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第2章
2012/06/23(土)20:44:48(12年前) 更新
授業終わりのとある教室。1年生の薬剤科学の授業が行われていたこの場所にはまだ、1人の女子生徒が残っていた。彼女は教科書を持って部屋を出ようとしたが、その出口をふさぐように1人の男が現れた。生物科学クラス7年生のゴルブ・フォックスだ。
ゴル「よぉ、初めまして。キミがユナ・クルスかい?」
すると、その少女はゴルブの顔を見上げて答えた。
ユナ「そうよ。あなたは誰?」
そう訊かれると、ゴルブは笑みを浮かべながら答えた。
ゴル「俺はゴルブ。まぁ、仲良くしようぜ?ヘッヘッヘ」
ユナ「ユナと仲良くなりたいの?う~ん・・・だったら、1つ条件があるわ」
ゴル「条件・・・?」
ユナ「うん、ハーゲンダッツを買ってきて。私、ハーゲンダッツが大好きなの!それを持って来てくれたら、仲良くしてあげてもいいよ」
すると、ゴルブは一瞬考えるそぶりを見せたが、すぐに納得したような表情になった。
ゴル「あぁ、アレか。いいぜ、それなら安いもんさ。だた、代わりに俺にも1つ頼みがある」
ユナ「頼み?」
ゴル「ああ、ちょっと見せてもらいたいものがあるんだ・・・」
自分の寮部屋に戻ったコルテックスは、早速エヴォルヴォレイの調整を始めていた。エヌ・ジンも共に作業をしていた。卒業レポートは、複数人数の協力で作る事も一応許されている。
今回は、昨日エヌ・ジンが持ってこれなかった材料を加えての実験だ。エヌ・ジンがいると、それだけで機械の改造作業がはかどる。流石は機械技師の天童と呼ばれる男だ。
そして、機械の調整が一通り完了した頃、少し遅れてブリオが寮部屋にやって来た。今回の実験に使う生物を調達してきたのである。
ブリ「コルテックスさん、持ってきましたよ~。今回はカエルなんてどうでしょう?」
見ると、ブリオの手にはしっかりと袋が握りしめられている。その中からカエルの鳴き声がやかましく響いてきていた。
コル「うん、いいだろう・・・それで、さっきの授業で考えたことがあるんだ」
ジン「ほぅ、それは何ですか・・・?」
コル「僕は前の授業で生物と無機物の合成を習った。これを利用して、なんとか生物の進化を促進できないかと思ったんだ」
ジン「うむ、成程・・・ですが、そうなると今一度改良が必要になってくるかと・・・」
コル「あぁ、それは分かっている。必要な材料は既に揃っているんだ。エヌ・ジンにはそれを加工して新しい部品を作ってほしい」
ジン「分かりました」
コル「僕らも出来る限り手伝うよ。よろしく頼む」
こうして、新部品の製作が急ピッチで進められた。外ではいつの間にか雨が降りだしていたのに気付いたのは、それから1時間以上が経った時だった。
ジン「・・・ふぅ、部品はこれで完成しました」
コル「おお、そうか。じゃあ、早速それを取り付けて、実験開始だ」
ジン&ブリ「はい」
コルテックスとエヌ・ジンが部品を取り付け、その間にブリオがカエルを所定の位置に固定する。
ブリ「実験台の固定は終わりましたよ~」
コル「ああ、こっちもすぐに終わる。ブリオはそこから離れるんだ」
ブリ「了解です~」
コル「・・・よし、これでいい。それじゃ、始めるぞ」
そう言って、やや慎重に機械の操作を始める。画面に次々と現れる情報に注意を払いながら、確実に手順を踏んでいく。後ろから見守る2人も緊張した面持ちだ。そして、覚悟を決めるように最後のレバーを一気に引く。
今回はエヴォルヴォレイ装置内で進化光線を浴びせる形式なので、あの怪しい光はその中から多少漏れてくる程度で、目を瞑る必要もなかった。しばらくして、漏れてくる怪しい光はやんだ。
コル「・・・終わったみたいだ」
ジン「取り出してみましょう」
コルテックスは頷いてボタンを押し、装置の扉を開いた。すると、そこには何故か頭に2つのボルトが刺さったカエルの姿があった。
ブリ「これ・・・は?」
何かの手違いでボルトがカエルに突き刺さった・・・というよりは、どうやら本当にボルトと頭部が結合しているようだった。
コル「どうやら合成には成功した・・・けど、進化に関してはどうかな・・・」
3人の間に沈黙が流れる。そんな言葉の空白を埋めようとするかのように、カエルの鳴き声と強くなり始めた雨脚が部屋に響き渡っていた。コルテックスはふと時計を眺めてみる。
学校ではもう3時間目の授業が終わる頃の時間になっていた。
コル「・・・もうこんな時間か・・・ちょっと部屋を出て気分でも変えよう・・・お前達も今日はいいぞ」
そう言ってコルテックスは、少しうな垂れながら歩き出した。
ジン「そうですか・・・では、失礼させていただきます・・・」
エヌ・ジンは気まずそうにそう言って、とぼとぼと部屋を出ていくコルテックスを見つめていた。
コルテックスはあてもなく廊下を歩いていると、曲がり角の向こうのほうから少女が走ってくるのが見えた。茶髪の髪をワインレッド色のリボンで1つくくりにしており、その容姿はフランス人形のようにも見える。ユナ・クルスだ。
彼女はコルテックスを見ると、あっ、と小さく声を出して指をさしながら今度は大声を上げ始めた。
ユナ「この人です!この人が先生の部品を盗んでいるところを見ました!」
コル「・・・?!はぁッ?!何言ってんだコイ・・・」
?「そうなのか?目玉をくり抜いてそこから脳を掻き乱してやる・・・!」
さもその罰が当然であるかのような、いたって普通のトーンでそんな恐ろしい台詞が聞こえてきた。その台詞とともに目の前に現れたのは、機械科学の教師であるアレクサンドロ・デス・シャドーだ。
赤い色をした髪の中に紛れるように緑色の瞳を覗かせている様は、なんともおどろおどろしい。
コル「待て待て待て!何の話だよ?僕が部品を盗んだって?そんなこと僕はしてな・・・」
アレ「御託はいい。とにかく、お前が今俺の部品を持っていたら確信犯だろう。今ここで調べさせてもらうぞ。まずはそこのポケットからだ」
そう言ってアレクサンドロはコルテックスのズボンのポケットに手を伸ばす。
コル「フン、どこを探したって・・・」
アレ「・・・おや?」
アレクサンドロの手がポケットから出ると、なんとそこには片手で握れる程度の金属が彼の手に握られていた。
コル「・・・は?!」
アレ「おぉ、これはこれは・・・まさに俺が探し求めていた部品ではないか・・・」
コルテックスはその部品を見て驚きのあまり声が出ない。そんなものをポケットに入れた覚えは全くなかった。
アレ「これで確定だな。早速お前の目玉を・・・といきたいところだが、生憎生徒の人体実験は禁止されている。代わりに校長に懲罰を任せるとしよう・・・」
コルテックスの顔は一気に青ざめた。校長の居残り授業は下手な人体実験よりも遥かに苦痛を強いられる。自分で罰を施せば、校長からお叱りを受けることがあるから、いっそのこと校長本人に罰の内容を委ねてしまおうという考えらしい。
コル「そ・・・そんな・・・どうして・・・」
コルテックスはショックのあまり膝から体制を崩してしまった。そんな放心状態のコルテックスを奥の曲がり角の陰から眺める生徒の姿があった。ゴルブ・フォックスだ。
ゴル「ククク、こいつはかなり使えるぜ」
そう言う彼の右手には、何故かコルテックスが持っていた部品と同じものが握られていた。
ゴル「ああ、ちょっと見せてもらいたいものがあるんだ・・・」
時をさかのぼること3時間前。薬剤科学教室でゴルブはユナにそう言っていた。
ゴル「聞いた話じゃ、お前は幻覚を見せたり、気配を消したりできるそうじゃないか?」
ユナ「そうよ。凄いでしょ」
ゴル「ああ、それで、ためしにその幻覚ってやつを見せてほしいんだ」
ユナ「別にいいけど・・・どんなのが見たい?」
ゴル「何でもいいぜ?」
ユナ「オッケー、じゃあ、よ~く見ててよ?」
すると、彼女の周りにいくつものハーゲンダッツが突然現れた。宙に浮いたハーゲンダッツの姿は本当にそっくりそのままだった。
ゴル「・・・ほう」
ゴルブは落ち着いた様子でそれを触ってみようとする。すると、なんとそのハーゲンダッツを触った感触までリアルに伝わってきた。これにはゴルブも少し驚いた様子だった。
ゴル「これ・・・ちゃんと触れる感覚もあるのか?」
ユナ「えぇ、私の幻覚は五感を支配するからね」
ゴル「成程な・・・ククク、こいつは便利そうだな・・・」
ここで、ゴルブは瞬時にひらめいた。この幻覚をもってすれば、完璧に教師にばれることなく彼らの所持品を拝借できるのではないかと。かくして、この作戦は3時間目終わりの昼休みに実行されたのであった。
コルテックスは先ほどよりもうな垂れながら何とか食堂にたどり着いた。気分転換のつもりが、逆にさらに悲惨な目に合うことになってしまった。何故こんなことになったのか、まったくもって理解できない。
何とか注文を頼んで適当にテーブル席に着くと、遠目からまたもやコルテックスに向かってくる誰かの姿が見えた。徐々に近づくにつれて、それがシンシア・アメジストであることが分かった。
シン「あっ、いたいた。コルテックスくん、君にちょっと話があるんだけど・・・」
コル「今度は何処に行きたいんですか~?」
コルテックスは少々うんざりといった様子で答えたが、シンシアはきっぱりと否定した。
シン「そうじゃないわよ!実はね・・・レイリーが、あなたにこれからよくないことが起こるって・・・」
それなら、つい先ほどよくないことが起こったばかりだ。コルテックスには最早そんなことを言う気力もない。
シン「それも相当深刻な状況みたいだったから、あなたに伝えておこうと思ったの」
コル「そうですか~それはどうも御親切に」
コルテックスは最早どうでもよさそうに棒読みでそう答えた。
シン「いい?レイリーの話だと、あなたは生徒たちに囲まれて顔を真っ青にしてたらしいわよ?どれくらい先かはよくわからないけど・・・とにかく気を付けてね」
そんな漠然とした情報を与えられただけでは、対処するのにも無理があるのではないか。複数の生徒に囲まれないようにするには、どう気を付ければよいのか。そもそも、コルテックスは何故生徒に囲まれることになるのか。
それがわからなければ、具体的な対策など練りようもない。
コル「・・・わかりましたよ。気を付けます」
シン「・・・もう、コルテックスくんちゃんと聞いてないでしょ?レイリーの話は本当なんだからね?後でどうなっても知らないわよ?」
やはりコルテックスの表情からそのことがシンシアに伝わったようである。
シン「・・・じゃ、私はちゃんと伝えておいたからね?」
そう言ってシンシアはコルテックスのもとを去っていこうとした。が、その直後怒号らしき生徒の叫び声が近くから聞こえてきた。周囲にいた者たちは一斉にそちらのほうを向く。
シン「・・・何?!」
見ると、どうやら2人の生徒が喧嘩を始めたようである。先に叫び声をあげた生徒は、7年生のパンチ・ザ・ジャンプ。何とも目つきの悪い目でもう1人の生徒を睨み付ける。もう一方の生徒はというと、そんな威嚇を小馬鹿にしているかのような表情だった。
彼は10年生のセリカ。どうやらこの喧嘩の発端は彼の挑発によるものらしかった。
パン「あぁ!自分のスマッシュくらいてぇのか?あぁ!どうなんだよ、言え!ごらぁぁ!!」
セリ「あァ、キ~ミィ~、だ~れに喧嘩売ってんのか分かってんのかなァ~?」
パン「んなもん知るかよ!誰だろうと自分を舐めるような奴はぶっ飛ばす!!」
セリ「ハッ、やれるもんならやってみろや!!」
そして、とうとうパンチがセリカに向かって鋭い一撃を仕掛ける。あまりに素早い攻撃にセリカはそれを避けることができない。
セリ「ぶっ・・・!」
セリカはそのままの勢いで床に倒れこんでしまった。
パン「へっ、口ほどにもね・・・」
その時、パンチは突如頭上から何かが迫ってくるような気配を感じた。パンチはすぐに上を向く。すると、なんと食堂を照らしていたランプがパンチめがけて落下していた。
パン「ッ・・・!?」
パンチはバックステップでそれを避けようとするが、ランプの落下速度は思った以上に速く、ついにランプはパンチの鼻先でぶつかり砕け散った。
パン「ぐあっ・・・!」
パンチが床に倒れこむと同時にセリカが起き上がってきた。
セリ「・・・知らねーようなら教えといてやるよ。俺に喧嘩売ったら、不幸になるぜ?」
そう言ってセリカがパンチに近づいた直後、シンシアの声が響いた。
シン「ちょっと・・・!何やってるのよ・・・!」
無謀ともいえるこの行動に周囲の生徒たちは呆気にとられている様子だった。当の本人はそんなことはお構いなしに2人の生徒を見つめている。
セリ「あぁ?何だよ。お前には関係ないだろう。だいたいお前に何ができるっていうんだ」
シン「関係ないことないわよ!それに、私は直接手を出せなくても校長の居残り授業を受けさせることはできるんだからね?」
成程、確かにそれはどんなに頼りない教師であっても持っている最大の権威なのかもしれない。シンシアはさらに威勢よく続ける。
シン「まずセリカくん!あなたいっつも人を馬鹿にするようなこと言って・・・そんなんだから喧嘩ばっかり起こるのよ。それからパンチくんも、すぐに暴力を振らない!よって2人とも居残り授業に行ってもらうわ」
2人「・・・ハァ?!」
2人はあからさまに不服そうな表情を浮かべた。というよりも、前面に突き出した。
シン「当たり前じゃない。2人ともここ最近喧嘩騒動ばっかり起こしてるわよ?少しは反省をしなさいよ」
セリ「・・・チッ、面白くねぇな~・・・」
パン「・・・自分だって、別に好きでこんな喧嘩してるわけじゃない」
セリ「もうやめだやめ。興ざめしたわ」
2人はそんなことを言って別々のほうへ歩いていった。それにしても、この2人を言葉のみで言いくるめてしまうシンシアは大した勇気の持ち主である。コルテックスはそんな彼女に少し感心したが、すぐに自分もその居残り授業で彼らと居合わせることになるのだと気付くと、気が重くなった。
そして、いよいよその時はやってきた。恐怖の居残り授業の時間だ。特に今回はコルテックスにとってはあまりにも不本意な参加だ。当然、校長室への足取りは重い。すると、そこへ後ろからコルテックスを呼ぶ声がしてきた。エヌ・ジンだ。
ジン「コルテックス殿!こちらにいるということは、まさか・・・」
コル「ああ、そのまさかだよ・・・どういうわけか居残り授業くらっちゃったんだ・・・」
ジン「まぁ、仕方ないですな・・・拙者と力を合わせてこの難局を乗り切りましょう」
コル「あぁ、そうだな・・・」
そんな話をしていると、やがて目の前に一際大きな扉が見えてきた。校長室の扉だ。物理的にも精神的にも、とにかく重い。やっとの思いで扉を開けると、そこには既にパンチ・ザ・ジャンプがいた。
悪趣味なオブジェや絵画達に睨まれているかのようなこの部屋で、1人お仕置きを受けるのを待って立っていた彼の気分は一体どのようなものだったのだろうか。そんなことを想像していると、すぐに後ろから別の人物が部屋に入ってきた。セリカだ。
セリ「よぉ、なんだ今日はお前らか・・・」
コル「悪かったな」
ワルワルスクールでは、頻繁に居残り授業を受けてしまう生徒たちを総称して居残り常連組と呼ぶことがある。今この部屋にいる者は全員そのグループに属しているのだ。そして、残りの1人もその中の1人である。
すると、その最後の1人が校長室の扉を開いた。やってきたのはダーク・サファイアだ。
コル「そうか・・・そういえばお前も言われてたっけか」
ダー「フン、お前が余計なことをしなければこんなことにはならんかった!」
コル「いや、結果は同じだったと思うぞ・・・?」
?「おしゃべりはそこまでよ・・・!」
突然甲高い女性の声が部屋に響いた。いよいよワルワルスクールの校長、マダム・アンバリーのお出ましだ。見ると、彼女は部屋の遥か高い天井近くの場所に浮いていた。これは天井から頑丈なロープで彼女の巨大な体躯を吊り下げているのだ。
もう12年も居残り授業を受け続けていれば、それくらいのことはわかっていて当然だった。
アン「さぁ、今日のメンバーも揃ったことだし、早速居残り授業を始めていくわよ~」
そう言うアンバリーの手には既に激しい電気が目に見えて溜まりつつあった。そして、挨拶代わりにその電撃を四方八方に飛ばしてくる。
ジン「ぐぁっ・・・!!?」
早くもその一撃がエヌ・ジンを捉えてしまった。顔が半分機械に覆われている彼にとって電撃は圧倒的不利と言わざるを得ない。
コル「大丈夫かっ!?エヌ・ジン!」
アン「よそ見は禁物よ?コルテックスちゃん?」
コル「何ッ!?」
振り返ると、既に電撃がコルテックスに向かって飛んできていた。
コル「ぐわぁぁぁあああ!」
コルテックスは電撃を食らいつつも何とか立ち上がったが、エヌ・ジンの体は痺れてとても動かせそうになかった。
セリ「ハッ、校長だろーがなんだろーがやってやるよ!」
セリカは威勢よく声を上げると、懐から小さいナイフを取り出してアンバリーに向かって思い切り投げつけた。
セリ「切れろ!」
パン「あんな距離から届くのか・・・?」
セリ「まぁ見てな」
すると、ナイフはやや不自然なカーブがかかりアンバリーを吊るすロープへとまっしぐらに向かっていった。そして、ナイフはいとも簡単にロープを切り裂いてしまった。
ダー「何、あんなナイフで・・・!」
アンバリーは勢いよく地面へと落ちていく。しかし、アンバリーはそのことを想定していたのか、両足に電気をためてそのままストンピングの要領で着地した。それと同時に、足についていた電気が床全体に激しく流れ出した。
セリ「何ッ?!」
全員「がっ・・・!!」
アンバリーの巨体の衝撃も加わって、その場にいる全員が深刻なダメージを負ってしまった。
アン「あなたの能力はよく知っているわよセリカ。思い浮かべたことが現実のものになるんですってね」
そう、セリカは超能力の実験をしており、その過程で3年前にその能力を身につけたのであった。パンチとの喧嘩の時に突然ランプが落ちたのも、ナイフが不自然な動きでしかも校長のロープを切ったのも、すべてはセリカが思い浮かべたことなのだ。
アン「あなたの能力は確かに厄介だわ。でもね、全く対抗策がないわけではないわ。思い浮かべたことが現実になるのなら、それを読んでその先の行動を考えればいいだけのことよ」
セリ「くっ・・・!(くそっ、身体が動かねぇっ・・・!)」
パン「うをおおおおお!負けるかぁぁぁあああ!!!」
パンチは痺れた身体を気合で無理やり動かし、アンバリーに向かって走り出した。
アン「ウフフ、そんな身体じゃ電撃は避けられないわよ?」
アンバリーは余裕の笑みを漏らしながら電撃を放つ。彼女の言葉通り、今のパンチにそれを避けられるはずもなかった。
パン「うっ・・・!!」
パンチは力尽きたように倒れこんでしまった。一方、身体が動かせないセリカはアンバリーを睨む。
アン「・・・あなたの考えは見えてるわよ」
アンバリーはそう言いながら、天井から落ちてくる板を電撃で打ち破った。
セリ「チッ・・・!」
ここまでくると、もう誰もアンバリーに太刀打ちできるような者は残っていなかった。アンバリーは勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべている。
アン「さぁ・・・授業は始まったばかりよ・・・!」
全員「・・・ぎゃあああああああああああ!!」
彼らの本当の地獄の時間は、これから残酷なほどに続いたのであった。
日も徐々に暮れ始め、ランプが学校全体を照らしだしたころ、会議室では教師や事務員達が校長が居残り授業から戻ってくるのを待っていた。ここでは、定期的に学校関係者が集まり予定会議を開くのだ。
会議が始まる時間は校長が来たタイミングであるため、今は教員たちは席について談笑をしていた。
ザヌ「それにしても今日の校長は遅えなぁ・・・まだ居残り授業をやってるのか・・・?」
そう言葉を漏らしたのは体育担当のザヌサー・ベアーである。校長がまだ来ていないからか、退屈そうに頬杖を突きながら席に腰かけていた。
マル「できるだけ早く済ませてほしいな・・・見回りの時間が迫っているんだ・・・」
そう言ったのは生徒指導部のマルク・ミノワール、通称見回り先生である。彼は毎日午後6時以降進入禁止となった校舎の警備を担当しているのだ。
ザヌ「確かに、会議なんてさっさと終わらせて仕事終わりの一杯でもやりたいもんだ」
ネイ「そう言うな。会議だって立派な仕事なんだ。与えられた任務を最後まで全うするのが仕事というものだろう」
そんな口を挟んできたのは、隣に座っていたネイキッド・バンディクーだ。彼もまた体育担当教師である。元々軍隊の隊長を務めていた彼らしい言葉だ。
ザヌ「ケッ、俺は面倒なことが大嫌いなんだよ」
ネイ「そんなことを校長に聞かれたらお叱りを受けるぞ?」
ザヌ「それくらい分かってるよ。そん時ゃそん時だ」
その直後、会議室の扉が開いた。扉を開けたのは、アンバリーだった。
ザヌ「・・・やべぇ」
アン「皆さん、ごきげんよう」
心なしか今日の彼女の挨拶には感情がこもっていなかった。そのまま彼女は席に着く。
アン「さて、それでは今日の会議を始める前に・・・今日は大事なお知らせがあります。ニークリス」
校長の言葉を聞くと、やや低い身長で小太りの中年男性が席を立ちながら答えた。
ニー「はい」
頭髪の薄さが若干目立つこの男性はニークリス・ホルス・カーマイン。薬剤科学の教師であるとともに、この学校の教頭を務めている。彼は会議室から別の部屋へつながる扉を開いた。
ニー「さぁ、入りたまえ」
そう言うと、その扉の奥から若い男性が入ってきた。彼はニークリスの後ろについていき、皆が座っている長机の前まで歩いて、そこで立ち止まった。そして、教師達の方を向く。ここで、ニークリスから彼の紹介があった。
ニー「紹介しましょう。彼は今日からこのワルワルスクールで教員研修を受けることになったセドリック・スープラ君です。これからしばらくの間彼も教育実習生として我々とともに働いてもらうことになります。では、セドリック君、一言」
ニークリスからの紹介を受けると、セドリックはギラギラと希望に満ち溢れた目をしながら、ハキハキと自己紹介をし始めた。
セド「どうも、初めまして!今日からこちらの学校で研修を受けさせていただくセドリック・スープラと申します!薬剤と機械に自信がありますが、研修授業は薬剤科学をやりたいと思っています。皆さんどうかよろしくお願いしますッ!」
そう言うと、彼は勢いよく深いお辞儀をした。
アン「若いっていいわね~。こちらこそ、どうぞよろしく」
セド「はい!」
そんな生き生きとしたセドリックの姿を見て、教師たちは様々な反応を示した。
アル「いいねぇ、彼、なかなかに情熱的だよ。きっと彼に流れている血は、とても美しいに違いない・・・!」
そんな反応を示したのは、美術担当の教師であるアルフレッド・ファレスだ。真っ赤なスーツに真っ赤な髪と一際異彩を放つ彼は、やはりその反応も特殊なものだった。しかし、評価に関してはそれに賛同する者もいた。
ネイ「・・・うむ、アイツはいい目をしてるな」
ネイキッドは頷きながらそう言った。しかし、隣にいるザヌサーはやや斜に構えた様子だった。
ザヌ「フン、現実突きつけられてポッキリ折れなきゃあいいがな・・・」
次章、コルテックスの実験が成功する時は来るのか?!
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