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第6章
2012/04/09(月)08:01:52(12年前) 更新
カトリーヌ「あれ?そーいえばニーナは?」
ナット「ん?いつの間にいなくなったんだ?」
大広間では未だに宴で盛り上がっている。そんな中、ニーナがすごい勢いで大広間に戻ってきた。
カトリーヌ「あ、ニーナ何処行ってたの?」
ナット「何かすげぇ顔青ざめてるぞお前。いやもとからだけど・・・」
ニーナ「こ、校長は?!」
ナット「さぁ?何でそんな必死なんだよ?」
ニーナ「後で説明するから早く!」
カトリーヌ「校長なら奥の控え室で先生達と話でもしてるんじゃない?」
ニーナ「分かった」
そう言ってニーナは控え室に急いでいった。残された2人は顔を見合わせ不思議そうにしている。控え室には、カトリーヌの言う通り何人かの教師と校長が談笑していた。
クレア「あらニーナちゃんどうしたの?」
ニーナ「先生、大変です!誰かが地下倉庫で死んでますッ!」
アンバリー「何ですって!?」
クレア「とにかく様子を見に行った方がよろしいかと」
アンバリー「そうね。ニーナちゃん、案内してちょーだい」
その頃クロックは、マークとのサンダーロケート対決が始まっていた。まずはマークの先攻。しばらくして、向こうから雷が落ちる音が聞こえてきた。画面を見ると、右上
の一番端のマスに×印がつけられている。おそらくマークがスタート地点にいたマスだ。
マーク「雷が落ちた場所には×印がつけられる。さぁ、次はお前のターンだ」
クロック(成程な。雷を落とすのは自分から2マスまでの範囲ってことは逆にいえば雷が落ちたマスから2マスまでの範囲内に相手がいるってことだ。つまり、雷を落とす
のは相手に自分の位置のヒントを与えるのと同じだ。だがあそこなら相手に居場所を悟られにくいってわけか・・・)
クロックは前進ボタンを押し、自分のもといたマスに雷を落とした。後ろで激しい落雷の音がする。近くだとこんなに大きい音がするのか。
マーク「フン、俺の真似ごとか。まぁ賢明な判断だな」
そしてマークは前に落としたマスの左隣に雷を落とした。クロックのターン、また前進してスタート地点の右隣に雷を落とす。
マーク「いつまで俺の真似ができるんだろうな?」
クロック「さぁな」
画面を見ると、さらに左隣に×印がついている。ここで、クロックは右に移動してスタート地点の前隣のマスに雷を落とした。それに対し、マークもスタート地点の前隣に
雷を落とした。こうして、前半はお互い自分の居場所を悟られないように雷を落としていった。そして7ターン目、マークは上から数えて3マス、右から数えて3マス目の
場所に雷を落とす。対してクロックは、下から4マス、左から4マスの場所に落とす。8ターン目、マークはさっきの左隣のマスに雷を落とした。
クロック(・・・ここで攻めてみるか)
クロックは1マス前進して、雷を落とす。すると、何とその雷はマークの背後に落ちた。
マーク(とうとうここまで来たか・・・だが、相手が自分に攻撃が届くってことは自分も相手に攻撃が届くってことだ。これで居場所はだいぶ絞れるぞ)
そして、マークの雷はクロックのすぐ左に落ちる。
クロック(成程、これは確かに精神的にくるな・・・けどおかげで4か所まで絞れた・・・!)
一方、ニーナは教師達を連れて進入禁止の地下倉庫に入っていた。電気のスイッチが壊れているため、アンバリー校長の電撃で無理矢理電気をつけた。急に部屋が明るく
なったので、皆少々まぶしがっている。
アンバリー「ここの電気をつけるのも40年ぶりね・・・」
そこにはやはりあの血まみれの制服が落ちている。あの時は恐怖でよく見ていなかったが、見たところ男子生徒のもののようだ。
アンバリー「まぁこれはひどい・・・遺体はどこなの?」
辺りを見回しても遺体は見当たらない。どこかに隠されたのか?
ニーナ「あたいは叫び声がしてからすぐにこれを見つけました」
そう、隠したとするならそれにかかった時間はせいぜい10秒ほどだ。
クレア「それなら隠すのはまず無理ね」
アンバリー「とりあえずクレアちゃん、被害者は誰か検査してちょーだい」
クレア「はい」
アンバリー「それからニーナちゃんはもう行きなさい」
ニーナ「はい・・・」
そう言って地下倉庫から出ると、そこにはナットとカトリーヌが待ち構えていた。
ナット「殺人事件か?随分と面白そうじゃねぇか」
ニーナ「アンタ達・・・つけてきたのね」
カトリーヌ「勿論。しっかり現場も撮ってきたし」
そう言って、持っていたカメラをニーナにちらつかせた。どうやらこの2人は完全にこの事件を解決するつもりでいるらしい。3人はとりあえず談話室に向かうことにした。
一方、地下倉庫に残った教師達はこの事件の推理を始めていた。
アンバリー「しかし奇妙な殺され方ね・・・」
この血痕の量からして、虐殺であることは間違いない。遺体を隠すのも分かる。だが、何故衣服だけはそこに置き去りにしたのだろうか?教師達はその点に強い疑問を
抱いていた。遺体を隠して証拠隠滅を図るなら、衣服を脱がすのは無意味でありむしろ逆効果だ。犯人にとって、衣服を除く必要がどこにあったのだろう?そして、そもそも
遺体を隠す暇は犯人にはなかったはずだ。犯人は遺体をどう処理したのだろうか?
見山「しかしこの生徒も生徒で何故進入禁止の地下倉庫に入って来たのでしょう?」
セドリック「あのォ~・・・それなんですが・・・」
恐れ入るように弱弱しく見山の発言に対応するこの男は、セドリック・スープラ。ぼさぼさな髪にぼさぼさな髭、ありきたりな眼鏡といったどこにでもいそうな身なりの
おっさんもとい教師である。セドリックの言葉に皆が一斉に彼の方を見たので、彼は一瞬戸惑ってしまったが話を続けた。
セドリック「最近、生徒達の間で噂が流行っているようで・・・その噂が地下倉庫に怪物が出るというものらしくて・・・ですから、そのォ~・・・この生徒は好奇心で
ここに来たのかと・・・」
見山「成程・・・じゃあ、その噂を流して興味本位でここに来た人を殺したって可能性が高いな」
アンバリー「でもまだ断定はできないわ・・・この事件のトリックが分からないことには」
何しろこの殺害は計画的に行われたようにも衝動的に行われたようにも見える。
見山「とにかく、この件は生徒達にはどう説明しましょう?」
アンバリー「明日、全校集会を開いて私が説明するわ。それじゃ、まずクレアちゃんの検査の結果を聞きに行きましょう」
そして、教師達もようやく地下倉庫から出ていった。マダム・アンバリーが地下倉庫から出てきた調度その時、どこからともなくある音が聞こえてきた。アンバリーはその
音が聞こえてきた方を向く。すると、またその音が遠くから聞こえてきた。アンバリーは何か嫌な予感がした。
その一方で、クロックとマークのサンダーロケート対決もいよいよ佳境に入ってきた。そしてクロックのターン、右に移動してその場所から左前の2マス先に雷を落とした。
マーク(・・・塞ぎに来たか)
今のクロックの一撃で、マスは上下の2つに分断された。どういう事かというと、雷を落としたマスが連なってその先の地帯に移動することができなくなってしまったのだ。
マーク「成程な・・・お前、勝つ気ないんだろ?」
クロック「何?」
マーク「お前は俺に直接雷を落とすんじゃなく、俺を動けなくしようとしてるんだろ。甘いんだよ!!そういう甘さが負けに繋がるんだ!!」
マークのターン、彼は移動を終えるとゆっくりと静かに口を開いた。
マーク「断言しよう・・・次にお前がどこに動こうと既に俺の射程範囲内にあると!」
そしてマークはクロックのすぐ後ろに雷を落とした。
クロック「何だ、そっちもとどめをさす気がないんじゃないのか?それにお前の射程圏内に僕がいるんならお前も僕の射程圏内に入ってるってことだろ?」
マーク「フン、何にせよ。もうお前の負けだ」
クロックはマークの前方に雷を落とす。マークのターン、クロックの右後に雷が落ちる。クロックは右に移動して自分のいた場所に雷を落とす。すると、マークが突如微笑
を浮かべた。
マーク「やはりな。お前は俺の行く手を塞ぎにきた。そして次のターンでお前は俺を完全に封じるつもりだったんだろう。そして、お前は右に移動した」
クロックは一瞬目を丸くした。いや、思わず丸くなったと言った方が正確だろう。マークはにやけながら雷を落とそうとした。その時・・・
ズドーーーーーーーン!!!
激しい雷の音が部屋中に轟いた。
クロック「ぐあああああああああ!!」
マーク「!?ぐあああああああああ!!」
何と雷が落ちたのはクロックの場所だけではなかった。マークとクロックそれぞれが入ったボックスに強烈な電流が走る。
マーク(何故だ?装置の故障か?!)
マークの読みはあながち間違いではなかった。何とアンバリー校長が電撃でサンダーロケートの装置を破壊したのだ。さっきアンバリー校長が耳にした音はマーク達が
落としていた雷の音だったのである。
アンバリー「2人ともそこまでよ」
そう言って2人をボックスの中から引きだした。2人とも気絶してしまっている。
アンバリー「まったく・・・余計な仕事増やさないでちょーだい」
そう言って2人を保健室に運んでゆくアンバリー校長であった。後にクロックはこのことについて「できれば2人とも無事で済む解決法で止めてほしかった」と述べていたという・・・
そして、アンバリーは2人を保健室に置いた後クレア・チャーリーの研究室に向かった。ワルワルスクールには職員室の代わりに教師に一人一人の個室と教室を与えている。
自分の担当している教室の奥がその教師の研究室だ。クレアの研究室に入ると、辺りには大量の生物の標本が保管されている。そんな部屋の中央に何人かの教師が集まって
いた。見たところ検査の結果は既に出ているようだ。
アンバリー「それで、被害者は?」
クレアに問うとその表情は心なしか沈んでいるように見える。そしてクレアはそっと口を開けた。
クレア「・・・被害者は6年生のアルゴス・クランケット。生物科の子です・・・」
冷静そうにそう言ったが、クレアの目は動揺している。しばらくの間、部屋には沈黙が流れていた。そして、ようやく口を開いたのはクレアだった。
クレア「・・・彼は比較的大人しい子でした」
クレアは生前の彼について語りだした。彼はよく自分自身を"くだらないもの好き"だと言っていたという。科学とか、成績とか、将来の夢とか、そういった
大それたものには一切関心を示さなかった。彼が興味を持つものといえば、例えばあるビニール袋にネズミの死骸をどれだけ詰められるのかとか、餓死寸前の痩せ細った
ハムスターをどこまで太らせられるかとか、そういった本当に他愛もないことばかりだった。彼はそんな子供の遊びに本気で臨んでいた。さっきの例で言えば、ネズミをどう
いう体勢でどこに詰めたら効率がよいかを科学的に理論づけた上でその限界に挑戦する。これにはさすがの同級生達もほとんどが呆れかえっていたという。彼はそんな自分を
知っていたし、それが自分だと認めていたのだ。彼は12歳だった。
見山「あの噂は・・・彼にとって興味の対象だったんだろうか・・・?」
クレア「それは分からないわ。ただ、彼は興味を持った事以外には消極的だった。興味がなかったとしたらわざわざ地下倉庫に来るような子ではなかったわ」
セドリック「じゃあ、犯人の目的はやはり不特定の人物を殺したいだけだったんですかね・・・?」
アンバリー「だとすると少々厄介ね。標的は不特定多数という可能性も出てくるわ」
そして標的が不特定多数ということは、同時に容疑者も不特定多数ということになる。そもそもここは悪を育てる悪の学校なのだ。人を殺すのに大それた動機などここでは
問われない。そして、ここにいる者達には巧妙な殺人を行うだけの環境も頭脳も充分に揃っている。つまり、誰でも彼を殺すことができたのだ。再び室内に沈黙が流れる。
と、ここでアンバリーがあることに気がついた。
アンバリー「そういえば、制服に誰か他人の指紋とかはついてなかったの?」
その言葉に皆がハッとした。発見された時にも制服は無造作に置かれていたし、よく見ると制服もボロボロの状態だ。これは殺される前に争った形跡ともとることができる。
もしアルゴスが殺される前に犯人と争ったのだとしたら、少なからず犯人の指紋が制服についたはずだ。慌ててクレアが指紋の検査を始める。すると、意外な結果が出た。
制服からは犯人と思しき他人の指紋は一切出てこなかった。代わりに制服のところどころに何かの液体が染みついたような跡が浮かび上がったのだ。
セドリック「これは・・・何なのでしょう?」
クレア「今調べます」
液体の正体を明らかにするため、さらに別の検査をする。そして、クレアはついにその正体を突き止めたようだ。
クレア「この跡からアミラーゼが検出されました」
アンバリー「消化酵素・・・唾液?」
見山「何故そんなものが・・・?」
クレア「さぁ・・・?それほど激しい争いだったんですかね?」
アンバリー「まさか・・・」
調べれば調べるほど謎が出てくる。一体犯人は何をしたのだろうか・・・?
セドリック「これって・・・もしかしたらもしかして本当に怪物の仕業だったりして・・・」
セドリックが不意にそんな言葉を漏らした。本人でさえもそのことに気付いていなかったらしく、周りのリアクションを見てあたふたし始めた。心の内だけで言っていた
つもりが、つい思ったことを言葉にしてしまったという感じだ。
セドリック「いやあの・・・勿論冗談ですよ」
しかし彼の眼を見ると、とても冗談を言っているようには見えない。何かにおびえた、見ているこちらもため息が出そうな眼をしている。そもそも、彼はこんなところで冗談
を言えるような人柄ではないことは皆知っている。それに、これまでに得た事件の手がかりもどれも奇妙なものばかりであるから、ますます彼の言った事にはリアリティが
あったのだ。しかし、勿論誰もそんなことは信じたくない。
アンバリー「とにかく、明日の臨時全校集会の準備をしなきゃいけないわね・・・」
アンバリー校長が仕切りなおすようにそう言った。
次章、生徒たちの反応や如何に!!
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