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第7章
2012/07/01(日)11:53:35(12年前) 更新
ゲームはいよいよ佳境へと突入しようとしていた。場にあったカードの半分はペアとなってなくなり、最大点数ではコルテックスたちが若干勝っているものの、属性の関係上未だミストが優位を保っていた。
ちなみに、コルテックスたちの最大点数は水属性で23点、ミストは雷属性の22点である。そして、コルテックスのターン。彼らはミストの開いたカードの情報をもとに開く場所を決めていく。
コル「確か、ここに地属性の8があったはずだな・・・」
開いてみると、案の定そこには8の地属性カードがあった。そうして、まずは難なくペアを揃えた。これによってコルテックスたちの地属性の点数は5点から13点に上昇する。しかし、地属性の得点を有効にするためにはもっとペアを揃えることが必要だ。
炎や風属性を集めるという手もあるが、生憎彼らの点数はどちらも一桁であり、いずれにせよ点数が足りないことに変わりはない。
ブリ「次はどうします?」
ブリオは不安げな表情でそう聞いてきた。コルテックスは少し考えてからその答えを出す。
コル「・・・よし、ここで魔法だ」
ブリ「おぉ、ついに使うのですか・・・」
コル「ああ、さっき手に入れたカードの魔法をな」
サぺ「・・・成程、そういうことですか」
この場合、自分たちが地属性のカードを集めるよりも、むしろそのカードを使って相手の点数を減らした方が効率がいい。ここで先ほどのカードの魔法を使えば、ミストの雷属性の得点が8点減点、つまりは22点から14点に減少する。
ここで、ミストの最大得点は雷属性ではなく、地属性の16点になるのである。これなら、単純に点数差でコルテックスたちが逆転することになる。
コル「・・・で、その魔法はなんて言うんだったっけ?」
コルテックスは恐る恐るミストにそう聞いた。
ミス「アースブレイクだよ~」
何故そんなことを言わなければならないのか。コルテックスにとって、このゲームで最も不可解な点である。彼は少々きまり悪そうな顔をしながら、それでも勝利のために声を上げる。
コル「え~・・・コホン、地魔法・アースブレイク発動・・・!」
すると、コルテックス側の得点表の地属性を表すマークが唐突に動き出した。次の瞬間、動き出したマークが岩石となって向かい側のミストの得点表に向かって目にもとまらぬ速さで発射された。コルテックスは驚きのあまりあいた口がふさがらない。
ブリオに至ってはそれに加えて腰まで抜かしてしまっている。戦略的には予想通りに事が運んだものの、演出面ではあまりに予想外の出来事であった。
コル「・・・そ、そこまでするかァ・・・?」
ミス「どうしたの?まだあなた達の番は終わってないわよ?」
ミストは平然と微笑みながらそう言ってきた。コルテックス達には最早その笑顔にも狂気すら感じられる。
コル「お、落ち着け・・・何にせよ僕らが逆転したんだ。アイツのペースに飲まれるな・・・!」
サぺ「そうっすね~。さぁ、さっさとカードを引きましょう」
どうやらワットだけは落ち着いているらしく、気の抜けた口調でそんなことを言ってきた。不覚にも彼の言葉に励まされ、コルテックスは開くカードを選ぶ。選んだのは水属性の10のカードだった。
ミス「おっ、アクアドレインだね~。相手の水属性の点数を吸い取って自分の水属性のポイントにできるんだよ」
コル「成程な・・・ま、今の僕らにはさして必要なものでもないが・・・」
今、ミストは水属性の得点を得ておらず、魔法としての用途はまずないと言っていい。10点という高い配点も、今のコルテックスたちにとってはさほど魅力はない。あまり点数が高いと、自分の最大得点の属性を入れ替えたいときにかえって不利になることもあるからだ。
そんなことを考えつつ、コルテックスは続けてカードを開く。見ると、そこにあったのは5の炎カードだった。
ミス「・・・はずれだね。よっし、そろそろ本腰入れてかないとね~」
彼女はにやりと笑いながらそう言った。
セド「はい、おろしハンバーグお待ち」
その頃、セドリックは相変わらず食堂での雑務に勤しんでいた。何千人という生徒たちがいるこの学校では、いかに食堂がいくつかに分割されているといえど、その仕事はやはり多忙を極めるものだった。
セド「次の方注文どうぞー」
セドリックにとって記念すべき本日100人目の注文客は、かろうじてカウンターから頭をひょっこり出せるくらいの背丈の少女だった。ユナ・クルスだ。
ユナ「ハーゲンダッツちょーだい」
セド「ハーゲンダッツ?!・・・そ、そんなんメニューにあったっけ・・・?」
ユナ「えー、ないの?」
困惑するセドリックに対して、彼女は心底がっかりしたような表情を見せた。そんな彼女を見ていると、こちらはますます困ってしまう。
セド「う、うん・・・ないみたい・・・ってか、ちゃんとした昼食を食べないと健康によくないよ」
ユナ「う~ん、じゃあ・・・えっと~・・・」
彼女の注文を待っていると、ふいに奥の方から荒々しい声が聞こえてきた。最早昼休みの食堂では定番と化している喧嘩が始まってしまったのだろう。間もなくしてセドリックは喧嘩を始めたであろう2人の生徒を発見した。
今回相対しているのは、ブラックとロバートだった。ブラックはロバートとの圧倒的な体格差を全く気に掛けもせず、威勢よく声を上げていた。
ブラ「おい、ちゃんと謝れよ!お前がぶつかってきたんだろーがっ!!」
そんな彼に対して、横にいたセムスは困り果てた表情でブラックをなだめていた。
セム「ブラックもういいって、やめようよこんなの・・・」
ロバ「言いがかりはよせ!おいどんはちゃんと前を見て歩いていた。おいどんに落ち度はない!」
ブラ「・・・かぁーっ!素直に謝りゃあいいものを・・・!このデカブツ馬鹿がっ!」
セム「おいブラック・・・!」
激しく憤りを見せるブラックに対し、ロバートは比較的静かに、しかし確実に憤怒の炎を上げつつあった。
ロバ「成程・・・進化光線を浴びたおいどんと喧嘩しようってのか。いいだろう・・・」
すると、突然2人の間に誰かが割って入ってきた。さっきまで食堂にいたセドリックだ。
セド「ちょっと待った・・・!」
しかし、ロバートの右腕はまったく彼を待ってはくれなかった。そのままセドリックはロバートの強力な一撃を受け、ブラックは勿論周りのテーブルや椅子をも巻き込みながら盛大に吹き飛ばされてしまった。
かろうじて意識は残っているものの、あまりの痛みでうまく呼吸ができず、彼はしばらくせき込むことしかできなかった。しかし、それによってブラックが受けたダメージを軽減させたのも事実だ。
ブラックはゆっくりと立ち上がって再びロバートを睨む。
ブラ「・・・っ野郎!」
そのままブラックはロバートに向かって一直線に走り出していく。
セム「ブラック・・・!」
セド「がはっ、待つん・・・だ・・・!」
ブラ「うおおおおおお!!」
彼は勢いよく右腕を突出してロバートにパンチを繰り出す。一方のロバートも同時に右腕のパンチを繰り出した。同時に突き出された2つの拳は、同じ個所でぶつかり合った。が、その力の優劣関係は誰が見ても歴然だった。
ブラックの拳はいとも簡単に弾かれ、彼は大きく転倒して近くのテーブルに衝突してしまう。ロバートはそんなブラックを文字通り見下しながら口を開いた。
ロバ「・・・ふん、身の程知らずが。おいどんを怒らせたことを後悔するがいい!」
そう言って再びブラックに向かって右腕を振り出す。すると、突如目の前に大きな人影が現れた。かと思えば、その人物は強烈なロバートのパンチを片手でしっかりと受け止めた。再び2人の間に割って入ったのは、ザヌサーだった。
ザヌ「いい加減にしろ・・・でねぇと、痛ぇ目見るぞ?」
ロバ「・・・何だ、今のおいどんは機嫌が悪い。いくら教師と言えど容赦せんぞ・・・」
ザヌ「・・・お前は運がいいな」
ロバ「ッッッ・・・!?」
突然ロバートの体がきつく締め上げられたように感じられ、次の瞬間には彼の意識はなくなっていた。ロバートはそのまま大きな音を立てて地面に倒れこむ。その背後にはなんとネイキッドが立っていた。
騒ぎを見つけたネイキッドがロバートの背後に回り込み、CQCと呼ばれる近接格闘技術を駆使して彼を気絶させたのである。
ザヌ「俺にはそんな器用なマネはできないからな」
ネイ「まったくだ。お前が相手だったら余計な怪我をする羽目になる。だからいつもCQCを覚えろと言っているだろ」
真顔でそう言うネイキッドに対し、ザヌサーはうんざりといった様子で頭を掻きながら答えた。
ザヌ「だぁから俺にゃあ器用なマネはできないって言ってんだろ。ま、それは置いといてだ」
ザヌサーは未だ起き上がれずにいるセドリックの方を向き、しゃがみこみながらしゃべりだした。
ザヌ「おい若造、積極的なのは結構だが、できもしねぇことを無理してするこたぁねぇ。ま、適材適所ってやつだ。例えば、こういうのは俺たちの役目だ」
ネイ「そうだな。お前はお前にできることをすればいい。だからこそ、俺たちはこうして共に仕事をしているんだからな」
かろうじて2人の顔を見上げていたセドリックには、彼らの存在がとても頼もしく感じられた。誰もが抱える欠点というものを互いに補い合える存在は極めて偉大なものであり、だからこそ仲間というものは何処の世界でも成り立つものなのだ。
資本主義による競争社会でも、厳しい生存闘争にさらされた自然界でも、無法地帯ともいえるここのような悪の世界でさえも、だ。
セド「ザヌサーさん、ネイキッドさん・・・でッ!」
ザヌ「ははっ、派手にやられたらしいな」
セド「俺のことはいいです・・・それよりも、彼の方が心配だ」
セドリックはそう言ってブラックの方に目をやる。どうやら彼も意識は保っていたようで、セムスと何やら話をしている様子だった。
ブラ「・・・っくしょう、勝てなかった・・・」
セム「何であんな無茶したんだよ・・・?」
ブラ「だってよぉ・・・アイツはお前とぶつかってフッ飛ばしといて、謝りもしなかったんだぞ?腹立つだろ・・・」
セム「・・・そんなこと、お前が怒る事じゃないだろ?」
ブラ「うるせぇ、ダチがやられてんのを黙って見てられるかよ」
すると、ふいに横から小さな笑い声が聞こえてきた。笑っていたのはセドリックだった。それを見たブラックは不機嫌そうに声を上げた。
ブラ「・・・何だ!何がおかしいんだよ!?」
セド「いや、ごめんごめん。君は案外いい奴なんだな」
ブラ「ハァ・・・?!何だよいきなり?」
怪訝そうな表情を浮かべたままのブラックに対し、セドリックも微笑を浮かべたまま話し出した。
セド「それより、身体のけがは大丈夫か?」
ブラ「なめんな、これくらい・・・ぐっ!」
彼は勢いよく起き上がろうと試みたが、失敗した。セムスは心配そうに声を出す。
セム「無理するなよ・・・」
すると、先ほどとはまた別の方向から少女の声が聞こえてきた。喧嘩の様子を見ていたユナの声だ。
ユナ「あ~あ~、ひどいけがしてるね・・・私が治してあげるよ」
セド「あ、君はさっきの・・・」
ブラ「治すだぁ?そんなことお前にできんのかよ?」
終始訝しげな態度を示すブラックとは裏腹に、ユナは自信に満ちた表情だった。
ユナ「ユナに任せて」
彼女はそう言うと、ブラックの体に両手をそっと乗せた。すると、何とユナの手に淡い光が輝きだした。それを見た周囲の者は皆一様に驚きの表情を浮かべる。
ブラ「な、何だこれは・・・?!」
ユナ「怖がらないで。すぐによくなるから」
ブラ「ばっ、別に怖がってなんかねぇよ!」
そう言っている間にも、ブラックは自分の体がどんどん軽くなっていくように感じられた。既に痛みも消えている。そしてユナの手から光が消え、彼女が手を離したときには、ブラックのけがはすっかり回復していた。
ブラ(何だ・・・この不思議な感じは・・・?)
その後、ブラックは何となくユナを見てみる。彼女はもう既にセドリックの治療を始めていた。
一方、コルテックスたちの魔法衰弱はついに最終盤というところまできていた。残されたカードはあと10枚ほどであり、現時点ではコルテックスたちが勝っている状況だ。勝っているとはいっても、それは属性の関係上そうなっているのであり、残りわずかでもいつ状況が変化するかは分かったものではない。
現にコルテックスたちの最大得点は相変わらず水属性の23点だが、ミストの炎属性は27点と、単純な得点で言えばむしろミストの方が優勢と言うこともできる。そんな中でターンがコルテックスたちに回ってきた。
コル「・・・さて、今まで開いた中でペアになるカードの位置を覚えているか?」
サぺ「確か、炎属性の10と地属性の10はもう2枚とも出てたと思います」
コル「そうか・・・ならばその2組を取っておこうか」
ブリ「・・・しかし、それではかえって逆転されてしまいますよ?」
そう、ここで炎属性に10点が加わると、コルテックスたちの最大得点は炎属性に切り替わってしまう。そして、現在のコルテックスたちの炎属性のポイントは15点。つまり、それに10点が加わってもミストの27点には及ばず形勢が逆転してしまうのだ。
コル「いや、大丈夫だ。そこで水魔法を使って奴の点数を減らせば問題ない。むしろもう炎属性カードは残っていないはずだから有利になるはず・・・」
ブリ「成程、そういうことでしたか」
ブリオが彼の説明に納得すると、彼らはテンポよく2組のカードを揃える。こうしてコルテックスたちの得点は炎属性が25点、地属性が21点に増えた。さらに、コルテックスはたたみかけるように魔法を発動させる。
コル「・・・水魔法・アクアフラッド発動」
コルテックスはできるだけ淡々と言うように努めた。間もなく、左側の壁から大量の水の塊が瞬く間に彼らの視界を横切り、鋭い音を立てながら砕けた欠片があらぬ方向に飛び散った。それはコルテックスやミストにまで容赦なくとびかかってくる。
コル「ぶわっ・・・!何で僕までこんな目に合わなきゃならないんだ?!」
よもやこのゲームで全身ずぶ濡れになることがあろうとは思ってもいなかった。濡れた衣服が体に纏わりつく不快感が彼を襲う。ともあれ、これでミストの炎属性の得点は18点にまで減少した。これにより彼女の最大得点は雷属性の19点になり、本格的に優位に立ったといっていいだろう。
コルテックスたちはさらに引き続きカードをめくっていく。開いたカードは風属性の6と雷属性の7のカードだった。
コル「ちっ、ここでターン終了か」
サぺ「でもこれはいい流れだと思いますよ。仮にミストがこっちの炎属性の点数を下げてきたとしても、その場合地属性が最大得点となる。そして都合のいいことに、今のミストの最大得点は雷属性だ」
ミス「そうだね。もう場に水属性のカードもないし、どのみちそっちの点数は下げなきゃならないだろうからね・・・でも、もう私の勝ちだよ」
コル「・・・どういう意味だ?」
ミス「そのままの意味だよ。残りのカードのうちペアにできるカードは多分2組。風属性と雷属性かな・・・これだけあれば逆転できる」
現在のミストの風属性の得点は13点。そこに6点が加われば、雷属性の19点と同率で最大得点となるのだ。あとは魔法を使って相手の点数を下げればいい。
サぺ「・・・へぇ~、つまり同率の点数だと両方の属性が適用されるってこと?」
ミス「そうなんだよ。雷は地に負けちゃうけど、風は生き残るから私の勝ちってこと」
サぺ「成程・・・」
噛み合っているのかそうでないのか微妙な返答に、ワットはとりあえず生返事をした。そうこうしているうちに、ミストは躊躇なくカードを選ぶ。そのカードは、数字は6、そして属性は雷だった。
コル「・・・フン、残念だったな。お前の欲しかった風属性のカードはどうやら手に入らないようだぞ?」
勝ち誇ったように笑みを漏らしながらそう言うコルテックスに対し、何故かミストもまた笑顔を見せていた。
ミス「アッハハ、大丈夫。実はまだ勝てる方法があるんだよ」
コル「何だと・・・?」
ミス「まぁ見てて」
そう言うと彼女はもう1枚のカードを開いた。6の風属性カードだ。すると、ミストは突然意気揚々と声を上げだした。
ミス「雷魔法・ゼウスサンダー発動っ!」
コル「何ッ・・・?!」
ミストの発動した魔法によって、天井からアンバリー校長を彷彿とさせる電撃がコルテックスたちに向かって飛んできた。3人の身体に痺れを通り越して激しい痛みが走る。
3人「ギャアアアアアアアアア!!」
最早立っていることもできず、コルテックスはかろうじて膝をつきながらどうにか口を開いた。
コル「なっ・・・何故、こんなこと・・・する必要が・・・」
それを見たミストはやはり笑顔を絶やさずに、返事ともつかない言葉で返した。
ミス「フフ、さぁ、これであなたたちの番は回ってこないよ」
確かにそれは厄介なことではあるが、今問題なのはそのことではない。何故ゲームでずぶ濡れになったり電撃を食らったりする必要があるのか。コルテックスにはそれが一番の問題だった。
ミス「というわけで、さっきのターンで風属性の位置が分かったから、もう私の勝ちは決まりだね」
この際、勝ち負けなどコルテックスにはどうでもよかった。むしろ一刻も早くこの危険なゲームを終わらせたい気持ちだ。そして、ミストが最後の2組を揃え、最後の魔法を唱える。
ミス「水魔法・アクアドレイン!」
今度は左側の壁から大量の泡玉が右側のミストの点数表に向かって勢いよく吸い込まれていった。そして、コルテックスの炎属性の点数が10点減点されて15点に、ミストの水属性は魔法の消費によって0になったものが吸収によって5点まで回復した。
これによってコルテックスたちの最大得点は地属性の21点、ミストは風属性の19点となり、属性の強弱関係により軍配はミストにあがった。
サぺ「あ~あ、負けちゃいましたね・・・」
コル「フン、どうでもいい・・・もともとこんなお遊びに付き合うつもりはなかったんだ」
サぺ「いや、それがそういうわけにもいかないんですよ」
コル「・・・?どういうことだ?」
サぺ「このゲームは負けると相手の魔法を受けてしまうんですよ。というより、相手の最大魔法を受けたら負けって感じっすかね」
それを聞いたコルテックスは驚きながら声を上げた。
コル「そんなこと聞いてないぞ・・・!」
ミス「あ~、そう言えば言ってなかったっけ」
ミストはあっけらかんとした様子でそんなことを言ってきた。それに対して噛みついたのは、意外にもワットだった。
サぺ「とぼけるなよミスト、僕がやった時も最初は言わなかったじゃないか」
ミス「まぁまぁ細かいことは気にしなくていいじゃん。まぁでもせっかくだから説明しとこっか。そもそもこのゲームは魔法を集めるんじゃなく、使うのが目的なの」
コル「・・・言っている意味が分からないな」
彼は至極率直な感想を述べた。しかし、ミストはそれが聞こえていないかのように顔色一つ変えることなく説明を続ける。
ミス「今まで私たちがそれぞれの属性のポイントを集めていたのは、その強力魔法を発動させるためだったんだよ。そして互いに魔法を発動させて、より強い魔法を放てた方が勝つってわけ」
ブリ「あぁ・・・それで勝敗にも属性が関係してきたわけですか」
ミス「そう。だから、魔法衰弱は魔法を撃つまでが魔法衰弱なの」
彼女がそう言うと、おもむろに部屋全体の機械たちが唸りを上げ始めた。まさにその強力魔法が発動しようとしているのだ。
コル「お、おい待て!」
ミス「何言ってるの?私は待ってあげたんだよ?」
彼女は相変わらず笑顔のままだった。なのに、その笑顔にはいつしか狂気が感じ取れるようになっていた。
ミス「さぁ、喰らいなさい・・・っ!」
その時、機械が一層大きな音を立てた。だが、これはどうも本来の機械の動きではなかったらしく、すぐにミストは不審な表情を見せた。
ミス「何・・・?」
機械の発する音は急激に小さくなっていき、しまいには光さえも発しなくなってしまった。
ミス「システムエラー・・・?一体どうして・・・」
その時、今まで開くことのなかった部屋の入り口がゆっくり開いた。そしてその奥から奇妙な、しかし聞き馴染んだ声が聞こえてくる。
ジン「やれやれ、この拙者を手こずらせるとは、貴様なかなかやりよるな・・・」
コル「エヌ・ジン・・・!」
エヌ・ジンが部屋に入ってくると、その奥からさらにシエラが飛び出してきた。そのまま彼女はブリオのもとへ駆け寄る。
シエ「ブリオ先輩!大丈夫でしたかっ?!」
ブリ「え、えぇ・・・なんとか」
シエ「ブリオ先輩は私の憧れなのです。ブリオ先輩を虐めるのは私が許さないのです!」
珍しく怒りを露わにするシエラに対し、ブリオは彼女をなだめようと声を出す。
ブリ「まぁ待ちなさいシエラ。私は別に虐められてなどいませんよ」
シエ「そうなのですか・・・?」
ミス「あなたたち一体何をしたの?せっかくいいとこだったのに・・・」
ミストは心底残念そうな表情をしながらエヌ・ジンに向かってそう言った。エヌ・ジンは無表情で答える。
ジン「簡単に言えばハッキングだ。しかし、こうも巧みな電波妨害術を心得ているとはな・・・だが、どうにか間に合ったようだ」
コル「そうか・・・助かった、エヌ・ジン」
ジン「いえ、拙者は当然のことをしたまで」
ミス「ふ~ん・・・驚きね。まさかこの時代にそれを破れる人がいるなんて・・・」
彼女は珍しく真顔でそうつぶやいた。
ジン「フン、下級生が図に乗るな」
エヌ・ジンが少々呆れた様子で言い返す。するとここで、シエラが思い出したかのようにブリオに話しかけた。
シエ「あ、そうだ・・・ブリオ先輩、少し相談したいことがあるのですが・・・聞いてもらってもよろしいですか?」
ブリ「えぇと・・・コルテックスさん、少し外してもよろしいでしょうか・・・?」
コル「構わない・・・いや、むしろそいつを連れて行ってくれ。こっちはこっちで話したいことがあるからな・・・いい加減本題に入らせてもらおうか」
ミス「本題?そう言えばあなたたちはどうしてここに来たの?」
とぼけたようにそう言うので、コルテックスは半ばあきれながら不満を漏らした。
コル「・・・おい本当にこんなやつで大丈夫なのか?」
サぺ「まぁまぁ、せっかくここまで来たんすから」
ワットに促され、コルテックスは改めて話を切り出す。
コル「・・・お前は僕の計画のことを聞いたんだよな?」
サぺ「あ、この人が僕が前に言ってたコルテックスさんだよ」
ワットの補足説明によってミストは納得の表情を見せた。
ミス「・・・あぁ、なるほどね。つまりそれに関して私の考えを聞きたいんでしょ?」
あまり認めたくはなかったが、しぶしぶ頷くことにした。
コル「まぁ・・・一応そういうことにはなるな」
ミス「そういうことなら喜んで!まぁまぁ座ってゆっくり話そうよ」
彼女はそう言うと意気揚々と奥の部屋へと入っていった。
サぺ「・・・さ、行きましょうか」
コル「はぁ、とんだ無駄足にならなきゃいいんだがな・・・」
コルテックスはため息をつきながらもミストが入っていった部屋へと足を運ぶのであった。
次章、ついにコルテックスに希望の光が・・・!
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