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とある温泉の光速競走(ハイスピードバトル)
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7月21日 初めの一歩(フォーメーションラップ)
2012/05/20(日)01:06:28(12年前) 更新
ここからやっと本編です
大川桜 & 【FD3S】(with神上)
VS
タイニータイガー & 【EVOⅥ】withディンゴ
in 熱河峠 晴れ 夜
まるでジェットコースターのような加速が俺の全身に突き刺さる。
まずは熱河峠の温泉街街道を下っていく。
最初はゆるいS字のカーブだ。
愛しの人は車線もクソも関係無いと言わんばかりの曲がりを披露する。
神上「うわぁぁぁぁぁ!!車線はみ出てますよ!!」
大川「分かってるって。」
緩いS字で俺の体は左右に揺さぶられた。
体験したことの無い遠心力に、スタートしてから早10秒で音を上げそうだった。
次は右の緩いカーブが長く続く。
助手席の俺は遠心力に押し負けて、無様にも窓に頬をベタッと吸着させていた。
スタートしてから早15秒、降りれるものなら今すぐ降りたかった。
神上「ス・・・ッ・・・スピード出しすぎ・・・・ッ」
大川「まだまだこんなの序の口だよ。」
緩い右カーブを過ぎれば、熱河で一番高いところにある、【熱河プリンセスホテル】の付近だ。
直角くらいの右カーブ。
信じられない速度でそのカーブに向かっていく。
俺は死ぬと思った。いや、マジで!!
神上(これはアカン!!俺、死んだ!!読者の皆さん、さよーならー!!)
大川「目を瞑ったらもっと怖いよ。コーナーの先を見れば、少しは恐怖が和らぐよ。」
直角右カーブの手前で、かなりの轟音でタイヤが滑る音がした。
これがドリフトという奴なのか?
何処にもぶつけずに直角右カーブを過ぎて、熱河プリンセスホテルの正面を走り去った。
神上(これが・・・【走り屋】って奴なのか・・・?・・・とんでもなくクレイジーだ。)
熱河プリンセスホテルを過ぎて、次は左のカーブ。
俺に襲い掛かる遠心力は、右の運転席側に俺を押し付けようとしてくる。
そのまま愛しの人に膝枕をしてしまいそうな勢いだ。
が、辛うじて生きている理性が膝枕を阻止した。大体、そんな空気じゃないしね。
タイニー「あいつ、速い!!」
ディンゴ「ただ者じゃねぇぞ!!気をつけろ!!」
左カーブの途中にある、伊豆急行電鉄という電車の踏切を過ぎて、今度は右の緩いロングカーブ。
左のヘアピンカーブ、右の少しきつめのカーブ・・・ets・・・
俺は遠心力に負けないように、恐ろしい思いを口に出さないようにと必死だった。
熱河峠の温泉街街道を麓の方まで下り切った。
【熱河シーサイドホテル】の交差点を右に曲がれば、海岸沿いの長い直線だ。
ディンゴ「しめた!!直線ではこっちの方が速いはずだから、ここで一気に抜くぜ!!」
タイニー「タイニー絶対追い抜く!!女の子に負けたくない!!」
左手に海を拝みつつ、右手に追い抜いていくタイニー達の車を拝みつつ、俺の両手は今ここで死なないように天の神様を拝む。
トンネルをくぐり、Y字型の交差点を左に曲がれば熱河峠の【熱河裏街道】だ。
ここまでで、俺がどれほど怖い思いをしたかご理解いただけたと思うが、本当の恐怖は【熱河裏街道】に入ってからだった。
ここから上り勾配となり、スタート地点の頂上まで登っていく。
上り勾配になったところから、愛しの女性は衝撃の一言を口にする。
大川「ゴメン、ちょっと本気出すよ!!しっかり掴まっててね!!」
えっ・・・・・・
本気・・・?
ほんき・・・?
ホンキ・・・?
Honki・・・?
今までは何だったんだ――――ッ
短いトンネルを潜り抜け、直線が続いたかと思いきや、いきなり右のヘアピンカーブが襲い掛かる。
ドリフトのタイヤが滑るものすごい音が耳を斬突く。
曲がっているはずなのに、まるで高速道路を走っているかのようなスピードだ。(法定速度以内=80km/hの話)
襲い掛かる遠心力は、俺を窓から突き破って車から放り出そうとするかのようだ。
神上(ぎゃァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!)
確か、【熱河裏街道】は、ヘアピンカーブが連続しているのが特徴だった気がする・・・
第二回目のヘアピンカーブ。
心の絶叫と共に、胃が絶叫し始めた。
「ゲ」から始まる2文字のとても汚いものだ。
神上(ヤバイ・・・愛する人の目の前でゲ○はアカン・・・ウッ・・・・)
何とか堪える事ができた。
夕食で食べたものが軽めのもので良かった・・・。
ホッとしたのも束の間、第3、第4のヘアピンが俺を待っていた。
神上(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)
第5のヘアピンを曲がっている時だ。
カーブの外側に見える海がかなり遠くに見えた。それだけ高くまで上ったのだ。
ヘアピンカーブの終わりごろ。
カーブ外側のガードレールが目と鼻の先まで寄ってきて、俺はまたしても死を覚悟した。
いや、死を覚悟したと言うより、死を受け入れたと言っても良いだろう。
人は、死の寸前に自身の人生を走馬灯のように振り替えるという。
俺も見た。生まれてから今現在にいたるまでの18年間を・・・。
俺が生まれたのは熱河市の隣の伊東市だった――――
普通の家庭に生まれ、特にこれといった不自由は無く――――
多分、皆と同じように過ごしてた――――
春は家族で花見をして――――
夏は友達と海に行ったり――――
秋は校外学習でバカ騒ぎして――――
冬は皆で雪遊びをした――――
18年も生きてりゃ、恋もする――――
告白して、そりゃぁもちろん、玉砕さ――――
両親が離婚しちまったのは高校生のときだ――――
二人の新しい家庭の邪魔をしたくなくて、一人暮らしを選んだ――――
高校でもやっぱり普通に生きてきた――――
バカ騒ぎしたり、恋したり――――
誰にでもある、普通の日常――――
何て事は無い、普通の日常――――
一つだけ普通でない事があるとすれば、それは俺には取り柄が無いこと――――
18年間、誰かと戦える武器を持たずに、焼き増しの日々を送ったこと――――
神上熱海 18歳――――
それを証明するものが何一つ無いという事――――
そのことを感じながら、7月19日まで生きてきた――――
7月20日 高校生活最後の夏休み初日――――
学校から宿題が出された――――
でも、もっと大事な宿題を、誰かに託された――――
何の取り柄も無い俺に――――
何の武器も持たずに生きてきた俺に――――
世界の運命を託された――――
だとしたら、こんな所で死ぬ死ぬ言ってられねぇな――――
焼き増しの18年間と決別するために――――
俺は俺の青春を燃やし尽くす――――
・
・
・
・
・
・
気が付くと車は止まっていて、静かな夜が戻っていた。
どうやら俺は気を失ってしまったらしい。
車から降りれば、タイニーとディンゴが少し悔しそうな顔をしていた。
タイニー「ガゥゥゥゥ・・・タイニー絶対リベンジする!!」
ディンゴ「あぁ、てめぇら、その面覚えとくぞ!!」
2人はそう言い残すと、彼らが乗っていた車に乗って去っていった。
どうやら大川さんが勝ったらしい。
大川「ふぅ・・・結構ギリギリだったわ。」
神上「でも、勝ててよかったです。」
おっちゃん「何をォ!気絶してたくせによォ~!ま、初心者なら仕方ないか。」
後に聞いた話だが、走りの初心者というのは、速い人の助手席に乗ると気絶するか吐くかのどちらかをするらしい。
おっちゃん「よし。敵も引き上げたし、今日はこの辺で帰ろう。」
大川「そうですね。」
神上「なぁ、おっちゃん。」
おっちゃん「何だ?」
神上の目はバトルをする前と今とではっきりと違っていた。
神上「おっちゃんの名前、教えてくれ。たぶん、これからしばらく世話になると思う。」
おっちゃんは俺の顔を少し見てから、答える前に俺に質問をした。
おっちゃん「覚悟は決まったんだな?」
俺はうなずいた。
おっちゃんは少し微笑みながら答えた。
おっちゃん「俺は如月進(きさらぎ しん)だ。お前の覚悟が決まったんなら、今回の件は俺も全力でサポートしたいと思う。よろしく頼む。」
――――同時刻 太平洋上空――――
一機の輸送用ジェット機が太平洋を日本に向かって急行していた。
機内ではアノ有名なバンディクートリオが居た。
兄のクラッシュ・バンディクーとクランチはジェット機のエンジン音に勝るいびきをかいて眠っている。
妹のココ・バンディクーは、兄とは対照的にパソコンとにらめっこをして何かを解析しているようだ。
ココ「もぉ~っ、お兄ちゃんのいびきがうるさくて集中できない!」
現在時刻は午前1時だ。
ココはパソコンでの作業を一時中断し、寝る事にした。
ココ「あ~ぁ、夜更かしはお肌に良くないんだよね。そろそろ恋の一つでもしたいけど、先は長いわ・・・。」
パソコンの画面が消え、機内は非常灯だけが柔らかな光を放っていた。
彼らの日本到着まであと6時間・・・
――――7月21日 午前10時 私、神上の家――――
俺は何かお祭りのような大きな音にたたき起こされた。
まだはっきりしない意識の中で、壁に掛けられている時計を見ると、彼は午前10時という時間を見せて、俺が寝坊しているという事を無言で伝えてくれた。
神上「うわっ、地球を救うヒーローが初日から寝坊って、マジであり得ないんだけどww」
台所からパンを取り出し、早食い選手権チャンピョンもビックリの超高速朝食を終え、俺は始めてアパートの外の異変に気付いた。
見渡す限りの人×∞。
アパートの大家さんが必死に対応していてちょっと可哀想になってきた。
すると、俺の部屋の隣に住む同級生の福田が、俺の部屋の戸をたたいてきた。
福田「おいっ!起きろ神上!大変なことになってるぞ!寝坊してるとか言うなよ!」
俺は寝起きオーラ全開で戸を開けた。
神上「やぁ、おはよう、福田君、爽やかな朝だね・・・ふゎ~・・・」
福田「1mmも爽やかじゃねぇよ!あと、寝起きオーラやめろ!やっぱり寝坊かよ!」
神上「ま、上がって上がって。お茶でも飲んでゆっくり話そうじゃないか。」
と、次の瞬間に神上熱海宅に上がってきたのは福田ではなく、先ほどの人×∞だ。
リポーター「今、渦中の人物、神上熱海君に接触いたしました!早速、インタビューに向かいたいと思います!」
新聞記者「神上さん、日本政府を始め、様々な企業団体があなたへの協力を発表しましたが、いかがなさるおつもりですか?」
ここでもやはり適当に回答し、メディアを蹴散らす作戦だったが、一台の黒い車によって作戦は全てぶち壊しになる。
リポーター「あっ!あれは、政府関係者の車でしょうか?こちらのアパートの前で停まりましたが・・・」
スタッフ「こっち、映して!!政府の人来ちゃったよ!!」
SPのような人たちが報道陣を掻き分け、俺の部屋に向かってくる。
やがて、中心に居る一人の男が俺に話しかけてきた。
政府の人「おはようございます。私は、政府関係者の広報担当、平島啓一でございます。今日は、ご挨拶をと思ったのですが、この状況では・・・」
神上「そ、そうですね。」
平島「熱河市役所の方に向かいましょう。時間はあまりいただきませんので、どうか少しの間、お話だけどもさせてください。」
神上「は、はぁ・・・」
俺はSPの人たちに囲まれ、黒いセダンに平島さんと一緒に押し込まれた。
全く状況を飲み込めないのは、寝起きのせいではなかろう。
平島「熱河市役所まで、頼むよ。」
運転手「かしこまりました。」
運転手は少しだけ後部座席のほうを向いて答えた。
神上「あれっ・・・」
俺はこの運転手に見覚えがある・・・様な気がした。
茶髪で、めがねの奥の真紅の瞳。
いや、俺はこんな人にあった覚えは無い。まだ寝ぼけているだけだろう。
平島「神上熱海君、とんでもない重荷を背負わされてしまったようだね。」
神上「は、はい・・・」
平島「我々政府としても、可能な限りの援助をするよ。」
運転手「それはできないな。」
平島「えっ・・・」
車内の空気が凍りついた。
そして銃声が、凍てついた空気を粉々に砕いた。
SP「ぐっ!!・・・」
平島&神上「・・・ッ!!!!!」
運転手「次はお前だ!」
再びの銃声が平島を襲う。しかし、助手席のSPが傷つきながらも銃口を天井に向け、何とか無傷で済んだ。
平島「逃げるぞ!」
神上「はっ、ハイ!!!」
車から降りたとたん、信じられない事態が起こった。
前後の車に居たSPが全員何者かに倒されてしまった。
銃や刃物による傷ではない。
平島「な、何だ!!どうなってる!!??」
神上「あっ、上になんか居る!!」
10m程上空に鷹のような鳥が居た。
逆光でシェルエットしか見えないが、よく見ると銃のようなものを引っさげてきている。
鷹「へっ、平和ボケした国の兵士ってのはこんなもんなのか?」
平島「だ、誰だ!!」
鷹「俺はフレイホークってんだ。ま、よろしく頼むぜ?」
神上「えっ、何?これ?俺死ぬの?」
神上さんはやっぱりここでも死を覚悟した。
上空から気合の入った雄たけびが聞こえてくる。
いや、これはさっきの鷹の声ではない。
フレイ「な、何だ?」
神上君は心底びびった。なにせ、空からボクサーのグローブをつけたカンガルーが降って来たのだから。
正確に言えば、カンガルーの脚力を生かして、熱河駅の屋根から大ジャンプして、落下の勢いを借りてパンチを下したのだった。
フレイ「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
砂埃を撒き散らし、そこから現れた救いのカンガルー。
フレイは相当なダメージを食らってしまったらしく、その場で救いのカンガルーに捕まってしまった。
赤目の男「チッ、雑魚を蹴散らしただけですぐに調子に乗るからだ。」
平島「な、何がなんだか分からないが、形勢逆転ってとこか?」
赤目の男「そうとも言いきれんぞ。俺は貴様をここで殺せればいいのだからな。」
平島「・・・この状況・・・自分で戦うしかなさそうだな。」
平島はそう言うと、倒れていたSPから警棒をもらって、赤めの男に殴りかかった。
しかし、赤目の男は警棒を片手で受け止めた。
平島はそれを予測していたかのように、素早い動きで赤目の男の手を蹴り飛ばした。
赤めの男「ッ・・・中々やるな。貴様は江戸時代の侍か?」
平島「残念、俺は侍じゃなく騎士の方かな。」
平島は警棒をフェンシングのように構え、鋭い突きを連発した。
赤目の男は全て見事によけ続けた。
赤目の男「日本の騎士は突きしかできんのか?」
平島「サーブル、使って良いの?」
赤目の男「ああ、斬りも有効でかまわん。」
サーブル=フェンシングの種目名。最も上級者向けのクラスらしい。
その言葉の瞬間、突きと斬りを不規則に混ぜ合わせた、読みづらい攻撃を平島は仕掛けた。
赤目の男は、拳銃を使ってうまく受け流し、互角の戦いに見えた。
赤目の男「・・・少し時間を掛けすぎたようだ。」
平島「なにッ!!」
赤目の男は拳銃を構え、平島の心臓を撃つ。
平島はとっさに警防を下から構え、そのまま真上に振り上げた。
銃声――――
銃弾は平島の髪をかすめた。
赤目の男の拳銃は、5,6秒ほど中を舞い、近くを流れる川に落ちた。
赤目の男「燕返か・・・やはり貴様は侍ではないか。」
平島「和洋折衷って言ってもらいたいね。」
赤目の男は急降下してきたフレイの腕に捕まり、どこかへ飛んでいった。
カンガルー「チッ、あいつの空気銃が無けりゃぁ、そのまま捕まえていられたんだがな。」
神上「あの・・・アンタ誰?」
カンガルー「自分はパンチ・ザ・ジャンプ、ボクサーだ!よろしくな。」
平島さんは付近の人に警察と救急車を呼ぶように呼びかけた。
平島「神上君、付近の住民に警察と救急車を呼ぶように頼んだから、俺達は早く市役所へ向かおう。」
神上「は、ハイ・・・」
腰を抜かしていた俺は、酒も飲んでいないのに千鳥足みたいになってセダンに乗り込んだ。
パンチ「おい、お前、神上とか言ったか?自分もアンタに協力しようと思うから、よろしくな。」
神上「はい。」
平島「行くよ、神上君。」
平島さんが運転するセダンは、再び市役所に急行した。
パンチは駅の駐車場に止めてあった真っ赤なポルシェに乗り、どこかへ駆けていった。
――――正午 熱河市役所――――
危機的だ。神上熱海は危機的状況だ。
どうやら俺は、これから色々なお偉いさんたちに挨拶をしなければならないようだ。
それでいて、寝巻きのまま市役所に連れてこられた俺。
先ほどの戦闘を間近で目撃し、ビビッてチビった俺。
平島「マズイな。着替えなんて用意して無かったよ。市の職員用の制服を着せるのもなんだかな~・・・」
神上「服交換しませんか?」
平島「それ一番マズイパターンの奴ww」
スーツでビシッと着こなした高校生と、お漏らし寝巻きの政府関係者。
それはそれで面白い絵だが、とてつもない批判を覚悟しなければならないだろう。
結局、市の職員からスーツだけ借りて挨拶に向かった。
会議室的なところで、大勢のカメラに囲まれながら、お偉いさんの方々と挨拶を交わした。
「今回の件の対策本部長、茂野道春です。よろしく。」
「日産の社長を務めている、カルロス・ゴーンです。惜しみの無い技術協力をいたしましょう。」
「オッス。チューニングメーカーの【ハリセンCLUB】代表、渡嘉敷エイジや。お互いがんばろうや。」
etc,etc・・・
何度も連続で挨拶をするのは本当に疲れる。
挨拶の魔法・・・ならぬ、挨拶の無限ループだ。
平島「あと、二人だよ。」
助かった!
そろそろ終わらせてクルマの運転の練習しないとマジでヤバいんだよ。
40歳くらいのおっちゃんがやってきた。
舘「レーシングドライバー、舘舘広だ。本来なら今年のシーズンで引退なんだが、それよりもこっちの方がでかいステージだと思ってな。ま、よろしく頼む。」
神上「はい、俺も頑張ります。」
これで最後だ。
最後の力を振り絞り、挨拶に臨んだ。
ラストのお相手は女性だった。スーツなどではなく、全裸に膝までのジャケットを羽織るという攻撃的過ぎるファッションでやってきた。
女性「あたし、カラージャ・オールド・ファッション。あなた達のサポーターだ。よろしく・・・。」
神上「神上熱海です。好きな女性のタイプは・・・」
平島「はいっ、ありがとうございました!今日のところはここまでという事でお願いします。」
神上の愛のアピールは打ち切りになった。
ま、協力してくれるということは、会うチャンスは幾らでもあるわけだし、いいか。
平島「神上君。今日はわざわざありがとう。じゃ、隠しキャラのターンと行こうか。」
神上「・・・?」
平島「元走り屋、平島啓一だ。ヨロシクな。」
神上「ええぇぇぇぇ!!」
平島「じゃ、今日も走りに行きますか!」
夏休み2日目も驚きで私、神上の一日は締めくくられたのであった。
2412