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第2話
2016/08/29(月)20:56:22(8年前) 更新
本編
ギャァァァァァ!!
峠に豪快なスキール音を鳴り響かせながら、コルテックスは内心焦りを感じ始めていた。
(差が開かない…いや、むしろ縮まってきている!)
もちろん手は抜いていない。タイムアタックをしている以上全開走行に違いはないのだが…
ルームミラーに映る光は確実にその明るさを増していた。
(コーナーをひとつ抜けるたびに確実に近づいてきている…この俺様がコーナリングで負けているだと!?)
エンジンを車体の真ん中に持つMR-2は、車両前方が軽く後方が重い。
そのためコーナーでの前輪のグリップ力が弱く、遠心力に負けて車体が外側に膨らんでいく『アンダーステア』が起こりやすい。
コルテックスはその難しい挙動を自在に制御し、コーナリングに絶対の自信を持っていた。
しかし背後に迫る輝く両目が、確実にその自信を削り取っていく…!
二台は緩い連続コーナーを抜ける。その差は僅か3車体分ほどに縮まっていた。
その先のヘアピンをクリア。抜けた先は多少の直線が続く。
「直線での加速ではワンエイティより上だ!不本意だがここで距離を取らせてもらうッ!」
コーナーではシビアな挙動であるMR-2だが、その車両後方が重い車重バランスは駆動輪である後輪をしっかり抑えつけるため、直線では力強い加速を見せる。
その加速力で、ワンエイティを徐々に引き離していく。
「うっひょ〜速い速い。この分なら無理に抜かなくても早く帰れそうだけど、折角ここまで追っかけてきたから抜いてみたいよなぁ〜。」
なんだかんだ負けず嫌いなクラッシュはそう言いながら少し考え、
「ココにはやるなって怒られたけど、まぁバレないだろ。この先の4連ヘアピンでアレやっちゃお〜。」
直線で十分な距離が取れたコルテックスは先程よりは余裕を持ってヘアピンをクリアしていく。
(この先に待つはこの峠最大の難所、4連ヘアピン…あの車、きっと何か仕掛けてくる!)
二台は4連ヘアピンに突入。コルテックスは十分に速度を落とす。
しかし……!
「ッ!!まだ速度を落としていないッ!?馬鹿者!谷底行きだぞ!」
ワンエイティは速度を落とさない!まだ落とさないッ!
コーナー手前、ようやくスピードを落とすも明らかなオーバースピード!
そして…ッ!
ガコッ!ギャァァァァァァア!!
「なんだとっ!?」
そのスピードのまま一つ目をクリア!
二つ目のヘアピンを前に二台が並ぶッ!
焦ったコルテックスはワンエイティに並ぶスピードに上げて突入!
しかしやはりオーバースピード。アンダーステアを起こし曲がりきれないッ!
「しまった!ハンドルが効かない!よけてくれッ!」
膨らんでいくMR-2。その空いたイン側にワンエイティが飛び込み、
ガコンッ!ギャァァァアアアア!
不可解な音と共にあり得ないスピードでコーナーをクリアし、消えていった。
「完全に負けた…なんだというのだあの車の曲がり方は…!」
なんとかスピンさせてガードレールに軽くぶつける程度で済んだMR-2の車内で、コルテックスはたった今起こった現象にただ呆然とするのみだった。
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