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第5章
2012/05/23(水)18:43:21(12年前) 更新
2時間目の授業が始まった。それぞれの教室にチャイムの音が鳴り響く中、北校庭には6年生の機械科学クラスが集まっていた。先ほど製作した金属探知機の性能を試すためだ。全員が集まったところでアレクサンドロが口を開いた。
アレ「よし、集まったな。じゃあ早速機械の電源を入れろ。この校庭内の範囲で金属を調べてくるんだ・・・もし森の奥に入りでもしたら、体内中の血液を搾り取ってやる」
恒例の脅し文句から授業が始まると、皆一斉にアレクサンドロから逃げ去るかのように散り散りに校庭を探索し始めた。そんな中、ワットはゆっくりと機械の電源を入れながらどこへとなく歩き出した。
大して欲しくもない物を探し回るのは、彼にとっては退屈極まりないものだった。とりあえず、適当に機械を動かしつつ歩き回っていれば注意されることはないだろう。すると、目の前にはセムスとブラックが何やら話し合っている様子だった。
ブラックの声は別段耳を傾けなくとも、否応なしにこちらの耳に入ってくる。
ブラ「おっ、もしかしてここじゃないのか!?」
セム「そうだね・・・僕の探知機もここに反応してるみたい」
ブラ「おっし、じゃあここを掘り起こしてみるとするか!」
セム「勝手にそんなことしていいのかなぁ・・・」
サぺ「いいと思うよ~。だってそれ、先生たちが埋めておいたやつでしょ?」
ワットは気まぐれにその会話に割って入ることにした。後ろから話しかけたせいか、2人は驚いた様子で急に振り返ってきた。
ブラ「おわっ、何だよ急に。びっくりさせんなって!」
セム「それより、先生たちが埋めたって・・・?」
サぺ「だって、普通そんなところに金属なんか埋まってるわけないだろ?アレはこの授業のためにわざわざ先生が事前に埋めておいたものなんでしょ」
ブラ「へぇ~、そうだったのか」
セム「まぁ、言われてみれば・・・」
ブラ「でもそれって、これを掘り起こしちまえばもらっていいってことなんだろ?アイツにしては随分気前がいいじゃねえか」
サぺ「さぁねぇ~、ま、何かしらの考えがあってそうしてるんじゃない?」
ブラ「まぁいいさ。じゃ、さっさといただこうぜ」
そう言ってブラックは、以前授業で作った採掘用ドリルを取り出した。勿論、これも彼の血のにじむ努力の賜物である。ブラックは目標の場所に向かって何の躊躇もなく掘りだした。ドリルの音が校庭中に響き渡る。
しばらくすると、ブラックはドリルの先に今までとは違う感覚を覚えた。目当ての金属に達したのだろう。彼は即座にドリルのスイッチを切る。
ブラ「・・・よし、こんなもんかな」
そして、3人は掘った後の穴の奥を覗きこんでみる。すると、そこには確かに先ほど機械で確認した通りの金属の塊があった。
セム「お、あったね。ブラックの機械も大丈夫みたいだ」
ブラ「おいそれどういう意味だよ?俺が作ったんだから大丈夫に決まってんだろ?」
サぺ「その自信はいったいどこから来るのかねぇ・・・」
ブラックはさっきのお返しとばかりにワットの言葉を無視して言った。
ブラ「へっへへ、ちょーどこの材料が欲しかったところなんだ」
そんなことを言いながら満足気にその金属を手に取る。
セム「へぇー、何に使うの?」
ブラ「おっと、それはいくらセムスでも言えないね。ま、出来てからのお楽しみってやつだ」
セム「ふーん、じゃあ楽しみにしてるよ。上手くできるといいね」
ブラ「おう、任せとけよ。あっと驚くもんを作ってやるよ」
驚くものを作る。この言葉にはワットも少なからず興味を持ったが、言った人物がブラックであるということから、どうにも期待はできなかった。すると、ワットの視界の奥に何やらこそこそと動く陰がいるのが、森の茂みの奥に見えた。
サぺ「ん?何だあれ?」
その呟きにつられ、2人はワットを見る。
ブラ「あ?何だ?」
セム「あっ、何か動いてる・・・あそこ」
セムスも気づいたらしく、ワットの見ていた方を指差した。それを見て、ブラックも気づく。
ブラ「あ、本当だ・・・森の中には入っちゃいけねぇってのに大した勇気の持ち主だ」
すると、偶然近くを通りかかったミストがこちらの様子に気づいたらしく、興味津々な様子で近づいてきた。
ミス「おやおや~?どうしたの~?何か面白い物でもあった~?」
ミストがそう言ったころには、ワットはその茂みの方へ歩き出していた。そして、豪快に草を掻き分けてみる。すると、そこにいたのは思ってもみなかった人物だった。
サぺ「・・・何やってんすか、ブリオさん」
そう、そこには何故か蛇を手にしたブリオの姿があった。彼は慌てた様子で口を開いた。
ブリ「ぁ、いや・・・ちょっと材料集めを・・・」
ミス「ワット、この人と知り合いなの?」
サぺ「あぁ、この人は昨日のコルテックスさんの実験の時に一緒にいたブリオさんだよ」
ミス「あぁそうだったんだ~」
ブリ「ワット、あまり計画を不用意に他言するのはよくないですよ」
ブリオはおどおどしながらもなんとかワットにそう注意した。実は、これだけでも彼にとっては相応の勇気を要している。
サぺ「そうでしたね、すいませんっした。ちょっと彼女に意見を聞いてみたくて」
ブリ「意見、ですか・・・まぁ、それは後で伺いましょう。とにかく今の私は忙しいのです」
サぺ「そいつは邪魔してすいませんでしたね」
ブリ「では、私はこれで」
そう言ってブリオは森のさらに奥の方へと歩いていってしまった。そんな様子を見ていたブラックはふいに言葉を漏らした。
ブラ「・・・いいねぇ~、上級生ってのは自由で」
サぺ「確かに」
ワットは心から深く頷いた。
一方、第3自然科学室では5年生の授業が行われていた。今回はある単元の小テストがあり、授業の半分ほどの時間がそれにあてられていた。小テストなので、その場で教師を担当するシンシアが回答を発表し、自己採点をしていく。
小テストなので、それほど難しい問題が並んでいるわけではない。そして小テストなので、基本的に生徒たちのやる気もない。そんな実力かどうかも分からない曖昧な点数を評価することに意味があるのかどうかは疑問だが、評価をするにあたってはテストという方法が一番手っ取り早いのは確かだ。
そんなわけで、ワルワルスクールにも一応テストなるものはこうして存在している。生徒は回答の発表に一喜一憂することもなく、漫然と点数を計算し始めていた。
シン「は~い、これで回答は全部よ。あとは点数を出して、私の机のところに持ってきてー」
すると、真っ先に採点を終えた生徒がいた。クロワである。
クロ「また0点だよー。次こそは100点取るぞー!」
あっけらかんとした様子でクロワはそう言った。確かにその点数なら計算のしようがない。その時、隣の席にいたアネットは、少々苦笑いをしながらクロワに話しかけた。
アネ「ク、クロワちゃん、そういうことはあんまり大きな声で言わなくていいと思うよ?」
クロ「そうなのー?あ、そうだ。アネットちゃんは何点だったー?」
アネ「えっ・・・?!」
クロ「いいじゃんいいじゃん、ちょっと見せてよ」
そう言ってクロワは遠慮なしにアネットの答案用紙を覗き見た。点数欄のところには、綺麗な赤文字で68点と書かれている。
クロ「へぇ~、いい点数じゃん。いいなぁ~」
アネ「そ、そうかな・・・?」
すると、2人の目の前にシンシアが現れた。
シン「ほーら、2人も点数を出したんなら紙を出して」
アネ「あっ、す、すいません・・・っ!」
クロ「はーい」
そう言って2人が答案用紙をシンシアに手渡したところで、丁度授業終了のチャイムが鳴った。
シン「あっ、じゃあ答案用紙を渡した人から戻っていいわよー」
クロ「よーし、じゃあ早速材料を渡しに行こうかな」
それを聞いたアネットは、思い切ってクロワに疑問をぶつけてみることにした。
アネ「・・・?また何か頼みごと引き受けたの・・・?」
クロ「うん、相当困ってたみたいだったから」
すると、アネットは少し不安そうな顔をして話した。
アネ「クロワちゃん、あなたのそういうとこはすごくいいとこだと思うけど・・・でもちょっとは気を付けた方がいいよ?良くないことを考えてる人もいるんだから・・・」
クロ「大丈夫大丈夫、何とかなるって」
彼女はやはり朗らかな表情を崩さなかった。しかし、アネットの不安な顔もそのままだ。
アネ「そ、そう・・・」
クロ「じゃ、行ってくるねー」
そう言ってクロワは軽快に教室を飛び出していくのであった。アネットはそんなクロワの姿をしばらく見つめていた。
アネ(・・・ハァ、やっぱりちょっと心配・・・)
クロワが引き受けた依頼は、ダーク・サファイアの求める材料集めだった。幸い材料は先ほどの休み時間の間に集まったため、あとは彼のもとにそれらを届けるだけだ。そして、薬剤クラスの寮を目指して廊下を歩いていると、そこで1人の男子生徒と出くわした。
ゴルブだ。彼はクロワに気付くと気さくに声をかけてきた。
ゴル「おっ、お前は確かクロワじゃないか。ま~たくだらない頼まれごとでもこなしてるのか」
クロ「えへへ、偉いでしょー。今はダークって人に届け物してるの」
ゴル「ほ~ぅ・・・」
そう声を漏らしながらゴルブは彼女の手にしている材料を覗き見た。すると、ゴルブは一瞬だけ表情を変えたのだが、クロワはそれに気づかない。
ゴル「・・・もしかして、それが持ってく材料か・・・?」
クロ「うん、そうだよ」
ゴル「・・・お前、いっつも頼まれごとばっかで大変そうだよなぁ・・・たまには俺が代わりにそいつを持ってってやるよ」
クロ「え、いいのー?」
ゴル「ああ」
クロ「じゃあお願いするね。ダーク・サファイアって人に届けるらしいよー」
ゴル「ああ、分かった・・・」
そう言ってゴルブが振り返ってその場を立ち去ろうとしたその時、後ろの方から誰かの声が聞こえてきた。
?「・・・ちょっと待ってくださいっ・・・!」
再び振り返ると、そこにはアネットの姿があった。
アネ「その材料、返してもらえませんか・・・?」
ゴルブは思わず舌打ちしそうになる。だが、それを打ち消して決して表情には出さない。端から見れば、余裕の表情にすら見える。
ゴル「・・・何だよ、人がせっかく親切で引き受けたってのに」
アネ「・・・いいですよ、そんなことをしてもらわなくても・・・だったら、私がそれを渡してきます・・・!」
今、彼女はゴルブに疑いの目を向けている。何度もその目を見てきたゴルブには手に取るようにそれが分かる。この状況では、無理に策を突き通そうとするのは得策ではない。引き際を見極めるのも、生きていく上では肝要なことだ。
いかに自らの手を汚さずして欲しい物を手にできるか。それがゴルブの考えだった。
ゴル「・・・あ~もう分かったよ。そこまで言うんだったらお前に任せる」
そう言ってゴルブはアネットに材料を渡した。一方のアネットは少々拍子抜けした様子でそれを受け取った。
アネ(・・・?意外とあっさり諦めるのね・・・)
ゴル「じゃ、俺はこれで失礼するわ」
そう言って彼はその場を立ち去ってしまった。すると、ふいにクロワがアネットに話しかけた。
クロ「ねー、どうしてあんなこと言い出したの?」
相変わらずの陽気な顔でそう聞いてくるクロワを見ていると、こちらとしては不安は尽きない。アネットは呆れ気味にため息をついてから言った。
アネ「・・・あのねクロワちゃん、あなたに人を疑えとは言いたくないけど、用心はした方がいいと思うよ?」
クロ「うん、分かった。気を付けるね」
アネ(本当に分かってくれてるのかなぁ・・・?;)
その後、クロワとアネットは共にダークのもとを訪ねることにした。そして、寮の入り口に差し掛かったところで、お目当ての人物が見えてきた。しかし、彼の顔つきを見るに、どうやらすこぶる機嫌が悪いらしかった。
アネ(うわ~・・・これは厄介なことになりそう・・・)
そう思ったのもつかの間、ダークは2人を見てから一層表情を険しくして近づいてきた。
ダー「貴様らか!ワシの頼んだ材料を奪った奴は・・・!?」
アネ「はっ・・・?!」
ダー「そいつをワシによこせっ!!」
こちらが言い分を言う暇もなく、ダークはいきなりクロワに向かって襲いかかってきた。するとその時、突如ダークの背後から金属の棒ようなものが現れ、それを掴んだ少年がダークを殴り飛ばしてしまった。
ダー「ぐぉっ・・・!?」
ダークが吹き飛ぶと、彼の姿に隠れていた少年の姿が現れた。彼は平然と煙草をくわえながら佇んでいる。セリカだ。
セリ「その辺にしておけよクソジジイ」
ダー「・・・何だと・・・?!」
セリ「ガキの女相手にムキになりやがって、情けねぇったらありゃしねェ・・・見てて不快なんだよッ!」
セリカはそう言いながらさらに持っていた棒をダークに投げつけた。彼の方こそ、ダークとはいえ老人相手に暴行を加えているではないか、という突っ込みは受け付けてくれそうにない。
するとその時、偶然近くを通りかかった見回り先生ことマルク・ミノワールが、その事態を目撃してしまった。
マル「・・・!おいお前ら、何をしてるんだ!」
マルクはすかさず声を荒げながらこちらに向かってくる。セリカはそれを見て小さく舌打ちをした。ダークはさっきの一撃ですっかり気絶しており、セリカの手にはまだ金属の棒が握られている。
その様子を見たマルクはすぐさま状況を把握した。セリカを睨み付けながら大股で彼に迫っていく。
マル「・・・またお前か!昨日も注意を受けたばかりじゃないか!また居残り授業を受けたいのか!?」
声を荒げるマルクに対してセリカは平然と答えた。
セリ「ハッ、誰が。俺がやりたいようにやったらこうなっただけだ」
マル「ふざけるんじゃない!全てがお前の思い通りになると思うな!お前はもう居残りだ!」
そう言って振り返ると、今度は横でのびているダークを乱暴に担いだ。すると、それを見たクロワがふいにマルクを呼び止めた。
クロ「あっ、先生ちょっと待ってー」
マル「ん?何だ?」
クロ「これをこの人に渡しといてくださーい」
そう言ってクロワは持っていた材料をマルクに渡した。すると、ふいにセリカが口を挟んできた。
セリ「・・・こいつにそんなもんを渡す必要なんかねーよ」
クロ「そうなの?まぁでもダークに渡せって言われたし、一応渡しておくよ」
マル「分かった。目を覚ましたら私が渡しておく」
そう言うと、マルクは今度こそ校舎の方へ歩いていった。恐らくダークは保健室へと運ばれることになるのだろう。実は、そんな様子を遠くから眺めている者が1人いた。先ほどクロワに会っていたゴルブである。
ゴル「チッ、とんだ邪魔が入ったな・・・せっかくおこぼれにあずかろうとしたのによ・・・」
実はゴルブがクロワのもとを立ち去った後、彼はすぐにダークのもとを訪れていた。そして、クロワ達がダークの材料を奪い取ってしまったと告げていたのである。それでダークが材料を奪い返したとき、うまく機嫌を取って自分にもそれを分けてもらおうという算段だったのだ。
しかし、肝心の材料は予想外の人物の手に渡ってしまった。最終的にはダークの手に渡るとしても、その頃にはもうごまをすっても効果は見込めないだろう。
ゴル(まぁいい、どうせ言葉の通じなさそうな奴だったしな・・・)
その頃、エヌ・ジンは未だ自室のベッドに横たわったまま動けずにいた。昨日の電撃の痛みは未だに抜けきっておらず、手足のしびれも完全には収まっていない。幸い午前中は総合の時間で埋まっているため、しばらく安静にしていても問題はなかった。
とにかく今はこの痺れを精一杯癒すしかない。すると、ベッドのそばの机に置いてあった通信機から通信を知らせる音が鳴り響いてきた。エヌ・ジンはなんとか体を起こしてそれを手に取ると、通信ボタンを押して応答した。
ジン「はい、こちらエヌ・ジン」
そう言うと、通信機から聞こえてきた声は、やはりコルテックスのものだった。
コル「やぁ、僕だ。昨日の実験だけど、上手くいったよ」
それを聞いた瞬間、エヌ・ジンは一気に声のトーンを上げて答えた。
ジン「おお!左様にございますか。では、ワットはお役にたちましたかな?」
コル「あぁ・・・まぁな」
ジン「左様でございましたか。それは何よりです」
エヌ・ジンは安堵の表情を浮かべて胸をなでおろしながらそう言った。すると、コルテックスがさらに話を切り出してきた。
コル「それで、今日は新たな実験をしようと思ってるんだが・・・エヌ・ジン、もう体は大丈夫なのか?」
それを聞くと、エヌ・ジンは気まずそうに自分の体を眺めた。左手を軽く握ってみるが、あまり手に感覚がなく、上手く力が入らない。こんな状態でコルテックスの実験に参加しても、彼の役に立つことはできないだろう。
ジン「それが・・・申し訳ございませぬ。今の状態ではまだ、拙者は実験の足を引きずることになるやもしれませぬ・・・」
コル「そうか・・・それは仕方ないな・・・」
ジン「本当に申し訳ない・・・」
コル「いや、気にするな。これはもともと僕の研究なんだ。僕1人だけでもなんとかやってみせるさ」
ジン「コルテックス殿・・・承知しました。それでは、引き続き研究の方を頑張ってください」
コル「ああ、分かってる。エヌ・ジンの方こそ身体気をつけろよ?」
ジン「はい」
コル「じゃあな」
その言葉を最後に、通信機の音は途絶えた。その後、エヌ・ジンはふと窓の外の景色を眺めてみた。空には青々とした空間の中に壮大な白い雲が窓の景色を横切っていた。
そして、ブリオもようやく頼まれていた材料全てを集め終えた。早々に薬剤クラス寮で同級生の生徒に材料を渡すと、クロワがダークに材料を渡していることを信じて次はコルテックスのいる生物クラス寮を目指した。
生物クラス寮の扉を開き、談話室を通って現在の12年生の領域である3階まで上っていく。そして、コルテックスの寮部屋の扉をノックした。
ブリ「私です。材料を揃えましたよー」
すると、コルテックスが扉をあけながらブリオに言った。
コル「ブリオか。よし、じゃあ早速実験開始だ」
そう言うと、コルテックスとブリオは早速実験の準備に取り掛かった。今日行う実験は2つ。3体以上の生物の合成実験と、2体に無機物を加えた合成実験である。難易度的には校舎の方が若干易しいと予想されるため、まずはそれから始めることにした。
装置の改造も既に終わらせてある。後は被験体を合成するのみだ。まず使うのは蛇と亀、そして何故か寮部屋にあった嶮山である。それらの材料を所定の位置に入れて、間もなく実験は始まった。
難度が増したとはいえ、基本的に操作性は前回とさほど変わらないため、作業は順調に進んでいった。そして、1回目の実験結果が出た。コルテックスがエヴォルヴォレイ装置の扉を開いて被験体を確認する。
中には甲羅に嶮山のトゲが張り付いた亀の姿があった。よく見ると、その尻尾は蛇の頭と化している。いわゆる玄武によく似た姿だ。その姿を見たコルテックスには、いよいよ歓喜の念がこみ上げてきた。
コル「この姿・・・限りなく想定していたものに近い・・・!よし、いいぞ!早速次の実験も始めよう!」
ブリ「はい・・・!」
続いての実験は3体の生物による合成実験だ。先ほどの要領で、今度は無機物の代わりにもう1体の生物、カメレオンを投入する。たったこれだけのことだが、実は物質構成が複雑な生物を狙い通りに合成させるのは容易なことではない。
コルテックスは先ほどよりもさらに慎重に作業を進める。そして、再び実験終了を知らせる機械音が鳴り響く。2人は装置の中の被験体を緊張した面持ちで覗き込む。すると、中にはやはり玄武のような姿をした生物がいた。
材料の関係上甲羅にトゲはなかったが、その代わりにその生物は見る見るうちに体の色を変え始め、何故か甲羅の部分まで背景と同化して完全に姿が見えなくなってしまった。これは予想以上の効力だった。
コルテックスは腕を伸ばして本当にそこに合成生物が存在しているのかどうかを確かめてみる。
コル「・・・いる。姿は見えないが確かに感覚はある・・・!これはすごい結果だぞ!」
興奮した様子でコルテックスは叫んだ。ブリオもその結果に賞賛した。
ブリ「おお!ついにやりましたね!流石です」
コル「ああ、これならいける・・・!いよいよ実用段階にまでこぎつけられるぞ!」
ここまでくれば、残りの期間を考えても間に合わせる時間は十分残っていると言うことができる。後は具体的にどんな生物を作るのかさえ考えれば、どうにかレポートも完成させることができそうだ。
コル「・・・さて、それで、肝心の卒業発明品だけど・・・どんなものがいいかな?ブリオ、何かいい考えはないか?」
ブリ「そうですねぇ・・・うーむ・・・・・・」
ブリオはしばらく考え込んでいると、ふいに材料を集めていた時のことが思い浮かんだ。校庭でワットたち機械科6年生とばったり出くわした時のことだ。その時の会話が自然と脳内に流れてくる。
「ワット、あまり計画を不用意に他言するのはよくないですよ」
「そうでしたね、すいませんっした。ちょっと彼女に意見を聞いてみたくて」
「意見、ですか・・・まぁ、それは後で伺いましょう・・・」
この会話を思い出したのは、話を聞くという事を自分が言っていたからなのだろうか。ブリオには、何となくただそれだけの理由で思い出したのではないような気がした。彼女の意見というのが、ひょっとしたら何か参考になるものなのかもしれない。
何の確証もなかったが、今のブリオにはとにかくそんな予感がしていたのだ。
ブリ「そういえば、ワットが誰かにそれについて意見を聞いていたようですよ・・・?」
すると、コルテックスは一瞬渋るような顔をした。彼にとって、この計画はできればあまり大勢に広めたくないものだった。
コル「何っ、アイツ・・・どうして皆僕の計画をそんなほいほい言いふらすんだ・・・?」
ブリ「さ、さぁ・・・とにかく、一度その人の意見を聞いてみるというのはどうでしょう?」
コル「う~ん・・・まぁ、どうせ計画を聞かれてしまってるしな・・・確かに一度は会っておいた方がいいのかもしれないな」
ブリ「ええ、そうですね。それでは、まずはワットに話を通してみますかねぇ・・・」
コル「ああ、今からだともう3時間目が始まっちゃう時間だから、それが終わって昼休みにでもなったら会ってみるか・・・」
そう言いつつコルテックスたちは、次の実験内容を考え始めるのであった。
次章、ミストの世界が炸裂・・・!?
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