷たい表情をしながら躊躇なく持っていた空気銃の引き金を引いた。すると、その銃口からは凄まじい突風が飛び出してきた。
「?!うわっ・・・!!?」
突然の出来事にフレイはなす術なく壁に身体をしたたかに打ちつけてしまった。
「うぐっ・・・なんだよ・・・これ・・・?」
「これがお前の武器だ。なかなかに素敵な威力だろう?」
「・・・くそがっ」
フレイは再び壁に激突した。
所変わって訓練室。フレイは空気銃を手渡され、この場所に連れられていた。しばらくそこで待っていると、エヌ・ジンの声が天井から聞こえてきた。
「さて、それでは早速貴様の腕を見せてもらうとしよう。今から拙者が作った訓練用のメカをそこに送り込む。それを先程の空気銃で倒せばよい」
「成程な。そいつは面白そうだ」
フレイがそう言うと、ブザー音とともに奥の扉がゆっくりと開いた。すると、その奥からは球状のボディの周りにトゲのついた機械が何体か飛んできた。
「へぇー、こいつを撃てばいいんだな」
フレイはそう言って空気銃を構える。そして、引き金を引いてまずは集中型の空気弾を放つ。その弾は見事に1体の機械に命中し、ボディの金属をいとも簡単に打ち砕いてしまった。
「ヒュウ~ッ、どうよこの銃さばき」
(うぬぼれる前にまずその銃の威力に驚けッ・・・!)
エヌ・ジンは心の中でそう突っ込みながらフレイの戦いぶりを眺めていた。が、しかし、初めて銃を握った者にしてはなかなかの命中率であることも確かではある。
「・・・よし、そろそろ次のターゲットを用意するとしよう」
「おっ、いいね。ちょうど相手が物足りなくなってきた頃だぜ」
エヌ・ジンの声を聞くと、フレイは残りのメカを撃ちながら言った。すると、先程の扉が再び開いたかと思うと、そこから凄まじいスピードで何かがこちらに襲いかかってきた。
「んおっ・・・?!」
フレイはとっさに両の翼で宙を舞い、それを避けた。見ると、それはイノシシのような形をした機械だった。すると、その機械は再びフレイに向かって凄まじいスピードで突っ込んできた。
フレイはさらに上昇してそれを避け、空気銃で反撃に出るが、そのメカのスピードでは簡単に避けられてしまった。
「チッ・・・!」
フレイはさらに空気銃を連射するが、恐ろしいスピードで走りまわる鉄のイノシシには全く当たる気配がなかった。
「・・・ったく、どうしても拡散型を使えってことかよ」
フレイは撃鉄に当たる部分を操作して試しにメカに銃を向けて引き金を引いてみる。すると、先程フレイが喰らったようにメカは突風によって勢いよく吹き飛ばされ、部屋の壁に叩きつけられた。
「今だッ」
即座に集中型に切り替えて、イノシシの身体に真空の弾を数発撃ち込む。すると、イノシシの姿は一気に崩れ、メカは途端にガラクタの山と化した。
「・・・ふぅ、これで終わりか」
「ふむ、よくやった。その銃の基本はとりあえず掴んだようだな」
エヌ・ジンの声を聞くと、フレイは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「ヘッ、実はさっきこいつの応用技も思いついてたりするんだよな~。なぁ、外で試しに使ってみていいか?」
「・・・どうせそう言ってここを逃げ出すつもりなのだろう。許さんぞ」
「そーゆーんじゃねーって。とにかく、ちょっと外行ってくるわ」
「待て」
しかし、フレイはエヌ・ジンの言葉を聞かずに訓練室を出ようとした。そして、出口の扉を開けた時、そこにはなんとさっきまで放送室から話していたはずのエヌ・ジンが何かを持って立っていた。
「ならば、これを持って行け」
エヌ・ジンはそう言って持っていたものをフレイに手渡した。見ると、それは外気などから目を保護するためのゴーグルのようなものだった。
「・・・へぇ、なんだよ。意外と気が利いてるじゃねぇか」
実はこのゴーグルにはGPS機能が搭載されており、フレイの行方を監視するために渡したものなのだが、エヌ・ジンは黙ったまま去っていくフレイの後ろ姿を眺めていた。
「よっと、こんな感じかな?」
フレイは渡されたゴーグルを頭につけながら、コルテックス城のバルコニーの先に広がる大空を眺めていた。さっきまでの暗い城内の雰囲気はどこへやら、空はどこまでも澄んだ爽快な青空だった。
フレイは今にもそんな青空に吸い込まれそうになる。一応、ゴーグルを目の位置まで持ってきて、次に空気銃を地面に向けて引き金を引いた。銃口からは拡散型の突風が放たれ、それが地面によって跳ね返されることで、勢いよくフレイの身体を浮きあげた。
まるで、空へと落ちているかのような、不思議な感覚だ。フレイはさらに銃の引き金を引いた。そこから出た突風による推進力で、フレイを凄まじい勢いで吹き飛ばした。しかし、フレイはそれを自らの翼でしっかりと捉え、速度はほとんどそのままにすぐに体勢を整えた。
「ひゅううううううううッ!こいつはすげぇや!!」
それまで味わったことのない速度に、フレイは言いようのない爽快感を覚えていた。フレイはさらに空気銃の引き金を引き、さらに速度を上げた。それこそ、眼前に広がる青空に吸い込まれるかのように。
どちらが下で、どちらが上か。そんなことは今のフレイには関係なかった。思うがままの方向へ、フレイは飛んでゆく。重力というこの世の理さえも振り払って、ただひたすらに自由に。
フレイは、青空へと落ちてゆく。
終わり
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