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第9章
2012/09/02(日)10:37:04(12年前) 更新
コルテックスが本を読み終えてからしばらくした後、彼は実験に参加させるメンバーに召集をかけた。既に実験内容のビジョンは見えてきていた。それなりに大掛かりな実験になることが予想されたため、それなりの人数が必要だった。
集めるメンバー候補は、エヌ・ジン、ブリオ、ワット、ラングレー、ロバートの5人だ。そのうち4人は召集に応じたのだが、ロバートだけは彼の寮部屋に押しかけても何の反応もなかった。
コル「・・・まさか」
ここでコルテックスはあるひとつの可能性に気が付いた。校長の居残り授業を受けていた、という可能性に。そういえば、校長室を通り過ぎた時に聞いた叫び声は、ロバートのものであった気がしてきた。
ロバート自身居残り授業を受けるという事はそう珍しいことではなく、このことは十二分に考えられる。だとしたら、今頃は保健室で完全に気を失っているはずだ。
コル「今じゃ使い物にならないってことか・・・」
コルテックスは仕方なく彼の寮部屋へと引き返す。そこへたどり着くころには、他の4人は既に部屋の中にいた。
コル「おう、もう来ていたのか」
ラン「ええ、コルテックス様の頼みであれば、すぐに駆けつけますとも」
ラングレーは誇らしげにそう答えた。それに対してコルテックスは苦笑いを浮かべる。
コル「お前は相変わらずだな。ワットが既に来ていたのは意外だったが」
特に深い意味もなくワットにそう振ってみる。ワットもほとんど感情をこめずに返してきた。
サぺ「ひどいことを言いますね。僕だってこの実験には興味が湧いてきたんです」
コル「そうかい。そりゃ何よりだ。で、その実験の内容なんだが・・・」
コルテックスがそう言いだすと、皆一斉に改まって彼の方を見た。
コル「多分ミストから借りた本にあった実験を応用させればいけると思うんだ。僕が研究していた方法とよく似ているからな」
ジン「おお、左様でございますか」
エヌ・ジンがそう反応すると、コルテックスはこっくりと頷きながら続きを話す。
コル「ああ、ただし、当然違うところもある。具体的には、発生過程の時点から遺伝子操作を行い、合成している点だな」
ブリ「成程、確かにその段階の方が合成生物は遥かに作りやすいですからね」
コル「その通りだ。この方法は科学的にはまぁオーソドックスなものだ。だが、今の僕にはそれじゃ間に合わないんだ。仮に合成に成功したとしても、生まれてくるまで結果を待たなきゃならないんだから。それに、生まれてから成体になるまで時間もかかるし、その間に障害が発生することも十分あり得る」
ラン「確かにそれではあまりにも効率が悪いですね・・・」
コル「そこで、僕らはエヴォルヴォレイ装置を使って成体の生物兵器を合成しようというわけだ」
彼は若干自慢げな表情でそう言った。すると、ここでワットが口を出してきた。
サぺ「でも、発生前と後じゃだいぶ合成の勝手が違うと思うんですがねぇ・・・」
コル「僕のエヴォルヴォレイ装置による合成のデータは既に揃っている。あとは材料が集まりさえすれば、そのデータを応用して合成させることができるはずだ」
ブリ「それで、その材料とは何なのでしょうか・・・?」
ブリオが慎重な口調でそう聞くと、コルテックスは何故か咳払いをした後、改めてその問いに答えた。
コル「まぁ、本番だけに今回は今まで以上に多くの材料が必要になる。まずドラゴンの身体の中核を為す蛇、トカゲ、コウモリ。そこに体全体の耐久強化と殺傷能力向上のために鋼鉄を加える。さらにエネルギー貯蓄のための専用器官を作り、身体に移植させる」
これらの材料は、だいたいがミストから借りた本に書かれていたものを参考にしたものだ。ドラゴンを忠実に再現するためには、最終的にどうしてもエネルギー不足の問題が立ちはだかる。
そのため、エネルギーの貯蓄器官を備えることは必須なのだという。
コル「そしてこれらを合成した後、エヴォルヴォレイ装置の光線によって身体機能の進化を促す。まぁ大雑把な計画としてはこんなところだ」
ジン「うむ、成程・・・」
ラン「流石はコルテックス様、とても画期的な計画ですね」
周囲の反応もまずまずと言ったところだった。
コル「とはいえ、今回の合成実験は今までのものよりはるかに複雑だから、僕はできるだけ合成作業に集中したい。そこで、お前たちに実験の補佐を頼みたいんだ」
ラン「ええ、勿論ですともコルテックス様。仕事ならお任せくださいませ」
真っ先にラングレーがそう答えると、続けざまに他の者も口を開いた。
ジン「うむ、拙者もできる限り尽力しますぞ」
ブリ「私も協力しますよ」
サぺ「僕もこの実験がどうなるか楽しみですねぇ」
皆の反応を聞いて、コルテックスもしっかりと頷いた。
コル「よし、よく言ってくれた。じゃあ、早速材料の調達から話し合いたいんだが・・・」
サぺ「まぁ、そうは言っても、正直思ってたよりは大したことない材料ですからねぇ」
確かに、実験に使われる材料となる生物などは、これまでの実験でも何度か使われたことのあるものだ。このあたりの地域なら、入手するのにもそれほど苦労するものではない。
コル「確かにな。まぁ、念には念を入れて、改めてサンプルを作ろうと思っているから、数は多めに集めてきてくれた方がいいかもしれないな」
ジン「成程、分かりました」
コル「とりあえず、今は4人がいるから、蛇、トカゲ、コウモリ、鋼鉄をそれぞれ1人が集めてくるのがいいと思う。その間、僕は特殊器官についてもう少し具体的に調べてみる」
ブリ「確かにその方が効率がいいかもしれませんね」
コル「まぁ、分担についてはそっちで適当に決めてくれ」
ジン「ならば、鋼鉄は拙者にお任せください。質のいいものがありますゆえ」
サぺ「じゃあ僕は蛇にしますかね」
ラン「では私はトカゲを持ってまいります」
ブリ「・・・となると、私はコウモリですかね」
こうして役割分担はすんなりと決まった。コルテックスは納得した表情を見せながら話を始めた。
コル「・・・どうやら話はまとまったようだな。では、今日のところはひとまず解散だ。材料が揃い次第実験を開始するから、各々できるだけ早く集めてくるようにな」
4人「はい」
そう言うと、4人は寮部屋を出ていき、残ったコルテックスはデスクの前の椅子に腰かけた。軽くため息をついてから、再び借りた本を開く。そして、彼は夜通しその本との睨めっこを続けるのであった。
いつの間にか、朝が来ていた。どうやら、途中で睡魔に襲われて眠ってしまっていたらしい。コルテックスは窓から差し込むまばゆい光に顔を照らされ、それで目を覚ましたようだ。
コル「うぅ・・・もう朝か・・・」
窓の奥を見ると、そこには天を高らかに上ろうとしている太陽の姿があった。久々に清々しい朝を迎えられたような気がする。そう思ったのも束の間、その光は突如流れてきた雲によって若干陰りだした。
何となく惜しい気分になりながらも、今度は時計の時刻を見てみる。次の瞬間、コルテックスは一気に顔を青ざめさせた。
8時30分・・・
コル「・・・嘘だろぉおおお!?」
そんな叫びと共に、非常にも授業開始のベルは鳴り出した。だが、だからといって急がないわけにはいかない。コルテックスは急いで授業の準備をし、第1生物科学室へと向かっていくのであった。
レイ「はい、では以上のことに注意して実験を始めてください・・・っ」
そんなレイリーの言葉を皮切りに、生徒たちは皆一斉に今日の実験を開始した。ちなみに、今日の実験は遺伝子操作と修復の実験である。実験はおおむね順調に進んでいるようで、レイリーにとっても一安心といった状況だった。
ある程度実験が進んだところで、レイリーは次の詳しい手順を示そうとした。すると、突如教室の扉が大きな音を立てて勢いよく開いた。
レイ「ひっ・・・?!」
驚いたレイリーは誰よりも素早く扉の方向を向く。そこには、分厚い教科書等を携えて息を切らしたコルテックスの姿があった。次の瞬間だった。それを見たレイリーの視界が突如として暗転し、彼女の脳内に別の映像が流れ出した。
レイ(これは・・・っ!!)
彼女はすぐに自分の身に何が起こったのかを悟った。未来の映像が流れ出したのだ。その映像の中心に捉えられていたのは、やはりコルテックスだった。そこでも彼は真っ青な表情をしながら何かを見つめていた。
彼の見つめる先は視界の背後にあるらしく、そこに何があるのかは全くうかがい知れない。
「待て!落ち着くんだ!!」
彼がそう言った途端、どこかから悲鳴のような叫び声が耳をつんざくほどに響き渡った。コルテックスも負けじと声を荒げる。
「待てえええええぇぇぇ・・・!!!」
そんな叫び声とともに、彼の姿がどんどん遠く、小さくなっていく。視界は部屋の窓を飛び出し、凄まじい速度で彼から遠ざかっていく。それと同時に視界は素早く縮小し、気が付くとレイリーの意識はもとの現実世界に戻っていた。
「んせい・・・先生?」
レイ「・・・っ?!あっ・・・はい?」
見ると、コルテックスが不安げな表情でこちらの様子を窺っているようだった。
コル「えっと・・・なんか・・・すいません」
気まずそうにそう言うコルテックスに対し、レイリーもまたその対応に困惑していた。
レイ「あっ・・・いえ、えっと・・・つ、次はちゃんと早く来てくださいね?」
コル「は、はい・・・」
何ともぎこちない会話に周囲の生徒は揃って苦笑しきりだった。
レイ「さ、さぁ、実験の続きをしましょう・・・っ」
今にも噴き出しそうな恥を懸命に忍んで強引に仕切りなおすと、コルテックスを含めた生徒たちは徐々に実験の体勢を整え始めた。すると、近くにいた吉田が唐突にコルテックスに話しかけてきた。
吉田「よぅ、今日はどうした?昨日はしっかり眠ったのか?」
コル「余計なお世話だ。それより、今は何の実験をしてる?」
吉田「う~んと・・・遺伝子操作の方はもうあらかたこなした感じだな。次は変更した遺伝子情報を元に戻す実験だ」
コル「遺伝子操作・・・か。成程な」
よりによって遺伝子操作の実験の時間を逃してしまい、コルテックスに若干の後悔が生まれる。
吉田「へへ、俺が教えてやろうか?」
彼が自信満々にそんなことを言ってきたのが、今のコルテックスには腹立たしかった。
コル「いや、間に合ってる」
無愛想の典型ともいうべき口調に、吉田は少し肩をすくめて返した。
吉田「そうかい。ま、頑張れよ」
そう言って吉田は自分の席に戻り、実験を再開した。その後で、彼は呟くように答える。
コル「・・・言われなくても」
同じ時、今度はレイリーがコルテックスに近づこうとしていた。先ほど見た彼の未来を本人に伝えるためだ。
レイ(さっきのといいこの前のといい・・・やっぱりコルテックスくんの身に何か重大な事件が起こるに違いないわ・・・まだ状況が全く掴めないけど・・・とにかく伝えなきゃ・・・っ!)
長らくそんなことを考えながら、彼女は徐々にコルテックスに歩み寄っていく。そして、ついに彼女は意を決して口を開く。
レイ「あっ、あの・・・コルテックスくん・・・?」
コル「はい?」
彼が振り向くと、一瞬目が合いそうになった。彼女はとっさに目をそむけ、今度こそ自らの卒倒を阻止する。
レイ「あ、あの・・・あまりこっちを見ないでもらえますか・・・?」
相手から話しかけられたコルテックスにとって、この一言は理不尽ともとれる言葉だった。
コル「は、はぁ・・・すいません;」
コルテックスがため息交じりの返事を返すことしかできずにいる一方、レイリーの方も未だ真意を伝えることができずにいた。
レイ「え、えーと・・・その・・・とっ、とにかく気を付けてください・・・っ!」
結局、レイリーはそれだけを言って即座に教壇の方へと走り去っていってしまった。
コル(え、えぇ~~~・・・?!)
コルテックスは困惑のあまり、しばらく席を突っ立ったまま途方に暮れてしまった。レイリーの言葉は、彼どころか周囲の生徒にも誤解を招いてしまったらしく、生徒たちはコルテックスを見ては何やらざわざわと談義を交わし始めた。
そんな中、偶然その授業に出ていたリドリーだけは、同じく混乱しているレイリーの方を静かに見つめていた。
1時間目終わりの休み時間。レイリーは未だコルテックスの未来のことで思い悩んでいた。
レイ(うぅ~、どうしよう・・・また伝えられなかった・・・)
?「先生」
突如背後からそんな声が聞こえてきたので、レイリーは驚いて一瞬悲鳴を上げてしまった。
レイ「ひゃっ・・・?!」
反射的に振り向くと、目の前にはリドリーが立っていた。
レイ「な、なんだ・・・リドリーくんか・・・」
リド「何かお困りのようですね」
レイ「ぇ・・・?」
唐突なリドリーの言葉にレイリーは小さくそう答えることしかできなかった。リドリーはさらに続ける。
リド「それくらいのことはすぐに分かりますよ。顔を隠したって、言動を見れば」
レイ「そ、そうですか・・・すいません・・・」
レイリーはため息をつき、うな垂れながらそう言った。すると、リドルは口元を若干緩ませながら話し始めた。
リド「で、こっからは俺の推測なんですが、さっきの一連の言動から察するに、先生は恐らくコルテックスに関しての未来を見たんじゃないですかね?」
すると、レイリーは少し驚いたような顔をした。包帯の隙間からのぞかせた目が、少し大きく見開かれたから間違いない。
レイ「・・・その通りです・・・流石ですねリドリーくん」
彼女は心底感心しながらそう答えた。
リド「しかし問題はここからです。俺は先生の言動から何を考えているのかはだいたい予想できますが、先生がどんな未来を見たのかまでは正確に予測できない」
レイ「まぁ、それはそうですね・・・」
リド「そこで、是非とも俺にその未来を教えてもらいたいんですが」
成程、つまり彼は情報収集のためにレイリーに話しかけてきたようだった。リドリーに対して一番に感心すべきは、むしろこういうところなのかもしれない、とレイリーは思った。
レイ「成程、それが聞きたかったんですね?じゃあ、悪いんですがついでにコルテックスくんにもこのことを伝えてもらえませんか・・・?私じゃうまく伝えられなくて・・・」
リド「えぇ、それは勿論お安いご用ですよ。1ドルばかりいただければ」
レイ「お、お金を取るんですか・・・;」
金額的には確かに安いものではあるが、何より生徒が教師に対して割に合わない商売をしていることが奇妙に感じられた。しかし、レイリー本人にとって未来を伝えることが非常に困難な以上、背に腹は代えられなかった。
レイ「まぁいいです・・・とにかく宜しくお願いします」
リド「分かりました。それで、未来の内容は?」
レイ「はい。コルテックスくんが、何かを見つめて必死に叫んでいました。まるで何かを追いかけているような・・・それと、コルテックスくんの声とは別の叫び声も聞こえました。とても人の声とは思えないほど大きな声でした・・・」
リド「ほぅ・・・場所は何処だかわかりますか?」
レイ「場所は・・・詳しくはわかりませんが、多分あそこはコルテックスくんの寮部屋だったんじゃないかと思います」
リド「成程、寮部屋・・・叫び声・・・」
リドリーは小声でそんなことを呟き、しばらく黙りこんだ後、急に口元を緩ませた。
リド「成程、これはもしかしたら面白いことになるかもしれない」
レイ「え・・・?」
リド「そうだ、せっかくだからもう少しお話ししましょうか。俺は先生のその力にとても興味がある」
レイ「えぇ・・・?」
彼女はその言葉に戸惑ったが、不思議と彼とは自然と会話ができるような気がしていた。前髪で彼の目が直接見えないからなのか、それとも他に理由があるのかは今のところ分からない。
リド「未来が見えるなんて、俺からすれば喉から手が出るほど憧れる才能だ」
レイ「そんな、大げさですよ」
リド「そんなことはないです。俺たちは普通、過去や今からしか情報を得ることができない。未来はそれらの情報から無理やり導き出した単なる憶測でしかない。なのに先生は未来から直接情報を得ることができる。これほど便利な能力は他にない」
確かに、日夜情報収集に勤しむリドリーにとっては、それは本当に欲しくてたまらない能力に違いなかった。
レイ「・・・けど、実際はそれほど便利なものではないんですよ。未来は断片的にしか分からないし、いつでも見たいところを見るということはできません・・・」
リド「それでも未来にアクセスできるのとできないのとじゃ大きな違いです。俺は、何とかして未来から情報を得る方法はないかと模索しているところなんですよ」
レイ「へぇ、そうなんですか」
リド「えぇ、先生に未来が分かると知った時から、ずっとね」
レイ「え・・・?」
彼女にとってリドリーの言葉は少々意外なものだった。彼がそこまで自分に大きく影響されているとは思ってもいなかったからだ。そもそも、彼は誰かに憧れたりとか羨んだりなどといったことをすることはなく、常に客観的にものを見ているのだとばかり思っていた。
レイ「意外ですね・・・リドリーくんが私の事をそんな風に見ていたなんて・・・」
リド「ま、俺は何も神様ってわけじゃないってことです」
リドリーがそんなことを言うと、レイリーは静かに笑って答えた。
レイ「そう・・・そうですね」
2時間目、最上級生は発明品作製という名の総合の時間だ。コルテックスも例によってドラゴン開発のための解析を進めていた。黙々と作業は進んでいたが、背後から突然誰かの声が聞こえてくる。
?「よぉ、計画は順調かい?」
コルテックスは勢いよく振り向いた。その先にいたのは、リドリーだった。途端にコルテックスは顔をしかめる。
コル「またお前か。一体何の用だ」
リド「まぁそうかっかするな。今回はちゃんとした用がある。お前に伝言を言いに来た」
コル「何・・・?」
リド「レイリー先生からだ。さっきお前に伝えそびれたことがあってな」
コル「何だ?」
リド「実は、さっきはお前に関しての良くない未来が見えていたそうだ」
コル「えぇ?!」
驚いたコルテックスではあったが、よくよく先ほどの授業での彼女の様子を考えてみると、確かにリドリーの言葉にも納得がいった。
リド「具体的には、コルテックスが寮部屋の中で何かを追いかけ、そして突き放された様子だったそうだ。これがどういう意味だか分かるか?」
一見何の脈絡もない言葉のようにも思えるが、コルテックスにはある一つの考えが浮かび上がった。
コル「まさか・・・」
リド「今お前が作ろうとしてるもの。恐らく先生が見たのはそれが逃げ出す未来だったんだろう」
コル「何だって・・・?!」
もしそんなことにでもなれば、少なからず騒ぎが起こることは間違いない。校長によるお仕置きも待っていることだろう。それだけは避けなければいけない。
リド「要するに、完成させればそれでめでたしとはいかないってことさ。俺は忠告しておいたからな」
確かに、コルテックスは今までドラゴンを作ることに集中するあまり、その後のことはほとんど考えていなかった。今回の忠告は聞いておく価値がありそうだ。
コル「フン、分かった。参考にしておく」
リド「ま、楽しみにしてるぜ?」
コル「ほっとけ」
無愛想にそう返すと、リドルは少し笑いながらさっさと部屋を出ていった。
それから数日後、ついにその日はやってきた。実験は真夜中に行われようとしていた。コルテックスの寮部屋には彼が集めた5人も来ていた。ロバートも最初は渋っていたものの、コルテックスの交渉によってどうにか立ち会ってもらうことに成功したのである。
コル「よし、みんな集まったな・・・今日はいよいよドラゴン計画を実行に移す」
神妙な顔つきで5人に向かいそう切り出す。
ジン「ついに・・・この時が来たのですな・・・!」
ラン「成功を願います・・・!」
サぺ「楽しみですねぇ~」
ブリ「頑張りましょう」
ロバ「ふん、勝手にしろ」
反応は様々だったが、コルテックスは静かにうなずいて後ろに振り返った。5人が見守る中、コルテックスはとうとうエヴォルヴォレイ装置を起動させる。
コル「準備は整った。さぁ・・・始めるぞ!」
力強く意気込んでそう言いながら、コルテックスは一気に操作を始めた。何度もシミュレーションした甲斐あって、操作は最早手慣れたものだった。この段階では実験は順調だ。今のところ何の異常もなく操作は続いている。
コル「よし・・・いい調子だ。エヌ・ジン、材料を加えるんだ。まずは蛇とトカゲを順に投入」
ジン「承知」
エヌ・ジンも手際よく生きた蛇とトカゲを装置に入れこむ。するとコルテックスも即座にボタン操作でそれに応えた。
コル「次にコウモリを投入」
ラン「私がやります!」
そう言ってラングレーがコウモリを追加投入し、コルテックスはさらに操作を続ける。
コル「よし、次は鋼鉄を加えてくれ」
サぺ「はいは~い」
少々雑に放り投げはしないかと不安に思ったが、予想に反してワットも丁寧に鋼鉄を投入した。それが終わると、コルテックスは遺伝子操作の段階に突入した。この遺伝子調整によって3つの身体を合成し、新たな器官を創り出すのである。
そして調整が終わると、強力な放射線によって遺伝子を実際に変化、融合させて新たな体を創り出す。さらに装置内の温度を上昇させることで化学変化の効率を上げ、進化を促進させる。
今、このエヴォルヴォレイ装置の中身は胎内のような役割を果たしているのである。そして数分後、とうとう全ての行程が終了し、コルテックスはゆっくりと装置から数歩下がった。
コル「さぁ・・・これでついに完成だ・・・心の準備をしておけ」
そこにいた者全員が固唾を飲んで装置の様子を見守る。そして、装置の巨大な扉が荘厳な機械音をたててゆっくりと開く。それとともに、ドラゴンのものと思われるずっしりとした呼吸の音が響いてきた。
そして、徐々にその姿が露わになっていく。
ブリ「ひっ・・・」
ジン「おぉ・・・」
サぺ「これが・・・」
その姿は、まさに迫力と脅威の塊のようなものだった。その巨体はロバートをも軽く上回っている。紫色の皮膚が毒々しさを醸し出しており、鼻の先から伸びる角や手足の鋭い爪はれっきとした刃物のように見える。
今はたたんでいる蝙蝠のような翼を少し広げただけでも、その大きさがさらに何倍にも増すように思えた。完全に姿を現したドラゴンはコルテックスに目を向けた。その眼もやはり、彼の角や爪同様に鋭いものだった。
コル「これが・・・ドラゴン」
ドラ「ここは・・・どこだ」
5人「・・・?!」
その不気味な声に、5人は驚きを隠せなかった。そもそも、ドラゴンがしゃべるとは予想していなかったのだ。
サぺ「このドラゴンはしゃべるんですか・・・?」
コル「あぁ、そうだ。奴の意思を理解するためにその知識を与えた」
これは先日のリドルの忠告の対策のひとつだ。急遽付け加えた形質であるため、声帯はまだまだ不完全で聞き取りにくいが、これでドラゴンの意図は多少読みやすくなる。
ジン「成程・・・」
ドラ「おい、ここはどこだと聞いている・・・」
不気味な低音が混じった声でそう言うドラゴンに対し、コルテックスはなだめるようにできるだけ穏やかな口調で応えた。
コル「ここは僕の部屋だ。今、お前はここで生まれたんだよ。分かるか?」
ドラ「何だと・・・?」
コル「今は何も考えなくていい。だか・・・」
ドラ「誰だ・・・お前は・・・?!俺は・・・何だ!?何なんだこれはぁ・・・!!?」
ドラゴンは激しく混乱しているようだった。外の世界を知らないまま、突然知識だけ詰め込まれれば無理もなかった。
ドラ「ふざけやがって・・・ふざけやがってぇぇぇえええええ!!!」
コル「待てっ!落ち着け・・・!!」
しかし、ドラゴンには最早聞く耳がなかった。巨大な腕をコルテックスに向かって大きく振りかぶる。
コル「ッ・・・!」
その攻撃はラングレーのとっさの行動により、間一髪で防がれた。
ラン「お怪我はありませんか?コルテックス様!」
コル「ああ・・・大丈夫だ」
ロバ「フン、当然の流れだな」
コル「くそっ、全員で奴を抑えるんだッ!」
サぺ「いくらなんでも冗談がすぎますって。あんな化け物をどうやって抑えろって言うんですか」
コル「それでもやるんだ・・・!」
ロバ「チッ、おいどんを呼んだのはやはりこのためか・・・まったく呆れる」
そう言いながらもロバートはドラゴンに対して臆することなく殴り掛かる。ドラゴンも思い切り殴り掛かり、2つの拳は激突した。2つの拳は弾き返され、両者は若干体勢を崩した。
ロバ「ッ・・・!?(こいつ・・・おいどんと同じかそれ以上の力だぞ?!)」
その隙にラングレーが反撃に出る。ドラゴンの腹に思い切り蹴りを入れ、さらにドラゴンの体勢を崩す。ラングレーは追撃を図るが、ドラゴンはすぐさま体勢を立て直し鋭い爪で彼女を襲った。
ラン「なっ・・・!?(速い・・・!)」
鋭い攻撃を避けきれず、大きく体勢を崩した隙にドラゴンは部屋の窓の方へと向かいだした。
コル「(まずいっ・・・!!)待て!落ち着くんだ!!」
そう言った途端、ドラゴンの悲鳴のような叫び声が耳をつんざくほどに響き渡った。コルテックスも負けじと声を荒げる。
コル「待てえええええぇぇぇ・・・!!!」
しかしドラゴンはその大きな翼を広げ、窓を一気に突き破った。コルテックスの叫び声とともに、ドラゴンの姿がどんどん遠く、小さくなっていく。そしてとうとう、ドラゴンの姿は夜空の向こうへと消え去ってしまった。
次章、逃亡したドラゴンの行方とは・・・?!
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