人見ています。 |
オリキャラ短編集
|
- TOP
- >
- オリキャラ短編集協会
- >
- オリキャラ短編集
- >
- SMILE ~アルマ・ベル~
もみみ(4年前)
バート・ラマー(5年前)
2199(6年前)
2199ノークラ(6年前)
クラットン2(6年前)
ココバンディクー(7年前)
水無月ニトロ(7年前)
RITAL(8年前)
イエクラ(8年前)
asRiche3j8bh(8年前)
テトラピアノ(8年前)
asRichp4zuit(8年前)
オリキャラ短編集協会(8年前)
asRichg3gtwn(8年前)
わいるどた~ぼ(8年前)
asRichajohom(8年前)
ショートケーキ(8年前)
asRichw7ffmu(8年前)
スティックス・ザ・バジャー(8年前)
asRichqi316v(8年前)
asRichct3qjk(8年前)
リボルバー(9年前)
ぽぴゅらあ(9年前)
りんごっち(9年前)
sasuke(10年前)
回転撃(10年前)
ルイカメ(10年前)
ヴァイオレット(10年前)
えぞももんが(/・ω・)/(10年前)
隼人 (10年前)
まんじねーしょん(10年前)
CURA(10年前)
ハートオブハート(11年前)
フレイム(11年前)
ゲーマー(11年前)
クラットン(11年前)
ひろき(11年前)
ひろき(11年前)
HIROKI(11年前)
GGGGGGGGG(11年前)
IA・N(11年前)
かめちき(11年前)
霧雨(11年前)
てんし(11年前)
昇太/神馬当瑠(12年前)
風のクロノア(12年前)
オリキャララジオ放送社(12年前)
ここなっつココ(12年前)
いお太(12年前)
テクノしん(12年前)
リレー小説委員会(12年前)
ここなっつ(12年前)
気まぐれCocoちゃん(12年前)
たクラッシュ(12年前)
ダークネス(12年前)
早川昇吾(12年前)
しんごwww(12年前)
サム(12年前)
クランチバンディクー(12年前)
闇っぽいけど闇じゃない。永遠の炎の神様メフィレス(12年前)
イエクラ.com(12年前)
イエクラ@山手(12年前)
回転撃(12年前)
SMILE ~アルマ・ベル~
2012/07/24(火)20:44:46(12年前) 更新
「さてっと、こんなもんかな」
とある下町のはずれの一角に、1人の少女が目の前の家を満足気に見つめながら佇んでいた。ただし、その家は見るからに古びた木造の建物であり、お世辞にも綺麗とは言えないありさまだった。
少女の名はアルマ・ベル。彼女は今まさに、この地で新たな人生を歩もうとしていた。
「あとはこれを掛けるだけっと・・・」
そう呟きながら彼女は傍に立て掛けていた看板を掴み、古びた家の壁に手際よく設置する。その看板には、大胆な文字で”Alma's Arms”と書き込まれていた。一連の作業を終えると、彼女は再び先ほどの位置に戻って改めて家の全体像を眺めだした。
そして、満面の笑みで両手を突き上げながら突如歓喜の声を上げた。
「よ~~~っし、”アルマズ・アームズ”本日開店~っ!」
ついに念願が叶った瞬間だった。雲一つない清々しい青空の下、アルマはここに武器屋を開業したのである。もともとオリジナルの武器を製作するのが趣味だった彼女にとっては、これ以上ない天職だった。
両手を突き上げた拍子に、アルマは快晴の空を見上げた。
「うーん、今日は絶好の開店日和だなぁ~」
「うふふ、いよいよ始まったみたいね」
不意に背後からそんな女性の声が聞こえてきた。つい最近までよく聞いていた馴染のある声だ。アルマはその声がした方を振り向くと、そこには彼女の予想通りの人物が立っていた。
「あっ、アンバリー校長」
相変わらずの迫力に満ちた体型は、まさしくマダム・アンバリーその人だった。アルマは空を見上げるのと同じ要領で校長を眺めていた。
「わざわざ来てくださったんですか~?」
アルマがそう聞くと、アンバリーは微笑みながら答えた。
「ふふふ、私もあなたの進路は面白いと思っていたからね・・・ちょっと様子を見に来たのよ。何せあなたの作る武器は面白いものばかりだから」
「えっへへ、ありがとうございます」
アルマは満面の笑みでそう返した。それと同時に、彼女は自身の出身校、ワルワルスクールに入学することが決まった頃のことを思い出していた。
それは彼女が5歳の頃。彼女は武器屋の娘として育てられていた。辺境の街外れにひっそりと佇む店だったが、意外にも経営は上手くいっている方だった。いや、辺境だからこそ需要が高かったのかもしれない。
そこにやってくるのは、法という名の道を外れた輩が大多数だった。しかし、武器屋を経営していたアルマの父親は、そんなことは全く気にしていなかった。ある時アルマは、幼いながらもその時の疑問を父親にぶつけてみたことがあった。
「ねぇパパ、あのおじさんたちって、悪い人なの?」
「ん、あぁ、傍目にはそう見えるかもしれねぇがな、俺はこれでもちゃんと客を選んでるつもりだよ」
「・・・どーゆーこと?」
「まぁ、何だ。世の中には決められたルールってもんがあるんだが、アイツらはアイツらのルールを貫いて生きてるんだよ、うん」
「よくわかんないよ~」
「要するにだ。俺は個人的に気に入った奴らにしか俺の武器は売ったりしねぇってことさ。自分が丹精込めて作り上げた武器だ。そんな武器は、気に入った奴に使ってもらいたいだろ?」
「う~ん、そうなのかな~?」
「ハッハッハ、まぁいいさ。いつかお前にも分かるときが来ればいいな」
彼は大きく笑いながらそんなことを言っていた。しかし、そんな彼のこだわりは顧客との信頼を築くと同時に、一方で一部の組織との確執を生じさせることにも繋がった。別のある日、店にスーツを着た中年の男がやってきた。
彼は度々この店にやってきては何やら交渉を持ちかけてきていたようだったが、アルマの父は頑としてそれには応じなかった。
「何度頼んだって無駄だぜ?ありゃあお前たちには過ぎた代物だ」
「解せんな・・・話としては悪くないはずだ。ウチは他のどこの組織よりアンタに金をつぎ込んでる自信があるが」
「悪いな。ウチは生憎商売なんて器用な真似はできないんだ。ここは単なる俺の個人的な趣味でやってるしがない武器屋だ」
「・・・成程、納得がいったよ。それなら交渉の意味はないな」
しかし彼は、ここで引き下がる気は毛頭ないといった表情をしていた。
「・・・やれ」
静かに彼がそう言った瞬間、扉から彼の部下と思しき男の集団が一斉に店内に押し寄せてきた。その手には1人残らず機関銃が携えられている。どうやら強硬手段に出たらしい。
「なっ・・・?!」
「お前にとっては単なる趣味でも、こっちは仕事なんだ。この世界を舐めてもらっては困るな」
「へッ、そんなちゃちな銃で俺が屈するとでも・・・」
「ああ、俺もお前に脅しが効くとは思っていないよ。だから本気なのさ・・・これが最後のチャンスだ。イエスかノーか。ノーなら当然、撃つ」
裏社会の組織というものは、まったく気が短いものだ。目的の物が手に入らないとあらば、他の組織の手に渡る前に供給者を潰す算段なのだろう。
「・・・アルマ、お前は逃げてろ」
父は珍しく小声でアルマにそう言った。
「・・・え?」
当惑するアルマだったが、彼女は言われた通りにすることしかできなかった。こっそりと裏口の戸を開け、それからはとにかく真っ直ぐ走った。どこへ向かおうともせず、とにかく家から離れることだけを考えた。
間もなくして、背後から爆発音がとどろいた。驚いたアルマは反射的に振り返り、その先に見えた光景に目を疑った。武器屋が、アルマの家が崩壊している。
「・・・!!」
そこには既に家の面影など全くなく、ただ毒々しい真っ黒な煙がもうもうと立ち上っているだけだった。
「パパ・・・!」
アルマは再び走り出した。とにかく真っ直ぐ走った。今は黒煙が支配する、自分の家があった場所に向かって。息を切らしながらも、しかし確実に来た時より速く走った。煙のせいで目がしみ始める。
が、涙を流したのはそのせいではない。視界が滲んできたが、この煙の中、そんなことは最早関係ない。アルマは必死で父親を捜した。
「パパ・・・パパ・・・!!」
か細い声でそう叫ぶ。煙を吸い込んで大きくせき込んでしまうが、それでも叫んだ。
「何だ?」
不意に背後からそんな声が聞こえてきた。
「え・・・?」
振り返ると、そこにはまさしく、彼女の父が立っていた。それも無傷で、何事もなかったかのように平然と笑っている。
「ハッハッハ、馬鹿め。俺がそう簡単に死ぬとでも思ったか?」
あまりにもあっさりと登場した父に対し、アルマはただただ呆然とするばかりであった。
「どう・・・して?」
やっとアルマからそんな言葉が出てくる。すると、父はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに自慢げな表情で答えた。
「へへッ、俺様特製の武器を使ってやったまでよ。おかげで店まで吹き飛んじまったが、ま、背に腹は代えられねぇってやつだ」
「・・・もうっ!すっごく心配したんだからっ・・・!!」
アルマは泣きながら激怒し、そして父に抱き着いた。
「ハッハッハ!まぁそう怒るな。それよりお前に伝えておかにゃならんことがある・・・」
「・・・?」
「・・・そろそろお前も学校に行かせる頃だと思っててな。せっかくの機会だ・・・ここで俺たちはお別れだ」
「え・・・?」
予想だにしていなかった言葉に、アルマは再び当惑した。
「そこの学校は寮制でな。独り立ちにゃもってこいのところさ」
アルマが聞きたいことはそこではない。何故よりによって今そんなことを言いだすのかが分からない。
「どうして・・・?どうしてそんなこと言い出すの?」
「・・・こうなっちまった以上、俺はまだ命を狙われるかもしれねぇ。そんな状況で、お前を巻き込むわけにはいかねぇからな」
「い・・・嫌だよ・・・何で・・・」
アルマの目から再び涙が滲み出てきた。父はそれでも微笑みながらアルマに言った。
「・・・そんな顔をするな。いっつも言ってんだろ?辛い時こそ笑えってな。そうしていりゃあ、いつか必ず心の底から笑える日が来るんだ」
穏やかに笑っている父の顔を見ていると、妙にその言葉に説得力があるように思えてきた。そして父は、大きなその手をアルマの頭に乗せながらさらに言った。
「だから笑え」
アルマは涙を流したままだったが、それでも口を無理に引き上げてなんとか笑おうとした。結果としてひきつった不自然な笑顔となったが、今の彼女にはそれで十分だった。アルマの父は優しく笑ってそれに応える。
「・・・ああ、それでいい」
すると、父はおもむろに懐のポケットから何やら紙切れのようなものを取り出した。
「こいつにその学校への宛先が書かれてる。ちょいと方法が面倒だが、お前ならそこへ連絡すれば入学させてもらえるはずだ」
そう言ってアルマにその紙を渡した。予想していた以上に細かい文字でスペース一杯に書かれており、涙で滲んでいる今のアルマには読むことができなかった。
「まぁ心配はいらねぇよ。青春時代を思いっきり楽しんでこい」
「・・・わ、分かったよ」
「おう、その意気―――」
父の言葉は、突如鳴り響いた銃声によって遮られた。父の脇腹から血が滲みだす。
「・・・!?」
ゆっくりと振り返ると、そこには先程の男が煙の中から拳銃を握りしめて這い出てきていた。
「ハッハッハッハ・・・!この程度で俺がやられるとでも思ったか・・・!」
男はもう1発銃弾を撃ち放った。今度は胸に銃弾がめり込む。
「ぐっ・・・!」
「パパ!?」
「さぁ行け・・・奴の目がお前に向く前に・・・」
「そんな・・・」
すると、父は再びアルマに向きなおして笑顔を見せた。
「アルマ・・・俺は、幸せだったぜ・・・悪くない人生だった・・・」
それは決して慰めでも弁解でもなく、彼の本心だったに違いない。彼があまりにも穏やかな笑顔をしていたからだ。アルマはそんな心からの笑顔に応えようと、再びひきつった笑顔を見せた。
また、銃声が鳴り響いた。それと同時にアルマは振り返り、走り出した。とめどなく溢れてくる涙をもうこれ以上父に見せたくはなかった。見せてはいけないような気がしていた。彼女は振り向くことなく、一直線に走る。
後ろからまたもや銃声が聞こえてくる。それでも彼女は振り返らない。涙が止まるまで、彼女は懸命に走り続けた。
「そうそう、最近ワルワルスクールではね、決闘会というものを開催することになったのよ」
「へぇ~、何ですかそれ?」
アンバリーの言葉に、アルマは興味ありげに聞いた。
「ちょっと色々あってね。生徒たちがそれぞれ自分で武器を作って、それを使って戦うのよ。せっかくだから、これから行事の1つにしちゃおうかしら」
「え~何それ凄く面白そう!あたしも参加してみたかったなぁ~」
「フフ、そうね。私ももしその時あなたが学校にいたら、一体どんな試合になるのかと思っちゃうわ・・・う~ん、残念ね」
アンバリーがそう言うと、2人は互いに笑い合った。
「・・・それで、これからどうするつもりなの?お店を切り盛りしていくのは大変よ?」
不意にアンバリーがそう聞くと、アルマは少し考えてから口を開いた。
「う~ん、そうだなぁ・・・やっぱりまずは宣伝ですよねー」
「そうね。まずはあなたの武器の魅力を伝えなきゃ」
「よしっ・・・じゃあ早速行ってきますかっ・・・!」
アルマは高らかにそう言うとともに、心の内で改めて決意した。父のように、好きなことをして幸せに生きていくのだと。アルマは意気揚々と走り出す。あの時見せられなかった、本物の笑顔を青空に向かって見せながら。
終わり
18210