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闘争本能と逃走本能 ~反逆の狼たち~
2012/09/03(月)07:57:23(12年前) 更新
吉田耕一は環状八号線の穴守橋という信号で車を止め、パソコンを開いて逃走者二人の場所を確認した。
島は高速道路で名古屋を目指し、ザナヴィは下道をうろついていた。
吉田「さてと、あ、また伝え忘れてたよ。」
吉田はそう言って携帯で島陸とザナヴィ・ゼクセルに同時通話をかけた。
最初に島が出て、しばらくしてからザナヴィが出た。
吉田「島さん、ザナヴィさん、聞こえますかー?」
島《聞こえるよ。君だったのか。》
ザナヴィ《ここにあったスマホは君との連絡用か。》
吉田「ちゃんと逃げれてますか?」
ザナヴィ《今まさに逃げてる!しかも、追ってくる奴に知ってる顔が居るぞ!車で逃走するというのがバレている証拠じゃないのか!?》
島《そうだね。こちらも2度ほど追い回されたよ。2回ともちゃんと振り切れたが、やはり逃走手段がバレているとしか考えられない。》
吉田「マジか。ちょっとこっちで調べてみるから、何か動きがあったらまた連絡してくれ。それから、カーステレオを起動すると、警察無線が傍受できるようになってる。上手く活用してくれよナ。」
吉田はパソコンでコルテックスの情報をさらに引き出そうと試みた。
その時、聞き覚えのあるエキゾースト(排気音)が聞こえてきた。
白いFDに乗る大川桜だ。
彼女が窓をノックしてきたので、吉田は窓を開けて対応した。
大川「やっと見つけた!今日もサ、一緒に走りにいこうよ。」
吉田「ダメだ。今日は絶対走らない。てか走れない。」
大川「なんでー。」
吉田「最重要指名手配(モストウォンテッド)が逃走を開始した。今日の東京は大荒れだぜ。」
大川「何それ。」
吉田「見てりゃ分かるよ。」
吉田は意味ありげに微笑んだ。
すると、ザナヴィから連絡がきた。
吉田「もしもーし。」
ザナヴィ「どういう事だ!?警察無線から聞き覚えのある声がするぞ!」
吉田「は?」
ザナヴィ「コルテックスの奴の声が聞こえるんだ!何か知らないか!?」
吉田「悪ぃ、それは全然知らなかった。その事についても調べるから待ってろよ!」
吉田は舌打ちを打ち、小声で聞いてねーぞとつぶやいた。
大急ぎでパソコンを操作していると、車の後ろの方で金属音がした。
大川「あ、あなた、誰?」
男「名乗る必要が無い・・・」
吉田は車から降りて何が起こったかを確認ようとした。
一台のトレーラーと、一人の男が確認できた。
吉田はその男と面識は無かったが、ある程度の情報は知っていた。
吉田「学校はどうしたヨ。冬休みか?あ、ここ羽田空港の隣か。もしかして、父親を弔いに来たか?二酒弦(にのさか げん)君」
二酒「何も語ることは無いヨ。」
吉田は二酒に近づきながら自分の車の後方を確認した。
牽引用のロープがかけられている。
先ほどの金属音はこのロープを引っ掛けた音だったのか。
吉田「全く、大先輩のクルマに無断でこんな事やっていいのか?」
二酒「敵のあなたが今さら何を。あなたはワルワルスクールの汚点だ。汚点は早急に拭い去らなければならない。」
吉田「ほぉ~。じゃぁ、かなり胸糞悪ィだろうナ。こうやって・・・」
吉田は牽引用のロープを思いっきり踏みつけ、車に付いている牽引用フックごと外してしまった。
吉田「ターゲットをあっけなく逃がしてしまうとナ。」
二酒はポケットから無線のようなものを取り出し、誰かと連絡を取りはじめた。
二酒「ターゲットの追加要請お願いします。追加するターゲットは・・・」
二酒は悪意のこもった微笑を浮かべながら続けた。
二酒「白のFD!」
吉田「なッ!お前、何を!」
白のFDは大川の乗っている車種だ。
関係無い彼女を巻き込み、それを守ろうと吉田は動かざるを得なくなる。
そんな作戦に吉田は怒りを抑え切れなかった。
大切な仲間を巻き込んだ怒りを抑え切れなかった。
吉田「テメェ・・・今すぐ東京湾に沈めてやろうか・・・ッ!」
二酒「その反応を見ると、彼女はよほど大切な存在なんだネ。早く守ってあげなければ捕まってしまうヨ。」
パトカーのサイレンが遠方から近づいてくる。
時間が無い・・・
大川「ねぇ、どういう事・・・?」
吉田「早くクルマに乗れ!一緒に逃げるぞ!」
吉田は大川を自分の車の助手席に乗せ、すぐさまこの場所を離れようとした。
追加されたターゲットと全く違う車なので、追い回されることは無いはずだ。
白のFDは置いていくしかない。
二酒「こんな所に大きな証拠品を置いていいのか?これから押収して徹底的に調べ上げてしまうけど。」
吉田「クッ・・・大川、白のFDに乗れ!」
本当は吉田自身が白のFDに乗ってやりたいが、車のそれぞれのクセ等を考えると、二人とも乗り慣れた自分の車で逃げ回った方が良いだろう。
2台が大急ぎでこの場を離れた。
――――東京都 第一京浜道路――――
ザナヴィは一度目の追跡を何とか振り切り、一般道で横浜方面に向かっていった。。
クルマは200km/h近いスピードで一般道を飛ばしていた。
雫石「ッ・・・は、速いですね・・・これ・・・。」
ザナヴィ「速いっつーか、乗り心地最悪だな。古い車だからか?」
車を改造すると・・・特に【サスペンション】と呼ばれる、路面の凹凸などによる衝撃を和らげる部品を性能重視のものに交換すると、代わりに乗り心地が悪くなる。
柔らかい無改造のサスペンションよりも、硬い性能重視のサスペンションの方が路面をしっかりと掴み、無駄なドリフトを抑えてくれるからだ。
雫石「そういえば、高速道路には乗らないんですか?遠くに行く為にはそちらの方が・・・」
ザナヴィ「いや、高速道路は警察に道ふさがれたり、検問が配備されたら終わりだ。だったら、逃げ道の多い下道の方が良い。」
ザナヴィが言い終わると、ステレオから警察の無線が聞こえてきた。
警察《見つけた!銀色の古いフェアレディZだ!南大井一丁目から横浜方面に向けて逃走中!》
司令塔《全車に次ぐ。南大井一丁目にてcord6を発見、横浜方面に向けて逃走中。なお、2台のcord6は危険車両と判断されたため、現時刻を以って緊急配備を発令します。周囲の車両は警戒態勢に入ってください。》
ザナヴィはアクセル全快で突き進む。
幸い、その辺のパトロール用車両だったので簡単に振り切ることが出来た。
警察《クソ!10-83(テン・エイティースリー)だ!》
バックミラーで追ってくる車が居ないかザナヴィは確認したが、その直後に、路地から車がザナヴィを追うかのように飛び出してきた。
一見ただのスポーツカーだが、乗っているものはただ者ではなかった。
ザナヴィ「やっぱ警察とコルテックスは何らかの繋がりがあるのか?」
オレンジの【ランサーエボリューションⅥ】に乗っているのはタイニーとディンゴだった。
ザナヴィのクルマの速度にしっかり付いてくる。
ディンゴ《cord6の野郎を見つけたぜ!10-85だ!》
司令塔《10-04。X-rayを向かわせます。》
よく分からない単語が連呼されているが、恐らく警察達で使うコードなのだろう。
雫石「後ろの車、全然離れないですよ!」
ザナヴィ「分かってる!ちょっとつかまってろ!」
ザナヴィは車を小さな路地に向けた。
一方通行の道を逆走しているが、そんな事はもうどうでも良かった。
細い路地を右に左に曲がっていき、タイニー達を振り切ろうとするが、なかなかしぶとく付いて来る。
雫石「後ろの車、銃みたいなものを構えていますよ!」
バックミラーで見てみると、助手席のディンゴが火炎放射器を構えていた。
この狭い路地で撃たれるともう避けられない。
狭い路地を右折し、火炎放射器の射程から逃れようとしたが、右折したのがいけなかった。
長い一本道で、一番奥の三叉路まで逃げ道が無い。
バックミラーに曲がってきたばかりのタイニー達の車が見える。
ザナヴィ「クソッ!これまでか・・・!」
雫石「一旦窓を開けさせてください!」
ザナヴィ「何をするんだ?」
雫石は窓を開け、タイニー達の車に向かって手をかざした。
かざした手からツララのような物が高速でタイニー達のクルマに向かっていった。
ディンゴ「やべッ!」
ディンゴはあわてて火炎放射器でツララを打ち落とした。煙で視界が遮られ、その隙にザナヴィのクルマは三叉路を曲がってしまった。
ディンゴ「チクショウ、どっち行きやがった。」
タイニー「タイニー、煙で見てなかった。」
ザナヴィはどうにかタイニー達を振り切ることが出来たが、今度はパトカーに追い回されることになった。
警察も本気を出したようで、追跡専用車両を投入してきた。
警察《10-73だ!神奈川県に入る前に抑えるぞ!》
司令塔《10-04。目標の進路を固定してください。》
一方通行の道を逆走し続け、やがて再び大通りに出た。
左折して大通りに入り、第一京浜道路に戻ろうとした。
第一京浜との交差点の手間に警察車両が道をふさいでいた。
ザナヴィ「【ロードブロック】ってヤツか。日本ってこんな事する国だったか?」
ザナヴィはロードブロックの車両の合間を見極めて突破しようとしたが、車両の間に何か罠のような物が仕掛けられていたのが見えた。
即座に右折し、別ルートで第一京浜に戻る。
警察《ロードブロックを回避された!10-44が必要だ!》
司令塔《あー・・・10-06。付近に該当する車両はありません。変わりにEagleが向かっています。》
警察《県境付近に10-73!SAPでだ!》
司令塔《10-04。付近の車両に呼びかけてみます。》
第一京浜に戻ったザナヴィだったが、その頃には追跡車両がかなり増えて振り切れなくなってきていた。
加えて、黄色い【フォード・マスタング】という車がこちらを追ってきた。
コアラコングの乗っている車だ。
ザナヴィ「あの馬鹿みたいに馬力のある車か。マッチョなアンタにはお似合いだな。」
コアラコング「ガッハッハ。ようやく見つけたぜ!こっちは撮影の合間を縫ってワザワザ来たんだ。手間かけさせずにサッサとブッ壊れな!」
コアラコングのマスタングは馬力を活かしてザナヴィのS30の真横に並べてきた。
そのまま何をするかと思えば、何とこちらにぶつけて来ようとしてきた!
ザナヴィ「危ねッ!殺す気かよアイツ!」
どうにか避けることができたが、この速度域で当たっていたら間違いなく死亡事故確定だろう。
コアラコングは今度は後ろから小突いて事故らせようとしているらしい。
ザナヴィ「真後ろにぴったり付きやがって。ぶつけようとしてるのが見え見えだぜ。」
Yの字型の分かれ道が迫ってきた。右は第一京浜で、左は産業道路だ。
ザナヴィは右の第一京浜に進路をとった。コアラコングもそれに続く。
だが、ギリギリのところで左の産業道路に急転換した。
単純な不意打ちではあるが、相手も単純だったため作戦は成功した。
コアラコング「何ッ!」
コアラコングはザナヴィを追おうと無理に左折しようとした。
当然、曲がりきれる訳でもなく、第一京浜と産業道路の間の駐車場にまっしぐら。
轟音と共に、コアラコングとフォード・マスタングは撃沈した。
警察《10-25!追跡を続行するが、大量のCharieが必要だろうな。》
司令塔《現状を51へ報告願います。》
警察《現在3台のcord6を追跡中!最初の白いポルシェは逃がしてしまった。到底追いつけないだろうな。》
警察《こちらEagle。cord6の内の1台を見つけた。現在真上だ!》
ザナヴィ「真上・・・?」
雫石「あっ、真上にヘリが来ましたよ!」
エンジン音で聞こえづらいが、確かにヘリの音がした。
これで、どれだけ逃げ回ろうが完全に警察の視界から消えることは出来なくなった。
ザナヴィ「面倒なことになったな・・・だが、奴らの管轄を外れてしまえば、怖いものは無いはずだ。」
警察《ロードブロックは必ず右に交わせ!10-67が設置してある!》
産業道路をひたすら走り続け、多摩川にかかる橋が見えてきた。
あの橋に差し掛かってしまえば、もう神奈川県なので追ってくることは無いはずだ。
だが、橋の手前に再びロードブロックが出現した。
ザナヴィ「チィ!またこれかよ!」
急いで左折し、ロードブロックを回避する。
再び狭い路地を右折左折を繰り返しながら進んでいくと、吉田から連絡が来た。
吉田《ザナヴィさん、今大丈夫?》
ザナヴィ「全然大丈夫じゃないぞ!というか俺がどういう立場か知ってるだろう!イヤミか!」
吉田《こっちも、イヤミを言ってられるほど余裕じゃないんだよね。ホラ。》
よく聞くと吉田の電話の向こうで大量のサイレンの音が聞こえてくる。
警察に追い回されているようだ。
吉田《どうも県境の橋は全部封鎖されたみたいなんだ。このまま都内で逃げ回っても埒が明かない。》
ザナヴィ「そうだな。で、どうするんだい?」
吉田《逃走方法を変えよう。そうだな・・・中央防波堤の信号って言って分かる?》
ザナヴィ「ハイッ、雫石君、google先生に聞いてみて。」
雫石「はい。」
彼女は自分の携帯でググった。
中央防波堤はごみ処理センター位しかない埋立地だった。
その中で信号は一箇所しかないため、比較的すぐに分かった。
吉田《その場所に午前1時ジャストに落ち合おう。》
ザナヴィ「分かった。」
電話を切り、残り時間を確認した。
あと20分だ。
距離的には十分間に合うが、警察次第でいくらでも状況は変化する。
ザナヴィの走るエリアは大通りが少なく、住宅地を縫うように走り回り警察を撒いていく。
警察《目標の進路を固定できない!動きが予測不可能だ!》
不規則な動きで住宅地を駆けていき、逃走ルートを予測させないようにしていたが、これが更なる幸運をもたらした。
警察《10-25!狭いエリアにこれだけの車が集まったら逆に動きづらい!いったん散開しよう!》
バックミラー越しに警察同士でぶつかり、同士討ちになってしまったところが見えた。
パトカー達が散り散りになって、一旦距離を置き始めたようだ。
警察《10-44!ここからは少数で狙ったほうが良い。》
司令塔《間もなくTruckが数台到着すると思われます。》
警察《Cord6を発見!10-45を実行する!》
バックミラーから一台の1BOXタイプの車が追ってきた。
【ハイエース】というクルマのようだが、あれでザナヴィの車の速度についてきているのだから奇妙なものだ。
ハイエースはこちらに追いつくなり、何の躊躇いも無く後ろからぶつけてきた。
大きな衝撃が襲うが、バランスを崩すほどではなかった。
ザナヴィ「ちょっと待てよ!あれを喰らったら当たり所によれば死亡事故だぞ!日本っていつからこんな過激な国になったんだ!?」
時間は残り15分。そろそろ待ち合わせ場所に向かわないと間に合わないだろう。
ザナヴィはS30を最短ルートの方に走らせた。
ザナヴィは曲がる回数を少なくし、真っ直ぐに走り始めた。
しばらく真っ直ぐ走り続けると短い橋が見えた。
ザナヴィ「この橋を渡れば昭和島。地図で見ると、この先いくつか橋を渡ることになるな。」
警察《Cord6は昭和島方面に逃走!付近の車両は警戒せよ!》
ザナヴィ「こりゃぁ、橋を封鎖される前に渡りきれるかの勝負だな。」
クルマは昭和島の地を踏んだ。
公園の中の道路で、地図には載っていないようだ。
警察《10-70。急いで昭和島を封鎖しろ!》
真っ直ぐ進むと普通の道路に出るのだが、その手前に柵がある。
ザナヴィ「なぁ、あの柵吹っ飛ばせるか?」
雫石「やってみます。」
雫石は手を前にかざして、ツララを柵に向かって放った。
見事に柵は吹っ飛び、道を切り開くことが出来た。
再び道路に戻り、次の端へ向かう。
ザナヴィ「このまま真っ直ぐ進んで橋を渡って、その後の交差点で曲がれば最短ルートなんだが・・・」
やはり橋には警察が待ち構えていた。ロードブロックを準備しているところだった。
すぐさま別ルートに切り替え、もう一つの橋から目的地に向かうこととした。
警察《ロードブロックを回避されました!》
司令塔《もう一箇所の橋はどうなっている!》
警察《すいません、こちらの方は手薄でして。》
司令塔《何でもいいから早く止めろ!逃しましたで済む問題ではないぞ!》
司令塔の声の主が変わった。
ザナヴィと吉田はこの男性の声を知っていた。
いかにも悪そうな男の声・・・
ザナヴィ「コルテックスか。」
ザナヴィはもう一方の橋を渡りきり、昭和島を突破した。
後は橋を二つと海底トンネル一つ渡りきれば、目的地の交差点につける。
交差点を右に曲がったとき、一台のメタリックブルー車が後方から追い上げてくるのが見えた。
【シボレー・コルベットC6 ZR1】に乗る、星野舞姫だ。
星野「《ターゲットを発見。10-45を行います。》全く。あなたとは気が合いそうだと思ったのですが。
星野はザナヴィのクルマに軽くぶつけ、横にスライドさせてスピンさせようとしてきた。
出会った瞬間の不意打ちに、成す術も無くザナヴィのクルマはスピンしてしまった。
ザナヴィ(ウソだろォ!こんな所で・・・ッ!)
さっきまで前から後ろに流れていた景色が、今は右から左に高速に流れ出した。
星野「終わりましたね。こうも呆気無い物だとは。」
慌てるな!まずは力を抜いて、クルマの動きに身を任せるッ!――――
ハンドルもアクセルもブレーキもあえて動かさず、全身でクルマの動きを感じ取り、動きの乱れが収まるのを待った。
ザナヴィ(戻り始めたら、一旦クラッチを切って・・・もう一度入れなおす!)
全身に感じる手ごたえが変わった!
クルマが回転する動きから、前に前にと前進していく動きを取り戻した!
スピン状態から回復 そしてリスタート――――
星野「そんな!あの状態から立て直したッ!」
ザナヴィ「悪いな。俺はこんな所でズッコケてられないんだよ。」
二つ目の橋を渡りきった。
この先の信号で右折して、後はひたすら直進するだけ。
2台は信じられないような速度で最後の決闘を演じる。
追跡専用車両も追いつけないような速度で。
月の光でさえも、捕らえ切れないような速度で。
だけど不思議と二人の意識は重なり合った。
星野「何故あなたは我々と敵対する勢力に加わったのですか?逃げるだけならどこかに身を隠すだけでいいはずです。」
ザナヴィ「気が変わったんだ。島に出会って、雫石と出会って、吉田君と一緒に逃げ回って、そうしていく内に俺の気持ちが変わった。」
星野「世界を一つにまとめ、争いの無い世界にするという目的はどこへ消えて失せたのですか?」
ザナヴィ「それは消えちゃいない。俺が夢見る世界は変わらないさ。」
星野「ならば何故・・・?」
『正義』の名の下の破壊行為が正しいといえるのか――――
残りの橋を渡り、海底トンネルを抜け、目的の信号が見えた。
その時、交差点から3台の車が飛び出してきた。
それと同時にザナヴィの携帯に電話が入る。
吉田「ピッタリ1時だな!それじゃぁ、俺について来いよ!」
ザナヴィ「その前に、後ろに引き連れてる2台は何なの?」
吉田「あぁ、白のFDが俺の知り合い。銀のベンツは・・・まぁ、近くに来れば分かるだろ。」
ザナヴィは3台に近づく。
銀のベンツに乗っている者がやっと分かった。
ピンストライプだ。
ザナヴィ「ッたく、しつこいねぇ。で、この後はどうするんだい?」
吉田「ひたすらアクセル全開だ!」
ザナヴィ「はいはい。」
ピンストライプ「この先は地図に載ってないぞ!どういうつもりだ?」
星野「申し訳ないですが、私にも全く予想が付きません。」
建設中のフェンスをぶち破り、まだ未完成の道路を5台はひた走る。
上り勾配に差し掛かり、加速の勢いが少し衰える。
雫石「この先って、もしかして建設中の橋でしょうか。」
ザナヴィ「だとしたら、この先の展開で考えられるのは・・・」
星野「ピンストライプさん、この先は海です!これ以上は危険です!」
ピンスト「あぁ、ここまでだ。」
二人は車を減速させ、海に向かって走る3台を見送った。
ピンスト「まさかと思うが・・・」
そのまさかだった。
3台は未完成の橋を助走していく。
ありったけの加速力を振り絞り、空中に飛び出していく3台。
恐ろしいほどの浮遊感が全身に襲う。
しかし、それは狼の跳躍にも似て――――
数えれば10秒にも満たないこの瞬間が、奇妙なほどに長く感じた。
やがて向こう岸の橋が近づき、大きな衝撃と共に4本のタイヤがやっとの思いで地を掴む。
ピンスト《10-83。作戦は失敗だ。もう引き上げよう。》
星野《向こう岸は手薄になっていましたから、今からでは追いつけないでしょうね。》
コルテックス《クソッ!警察を洗脳してまで失敗しましたでは、ウカウカ様に何と言ったらよいのやら・・・》
吉田「作戦成功!港にカーフェリーを手配しておいたから、付いてきて!」
ザナヴィ「えらく都合のいい話だな。」
吉田「こう見えても顔が広いモンでね。」
東京湾のどこかの港――――
パトカーのサイレンも、獣の咆哮のような排気音も、上空で見張るヘリの音も、何も聞こえない港に着いた。
先ほどまでの戦いがウソのように静かだ。
ただ波の音だけが、名残惜しそうにささやいていた。
ザナヴィ「カーフェリーでどこに行こうって言うんだい?」
吉田「うーん、静岡の辺りだったかな。俺たちを逃してくれる人がその辺りで活動してるんだ。」
向こうから船の汽笛が聞こえ、カーフェリーが迎えに来てくれたようだ。
港に到着し、船に車を入れるための橋が下ろされた。
橋が降りると同時に、一人の男性が船に現れた。
吉田「ありがとな。舘さん。」
舘「困るんだよな。こんな時間に呼び出されちゃあ。俺のレーシングチーム全体が大迷惑だぜ。」
男性は舘舘広(たち たちひろ)という名前らしい。
日本のとあるレースチームでレーサーを担当している。
吉田「借りはサーキットで返すよ。みんな、車入れて。」
3台のクルマがカーフェリーに収納され、船は静岡を目指す。
冬の夜は長い。
銀色の月はまだまだ沈む気配がなさそうだ。
18202