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二人をつなぐ白銀の世界 ~ザナヴィ&雫石~
2012/08/27(月)22:56:33(12年前) 更新
狼男や雪女。
映画や本で出てくれば、彼らは必ず『人に害成す敵』や『恐ろしいもの』として登場する。
でも、本当はそんなことは無い。
狼男も、雪女も、みんな優しい心を持ってる。
なのに・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
村は雪と炎で渦巻いている。
いたるところで村人の遺体が転がっている。
いたるところで火の手が上がる。
雫石「あそこにも火が・・・消しに行かなくちゃ!」
雫石が走ると、白衣に眼鏡のような物をかけた研究者らしき人物たちが道を塞ぐ。
どれも、奇妙なほどにまったく同じ顔だ。
雫石「ッ!・・・あなた達、一体何なの?」
研究員たちは質問に答えず、代わりに手に持っていた火炎放射器で炎を放った。
雫石は咄嗟に空気中の水分を凍らせて盾を作り、どうにか防いだ。
雫石「村を焼き払っているのはあなた達なの?お願い、もう止めて!」
研究員たちの放つ炎を、雪の力で必死に消そうとする。
次々と上がる炎を消しているうちに、研究員たちのターゲットは妨害をする雫石に変更された。
いくつもの火炎放射器が彼女を捉える。その時・・・
研究員「ギヤァァァァァァァ・・・・!!」
断末魔の叫び声の向こうには、巨大な刀を構えた男がいた。
確か、彼は昼前に村から出て行ったザナヴィだ。
ザナヴィ「大丈夫かい、お嬢さん。」
雫石「は、はい・・・それより、早く村をどうにかしないと!」
ザナヴィ「任せな。」
そう言って、ザナヴィは巨大な刀で敵を片っ端からなぎ払った。
雫石「そ、そんな・・・殺してしまわなくても・・・」
ザナヴィ「よく見な。こいつらはロボットだ。恐らく、俺の命を狙ってこの村に着たんだろう。」
確かに、あんなトラウマになりそうな断末魔の声のくせに、中身は皆ロボットだった。
研究員たちを全滅させ、後は消火作業だ。
島「二人とも、大丈夫かい!?」
医者の島も戻ってきたようだ。
ザナヴィとは別の場所で戦っていたらしく、白衣を鞄にしまっていた。
島「今、消防車を呼んでおいた。早くここから離れよう。」
雫石「でも、この村から消防署までかなり距離があります。いつ着くか分かりませんから、ここは私が何とかします。お二人は逃げてください。」
ザナヴィ「ダメだ。君一人でどうにかできるものじゃない。」
雫石「わ、私に考えがあるんです。でも、それにはお二人は逃げていただかないと・・・」
ザナヴィ「女の子一人置いて逃げられるわけ無いだろ!逃げるための足は島さんが確保してるから、とにかく来るんだ!」
ザナヴィは雫石の手を強引に引っ張って、島の車まで連れて行った。
島のクルマは辛うじて難を逃れたようで、あちこちにススや雪をかぶっている以外は無傷だった。
だが、問題点が一つ・・・
ザナヴィ「ゲッ、二人乗りかよ!」
雫石「じゃぁ、私はここに残ります。」
ザナヴィ「いや、君は助手席に乗るんだ。俺は・・・そうだな、後ろについているウイングにでも腰掛けるかな。」
島「そんなんで大丈夫かい?」
ザナヴィ「日ごろから鍛えてるから、大丈夫だよ。」
雫石を助手席に押し込み、白いポルシェは村を後にした。
――――隣の村――――
とりあえず隣の村まで向かうと、そこには避難して来た村人たちが集まっていた。
車から降りれば、村人たちは丁寧に手当てしてくれた。
村人「怖かったろう、怪我は無いか?」
ザナヴィ「俺は大丈夫です。」
雫石「私も、たいした怪我はありません。」
大丈夫だといったが、村人たちは心配してくれた。
喉が渇いたろうといって水なんかをくれたりもしてくれた。
ザナヴィ「優しいんだな。こういう人たちは・・・」
雫石「こういう村落では、しっかりと助け合っていかないと生きてゆけないですから。」
だが、安心できたのはつかの間だった。
ザナヴィ達よりも後に来た村人が、雫石を見て叫んだ。
村人「そ、そいつから離れるんだ!!そいつは『雪女』だ!!」
村人たちはざわめき、そして彼女たちから距離をとった。
村人「お、俺見たんだ!こいつ、火の手が上がる中で雪を降らせてたんだ!それに、変な研究者みたいなやつらがあんたを狙っていたのも見た!」
雫石「そ、それは・・・」
村人「てことは、あんたを狙って、あの研究者たちは村を焼き払ったってのか!?」
雫石「ち、違います、私はただ、必死に火を消そうとしただけで・・・」
雫石の弁解もむなしく、村人たちの勝手な憶測が異常な速さで進行して言った。
こうなると、待っているものはやはり・・・
村人「出て行け!疫病神の雪女!!」
村八分。
いや、これはもっと酷いかもしれない。
悲しみで動くことが出来ない雫石をザナヴィはまた強引に手を引いた。
ザナヴィ「島さん、悪いけどもう一回クルマ出してくれないか?」
島「そのつもりだったさ。」
荒れ狂う村人たちを尻目に、俺たちは村から逃げていった。
車の中で雫石は泣いていた。
ウイングに腰掛けるザナヴィにも、彼女の悲しみが伝わってきた。
雫石「どうして、こんな事に・・・」
島「人々の偏見だよ。気にすることは無い。」
雫石「私、どうして雪女なんかに生まれてきちゃったんだろう?」
島「・・・」
島は何も言い返せなかった。
普通の人として生まれ、人々から偏見を買うことが無かった彼には返す言葉が見当たらなかった。
雫石「やっぱり、ここで下ろしてください。これ以上、迷惑かけるわけには行きません。」
島「大丈夫。僕は迷惑してないから。」
雫石「じゃぁ、せめて、村の人たちにお別れの印を・・・」
島「そんなことして大丈夫なのかい?」
雫石「はい。この山の頂上にまで行かせてください。」
幸い、頂上付近まで車でいけた。
頂上からは先ほどの村や遠くの山々、沈んでいく夕日、そして、いまだ煙が上がっているあの村まで良く見えた。
雫石は景色が一番良く見渡せる、崖の手前まで歩いた。
ザナヴィ「お別れの印って、いったい何考えてるんだ?あの子は。」
島「・・・きっと、今まで助け合ってくれたお礼を、別れ際にしたいんじゃないかな。あんな別れ方になったとはいえ、それまでは一人の村人として支えあってくれたからじゃないかな。」
ザナヴィ「それって・・・優しすぎだ。」
彼女は掌を水平にして口元に持っていき、優しく息をかけた。
掌から粉雪が広がり、この辺りを包んでゆく。
優しい粉雪は、暖かい色の夕日の光が反射してダイヤモンドに化けた。
誰もが魅了されるくらいに、ダイヤモンドが降り行く様は美しかった。
だが、夕日のせいか、ザナヴィと島にはとても切ない景色にしか見えなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
粉雪の別れを済ませた後、3人を乗せた車は高速道路をひたすら走っていた。
雫石とザナヴィはどこに向かうのか知らなかったが、今日一日の出来事が急展開過ぎてそんなことを考える体力は残っていなかった。
雫石は助手席で安らかに眠る死人のようにぐっすりと眠り、ザナヴィはトランクの中でうずくまって自身の唯一の娯楽の音楽を聴いていた。
島のポルシェはエンジンが後ろにあり、ウイングに座るとエンジンの熱が伝わり暑くて暑くてたまらない。
なので、ボンネットの部分のトランクにうずくまっていることにした。
ザナヴィも壮絶な疲れと共に、だんだんとまぶたを閉じていった。
――――次の日の朝――――
島の車が到着した場所は、自然の匂いがほんのわずかもしない大都会だった。
島はこの大都会の病院で働いているらしい。
大きなマンションの駐車場に着き、そこから島の部屋へと案内された。
島「じゃぁ、今日一日は僕の部屋で過ごしてくれ。今日一日僕は病院のほうにいるから、何かあったら僕の携帯に連絡してくれ。」
島はそう言い残すと、再びクルマに乗り出かけていった。
部屋に残った二人は、お互いに話す事が思いつかずにちょっと気まずい空気が部屋に充満していた。
沈黙に耐え切れずに最初に口を開いたのはザナヴィだった。
ザナヴィ「・・・結構大きな町だね・・・」
雫石「・・・この国の首都ですから・・・」
ザナヴィ「なんていう街なの・・・?」
雫石「・・・東京です・・・」
ザナヴィ「へぇ~・・・」
いまいち会話が進まない。
ザナヴィは昨日の夜から何も口にしていないのを思い出した。
ザナヴィ「そういえば、俺たち昨日の夜から何も食ってないよな。なんか作ろうか?」
雫石「いえ、私は大丈夫ですから。」
ザナヴィ「ちゃんと食わないと歌まともに歌えないぞ。」
雫石「・・・じゃぁ、ほんの少しだけ頂きます。」
ザナヴィは適当にパンをトースターに入れたりして朝飯を作った。
あまり出来がいいとはいえないが、とりあえず腹の足しにはなるだろう。
朝食の間も、雫石は悲しそうな表情が変わることは無かった。
ザナヴィ「なぁ、村追い出されて悲しいのは分かるけど、なんかさ・・・もうちょっと明るく行こうぜ。」
雫石「は、はい・・・」
ザナヴィはなんだか逆に彼女を暗くさせてしまったような気がした。
彼はここまで他人と向き合ったことが無かった。城の中ではどちらかというと淡白な人間関係だった。
だから、こんなときどう声をかけるべきか知らない。
いろいろな考えがザナヴィの頭を渦巻いていたが、しばらくしてやっと口を開くことが出来た。
ザナヴィ「この前聞いた君の歌、すごく良かったよ。またあの優しい歌が聞きたいよ。」
雫石「でも、もう歌なんか・・・」
ザナヴィ「・・・歌を歌っている場合じゃないときこそ、歌を歌おう。」
雫石「えっ・・・」
ザナヴィ「いや、何かのドラマで聞いた台詞なんだ。その言葉と同じようにさ、悲しい場合にこそ、笑っていたほうが君の良さが出ると思うんだ。」
雫石の表情は、ザナヴィの言葉でだんだん和らいでいった。
その後も、ザナヴィは自信の思っていることを彼女に話した。
コルテックスという男の下で働いていたこと、そのコルテックスは世界征服を企んでいた事。
世界征服を利用して世界を一つに纏め上げ、平和な世界を作ろうとしていた事。
コルテックスの勢力の情報を漏らしてしまい、命を狙われる羽目になったこと。
雫石「いろいろ、大変だったんですね。」
ザナヴィ「あぁ。だけど、こういう風になってむしろ良かったかもしれないな。」
雫石「どうしてですか?」
雫石が問うと、ザナヴィは少し間をおいて照れくさそうに答えた。
ザナヴィ「君に・・・会えたから・・・」
雫石「えっ!」
ザナヴィ「いや、恋とか、そういうのじゃなくてさ、俺はコルテックスの勢力では一人の兵士だったから人間関係は希薄だったんだ。だから、こういうちゃんとした人間関係が出来て少しうれしいんだ。」
雫石「そうだったんですか。」
ザナヴィ「まぁつまり、何を言いたいかというと、村人たち全員が見捨てても、俺はずっと君の仲間だから。」
雫石「・・・私が、雪女でも・・・?」
ザナヴィ「当ッたり前だ。」
どうにか、彼女の凍りついた心を溶かしてやることが出来たみたいだ。
彼女は笑顔を見せた後、ザナヴィの胸に飛びついた。
――――2週間後――――
島の部屋の隣を借りることが出来、ザナヴィと雫石はそこで暮らしていた。
今まででは考えられないくらい平和な生活に、最初は戸惑ったが今ではこちらの生活の方が良いように思えてきた。
願わくばこの平穏が・・・と、彼らは思っていたが、やはりそう平穏は続くわけは無かった。
波一つ無い湖面のような平穏を破ったのは、島の連絡からだった。
どこか懐かしさを感じさせる夕日の時間帯に、その連絡は来た。
島「ザナヴィかい?落ち着いて聞くんだ。君たちの場所がまた割れてしまったようだ。雫石と今すぐ荷物をまとめて、彼女と一緒に逃げる支度をしてくれ。僕は君が逃げるための足を確保しておく。それまでそこで待っていてくれ。」
ザナヴィ「わ、わかった。」
雫石「どうしたんですか?」
ザナヴィ「俺の居場所がばれちまった。このままだと君も危ない。すぐに逃げよう。」
雫石「そ、そんな・・・」
荷物といってもそれほどたいした物は持っていないので、すぐに支度は済んだ。
ちなみに3mの刀は、FFやKHの武器みたいに自由に出現させたり消したり出来る仕組みだ。(後付け設定っぽいって?そういうことを言うんじゃない)
数時間後、島が息を切らして部屋にやってきた。
島「準備完了だ。敵はすぐそこまで来ているようだ。駐車場に向かうから、急いで。」
ザナヴィ「わかった。行くぞ。」
雫石「はい。」
ただ逃げるならまだしも、まさか彼女にまで危険が及ぼうとは・・・
駐車場に急ぎながら、島が敵に場所を知られた経緯を説明した。
島「すまない。また僕のせいで君を危険な目に合わせてしまった。」
ザナヴィ「どういうことだ?」
島「リハビリの戦いの後、何者からか狙撃を受けて逃げて行っただろう。そのときに、君と一緒にいた僕の顔を覚えられてしまったようだ。そして、雫石の村を焼き払われたとき、村の離れから偵察していた研究員から白いポルシェで逃げるところも目撃されてしまったようだ。」
ザナヴィ「クソッ・・・抜け目が無いな。あいつらも・・・」
島「クルマのナンバープレートから住所が割れてしまったみたいで、そこから君の動いた形跡が見られない事から、この場所に君がいる可能性が高いと見たようだ。」
雫石「そしたら、あなたもマズいんじゃないですか?」
島「僕は丁度、名古屋の病院に異動になったから、大丈夫だ。ナンバープレートも、偽造のものを手配しておいた。」
話している内にマンションの駐車場に着いた。
島の白いポルシェとその近くにもう二台、古いスポーツカーが止められていた。
古いスポーツカーの方には、茶髪の高校生くらいの青年が立っていた。
島「わざわざご苦労だったね。吉田君。」
吉田「良いって。それより、この車の説明をとっとと終わらせて逃げた方が良いんじゃないのか?」
島「そうだね。ザナヴィと雫石はこっちの古いクルマに乗ってもらうよ。」
ザナヴィ「一緒に逃げないのか?」
島「こっちは顔や名前、職業まで調べられているらしい。向こうが君を捜索する時は僕の周辺から調べていくだろう。だから、僕とは離れた方が良い。」
島は自身の危険にもかかわらず、冷静に淡々と喋っている。
医師という職業を考えれば当然のことかもしれないが。
ザナヴィ「そう考えると、あんたが一番危険かもな。逃げた後は大丈夫なのか?」
島「そういうことに関しては、吉田君からいろいろアドバイスを受けてるよ。今回の敵の動きをいち早く掴んだのは彼だしね。」
吉田「なんてったって、ワルワルスクール卒業生だからな。」
ザナヴィ「本当か?え~っと・・・吉田君だっけ。」
吉田「あ、自己紹介がだいぶ遅れたな。俺は吉田耕一。昼間は高校生、夜は首都高速道路の走り屋だ。今回の逃走のサポートをするから、よろしく頼むな。」
ザナヴィ「俺はザナヴィ・ゼクセルだ。もともとコルテックスの勢力に居たが、今は追われる身だ。よろしくな。」
雫石「私は雫石こまちです。よろしくお願いします。」
吉田はまずザナヴィと握手をした。それから雫石に握手をすると同時に、英国紳士を気取って彼女の手にキスをしようとしたが、島が吉田の服の襟を引っ張って阻止した。
島「早く説明を終わらせてくれ・・・」
吉田「よし。これからアンタが乗るクルマは日産・フェアレディZの最も古いタイプ、S30だ。いろいろと改造してるから、そこそこの速さはあるはずだ。ところでアンタ、クルマ乗れるのか?」
ザナヴィ「コルテックスの計画がカーレースで地球を乗っ取るとか言うものだったから、少しは乗ったことはある。」
吉田「そうか。じゃぁ大丈夫そうだな。あ、もう一つ、重大な説明を忘れてた。このクルマ、ナンバープレートは外してあるから違法改造車になっちまう。当然、ポリ公(警察のこと)も追っかけてくるから気をつけろよ。」
ザナヴィ「わかった。」
島「もう余り時間が無い。早くクルマに乗るんだ!」
島は白いポルシェに乗り込み、吉田も自分の黒いスポーツカーに乗り込んだ。
ザナヴィ「二人は先に行っててくれ。雫石と話したいことがある。」
島「えっ・・・」
吉田「話させてあげようぜ、島さん。男女の関係ってのはメスで切ろうとしても切れない物だぜ。」
ザナヴィ「いや、そういう関係じゃないって。」
島「・・・話はすぐに済ませるんだ。僕たちは先に行ってるよ。」
吉田「俺も、お二人の邪魔にならない所に行ってるわ。」
2台のクルマが駐車場を離れ、残ったのは銀色のS30とザナヴィと雫石だけとなった。
ザナヴィは夜空を見上げながらつぶやいた。
ザナヴィ「今日は満月なんだよな。」
雫石「そうですよ。」
ザナヴィ「これから起こる事を見ても、俺を恐れたり嫌ったりしないかい?」
雫石「・・・?」
ザナヴィ「俺が雪女である君を仲間と認めたように、君も同じ事をしてくれるかい?」
雫石「どういう・・・意味?」
ザナヴィは一呼吸おいて、覚悟したかのように口を開いた。
ザナヴィ「俺が・・・・・・狼人間だという事。」
満月が二人を照らす。
都会特有のビル風が吹き込み、雫石は思わず目を瞑り風に身構える。
風が止み、目を開けた雫石の目の前には、狼の姿のザナヴィが居た。
雫石「ッ・・・!!」
銀色の毛並み・・・雄雄しい筋肉・・・力強い牙・・・まっすぐな瞳・・・
雫石はやはり驚きを隠せなかったが、同時に自身と同じものを感じた。
人であって人では無い者、狼であって狼では無い者。
二人の命がけの逃走劇が始まる。
銀色の星達は雲に隠れ、その代わりに銀色の雪達が降ってきた。
首都東京はこの雪でさらに冷えていき、さらに輝きを増す・・・
終わり
18199