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第6章
2012/06/10(日)22:08:37(12年前) 更新
そして、昼休みの時間がやってきた。結局、コルテックスたちはワットのところへ行って、彼が聞いた意見の詳細を聞いてみることにした。食堂へやってくるタイミングを見計らって寮の入り口で彼を待ち構える。
すると、校舎側の廊下の奥からぼさぼさの白髪頭が小さく見え始めた。間違いなくワットだ。コルテックスたちはワットの方へ歩み寄って話しかけた。
コル「やぁワット、今日も調子がいいみたいだなぁ・・・ご丁寧に僕の計画を勝手に他人に説明してくれたそうじゃないか・・・!」
コルテックスは得意の皮肉でワットを威圧しながらそう言った。しかしワットはあっけらかんと笑いながら返す。
サぺ「やだなぁ~そんな怒らないで下さいよ~。思ったよりいい収穫でしたよ?」
コル「そういう問題じゃないっ!」
ブリ「ま、まぁまぁ・・・まずは話を聞いてみましょう」
サぺ「まぁ、僕に聞くよりは彼女本人から直接聞いた方がいいかもしれませんよ?僕に質問とかされても答えかねるんでね」
コル「だろうな・・・で、そいつは一体どこにいるんだ?」
サぺ「う~ん、まぁ、寮部屋に行くのが一番無難ですかねぇ~。案内しますよ」
こうしてコルテックスたちはミストの寮部屋へと向かうことになった。
機械科学クラスの寮に着くと、6年生のフロアである地下4階まで下り、ワットを先頭にしてミストの寮部屋を目指した。すると、割と早い段階でワットはある扉の前で立ち止まった。
サぺ「さぁ、彼女の部屋はここっすよ」
コル「ご苦労」
そう言ってコルテックスは扉のドアノブに手をかけて開いた。
サぺ「あぁそれと、部屋に入るときは気を付けてくださいね」
コル「え?」
その言葉を聞いた時にはもう遅かった。部屋を見ると、全体に光の筋のようなものが走り始め、あちこちから何かが起動するような機械音が聞こえてくる。
ブリ「ひぃっ!?何ですかこれは?!」
サぺ「あ~・・・始まっちゃいましたね」
コル「始まった?!オイ何の話をして・・・」
ミス「はじめまして~。ミストっていいます。よろしくね~」
部屋にいたミストは何故か満面の笑みでそう言ってきた。コルテックスは訳が分からぬままミストに聞いた。
コル「そんなことよりこれは一体何なんだ?説明しろ」
ミス「そうだね。じゃあ今からルールを説明するね」
コルテックスの言葉を聞いたのか聞いていなかったのかミストはそう言った。コルテックスは相変わらず困惑したままだ。
コル「ルール・・・?何のことだ?」
困惑するコルテックスに対して、ワットが冷静に答えた。
サぺ「まぁ、ちょっとしたゲームですよ」
コル「ゲーム?そんなことしてる暇は・・・」
ミス「駄目だよ。このゲームは一度始まったら止めることはできないの」
彼女は笑顔のまま静かにそう言った。
コル「何だと・・・!?」
何故自分が下級生のお遊びにつき合わされなければならないのか、今のコルテックスには到底理解できなかった。
ミス「このゲームは魔法の力を再現したものなの。初めはバラバラだったものが、くっついていくの・・・」
コル「は?魔法・・・?バラバラ・・・?お前はさっきから何を言ってるんだ・・・?!」
コルテックスはミストの発する言葉をことごとく理解することができずにいた。しかし、ミストはそんなコルテックスのことを考慮する気配はない。気が付けば部屋の床全体にカードのような映像が敷き詰められていた。
ミス「まぁゲーム自体は簡単に言えば神経衰弱みたいなものだよ。この床にあるカードを1人2枚ずつめくっていって、同じカードが揃えばそこに示された魔法を発動することができるってわけ」
成程、”バラバラだったものがくっつく”というのは、”散らばったカードのペアを揃えていく”ということを表していたのだろう。それにしても、何故彼女はわざわざそんな表現をしたのだろう。
コル「ふん、ガキが考えそうなゲームだな・・・」
そうは言いつつも、コルテックスは彼女の考えを推し量れずにいた。
ミス「それでね、魔法には5つの属性があるの。炎、風、地、雷、水・・・この5つの属性の強弱関係が鍵なんだよ~」
魔法に属性。確かにこれは子供が好きそうなゲームなどによくある設定だ。これをもとに自作のゲームを考える子供は少ないわけではないのだろう。
ミス「炎は風に強くて、風は地に強い。そして地は雷に強く、雷は水に強い。で、水は炎に強い・・・ま、簡単に言うとじゃんけんみたいな関係だね」
コル「成程・・・で、その強弱関係が何になるっていうんだ?」
ミス「まず、さっき同じカードが揃えば魔法が発動できるって言ったけど、実は同じカードでなくても発動させることができるんだ」
ブリ「・・・どういうことです?」
ミス「例えば、同じ数字の炎属性と風属性2枚を開いたとき、炎に弱い風属性は炎に呑み込まれちゃうんだ」
コル「・・・ということは、つまりは風属性のカードは同じ数字の炎カードと同時に開かれると、そのカードと同化してしまうということなのか・・・?」
ミス「その通り!呑み込み早いね~。それと、もう一つ大事なことがあるよ。このゲームの勝敗は、ペアを揃えた数じゃなくて、5つの属性の中で最も多くのポイントを得た属性同士で決まるんだ。
逆に言えば、それ以外の4つの属性のポイントは直接勝敗が決まる要因にはならないの」
コル「成程、それじゃあ1つの属性を集中して集める方が得策ってわけだ・・・」
コルテックスは自信満々にそう言ったが、ミストはそれを上回る得意顔で言い返した。
ミス「それがそうでもないんだな~。さっき言った強弱関係は最終結果にも影響するんだよ」
コル「・・・何?」
ミス「つまり、もし一番多く集めた属性が相手の属性に弱かったりしたら・・・その時点でポイントに関係なく負けになっちゃうんだ」
ブリ「ポ、ポイントに関係なく・・・ですか」
ミス「そう、だから集めるカードはよ~く考えなきゃいけないよ~」
確かに、このゲームにはどうやらそれなりに駆け引きの要素は備わっているようだ。ミストはさらに説明を続ける。
ミス「それからポイントのことだけど、揃えた数字の値がそのままポイントに加算されるんだ。そしてそのカードの魔法を使いたいときは、その数字の分だけポイントが減るの。あ、それと魔法は自分の番の時に使ってね。これもよ~く覚えておいて」
コル「成程・・・それでメイン以外の得点も有効活用できるわけか・・・だがさっきから言ってるその魔法ってのがよくわからないな・・・」
ミス「ま、色々あるけど、それはやってからのお楽しみ。実際にやってみるのが一番早いよ」
彼女がそう言うと、床にあった映像が一瞬色を変え、その中心に”START”の文字が浮かんできた。
コル「お、おいっ!勝手に始めるなっ!!」
しかし、そんな一言でその機械が止まるわけがなかった。
その頃、エヌ・ジンはようやくベッドから起き上がって自身の部屋の扉を開いていた。勿論、理由は昼食を取るためである。腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったもので、昼食を取ることはここで生活するにあたっては重要な要素なのである。
実際、この学校で生活するのは、戦の真っただ中にいるのと同じことのように思える。昨日から続いている体中の痛みが何よりの証拠だ。足元はまだ若干おぼつかないが、1人でも問題なく歩ける分昨日の状態よりは遥かにましだ。
どうにか食堂へたどり着くと、彼は早速昼食にありつこうと注文を受けるカウンターに近寄った。すると、そこには見慣れない人物の姿があった。
ジン「ん・・・?貴殿は新参者か・・・?」
セド「あぁ、まぁ、俺は今日からこの学校で研修生やらせてもらってるセドリック・スープラだ。よろしくな」
セドリックは明るくそう名乗ったが、当然エヌ・ジンには1つの素朴な疑問が浮かぶ。
ジン「・・・その研修生が何故食堂の役員なんぞをやっておるんだ・・・?」
セド「せっかくの機会だから、できるだけ多くの生徒と交流できるようにって、校長先生が気をまわしてくれたのさ」
きっと彼はこのやり取りを今日だけで何度も繰り返しているのだろうが、その時に誰も突っ込みを入れたりはしなかったのだろうか。恐らく校長は、人手を補うためにこの雑用を任せただけだ。
しかし成程、彼の目はあまりに生き生きしており、それにわざわざ水を差すようなことを言う気はなくなってしまった。
セド「それで、注文は?」
ジン「そうだな・・・ざるそば1つ」
一方、コルテックスたちは強制始動されたミストの謎のゲームに参加せざるを得ない状況になってしまった。その理由として、まずこの装置の電源の場所が分からない。そして、その電源を探そうにも移動できる範囲が制限されてしまっている。
何故なら、カードが並べられている以外の床は柵で仕切られ、それ以上奥には進めなくなってしまったからである。ご丁寧に出入り口の扉にも厳重なロックがかけられていた。そうまでしてこのゲームの相手をしてもらいたいものなのか。
コルテックスはため息を漏らして呆れるばかりである。その直後、奥からミストの声が聞こえてきた。
ミス「それじゃあ、一応これは1対1形式のゲームだから、実質私とあなたたち3人との勝負ってことになるね~」
サぺ「ま、ミストはこのゲームの考案者なんだから、それくらいのハンデはむしろ当然だと思うけどねぇ」
ミス「まぁね~。でも、ワットは前に1回やったことあるんだから、今回はかなりいい勝負になりそうだよ~」
彼女の発言を聞いて、何気なくコルテックスがワットに聞いた。
コル「そうなのか?ワット」
サぺ「えぇ、なかなか面白いゲームでしたよ・・・途中まではね」
コル&ブリ「・・・?」
ワットの不可解な言葉に、コルテックスやブリオは言い知れぬ不信感を募らせた。そして、追い打ちをかけるかのようにミストが口を開いた。
ミス「そんじゃ、いよいよ魔法衰弱(マジカルブレイクダウン)スタート!」
威勢の良いミストの声に対して、3人は一斉に間の抜けた声を出した。
3人「・・・あ、これそんな名前だったんだ・・・」
ミス「ちょっと~、他の2人はともかくワットは何で知らないのよ?まぁいいや、とりあえず先行はあなたたちに譲るよ。目の前に電子パネルがあると思うから、カードに対応する箇所をタッチして選んでね」
確かに、目の前には床の映像が縮小された電子パネルが宙に浮いていた。いくら最先端の科学技術を擁するワルワルスクールとはいえ、彼女がこれだけの技術を実現させていることにコルテックスは少々驚く。
ブリ「・・・それで、どうしますか?ワット、1度このゲームをやっているのなら、何か言えることがあるのではないですか?」
サぺ「そうっすねぇ・・・まぁまずペアを揃えるまでは普通の神経衰弱と変わらないッス。そういう点じゃこっちは3人ですから有利と言えば有利と言えますねぇ・・・」
コル「確かにな。色々とルールがくっついてはいるが、それはほとんどペアを揃えた後の話だ。根本的なところではこちらの方が圧倒的有利なのだ」
そう、一般に神経衰弱で重要なのは、カード配置の記憶。つまり、3人で協力すれば位置を覚える負担も格段に減る。それに加えて、このゲームでは記憶力以外にも頭脳を使う局面が用意されている。
それらの役割を3人に分散できるのもこちらに大きな分があると言えるだろう。
サぺ「けど、だからって油断できないのも事実ですよ。このゲームのミソはポイントに関係なく勝てる方法があるということっすから」
確かに、ルールを聞く限り考えなしにただペアを集めればいいわけではないだろう。
コル「とりあえず、まずはカードを開かないことには始まらない。奴の言う魔法ってのもどんなものがあるのかよくわからないからな・・・」
サぺ「そうっすね。まずは適当にどこかを開いてみましょう」
コル「じゃあ、まずは覚えやすい隅のカードから開けていくか・・・」
そして、コルテックスは電子パネルの一番左下の箇所をタッチした。すると、床に映っていたカードが表側の絵に移り変わった。そこには水滴のようなマークと青文字の6という数字が書かれていた。
ブリ「・・・ふむ、あの絵柄から察するに、あれは水属性のカードでしょうか」
サぺ「そうですね。アレを揃えれば僕らの水のポイントが6点入るということになります」
コル「・・・思ったんだがこれは何点から何点までのカードがあるんだ?」
そんなコルテックスの素朴な疑問にミストが陽気な口調で答えだした。
ミス「そっかそっか。それも言っとくべきだったね。カードは全部で60枚、それぞれの属性につき5から10までの数字がつけられたカードが1ペアずつあるよ」
成程、そのような点数配分にしたのは恐らく1つ1つのカードの価値の差を少なくするためなのだろう。もしこれが1から6までの数字だったなら、得点の差は最大で6倍にもなってしまうが、5から10までならば、その差は最大でも2倍程度だ。
もっとも、難易度で言えば前者の配点の方が遥かにやりやすかっただろう。それだけ価値に差があれば、自ずとカードの位置を覚えるのにも優先度がはっきりしてくる。だが、魔法の概念との兼ね合いもあって、後者では非常に悩ましい局面がでてくることだろう。
コル「で、このカードの魔法は一体どういうものなんだ?」
ミス「これはアクアショット。相手の炎属性の得点を6ポイント下げる魔法だよ」
コル「・・・そんな名前までついてんのかコレ」
コルテックスは呆れ気味にそう呟いたが、あくまでミストはこのことを当然のように思っているようである。
サぺ「まぁ、魔法の効果はだいたいが相手の得点を下げるものっすね」
ワットが不意にそんなことを言ってきた。そうすると、自分の特定の属性得点を減らす代わりに相手の属性得点を減らすというのが主な戦略だということになる。
コル「そうか・・・まぁ、今はとりあえずペアを揃えることが優先だな」
そう言ってコルテックスは一番左上のカードを開く。そのカードには岩のようなマークがあり、茶色の文字で7の数字が書かれていた。恐らくは地属性のカードだろう。
ミス「これはアースストーンだね。残念はずれ~。ちなみにこれは雷属性の得点を下げる魔法ね」
コル「成程、要するにその属性に弱い属性の得点を下げるのが基本なのか」
それにしても、彼女は1つ1つのカードに個別の魔法名を考えているのだろうか。そう考えると思わず苦笑いがこぼれそうになる。
ミス「まぁね。それじゃ、次は私の番だね」
そう言ってミストは早速1枚目のカードをめくった。今度はコルテックスたちから見て一番右上のカードだ。そこにはどうやら地属性らしい絵が描かれており、数字は5と書かれていた。
ミス「おっ、これはアースクエイクだね~。場のカードをシャッフルしちゃう魔法だよ~」
ブリ「ほぅ、シャッフルですか・・・ということは、アレを取った者が自由なタイミングでそれを使えるということなのですか?」
サぺ「そうっすね。それもこのゲームの特徴とも言えますかねぇ」
ミス「そうだね。これはとっておきたいな~」
確かに、これは点数の低いカードといえども是非ともとっておきたいものであろう。自分のターンであればいつでも魔法を発動させることができるといのも、戦況を変えるうえで大きな利点となるだろう。
そして、ミストが2枚目のカードを開く。やはり一番隅の右下のカードだった。そこには稲妻の絵と10という黄色い文字が書かれていた。雷属性のカードだ。
ミス「あ~、ゼウスサンダーか~。これもいいカードなんだけどなぁ~」
コル「で、一体どういう効果なんだ?」
ミス「まず相手の水属性の得点を9点下げるっていうのと、次の相手の番を1回休みにできる魔法なんだ」
彼女の説明を聞く限り、流石は最上級ポイントのカードというべきか、その効果はかなり大きそうに思えた。
サぺ「確かにあれは取っておきたいカードっすねぇ・・・さぁ、次は僕らの番ですよ」
コル「分かっている」
そう言って彼は今度は中心近くのカードをめくった。するとそこには水滴の絵と6という青文字が現れた。この柄は少し前に見たことがある。そう、コルテックスたちが最初に開けたカードだ。
ブリ「おお!これは・・・!」
コル「ああ、まずは僕らが先制点だな」
微笑を浮かべながらそう言ったコルテックスは何の迷いもなく左下のカードを再び開いた。当然、そこには同じ6の水属性カードが映し出された。すると、ペアとなった2枚は一際光りだし、次にコルテックスの見ていた電子パネル上の恐らく得点表であろう箇所の水滴の印の真下に6という文字が出現した。
彼らから見て左側の壁にも同じようなものが映し出されていた。よく見ると反対側の壁にも5つの属性を表したマークが映っている。恐らくそこにはミストの得点が反映されるのだろう。
ミス「ふ~ん、ま、でもまだまだ勝負はこれからだよ」
コル「・・・それで、普通の神経衰弱と同じなら次も僕らが選んでいいんだよな?」
ミス「まぁね」
コル「では遠慮なく開かせてもらうぞ・・・」
そう言ってコルテックスはやはり中心近くのカードを開いた。そこには炎の絵と赤文字の7の数字が書かれていた。
サぺ「炎属性かぁ・・・これはさっきの地属性の7とは繋がらないよなぁ・・・」
そう、属性の関係上炎属性が他属性とペアになりうるのは水か風のどちらかなのである。仕方なく、コルテックスたちはそのすぐ上のカードを開くことにした。そこには先ほどと同じ炎の絵があったが、残念ながらその数字は8だった。
ブリ「う~む、惜しいですねぇ・・・」
ミス「次は私の番だね」
今度はミストがカードをめくる。先ほど開けた左下のカードの左隣の場所だ。そこには8という緑の数字と今までにない柄の絵が出てきた。これは風属性のカードなのだろう。よく見れば、カードの絵は風を表しているようにもとれる。
ミス「ふ~ん、これはストームブローね・・・よしっ、じゃ、こうしよっと」
そう言うとミストはついさっきコルテックスが開いた8の炎カードを再び開いた。すると、その2枚は光を発しだした。
ブリ「・・・!成程、属性の関係を利用したのですか・・・」
ミス「そう、バラバラだった属性が、くっつくの」
コル「何なんだその言い方は・・・?」
とうとうそんなことを口にしてしまったが、ふと右側の壁を見てみると、炎のマークの下に8という文字が映し出されていた。やはり、これは相手側の得点を表しているらしかった。
コル「・・・だがお前に入ったのは炎属性のポイントだ。つまりはこの時点じゃまだ僕らが勝っているということでいいんだな?」
コルテックスは得意顔でそう言った。それに対してミストもまだまだ余裕の表情だ。
ミス「まぁ今はね。でもまだ勝負は始まったばかり。結果は最後の最後まで分からないよ~」
ところ変わって、食堂ではまだまだ昼食を食べる人で溢れている状態だった。そんな中、エヌ・ジンは調度注文したざるそばを完食したようである。食器類を片付けようと席を立ったその時、背後から少女の声がしてきた。
シエ「あの、エヌ・ジン先輩・・・」
声の主はシエラだった。以前にも何度かこの少女と出会ったことがある。
ジン「おぬしはシエラか・・・どうした?」
シエ「ブリオ先輩を知りませんか・・・?寮にはどこにもいなかったのです」
ジン「ブリオ・・・?あやつはよく人に頼まれごとをされているからな・・・今の時間ならどこにいてもおかしくはないのだが・・・」
シエ「あては・・・ないのですか?」
シエラが不安げな表情でそう言ってきた。ここでエヌ・ジンはある手段を思いついた。
ジン「・・・いや、そんなことはない。拙者の作ったこの通信機であやつと連絡を取ることもできる。何なら今かけてやろうか?」
それを聞いた瞬間、シエラは一気に表情を晴れ晴れさせて元気よく答えた。
シエ「本当ですか・・・!?お願いしますっ!」
ジン「うむ、よかろう」
エヌ・ジンはそう言って懐から通信機を取り出し、ブリオに連絡を取ろうとした。が、しばらく返事を待ってみてもつながる気配が全くしなかった。
ジン「・・・ん?おかしい・・・回線がつながらない・・・」
シエ「え・・・?」
再びシエラの顔が曇る。同時にエヌ・ジンも徐々に不信感が募り始めていた。ブリオに連絡が取れないことそのものより、彼の技術をもってしても通じない箇所が存在しているという事実に、エヌ・ジンは一抹の不安を感じていた。
ブリオが学校の敷地内のどこかにいるのであれば、この通信機の電波は何らかの人工物によって妨害されているということ以外に通信不可になることは考えられない。一体どのような物に電波を妨害されているのか、エヌ・ジンにとってこれを調べないわけにはいかなかった。
シエ「・・・どういうことです?」
ジン「・・・どうやら電波を妨害されているらしい。原因を探るぞ。そうすればおのずとブリオの居場所も分かるはずだ」
シエ「はい」
エヌ・ジンたちがそうしている間にも、魔法衰弱は刻々と進行していた。もうカードは全体の半分ほどを開いており、そのうちペアとなったのは現時点では7組だ。つまり、残りのカードはあと46枚。
今のところは両者とも同じようなペースでペアを揃えあっているといったところだろうか。お互いまだ魔法も使わずにひたすらペアを揃えていった。このゲームのルールからして、大概の魔法は序盤から使うべきものではないのだろう。
そして、今ミストがまだめくられていない一番右側のカードを開いた。見ると、それは5の水属性カードだった。
ミス「おっ、やったー!これはもらいね」
それはペアとなるカードの位置が既に分かっているものだった。早速ミストはもう一つの同じカードを開く。これで、ミストの水属性ポイントに5点が入った。すると、ここでミストが高らかに声を上げた。
ミス「そんじゃっ、いよいよ魔法を使うよ~!」
コル「何・・・?」
ミス「水魔法・アクアポーション発動!」
彼女がそう叫ぶと、突如床全体からシャボン玉のような泡が溢れだしてきた。
コル「!?何だこれは?!」
そうかと思えばその泡が一気にミストの得点表の方へ吸い寄せられていく。
ブリ「これは・・・ホログラム?」
ミス「違うよ~。これは実体。魔法だからね」
サぺ「ま、確かにアレは実体ですよ。むしろ床にあるカードの方がホログラムです。要するに、実体ではないものでその仕掛けを見えなくしてるってことなんすよ」
つまり、カードが敷き詰められた映像の下には様々な仕掛けが施されており、そこから泡が出てきたという事なのだろう。壁にある得点表もまた然り。その奥には泡を吸い寄せる仕掛けなどが施されている。
ここでは、幻は実在しないものを見せるためにあるのではなく、実在している真実を隠すためにあるのである。
ミス「もう、余計なこと言わなくていいの」
珍しく不機嫌な顔を覗かせるミストだったが、ワットはむしろそれを面白がっているふうに見えた。そして、すべての泡がなくなった時、ミストの得点表には変化が現れていた。水属性のポイントは消費されて0になり、代わりに彼女の雷属性の点数が5点分増えて12点になっていたのだ。
コル「!・・・そうか、これは自分の得点を他の属性に移しかえるものだったのか」
ミス「そうだよ~。あ、そうそう、魔法を発動させたいときはちゃんとさっきみたいに魔法の名前を唱えてね」
コル「え・・・」
サぺ「恐らく音声認識装置で識別してるんじゃないでしょうかねぇ・・・ま、もともとそういう嗜好のゲームですから」
コル「まったく・・・これだからガキは・・・」
ブリ「まぁ、それはそれとして・・・どうやらミストは雷属性を集めようとしているらしいですよ」
現在ミストの最大得点は15点の炎属性であり、一方のコルテックスたちは水属性の14点が最大である。つまり、このままいけば得点の関係なしにコルテックスたちが勝利することになる。
そのことを考えれば、ミストが雷属性の得点を上げたがるのは自然なことのように思えた。
コル「むぅ、確かにな。だがまだアイツの番は終わっていない。まずはこの回の様子を見てから考えよう・・・」
そして、ミストは再びカードを開き始める。そこに見えたのは、10の雷属性のカードだった。
ミス「ふふっ、これで逆転だね」
次章、魔法衰弱の行方はどうなるのか・・・!?
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