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虚偽の魔術師 ~フロッド・レグナス~
2012/09/25(火)21:59:51(12年前) 更新
───眩い光が体を照らす。それと同時に、無数の人々の歓声が耳に入ってくる。
黒いスーツを身に纏った僕は、一人ステージの上で頭を下げる。
すると歓声は更に大きくなり、僕の体を包み込んだ。
「彼こそが、世界を魅了した奇跡の魔術師、フロッ・・・───
「フロッドくん、もう授業終わっちゃったよー?」
迂闊だった。僕はとっさに顔を上げると、目の前には無数の観客ではなく、数人の制服を着た生徒しかいなかった。
黒板には白いチョークで様々なことが書かれていたが、僕の机の上のノートには涎の跡しかついていなかった。
「いっつも、フロッドくんってネムネムしてるよね。夜更かししすぎてない?」
その言葉と同時に、僕の左肩に暖かい感触を感じた。
僕が左側を向くと、見慣れたクラスメイトの女の子が立っていた。
「ク、クロワさん・・・悪いんだけど、ノート見せてくれないかな・・・」
「いいよー」
クロワはそう言って自分の席へ向かい、すぐに一冊のノートを持って戻ってきた。
「はい、これ」
そう言って渡されたノートを、僕は少し照れながら受け取り、ページをめくりだした。
だが、其処に書かれていたのは学校で習った事ではなく、様々なお菓子、特にパンについてのレシピだった。
「こ、これは・・・?」
訳が分からない。いや、もしかしたら今日の授業は偶々パン作りに関する内容だったのかもしれない。
そう思いもう一度黒板のほうを見るが、黒板には小難しい数式が羅列されており、何処にも小麦粉やバターといった単語は見つからなかった。
「今日の授業中に考えた、パンのレシピだよー。寮に帰ったら早速作るんだ!明日フロッドくんにもオスソワケしに行くね」
「あ、ありがとう・・・でも、僕は今日の授業の内容のノートが見せて欲しかったんだけど・・・」
僕がそう言うと、クロワは少し悲しそうな目でこちらを見てくる。
「ごめんね。今日の授業、何だか難しかったから何にも書いて無いんだ」
「は・・・え・・・?」
ありえない。起きていたにも関わらず、ノートを一切取っていないツワモノがいるなんて。
「と、とりあえずこのノートは返すよ、ありがとう」
僕はそう言ってクロワにノートを返した。そして涙目になりながら、まだ湿った自分のノートに必死で黒板の文字を書き殴っていった。
「フロッドくん、あと一分で次の授業始まっちゃうよー?」
「ああ、分かってるよ・・・でも、ノートを取らないと、次のテストがぁ・・・」
僕が通っている学校は全寮制で、少し、いや物凄く変わった学校「ワルワルスクール」。
名前からして悪の雰囲気が漂ってくるが、その授業内容もとても世間で言い触らせないようなものばかりだ。
そんな学校に通っている連中なんて、頭のネジがぶっ飛んでいるような危ない野郎ばっかりだ。
しかし彼女・・・クロワは何かが違う。確かに頭のネジは殆ど全て外れているが、他の連中とはオーラが全然違って見えた。
彼女には人をひきつける何かがあった。彼女はどんな相手であろうと裏表なく接し、誰とでも友達になっていた。
一方で僕は、少し引っ込み思案で友達と呼べる相手は少なかった。だからかもしれないが、僕は彼女の存在が少し嬉しかったのかもしれない。
昼休み、僕は自分の席でトランプをシャッフルしていた。
「おお、フロッドの手品ショーが始まるぜ!」
そんな男子生徒の声が教室に響くと、他の生徒達も次々と僕のほうを見つめてきた。
いつもは陰に潜んでいる僕が、光り輝くことの出来る時間、それがこの昼休みのマジックショーだ。
何人もの生徒達が、僕の机を取り囲み、キラキラした目つきで僕のほうを見てくる。
いや、正確には僕の握っていたトランプを見ているといったほうが正しいのかもしれない。
「さてと、今日はあえてシンプルなマジックでもしようかな。まずは、カードに小細工を施してないか良く確認して、シャッフルしてくれるかい?」
僕はそう言って、右斜め前に立っていたヒョロっとした男子にカードを渡した。
「きょ、今日こそタネを見破ってやるんだからな!」
男子はそう言いながら必死でカードを確認していく。もちろん、カードには何も細工はしていない。
そして一分以上念入りにカードをシャッフルした後に、男子は怖い目つきをしながら僕にカードを返してきた。
「そんなに睨まなくたっていいじゃないか。さて、此処から更にカードをシャッフルするよ」
僕はカードを慣れた手つきでシャッフルする。その光景を見ただけで、どよめきを起こす生徒までいた。
「じゃあ、誰か一人にカードを一枚選んでもらおうかな・・・あれ?」
取り囲む生徒の中に、僕はクロワを見つけた。彼女が昼休みに教室にいるのは珍しかった。いつも誰かと一緒に外で遊んでいたからだ。
「カードを選んでもらうのは・・・クロワさん、お願いしていいかい?」
僕がそう言うと、クロワは一瞬驚いた表情を浮かべた。
「え、私?初めてフロッドくんのマジックを見るのに、いきなり大役を任されちゃうなんて緊張するなー」
「フフッ、別に緊張なんてしなくていいよ。この中から一枚カードを抜いて、皆に見せてもらいたいんだ。その間、僕は後ろを向いて何の数字かは見えないようにする」
席から立ち上がり、クロワに向かって僕はトランプを広げた。
「うーん、そうだなー、どれにしようかなー?」
クロワはそう言いながら、どのカードを引くかとても悩んでいた。
どのカードを取っても、このマジックには何の影響も無い。だけどこうやって迷わせる時間を与えるのも、マジシャンの役目でもある。
だが、客の中にはそれが気に食わない者だっている。
「おい、早く決めろよ!」
さっきのヒョロッとした男子はそう言って、クロワのほうへ歩み寄っていった。
そして、あろうことかクロワを両手で押し出したのだ。
彼女は小柄で、男子の両手の力が加われば簡単にこけてしまうほど弱かった。
「あ!」
案の定、クロワは地面に倒れこみ、うずくまってしまった。
「クロワちゃん!?」
「大丈夫!?」
「ちょっと、謝りなさいよ!」
そんな女子の野次がさっきの男子に次々と降りかかっていた。
「ヘッ、こいつがウジウジとしてるから悪いんだよ!この馬鹿女!」
その時だった。不意に僕の左手が、一枚のカードを掴み、そのまま男子に向かってカードを投げた。
カードは想像以上に良く飛んだ。そして僕の使っていたカードはプラスチック製だった。
だからかもしれない。カードの軌道は男子の首筋を正確に捉え、一筋の赤い線がその男子の首に生まれた。
「あっ・・・」
その男子は何かを言うことすら適わなかった。紅き水は止まる事を知らず、男子は床に倒れこんだ。
教室は、一瞬にして地獄と化した。
どうしてだ、どうしてまたやってしまったんだ。
もう二度とやらないと心に誓ったはずなのに、どうして・・・
その男子が前から嫌いだったからか・・・それとも、男子がクロワを突き飛ばしたからなのか・・・?
理由なんて分からない。だが、僕はまたしても罪を犯してしまった。
しかしなんでだろう。不思議とあの時と同じ気持ちが溢れ出る。
「はい・・・そうなんです・・・え、そうだったんですか・・・では、また後ほどご連絡致します」
校長室に呼ばれたことなんて初めてだ。でも、できればもっと良い用事で此処に来たかった。
「フロッドちゃん・・・先ほどあなたと、相手の親御さんに例のお話をしました」
アンバリー校長、この学校で最も恐ろしい存在だと言われている。だがその校長は、今はしんみりとした表情を浮かべていた。
「あたしもねぇ、ちょっとぐらいの喧嘩だったら笑って見過ごしてあげるんだけど、こんなことになってしまった以上は、厳正に対処しなければいけないのよ」
「あの・・・あの子、結局・・・」
「・・・教師が駆けつけるのが少し遅かった。だから、あの子は・・・うう・・・」
校長は言葉の途中で涙を流した。
此処にきて、改めて事の重大さに気づかされる。だが何故か僕の口からは謝罪の言葉が出て来ない。
「・・・フロッドちゃん、親御さんから聞いたわ。あなた、お父さんを亡くしているのね」
お父さん、その言葉を聞いた瞬間急に心臓の鼓動が早まる。呼吸が荒くなり、吐き気を催す。
僕はうつむき、両手で胸を押さえた。
「ご、ごめんなさい!あたしったら、何てデリカシーのないことを・・・」
思い出したくないのに、脳裏に焼きついている・・・あの日、あの時、あの出来事。
同じだ、今回と同じだった。僕はお母さんにトランプマジックを見せていたんだ。
なのに、其処にあの男・・・お父さんが酒瓶を持ってやって来る。
それを使ってお母さんの頭を殴り、怒号を浴びせる。酒は無いのか、と。
見慣れた光景だったはずだ。なのに、僕は無意識のうちに一枚のカードを手に持っていた。
そして気がつけば放心状態の僕とお母さん、それに血の海に倒れたお父さんがいたんだ。
その時も、やはり同じだ。なんとも言えぬ感情・・・
「怒りと・・・快楽・・・」
「フロッドちゃん?」
「そうだ・・・マジックを邪魔される事による怒り、そしてその怒りの元となった相手を殺すことによる快楽・・・フフフ、やっと分かったよ」
僕は立ち上がり、校長の顔を見た。その時の校長の顔はなんとも滑稽だった。
まるで異形の生物を見たかの如く、恐怖と嫌悪感が厚化粧の顔から滲み出ていた。
「校長、僕は今日限りでこの学校を辞めさせてもらいます。お母さんには、しばらく家を開けると伝えておいてください」
僕には、あの学校に入学した理由があった。
ある御伽噺・・・その内容はきわめて単純で、魔法使いを恐れる者達が、魔法使いを次々と殺めて行く話だ。
もちろん、子供向けに脚色はされていた。でも、僕にとって其処は重要じゃない。
魔法の存在。それが僕には重要だった。
その御伽噺を初めて聞いたときから、僕は魔法に惹かれていた。マジック・・・偽りの魔法が好きなのもこれが理由だ。
僕は魔法について詳しく知りたくて、あの学校に入った。特別な学校でなら、魔法のことが分かるかもしれない。でも、学校では魔法に関することなんて一切分からなかった。
退屈だった。学校生活全てが退屈で、何の意味もなかった。
でも、マジックを見せていたときと・・・あの子が傍にいた時間は、退屈じゃなかったように思える。
適当に荷物をまとめた後、僕はかばんを背負って寮の廊下を歩いた。
噂が流れるのは早い。すれ違う生徒は、揃って獣を見るような目で僕を睨んだ。仕方が無い、僕はこの学校では殺人鬼なのだから。
だが、ただ一人、彼女だけは違った。
黙々と歩く僕の前に、彼女は突然飛び出してきた。
「フロッドくん、学校辞めちゃうの?」
クロワの言葉に対し、僕は足を止めて何も言わず視線を落とす。
「そんな・・・私、もっとフロッドくんのマジック見たかったのに・・・」
どうして彼女は、僕に恐れをなさずに接してくれるんだろうか。
「どうして・・・君はそんなに優しいんだ?」
僕は下を向いたまま、小さな声で呟いた。
「だって・・・友達だから、だよ」
「友達・・・?あまり話したことの無い僕が・・・?」
「うん。一度でもお話すれば、みんな友達」
友達、その言葉を聴いた瞬間、僕の胸はまたしても痛み出す。
だがこれは違う。あの快楽の類じゃない。もっと熱く、経験したことのない痛みだ。
「・・・だったら、約束するよ」
「え・・・?」
「僕がもっと凄いマジックを手に入れたら、君の所に戻って、一番最初に君に披露する」
「でも、それじゃあ・・・」
「ああ・・・そのマジックを手に入れるためには、どうしても学校を辞めないといけないんだ。でも、絶対そのマジックは君を失望させない。だから、それまで待っていてくれるかい?」
「・・・うん、楽しみにして待ってる!」
クロワはそう言って、フロッドに対して満面の笑みを見せた。その頬には、幾つかの宝石が流れていた。
快楽、それは僕にとって怒りの先に生まれるものだ。
だから僕はそこら辺にいるような、殺し自体に快感を得る殺人鬼とは毛色が違う。
まぁ、快楽を得るための怒りなら、少しぐらい経験しても良いんだけど。
学校から何とか抜け出せて、僕は今まで訪れたことの無い土地へ足を運んだ。
見ず知らずの土地で生きて行くには、金が必要だ。それもかなりの額が。
それを得るのにうってつけだったのが、殺し屋だ。
「マジックを利用してターゲットを仕留める?あんた、言っちゃ悪いけど馬鹿じゃないの?」
同じぐらいの歳の癖に、なんと生意気な女だ。
ある日、所属する組織が一緒な事もあって、同じ年頃のメンバーで集まることになった。とはいってもたった三人だけだったが。
とにかく、僕にとってこういうのは不愉快極まりないイベントだ。
「いいかい、殺しっていうのは殺すために作られた武器を使って行うものなのよ。例えば、この私の相棒達のように」
そう言いながら、痴女みたいな格好をした女は得意げな表情を浮かべつつ、腰に差していた銃を手に持ってクルクルと回し始めた。
「・・・ジェロシア、酒が不味くなる。銃をしまえ」
と、一人の女性はグラスを片手に持って呟いた。
「フン、相変わらずプレッツェはそうやって無愛想にしちゃって。私はこうやってあんた達と少しでも親睦を深めたいと思ってこの会を開いたの・・・今夜は返さないわよ」
「・・・悪いけど、君達と馴れ合うつもりは一切無い。僕は友達作りの為にこの仕事をやってるんじゃないんだ」
「同感だ」
「ホント、つれない野郎達。で、フロッドとか言ったわね・・・ちょっと私にマジックの一つや二つ見せてくれるかしら?」
「そういうことなら、喜んで」
「・・・訳の分からない男だな。マジックのことになると、まるで子供みたいな表情になる」
例え相手が誰だろうと、僕のマジックを見たいというのなら、喜んでマジックを行う。
マジックを見せるのが好きだからなのかもしれない。それゆえに、マジックを邪魔されると怒りがこみ上げるのかもしれない。
その晩は、僕が終始マジックをするだけに終わった。酒が入っていたからかもしれないが、二人の女性は文句一つ言わず、ずっとマジックを見続けていた。
僕は殺し屋として金を稼ぐ一方で、魔法に関するありとあらゆる情報を調べた。
いつか必ず、彼女の元に戻るため。友達と呼んでくれた、彼女を失望させないために。
今では僕はマジック自体で食っていけるぐらいにまで成長した。
もちろん、稼ぎの良い殺し屋の仕事も続けてはいるが、それ以上にマジシャンとして活動することが多くなった。
だが、まだ本当の魔法は手には入っていない。もう少しの辛抱だ。もう手がかりは全て掴めている。
今はひたすら金を稼ぎ、そして本当の魔法を、この手に収めるんだ・・・
───「やっとこのお店にも、テレビがやって来たねー!」
「そうだな。シュトーレ、配線は繋がったか?」
「これで大丈夫。じゃあ、つけるよ」
明るい部屋の隅で、テレビが光を放つ。
「わぁ、マジックショーの番組だー!懐かしいなぁ」
「クロワって、マジックのショーでも見に行ったことあるの?」
「ううん。学校の友達が、マジックが大好きでねー」
「私はむしろ苦手だな・・・色々嫌なことを思い出す」
「あ、次の人のマジックだって・・・な、何かギラギラしてる・・・髪型とか・・・」
テレビの中で、眩い光が一人のマジシャンを照らす。それと同時に、無数の人間の歓声が流れてくる。
黒いスーツを身に纏い、青いメッシュの入った髪の男性は、一人ステージの上で頭を下げる。
すると、歓声は更に大きくなった。
「彼こそが、世界を魅了した奇跡の魔術師、フロッド・レグナス!!」
その名前を聞き、クロワは驚愕した。
「フロッドくん!?」
「・・・クロワ、彼とは知り合いか?」
と、プレッツェは険しい顔をしてクロワに尋ねた。
「・・・私の友達、だよ?」
~Fin~
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