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みぞれ ~雨宮空&淡雪空~
2012/10/27(土)19:27:16(12年前) 更新
コピー、偽者、まがい物・・・
僕らを一言で言えばそんな感じの言葉が浮かぶ。
本物には、勝てない・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――
少年は大きな檻を引いている。
檻の中では、先ほどまで森でいつもどうり暮らしていた動物たちが詰め込まれている。
???「また捕まえてきたの?」
少年「うん。」
少年に話しかけた女の子は、静かに問う。
???「・・・あたし、先に部屋に戻ってるね。」
少年「うん。」
少年は無表情で檻を引きずり、廊下の奥の大きな鉄の扉を開けた。
部屋の中では科学者が数人と、中央に大きな装置、その奥には無数の檻があった。
???「おお、戻ってきたか。ずいぶんたくさん捕まえたな。そいつらを部屋の奥の檻に入れてくれ。」
少年「はい。」
少年は言われるままに動物たちを一匹ずつ檻に入れた。
動物たちの悲痛な叫びに戸惑いつつも、ただ淡々と少年は作業を続ける。
大量の動物たちをやっとのことで檻の中に入れ終わると、少年は科学者からの次の命令を待った。
???「終わったか。なら、今日はもう休んでいいぞ。」
少年「はい。」
鉄の扉をあけて廊下に出る。
どこにも寄り道せず、誰とも言葉を交わさず、一切表情を崩さず、少年はただ淡々と自分の部屋への道を歩く。
部屋に入ると、先ほど少年に話しかけた少女が待っていた。
少女はここぞとばかりに少年を問い詰める。
少女「今日は何匹捕まえたの?」
部屋の外とは言葉の勢いが違った。問い詰めるような勢いだ。
少年「49匹。」
少年は淡々と答える。
少女「その49匹、あの後どうなると思う?」
少年「知らない。」
少女「へんな機械で改造されて、下手したら洗脳されちゃうかもしれないんだよ!」
少年「そう。」
少女「酷い事してるって思わないの?」
少年「分からない。」
少女「・・・ッこの不感症ッ!」
少女はそう言い残して自分の部屋に行き、大きな音を立てて扉を閉めた。
その様子を見て、少年は小さな声でつぶやいた。
少年「自分が何なのかも分からないのに、そんなの分かるわけないだろ。」
この部屋は二人部屋だ。
リビング、先ほどの少女の部屋、そしてこの少年の部屋。
少年は自分の部屋に静かに入り、すぐにベッドに入った。
部屋には必要最低限のものしかない。
少年の心は乾いていた――――
――――翌日――――
少年に新たな命令が出された。
昨日の科学者たちの元へ行き、命令を聞きに行く。
どうやら今回はいつもとは違った命令らしい。
鉄の扉を開け、部屋に入った。
???「来たか。今回の任務は、お前には少し難しいかもしれん。だが、もしやり遂げたとしたら、お前は『本物』になれるかもしれん。」
少年「どういう事?」
???「・・・直に判る時が来るだろう。その為に、この男を連れてくるのだ。万が一の場合は討伐してかまわん。」
少年「分かりました。」
少年は科学者から資料を受け取った。
一人の男について書いたにしては少し分厚く、対象の男について事細かに書かれているのがその厚みだけでも分かる。
同時に、これ程この男を重要視しており、重要な任務だという事がページを開かなくても伝わってくる。
少年は資料を開き、ざっと目を通そうとした。
少年「・・・!?」
最初のページの顔写真で、少年はいきなり驚いた。
???「どうした?」
少年「あ、いえ・・・行ってきます。」
少年は動揺を隠しつつ、準備のために部屋に戻った。
だが、部屋の前で少年の足は止まった。
一つだけ、どうしても確認したいことがあった。
少年の足はトイレへと向かっていった。
トイレの手洗い場で彼は歩みを止め、そして鏡を見つめた。
討伐対象の男の顔写真と見比べてみる。
少年「・・・似てる・・・。」
自分とそっくりの顔だ。
顔の輪郭、髪質、目の感じ・・・
そっくりどころか、自分の未来の姿を見ているような気さえする。
さらに、偶然だろうか?
この男も【おおかみおとこ】なのだ。
――――夜 箱根 芦ノ湖スカイライン――――
全長約11kmのこの道路の途中にある休憩所で、一台の古い車が止まった。
茶髪で少しクセッ毛の男性と、着物を着た長髪の女性の二人だ。
???「結構長い間走ったんだな。ご飯でも食べに行くか。」
???「はい。私も、お腹がすいてきました。」
二人は仲の良さそうに会話をしていたが、突然、男性が駐車場脇の草むらのほうを見た。
何かに気付いたかのようだった。
???「悪い、先行っててくれ。」
???「あ、はい。」
男性は相手の女性が建物の中に入るのを確認した後で、草むらのほうに向かって話し始めた。
???「日本でオオカミってのは絶滅したんじゃなかったのか?」
その言葉に反応してか、草むらから2本の刀を持った少年が飛び出してきた。
???「そのまま隠れて居ればよかったものを。」
少年「ザナヴィ・ゼクセル。あんたを捕まえに来た。」
ザナヴィ「えっ・・・!」
ザナヴィは今世紀最大というくらい驚いた。
そのくらい、ザナヴィと少年は似ていたからだ。
少年「大人しくして捕まれ。」
ザナヴィ「やだね!」
ザナヴィはおおかみの様な跳躍で少年の背後を取った。が、攻撃はせずに駐車場から離れていった。
少年「待て!」
少年はザナヴィを追いかけた。
しばらく追い続けると、ザナヴィは駐車場から十分離れたところで止まった。
ザナヴィ「ここまで来れば、誰にも迷惑かけずにサシの勝負が出来るだろ。」
少年「そうだね。」
ザナヴィ「そう言えば、アンタは俺の名前を知っているが、俺はアンタの名前を知らない。教えてくれないか。」
少年「・・・雨宮空。」
ザナヴィ「そうかい。」
ザナヴィは3mの刀を出現させ、構えた。
雨宮も二刀流で構えた。
少しの間、お互いが相手の様子を伺っていた。
ザナヴィ「来いよ。お前の力、見せてみろ!」
雨宮はザナヴィに一瞬で接近して日本の刀で横に斬りつけようとしたが、3mの刀で弾かれて、雨宮は体制を崩してしまった。
すかさずザナヴィは高速居合い斬りで反撃した。
雨宮「うぅッ!」
雨宮はほとんどマトモに攻撃を喰らってしまい、かなりの大怪我を負ってしまった。
だが、それでも彼は戦おうとした。
――――コルテックス城――――
雨宮と同じ部屋で過ごしている少女は、なんだか落ち着かなくなり、どこへ行くわけでもないが城の中を歩き回っている。
階段を早歩きで上っていく途中、踊り場のあたりで2人の青年が話し合っているのが見えた。
少女は二人と直接話したことはないが、名前くらいは知っている。
セリカとジーク・マサキだ。
セリカ「【レプリカ計画】?」
ジーク「そうだ。あの二人の子供はその計画のために生み出された。」
セリカ「なるほどな。どうりで似てると思ったぜ。」
少女は聞いてはいけない機密事項を聞いてしまったと思った。
だが、なぜか自分について話している様にも聞こえた。
階段の手すりに隠れ、息を潜めて話を聞き続けた。
ジーク「だが、問題は二つある。」
セリカ「何!?」
ジーク「一つは戦闘能力だ。色々と強化してあるとはいえ、所詮は子供の肉体。底は知れている。」
セリカ「で、もう一つは?」
ジーク「奴らの心だ。10代で知ったものというのは、影響力がでかい。たとえばある青年は、10代でクルマと出会い、その魅力を知り、虜になった。またある青年は、10代で家族を飛行機事故で滅茶苦茶にされ、その出来事は現在でも彼の心の痣(あざ)となっている。もしあのレプリカ少年が敵方に大きな影響を受ければ、下手をすれば向こうに寝返ってしまう可能性もある。」
セリカ「その二つの問題点を検証するために、【オリジナル】のところへ向かわせたのか?」
ジーク「だろうな。見込みは薄いだろうが。」
どういう事かよく分からないが、奇妙な胸騒ぎだけがはっきりと感じられた。
セリカ「もし、今回の任務でレプリカ達が裏切ったりしたらどうするんだ?」
ジーク「そのときは、俺が雨宮空と淡雪空を消すさ。」
――――箱根 隠れ家――――
「あ、目が覚めたみたいですよ。」
優しそうな女性の声で僕は目が覚めた。
ここはどこかの民家だろうか。明るい色の壁や家具が、家の中の温かさを感じさせる。
ザナヴィ「起きたか。しっかり休んどけよ。」
雨宮「あっ!あんたは!・・・痛ッ・・・。」
雨宮は斬撃を受けたところを押さえた。
痛みはあるが、傷はすっかり塞がっていて大事には至らなかったようだ。
だが、いったい誰が治したのだろう。
女性「あまり動かないでください。ゆっくり休んで、傷をしっかり治してくださいね。」
雨宮「あんたは?」
雫石「私は雫石こまちです。私が治したんですよ。その傷。」
雫石は冗談っぽく笑った。
ザナヴィも優しく笑っていた。
お互い敵であるにもかかわらず、相手に向かって笑っていられるのは雨宮にはただただ異様にしか見えなかった。
雨宮はその日はとりあえず休むことに徹した。
――――翌日の夜――――
日が沈んで月が昇り始めたころ、雨宮の傷は完治した。
痛みもすっかり消えて、いくら動き回っても大丈夫そうだ。
雨宮「今度こそ・・・。」
雨宮はザナヴィを探して隠れ家の中を歩き回った。
家の中には居ないようで、庭や倉庫のあたりを探し回ってみた。
だけど庭はねずみ一匹の気配すらなく、倉庫ではザナヴィではなく雫石が何か作業をしていた。
雫石「あ、傷、治ったの?良かったね。」
彼女は雨宮に微笑んだ。
雨宮はふと思ったが、彼女はなんとなく淡雪に似ている気がした。
ザナヴィが自分の未来の姿に見え、雫石は淡雪の未来の姿に見えた。
雫石「どうかした?」
雨宮「いえ、何でも。ザナヴィさんはどこに行かれたんですか?」
雫石「きっと、芦ノ湖スカイラインじゃないかしら?ほら、ガレージに車がないでしょ?彼はよくあの道でレースしにいくの。」
倉庫の隣のガレージは肝心の車が消えていた。
やはり芦ノ湖スカイラインに行ったに違いない。
雨宮は狼の姿になり、月の光しか浴びれない森を駆け抜けていった。
――――芦ノ湖スカイライン――――
ザナヴィの銀色の古い車が、右に左にうねる道を疾走していく。
芦ノ湖スカイラインの終点で一気にUターンし、再びうねる道を駆け抜けていく。
左のコーナーを微妙にドリフトさせながらクリアし、続く直線でアクセルを踏み込もうとしたとき・・・
ザナヴィ「うおっ!」
ザナヴィは急ブレーキをかけてクルマを停車させた。
クルマの数cm前には雨宮がたっていた。
ザナヴィ「何してんだお前!マジで死ぬ気か!シャレになんねーぞ!事故ったら!」
雨宮「もう一度、僕と戦ってください。」
ザナヴィ「えっ!?」
雨宮「もう一度、僕と戦ってください!」
ザナヴィ「・・・・・・。」
ザナヴィは返答に困り、しばらく黙っていた。後ろから乗用車が1台、自分たちを追い抜いていったのを見て答えた。
ザナヴィ「こんな所だと邪魔になるから、場所を移そう。乗って。」
確かにその通りだと雨宮は思い、ザナヴィの車の助手席に座った。
古い車だからか、それとも改造車だからか、とにかく乗り心地が悪い。
ほんのわずかな路面のヒビも大きな衝撃にしてしまう車に揺られ、たどり着いたのはザナヴィと最初に接触したあの駐車場だった。
車を止めて、ザナヴィは先ほどの返答をした。
ザナヴィ「さっきの頼みだけど、悪いけどパスだね。」
雨宮「どうして。」
ザナヴィ「戦ってもいいけど、結果は目に見えてるんじゃないか?」
雨宮は反論できずに黙りこくってしまった。
最初の接触では、ほとんど一撃でやられてしまったようなものだったからだ。
さらにザナヴィは諭すように雨宮に言う。
ザナヴィ「大体、君みたいな子供が剣を振るうこと自体がマズイんじゃないか?命がけの戦いに子供を担ぎ出すなんて、コルテックスの奴も酷いもんだ。」
雨宮「分かってたの?」
ザナヴィ「俺の命を狙う奴って言ったら、心当たりは一つしかないからな。」
ザナヴィは刃を向けた相手に優しく諭した。
言葉だけじゃない。最初の接触で圧倒的な力の差を見せ付け、後に諭す言葉にさらに強さを与えている。
雨宮はザナヴィに対し、これは一生かかっても敵わない敵なんじゃないかと思い始めた。
ザナヴィ「そういえば、前にも居たんだよな。今の君みたいに、ターゲットを仕留め損ねて、見知らぬ人に傷を治してもらったけど、実はその人は敵で、最後はその人に諭されるように今まで居た勢力を裏切った奴が。」
雨宮「へぇ・・・ぇ。」
ザナヴィ「ただ、一つだけ、決定的に違うんだよな。」
雨宮「何が?」
ザナヴィ「んー、なんて言おう。難しいな・・・・・・」
ザナヴィはバックミラーを自分の顔が移る位置にずらし、少し間をおいてから雨宮の顔を見た。
ザナヴィ「目・・・かな?」
雨宮「???」
読者の方にはサービスで伝えておくが、ザナヴィが言おうとしたのは【意思】である。
ザナヴィは、医者の島が余計な事(笑)をしてくれたおかげで、コルテックスの勢力から追われる立場となった。
だが、コルテックスの勢力から【逃げる】のではなく【戦う】事を選んだのは彼の意思だ。
彼らの正義に疑問を感じたから、ザナヴィは戦う事を選んだ。
だけど、雨宮の目には【意思】だとか【決意】だとか言ったものは全く感じられない。
コルテックス勢力時代のザナヴィと同じく、命令をただこなすだけの目だ。
ザナヴィ「ま、表の空気吸って、よく考えれば分かると思うよ。」
ザナヴィはクルマから降り、両腕を伸ばして軽く体を動かしてから、駐車場を歩き回った。
雨宮もつられて車を降りた。
季節は春とはいえ、夜になるといまだに寒さが残っている。
この辺りは山が多いためか、所々で雪が残っているのも見られる。
なんとなく周囲を見渡していると、遠くから車の音が聞こえてくる。
雨宮(すごい轟音だな。)
どうやら3台の車が競争をしているようだった。
前の2台が2車線の狭い道路を横並びで走り、後ろの1台はその2台の隙をうかがっている。
3台が駐車場の目の前の左コーナーに入った。
この部分だけ、道幅が少しだけ広がる。
前の2台がお互いプレッシャーの掛け合いになり、コーナーの外側に流れていくのを、後ろの1台は見逃さなかった。
広くなった道幅を利用して、前2台をコーナーの内側から追い抜こうとした。
雨宮(危ない!)
3台が横並びになりコーナーを抜けていく。
駐車場前の左コーナーを通り抜ければ通常の狭い2車線道路に戻る。
つまり、3台が並んで通れる幅は無くなる。
誰かがアクセルを抜かなければ事故は免れない!
雨宮(うわっ!)
雨宮を含め、その光景を見ていた誰もが事故を覚悟した。
だが、狭い部分になる直前で、一番左側の車がアクセルを抜いて減速した。
雨宮は、この10秒に満たないほどのわずかな間、3台にほとばしる闘争心をはっきりと感じた。
お金にも名誉にもならない公道レースに、命を賭けたといわんばかりのそのテンション。
雨宮は一瞬で虜になった。
雨宮(すごい・・・僕も、ああいう風になれるかな・・・)
こんな血が騒ぐような感覚は初めてだった。
雨宮は決意したように空を見上げ、森のほうに走っていった。
この任務から、彼はまるで別人のように変わっていった。
――――コルテックス城――――
「車があったらいいだろうな。」
霙の降る日、突然雨宮は独り言のように言った。
淡雪「は?」
雨宮「車を買う。中古でも新車でも、とにかく自分で選んだ車。エンジンをかけて、アクセル踏んで、ハンドル切って、遠くの知らない場所まで行って。――いいだろうな。それから、ホイールやウイングを付けて自分好みの外観にして、その後にエンジンや車体を改造する。何をしたっていい。自分の車だから。」
今までとは違い、雨宮は饒舌だった。
本当に好きなものについて話している様だった。だが、彼の表情はどこか遠いものを見ているようだった。
窓の外の、霙が降っている庭の向こうの、低く垂れ込めた雨雲の向こうの、どこか遠い何かを。
淡雪「・・・・・・。」
淡雪はただ黙って聞いていた・・・。
それからというもの、雨宮は目に見えて変化していた。
任務はこなすが、寄り道が多くなっていった。
どこへ行っているのかは知らないが。
任務が休みの日は一日中どこかへ出かけていた。
淡雪がどこに行ったのか尋ねると、雨宮は「先生のとこ。」と、謎めいた発言をしだした。
あまりにも外出が多すぎるので、コルテックスに怪しまれてしまい、とうとう淡雪の元に『雨宮を尾行せよ』という任務が課せられてしまった。
コルテックス「勘違いしないでくれ。これは彼のことを本当に心配しているから君に任せた任務だ。」
そう言っていたが、任務に同行させずに『尾行』という風にしたのは、心配ではなく怪しんでいるからだろう。
淡雪は嫌な役目を背負わされたと思ったが、とりあえず首を縦に振っておいた。
他の人がやると彼の身が危ないかもしれない。
任務を告げられて、部屋に戻る淡雪の表情は曇っていた。
雨宮「行ってくる。」
淡雪と入れ替わるように雨宮が部屋を出た。
パタン、と扉がしまった後、淡雪は大急ぎで出かける仕度をした。
仕度が終わると部屋を出て、雨宮の行方を追った。
手がかりも無いまま、あちこちを探し回ってみたが、そんなテキトーな探し方では見つかるはずもない。
ため息をつき、ふと窓に目をやる。
雨と雪が混じった霙が今日も降っている・・・。
淡雪「あっ。」
海の近くに雨宮を見つけた。
小さなクルーザーに乗り込み、霙に荒れる海へ駆け出した。
淡雪は駆け足で船着場へ向かい、別の船を手配した。
彼女はまだ船の操縦は出来ないので、作業員に頼んで船を出してもらった。
淡雪「さっき出て行った船を追いかけて!早く!」
作業員は言われたとおりに淡々とした動きで船を出した。
今日の波は高く、雨雲は低い位置にあり、おまけに霙で視程は悪い。
前方の波間に見え隠れするもう1台の船は、どこか自分の知らない遠くへ行ってしまいそうに彼女には見えた。
――――おわり――――
18221