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サーキットのおおかみこども ~雨宮空&淡雪空~
2012/10/31(水)23:36:22(12年前) 更新
『雨宮空を尾行せよ。』
命令どうり淡雪は彼を尾行し続けた。
彼の乗っている船は港から離れた断崖絶壁に停泊した。そして彼は狼の姿で岩を駆け上っていき、森の中に消えていった。
淡雪もそれに続こうと、船を断崖絶壁に止めてもらい、人の侵入を拒むかのような岩山をゆっくりと力いっぱい上っていった。
淡雪(雨、アンタ一体どこに行こうとしてるの?)
上っていくうちに手足に擦り傷ができ、ズボンや服はところどころ破けて彼女を更に野生児らしく見せていく。
そして振り向けば悪天候に荒れ狂う波が、岩山を砕かんばかりに押し寄せてきている。
狼の姿ならば幾らか楽に上れるのだろうが、それでも、こんなに恐ろしい所を通ってまで彼はどこに行きたがっているのだろうか。
やっとの思いで絶壁を登り終え、彼との広がった距離を縮めようと、狼の足跡を頼りに森の中を走る。
淡雪(ホントにどこに行ったの?)
森を越え、車の道路を渡り、電車の線路を2回ほど横切って、また森を駆け・・・。
一体どれだけの時間、どれだけの距離を歩いたのだろうか。
霙もすっかり止み、霊峰富士が夕焼け色に染まった頃、森が途切れてだだっ広い草原になった。
草むらから顔だけ出し、辺りを見回してみた。
淡雪(あっ!)
遠くのほうに人の姿に戻った雨宮が居た。
駐車場で誰かと話をしている。茶髪の青年で、どこか雨宮に似ている。
二人のそっくりな姿に見とれていると、雨宮が何かに気付いた様にこちらを見た。
あわてて草むらに姿を隠す淡雪。
淡雪(やばっ、見られちゃったかな?)
少しの間をおいてから恐る恐る顔を出して様子を見ると、雨宮は何事も無かったかのように青年と話していた。
ホッとして、また二人の様子を伺った。
雨宮と話ている青年。見た感じだと悪い人ではなさそうだが、見知らぬ相手である以上、警戒しておく必要があるだろう。
青年の写真を撮ったりはしなかったが、その顔をしっかりと目に焼き付けておいた。
日もすっかり沈み、空は星と月が支配し始めた頃だ。
雨宮が青年と一緒に車に乗ってしまった。
淡雪(げっ、車に乗られたら、追っかけられないじゃない・・・)
淡雪はその日の尾行をあきらめて、また長い道のりを戻り、コルテックス城へと帰っていった。
――――コルテックス城――――
部屋に戻った淡雪は迷っていた。
雨宮がこっそり表の世界に出ていて、誰かと接触している。
この事は報告すべきだろうか?
報告したら、きっと彼はますます怪しまれる。行動が常に監視されるかもしれない。謹慎処分で行動に制限がかかるかもしれない。
最悪の場合・・・処刑・・・?
淡雪(そんなの、絶対嫌!)
淡雪はベッドに突っ伏して寝転がった。
長い行程に疲れたのか、そのまま深い眠りについていった。
雨宮が帰ってきたのは朝方のことだった。
パタン、と扉を閉める音で、淡雪は目を覚ました。
雨宮「ん、起こしちゃった?」
淡雪「う、ううん。大丈夫。」
雨宮「でも、声が寝起きみたいだよ。それに、髪の毛も乱れてる。」
あんたを尾行してたからこうなったのよ。とは言えなかった。
彼女は一体どれだけ彼の事を心配していたのだろうか。寝起きの声と乱れた髪がそれを物語っている。
だが、彼はそんな事はお構い無しに喋り続けた。
雨宮「そうだ、雪も先生のところでクルマの事教えてもらおうよ。すごく面白いと思うよ。クルマを速く走らせるのって結構難しいんだよ。コーナーの曲がり方とか、ハンドルやアクセルの上手い操作のしかたとか。任務なんかよりずっと楽しいよ。路面の読み方や天気の変化への対応、それに、相手のクルマを追い抜くときの駆け引きや気遣いなんかも――」
淡雪「行く訳ないでしょ。」
雨宮「どうして?」
淡雪「あんたこそ、最近任務ちゃんとやってないんでしょ。」
雨宮「つまらないんだ、任務なんか。クルマの世界のほうがよっぽど面白いよ。」
淡雪「つまらなくても任務はやるの。クルマが好きなら、夏からの作戦に申し込めばいいじゃない。」
雨宮「嫌だ。あの人たちの車は、なんだか任務臭くてつまらない。」
淡雪「さっきから面白いだのつまらないだの!そんな理由で外に行かないでよ!」
雨宮「雪はどうなんだよ!」
淡雪「え?」
雨宮は珍しく声を荒げた。
自分で見つけた世界を、自分で作り上げた世界(縄張り)を否定された怒りが混じっていた。
雨宮「知ってたよ。昨日、外の世界に出たときに、ずっと君が付いてきていたこと。匂いですぐに分かるよ。」
淡雪「えっ・・・!?」
雨宮「どういう訳か知らないけど、きっと僕を監視でもしてたんだろ!君と同じ時期に作られて、君と『同じ目的』で作られて、君と同じ部屋で過ごして君と同じ時間を過ごしたこの僕をッ!!」
淡雪「そうよ!あんたがあまりにも外に出るから、上の人たちに尾行しろって言われたのよ!私がこの任務に就いていなかったらアンタものすごい罰を喰らってたかもしれないのよ!だからこれ以上外の世界に出たら許さないから!」
雨宮「嫌だ!」
淡雪「許さないから!!」
雨宮「嫌だ!!!」
雨宮は乱暴に傍にあった机を淡雪に向かって蹴飛ばした。
淡雪はモロに食らって床に倒れた。机の上にあったものは散乱し、机本体はひっくり返って足が折れてしまっていた。
立ち上がる淡雪は、雨宮が狼の姿で二刀流を構えているのを見た。其の瞳は静かな怒りがほとばしっている。
淡雪「やる気?」
彼女も二丁拳銃を構え、戦闘体制に入った。
二人の戦いはすさまじいものだった。
部屋の中だけで戦っているはずなのに、その音は城中に響き渡っていた。
最上階に居たコルテックス達にも、もちろん聞こえていた。
コルテックス「な、何の音だ!?」
エヌ・ジン「銃声が混じっておりましたぞ。戦闘による音では?」
ブリオ「ま、まさか、敵でしょうか?」
コルテックス「そんな筈はない。侵入者があれば、城中のセンサーや監視カメラが反応するはずだ。」
エヌ・ジン「直接確認するしかないようですな。」
3人は実験を中止し、音のする方へ向かっていった。
雨宮と淡雪の部屋は、嵐の真っ最中のような光景だ。
部屋中が雪と氷に覆われて、机や椅子は切り刻まれている。
争い始めてからそれほど時間が経っていないが、すでに二人は傷だらけだ。お互い仲間ということを忘れているかのように。野生の獣が縄張りを争うかのように。二人は本気でぶつかり合っていた。
淡雪は雨宮の足元に銃を撃った。銃弾は床に当たり、その回りを凍らせた。
足を滑らせた雨宮は、立て続けの銃撃で体制を崩し、その場で転倒してしまった。
雨宮は転倒した状態で右手の刀を投げつけた。
銃ではじき返した淡雪だったが、その隙に雨宮が懐へ踏み込み、左手の刀で斬りつけて来た。
ギリギリでかわしたが、切先が服を斬りつけていた。昨日の任務のせいでただでさえボロボロだった半袖の服がさらに傷ついた。
淡雪はガン=カタ特有の体術を混ぜた至近距離射撃で反撃に転じる。
雨宮は開いた右手で銃をいなし、左手の刀でもう一撃加える。
避けきれずに斬撃を腹に食らう淡雪。痛みで表情がゆがんだ。
その隙に雨宮は投げた刀を拾った。そして間髪居れずに高速居合い斬りで追撃する。
淡雪はどうにか銃で受け止めた。そのまま両者が力を緩めずに鍔迫り合いになる。
だが、力の差は圧倒的だった。雨宮が押している。
淡雪はついに壁際まで追い込まれ、刃が目と鼻の先に迫ってきた。
そして、雨宮は刀を振り下ろすと同時に腹に蹴りを加え、壁ごと淡雪を吹き飛ばした。
舞い上がった埃にむせる淡雪。その向こうには瞳孔を開いた狼の姿があった。
今の彼にこれ以上反撃をすると、とんでもない仕返しを食らう・・・。
彼にほとばしる容赦のないオーラが、淡雪を恐れさせた。
涙を流しながら淡雪は逃げ出していった。瓦礫に何度もつまずきながら。敗北感に打ちひしがれながら・・・。知らぬ間に強くなりすぎた彼に劣等感を感じながら・・・。
コルテックス「なっ・・・雨宮、これはどういう事だ!?」
音の元にたどり着いたコルテックス達。目の前の悲惨な状況に驚きながら聞いてみた。
声に振り向いた少年は、与えられた任務を淡々とこなしていく彼ではなかった。
命令に忠実な雨宮空はそこには居なかった。
よろよろとおぼつかない足取りで逃げた淡雪は、トイレの個室に入り傷を雪(すす)いでいた。
特に最後に喰らった蹴りは、斬撃が当たった箇所を的確に突いていたため、一番ひどい傷だった。
その傷も何とか治す事が出来たが、まだ治らない物がある事に気づいた。
彼との間に出来たひび割れは治す事が出来ないのだろうか。
はっきりとした形で彼が遠くへ行ってしまったことを突きつけられた。
自分を置いて行ってしまうのだろうか。
同じ時期に作られて、同じ目的で作られて、同じ部屋で同じときを過ごした私を・・・。
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