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第1章
2012/04/08(日)09:32:48(12年前) 更新
―――それは、30年も前のこと
そこには隠されたさらなる真実がある
その映像は今もなおその男の脳に鮮明に映し出される
これは、忌々しい記憶の物語―――
今日は満月の夜だった。しかし、その光はもうもうと広がる薄暗い雲で度々遮られてしまう。そんなすっきりとしない風景を、青年ネオ・コルテックスはワルワルスクールの寮部屋の窓から茫然と眺めていた。
自然とため息が出る。コルテックスは悩んでいた。彼は今年で最上級生である12年生になり、ここワルワルスクールを卒業するための発明品とそのレポートを製作しなければならないのだ。
ここに入学して間もないころからエヴォルヴォレイ計画を企て、これまで数多くの実験をしてきたが、ほとんどが失敗に終わっており未だ完成には及んでいなかったのである。
眺めていた月が一段と分厚い雲に隠れ、周りはさらに暗くなった。まるで自分の状況を表しているかのようだ。もう二度と月は雲から出てこないのではないかという気さえしてくる。再びため息が出てきた。
すると、背後にある部屋の扉からコンコン、というノックの音がしてきた。それからしばらくすると、扉はゆっくりと開いた。扉を開けたのは、コルテックスの同級生である二トラス・ブリオだった。
ブリ「ど~も~、例の材料、揃えましたよ~」
見ると、ブリオの手には何やら小さな袋を持っているようだった。コルテックスは納得の表情を浮かべながら返事をした。
コル「・・・そうか。じゃあ、実験を始めよう」
2人は部屋に堂々と置かれている巨大な装置を操作し始めた。プロトタイプのエヴォルヴォレイだ。ブリオが持ってきたいくつかの材料をその中に組み込み、数十分程の試行錯誤を経て適度にその機械を改良していく。
そして、改良段階を終えると、いよいよ本格的な実験を開始した。実験台の上にはコルテックスがその日に捕まえてきたネズミを固定して置いておく。仰々しい実験装置は2人がボタンやレバーを操作していく度に慌ただしく光や音を放っていた。
そして、いよいよ最後のレバーをコルテックスが引く。すると、実験台に置かれたネズミに向かって怪しい光が勢いよく放たれた。あまりの眩しさに2人は光をさえぎろうと腕を顔の前に上げた。
目を瞑っていてもあの怪しげな彩色はうっすらと浮かび上がってくる。その光がようやくおさまるのが分かると、2人は同時にゆっくりと目を開け目の前の実験台を見つめた。
コル「これは・・・」
目の前にいたネズミは、死んではいなかった。これは今までに比べればまだよい方だ。ただ、姿はあまり変化しておらず、大きさも一回りか二回り大きくなったくらいで、進化光線と呼ぶにはあまりに物足りない結果だった。
ブリ「失敗・・・ですか?」
コル「・・・少なくとも、成功ではないな。僕が目指しているものとは程遠い」
そう言ってコルテックスは、ただ肥大化しただけのネズミを軽蔑するように見つめる。ネズミは何事もなかったかのように、野太い鳴き声を発していた。
翌朝、空模様は相変わらずどんよりとした雲に占拠されている。目覚めたコルテックスの脳内には昨日のネズミが映る。昨日のネズミは特に劇的な変化が起こったわけでもないので、窓の外へ放した。
今頃、あのネズミは普段となんら変わらない生活を送っていることだろう。そう考えると、何となくうっとうしい気分になってきた。とりあえず、壁に掛けてある時計を見てみる。
8時20分・・・
コル「・・・まずいっ!!」
ワルワルスクールの最初の授業が始まるのは、午前8時30分からである。少なくとも、今からゆっくり朝食を食べている時間は、確実にない。それどころか、準備をして教室に向かう事さえ間に合うかどうか分からなかった。
このワルワルスクール寮から生物科学室までの距離は、他の教室と比べても結構な距離がある。コルテックスは急いで教科書などの準備をして、寮部屋を飛び出した。
コル「はぁ、はぁっ・・・!(間に合うか・・・ッ?)」
コルテックスは必死に学校の廊下を駆けていた。さすがにこの時間になると移動する生徒の姿は1人も見えなかった。と、思っていると突如後ろから女性の声が聞こえてきた。
?「あ~そこのキミ!ちょっと待って!」
コルテックスは足に急ブレーキをかけて後ろを振り向く。そこには、眼鏡をかけ、紫の髪をした若い女性の姿があった。去年この学校にやってきた新人教師のシンシア・アメジストだ。
彼女は紫色に輝く長髪をなびかせながらコルテックスの方まで小走りで駆け寄って来た。
シン「・・・ああ、コルテックスくんか。あのさぁ、第3自然科学室ってここからどういけばいいのかなぁ・・・?」
コルテックスはシンシアのミニスカート姿を見て、目のやり場に困りながらも答えた。
コル「え・・・え~と、確かこの曲がり角を右に曲がって、そこから3つ目のジャンクションを左に曲がれば自然科学教室の場所だったかと・・・」
シン「そっか、ありがと・・・って、コルテックスくんこの時間にここにいて授業に間に合うの・・・?」
コル「先生こそ自分の教室くらいいい加減覚えましょうよ・・・」
シン「・・・あっそ、どうやら邪魔しちゃったみたいね。それじゃっ」
シンシアはそう言うと、コルテックスが言った方向に小走りで向かって行った。コルテックスもすぐに自らの目的地を目指して走りだす。ちらりと腕時計の時間を確認する。8時25分・・・この距離ならまだ望みはある。
コルテックスはさらにペースを上げて走る。すると、曲がり角から突如人影が飛び出してきた。当然コルテックスがそれを避けられるはずもなく、2人は勢いよくぶつかってしまった。
コル「いったぁ・・・おい、気をつけ・・・」
そう言ってぶつかった相手を見ると、そこにはなんと美少女が・・・現実はそう甘くはなかった。そこにいたのは目つきの悪い老人、ダーク・サファイアだった。もう何百年と留年を繰り返しており、未だに2年生のまま。今年で970歳・・・という噂らしい。
美少女どころか非常に厄介な人物とあたってしまった。
ダー「何だと?!お前が走っているから悪いんだろうが!」
コル「お前だって走ってたじゃないか!だいたい僕は急いで・・・」
すると、さらにダークの後ろから少女の声がしてきた。
?「ダークさん、私のハーモニカ返してください~っ!」
そう叫んで奥から走って来たのは彼と同じ2年生のシエラ・ミルヒーユ・ペルシャだった。よく見てみると、床にはダークが盗んだものと思われるハーモニカが落ちていた。ダークが誰かれ構わず楽器を盗んでしまうのはいつものことだ。
コルテックスは気まぐれにそのハーモニカを手に取ってみた。
ダー「あっ、お前ッ・・・それを返せ!」
コル「いや・・・返すんならあっちだろう」
そう言ってコルテックスはシエラの方にハーモニカを投げた。シエラは少し慌てながらも何とかそれをキャッチした。しかし、これだけではダークは諦めなかった。
ダー「くっ、それをよこせっ!」
そう言ってシエラに近づこうとした瞬間、再び奥から少女の声がしてきた。しかし今度は先ほどとは比べ物にならないほど迫力に満ちた声だ。
?「ダアアアアアアクーーーーーー!!!」
そう叫んで凄まじい勢いでこちらに走って来るのは、シエラの双子の姉であるアミュータ・ミルヒーユ・ペルシャだった。ちなみに、彼女は生徒ではなくこの学校の数学の教師である。
この学校では年齢など何の問題にもならない。完全なる実力主義の世界である。それはそうと、アミュータの表情はそれはそれは恐ろしいものだった。
アミ「テメェ、私の妹に何してくれてんのよっ!!」
するとアミュータは走った勢いを利用して、ダークに鋭い飛び蹴りを的確に腹に決め込んだ。
ダー「うぐふぉっ・・・!!」
ダークは最早なすすべなく地面に伏して腹を抑えることしかできなかった。これだけで済めば彼はどれだけ幸せだった事か、アミュータはここでさらに追い打ちをかける言葉を言い放った。
アミ「私の可愛い妹の物を盗むなんて・・・許せないのです!あなたには後で校長先生の居残り授業を受けてもらいますっ!!」
ダークは何か言いたげにうめき声を上げたようにも見えたが、いかんせん先程のダメージが深刻なようで、実際の所はよく分からない。この場合、同情すべき対象はどちらかといえばダークの方だろう。
アミュータの制裁に校長の居残り授業。明らかに彼が働いた悪事に見合うレベルの罰ではない。
アミ「さ、もうすぐ授業が始まるのです。教室に戻りましょう」
どうやらアミュータは既に穏やかないつもの性格に戻ったようだった。そしてその言葉を聞いて、コルテックスはようやく重要なことを思い出した。
コル「授業・・・そうだッ!!」
授業の事を思い出し、急いでそこに向かおうとするコルテックスをシエラはふいに呼び止めた。
シエ「あっ、あの、コルテックスさん、ハーモニカを返してくれてありがとうございます」
コル「・・・ああ、気にするな」
コルテックスはそう言い残してその場を後にした。
改めて、コルテックスは腕時計の時間を確認した。8時29分・・・事実上残された時間はあと十数秒だ。しかし、残された距離もあとわずか。コルテックスは最後の一直線の廊下をラストスパートで駆け抜ける。
コル(間に合えッ・・・!!)
コルテックスが教室の扉を開けようと手を伸ばした瞬間、その時はやって来た。鳴り響く授業開始を知らせるチャイムの音。一足遅かったが、今扉を開けられれば間に合ったといってもよいだろう。
コルテックスは勢いよく扉を開ける。やはりほとんどの生徒は席に座っており、担当の教師も今まさに授業を始めようとしていたところだった。皆の視線が一気にコルテックスに集中する。
すると、予想もしていなかった方向から予想もしていなかった声が聞こえてきた。
?「おい、早く入ってくれよ。俺が入れないだろ」
コルテックスが振り返ると、彼は驚いた表情で口を開いた。
コル「お前は・・・リドリー!今日はこっちに来たのか・・・!」
リド「ああ、今日はこっちの気分だ」
この生徒の名はリドリー・フォー。通常この学校の生徒は、生物、機械、薬剤、自然の4つの科目のうちから自分が主に学んでいく科学教科を選択するのだが、今はこの第1生物科学室に来てはいるものの、彼は生物科学を選択している、というわけではない。
機械や薬剤など、全てのクラスに神出鬼没に現れるのだという。ちなみに、選択科目によって4つの寮に分けられているのだが、彼の寮部屋がどの場所にあるのかを知る者はいない。
?「・・・そ、そろそろ授業を始めますよっ・・・!皆さん席について・・・っ」
困惑しながらもそう言ったのは、生物科学の教師を担当するレイリー・クリスタルという女性だ。目以外の顔全体を包帯で巻いて隠していることから、生徒からはミイラ先生と呼ばれている。
リド「・・・だとさ。早く席についてやろうぜ」
ようやくその場にいる全員が席に着くと、レイリーは一度深呼吸をしてから授業を始めた。それでも、彼女の声は若干震えている。
レイ「えっと・・・それでは、今日は生物の合成について教えたいと思いますっ・・・」
コル(生物の合成、か・・・)
レイ「・・・と言っても、いくら最上級生の皆さんとはいえ、生物同士を融合させるのは本当に至難の業なんです・・・たとえ融合させられたとしても、計算通りの結果を出すのには第一線で活躍する科学者でも一苦労なのだとか・・・ですのでっ、今回皆さんにやってもらうのは、生物と無機物の合成ですっ!」
リド「成程な。やっぱり今日はこっちに来て正解だったな。ここが一番面白そうだ」
後ろからそんなリドルの声が聞こえてきた。やはり彼はそういう理由でその都度クラスを選んでいるのか。
レイ「無機物なら構造は有機物ほど複雑でないものが多いですし、成功率も高いし、そして何より安全ですっ・・・さて、皆さんは合成する生き物は持ってきましたね?」
彼女はそう言うと、奥の生物科学準備室の方に向かって声を出した。
レイ「さっ、おいで?」
すると、その方からカバのような生物がのっそりと歩いてきた。その後レイリーは生徒に向かってこう言った。
レイ「合成する材料はこちらで用意しました。ここから好きな物を使ってくださいね?」
その直後、そばにいたカバの腹部が急激に膨らんだかと思うと、大きく口を開けてそこから大量の材料らしき物体を吐きだした。ゴムとの合成によるカバである。レイリーによれば、材料の持ち運びにはこのカバが便利なのだとか。
レイ「では、実験開始っ」
生徒(え~~~~~~・・・;)
レイ「大丈夫、ちゃんと胃や肺とは別の特別な器官にしまってありますから」
コルテックスは唖然とした。持ってきたはずの合成用の生物がいつの間にかなくなっていたのだ。逃げ出したのではない。閉じ込めていた籠ごとなくなっている。コルってクスは記憶をさかのぼって必死に考える。
コル(・・・!ダークとぶつかった時・・・!)
そう、まさに廊下でダーク・サファイアとぶつかった時にその籠を落としたままここに来たのである。あの時は急いでいたから気付かなかったのだろう。
コル(くっ、どうする・・・?今からあそこまで取りには行けないぞ・・・!)
すると、どこからともなく何かの鳴き声らしき音が聞こえた。ネズミだ。昨日のネズミではないようだが、どうしてかコルテックスはネズミという生き物に縁があるように感じずにはいられなかった。
今回の授業で大事なのは、素材云々ではなく合成技術そのものだ。コルテックスはそのネズミをこっそり捕まえて、何事もなかったかのように前へ材料を取りに行った。既に他の生徒に使われたらしく、残ったものはもとの半分程度だった。
コルテックスは適当に目の前にあった材料を手に取ってみる。U字型の磁石だった。コルテックスはそれを持って自分の席に戻り、早速生物の合成実験を開始した。すると、そこへ1人の男子が話しかけてきた。
吉田「よ、コルテックス。調子はどうだ?」
この男は吉田耕一(よしだ こういち)。この学校の中では割と好青年な印象だ。
コル「何だよ・・・僕に何か用か?」
吉田「いや、別に・・・ただ、面白そうな組み合わせだな~と思って。ネズミと磁石かぁ。どんなのが出来るんだろうな?」
コル「そ、そうか・・・?そう言うお前は何にしたんだ?」
吉田「俺?俺はこいつだよ」
そう言って吉田の机の方を見た。そこにはスケルトンの籠の中を気味悪く這いまわる蛇の姿があった。
コル「蛇か・・・こりゃまたいい趣味をしてるな」
コルテックスは皮肉をこめてそう言ったが、吉田は余裕の表情で返す。
吉田「お前のネズミだってなかなかだぞ?」
コル「・・・お前は喋ってないで実験してろ」
吉田「ん・・・?お前の機械、なんか反応してるっぽいぞ?」
見ると、確かに合成機械のモニターには反応が示されていた。今回はなかなか調子がいいらしい。
コル「・・・こいつはなかなかの反応だぞ」
そこからコルテックスは一気に機械を操作し始めた。何かにとりつかれたようにじっとモニターを見つめる。そして、どうやらついに合成が完成したようである。機械の中から現れたのは、頭部に磁石のついたネズミだった。
レイ「・・・あら、どうやらうまくいってるようですねっ・・・」
レイリーがこちらに気付いてそう言ってきた。それに応えるかのように、そのネズミはうつろな目をしながらぎこちなく鳴き声をあげた。そして、そのままコルテックスの机から飛び出して、教室の外へと逃げ出してしまった。
コル「ああっ、コラッ!!」
リド「・・・どうやら頭の方はイカレちまったらしいな」
レイ「いえいえ、それでも充分ですっ」
吉田「よ~し、俺も負けてられねぇな!」
そう言って吉田は自分の席に戻って実験を始める。その時、突然コルテックスを見ていたレイリーが小さく声を出した。
レイ「あっ・・・コルテックスくん・・・」
コル「・・・?何です?」
そこで、レイリーとコルテックスは目があってしまった。包帯で包まれているが、彼女の顔が一気に赤くなっていくのが容易に想像できる。
レイ「えっ、・・・いやっ、な、何でもないですっ・・・!」
そう言い残して彼女はフラフラとその場に倒れ込んでしまった。彼女は極度のあがり症であるため、他人と目が合うと度々倒れ込んでしまうのである。
生徒「おい、またミイラ先生が倒れたぞーッ!」
吉田「マジか!保健室に運ぶぞッ!」
リド「お前1人で大丈夫か?」
吉田「これくらい平気さ。ここは俺に任せろ!」
吉田はそう言ってこれ見よがしにレイリーを抱えて見せた。
リド「・・・分かった。じゃあ後は頼む」
こうして授業が自習になってしまうのは、割とよくあることである。
1時間目の授業が終わると、コルテックス達は自分の寮へと歩いていった。実は、最上級生の授業の時間はほとんどが総合、つまり、卒業レポートの作成なのである。総合の時間では校内の研究室の一部が解放され、生徒達はそこを使うか、自室にこもって独自に研究するかのどちらかである。
しかし、それだけの自由行動を許してしまえば、教師たちの目を離れて怠けだす者は必ず現れる。そこで、レポートがある程度の基準に満たない場合には容赦なく1年生まで落第させられてしまうという恐ろしいシステムが採用されている。
コルテックスが焦っている原因はこれによるところが大きい。まず何の生物をどのように進化させるのか。そこから考えなくてはならなかった。
コル(中途半端なものではダメだ・・・何かいい案はないか・・・)
すると、背後から特徴的な声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だ。
ジン「コルテックス殿」
やはり、話しかけてきたのはエヌ・ジンだった。彼は機械科学クラスの最上級生であるが、コルテックスのことを非常に慕っている。
コル「やぁ、エヌ・ジンか」
ジン「申し訳ありませぬ。昨日の実験に参加できず・・・見回り先生に捕まりまして・・・」
コル「あぁ、まぁそうじゃないかとは思っていたよ・・・ということは、今日はまさか居残りか・・・?」
この学校では、午後6時以降に校舎に入ることは禁止されており、そこで教師に見つかると、その時点で校長による居残り授業が確定してしまう。エヌ・ジンは材料を取りに行く途中で生徒指導部の教師に見つかってしまったのである。
ジン「ええ・・・申し訳ありませぬ」
コル「いや・・・こっちこそすまない。僕の研究につき合わせてしまったばっかりに・・・」
ジン「いえ、コルテックス殿の研究に参加できて光栄です」
コル「・・・そうか。そう言ってくれると僕もありがたいよ」
すると、廊下の奥からさらにコルテックスを呼ぶ声が聞こえてきた。見ると、その方向には黒い長髪の女子生徒の姿があった。薬剤科学クラス6年生のラングレー・R・ポトルーだ。
ラン「コルテックス様!ここにいらしたのですね!」
彼女はそう言いながらコルテックスのもとに駆け寄って来た。
コル「ラングレーか。どうしたんだ?」
ラン「最近、コルテックス様が卒業研究で悩んでおられるとお聞きしました。私もコルテックス様の研究に参加させていただきたいのです!あたしはあなた様のお役に立ちたい・・・!」
ラングレーの協力はいいとして、コルテックスが研究に苦戦しているというのは誰から聞いたのだろう。コルテックスにとっては、あまり周りに知られたくない事実だ。
コル「わ、分かった・・・それはいいが、その・・・誰からそれを聞いたんだ?」
ラン「確か・・・リドリー・・・という者だったと思います」
コル「(あの野郎・・・勝手に変なこと言いふらしやがって・・・)そ、そうか・・・分かった」
ラン「では、あたしを使いたい時はいつでも言ってください。きっと力になります」
彼女はそう言うと上機嫌にもと来た道を戻っていった。コルテックス達はそんな彼女の後姿をしばらく見つめていた。
コル「・・・ふぅ、まあいいか」
その頃、シンシアは保健室を目指して迷っていた。レイリーが倒れて保健室に運ばれたと聞いたので、心配になって様子を見に行こうとしたのだが、いかんせんこの学校は広すぎる。瞬く間にどう進めばいいか分からなくなってしまった。
そんなシンシアの目の前に、少し小柄な女子生徒が映った。自然科学クラス5年生のアネット・バンディクーだ。自然科学担当であるシンシアは、彼女に保健室の道のりを訊ねることにした。
シン「あっ、ちょっとちょっと!アネットちゃん!」
彼女が呼び止めると、アネットは少し怯えたように振り返りながら言った。
アネ「・・・は、はい?あ、シンシア先生」
シン「いきなりで悪いんだけど、ちょっと保健室の行き方教えてくれない?」
すると、アネットは納得したように頷いて保健室への行き方を教えてくれた。
アネ「そういうことですか・・・いいですよ?ここからだと・・・この奥の突き当たりを右に曲がったところにあると思います」
シン「分かった、ありがとね。それじゃっ」
アネットに別れを告げた後、シンシアは急いで保健室に向かう。そして、ついに保健室に辿り着くと、そこには落ち込んだ様子のレイリーの姿があった。
シン「大丈夫?また倒れたらしいじゃない?」
レイ「はぁ~~~、駄目よね・・・教師として、こんなんじゃ・・・」
シン「ま~たそんなこと言ってる。大丈夫よ、あなたはちゃんと生徒に技術を教えられてるじゃない」
レイ「で、でもっ・・・生徒とちゃんと向き合えないなんて致命傷なんじゃ・・・今日だって、ちゃんと生徒に重大な事を伝えられなかったし・・・」
シン「重大なこと・・・?」
レイ「そう・・・見えたの」
シン「見えたって・・・まさか、未来が?!」
シンシアの言葉にレイリーは静かにうなずく。実は、レイリーには予知能力があり、時々彼女の頭に未来の光景がよぎることがあるのだという。
シン「それで、一体どんな・・・?」
レイ「コルテックスくんを見た時に・・・何だか彼・・・とても追い詰められてるように見えた・・・他の生徒達に囲まれてて・・・彼の顔は真っ青だったわ・・・」
確かにその言葉を聞くに、事態は深刻である可能性が高い。その後彼がどんな目に遭うのかは分からないが、いい事が起こるようにはとても思えない。
シン「・・・なるほどね。分かったわ。じゃあ、代わりに私が伝えてあげる。コルテックスくんよね?」
すると、レイリーは少し驚いた様子を見せた。顔が見えなくても、シンシアには分かる。
レイ「え、ええ・・・ごめんね・・・」
シン「いいのよ。ほら、いつまでも落ち込んでないで、仕事に戻りましょ」
レイ「・・・うん」
こうして、2人は保健室を出ていった。
次章、コルテックスに希望はあるのか・・・?!
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