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第8章
2012/07/22(日)09:49:15(12年前) 更新
ミストの部屋はやはり独特な雰囲気を放っていた。棚には用途がよく分からない機械が所狭しと並んでおり、ソファーの奥には何やら作りかけらしい機械の部品が目に入る。テーブルには奇妙な色をした液体が入ったボトル容器が置いてあるのに目がいく。
これは果たして飲み物なのだろうか。コルテックスたちはそんな彼女の不思議な部屋をキョロキョロと首を動かしながらソファーに腰かけていた。
ミス「さ、まぁ気楽にこれでも飲んで」
ミストはそう言って気になっていた謎の液体をコップに注いで差し出してきた。一人残らず戸惑いを隠しきれない。
コル「い、いや、遠慮しておこう・・・それより、お前の考えとは一体何なんだ?」
コルテックスがどうにか話を戻すと、ミストは待ち構えていたかのように笑顔をこぼした。
ミス「うん、私のアイデアはズバリ、ドラゴンだよ」
コルテックスは固まった。
コル「・・・は?」
しばらくたってようやく出せた声はそれだけだった。頭の中では彼女の発言を巡ってあらゆる思考が困惑という形で迷走している。
コル(ドラゴン・・・?D・R・A・G・O・N?・・・こいつは一体何を言ってるんだ?ドラゴンってあのドラゴンの事なのか・・・?ふざけてるのか・・・?僕を馬鹿にしてるのか・・・?僕の邪魔をしてそんなに楽しいのか・・・?!)
ジン「お主何を言っているのだ。戯言はよせ」
困惑のあまり言葉を出せないコルテックスに代わって、エヌ・ジンが彼の意思を代弁した。
ミス「冗談なんかじゃないよ。強い生物を作りたいんでしょ?だったら、力が強くて鱗も固いドラゴンを目指すのはいい案だと思うんだけど」
ここでようやく思考が落ち着いたコルテックスが反論する。
コル「いや冗談だろ?どう考えても現実的じゃないな。例えどれだけドラゴンが強かろうが、完成できなければ意味がない」
ミス「それがね~、実はそうでもないんだよね~。実はドラゴンって、過去に科学者によって作られたことがあるんだよ。史実に基づいて、忠実にね」
彼女は何故か得意げにそんなことを言ってきた。とはいえ、彼女の言葉には確かに驚くべきものがある。
コル「何だと・・・?」
ミス「それに、今だってドラゴンを作る研究をする人間はいるの。確か、表向きは製薬系の企業だけど、その利益を使って裏でドラゴンを生み出す研究をしている人がいるって話だよ?」
サぺ「へぇ~、世の中色んな人間がいるもんだねぇ」
声には出さなかったが、全くだ、とコルテックスも密かに同意した。
ジン「では、そのドラゴンは一体どうやって作られたのだ?」
ミス「う~ん、まぁ大雑把に説明してもいいんだけど、詳しく知りたいんならそのことが書かれた本があるよ。よかったら貸してあげようか?」
今度は冷静に考えてみた。ドラゴンという存在自体は荒唐無稽極まりないが、少なくともその本には何か参考にできるものが書かれているかもしれない。こちらはあながち悪い提案でもないように思えた。
コル「むぅ・・・まぁ参考にはしてみよう」
ミス「オッケー」
彼女は陽気に答えると、ソファーから立ち上がって本棚の方へ近づいた。そこには厚薄様々な本が並べられており、彼女はしばらく無数の背表紙と睨めっこした後、1冊の分厚い本を取り出した。
ミス「ハイ、気が済むまで持ってていいからね」
そう言いながらコルテックスにその本を差し出した。コルテックスはやや斜に構えた態度でそれを受け取る。
コル「そりゃどうも」
気が付くと、目の前には見慣れた天井が映っていた。どうやら保健室に運ばれベッドに寝かせられていたらしい。屈辱だ。ダークは怒りを力に変えて身体を起こすが、打撲の痛みですぐに倒れ込んでしまった。
?「無理をするな。その歳じゃ痛みはそう簡単にひかんだろ?」
ダー「その声・・・貴様、マルクか・・・!」
ダークは痛みをこらえつつ辛うじてかすれた声を出す。マルクは冷静に答えた。
マル「さて、まずは事情を聞こうか。何故お前がセリカにやられたのか」
それを聞いた瞬間、ダークの頭の中にはその時の映像が鮮明に映し出された。
「その辺にしておけよクソジジイ」
「・・・見てて不快なんだよッ!」
そんな台詞と共に金属の棒を投げつけてくるセリカの姿が浮かんでくる。不快なのはこっちの方だ。材料を取り返そうとしたところを急に割り込んで妨害し、挙げ句気絶までさせられたのだ。
何故自分がこんな目に合わなければならないのか。ダークの頭は最早怒り一色に染まっていた。
ダー「おのれ奴め・・・!奴さえ・・・奴さえいなければ・・・!」
マル「・・・どうやら話を聞くだけ無駄らしいな。まぁいい、お前に渡すものがある」
ダー「ええい、何だ!?」
自棄になって叫ぶダークをよそに、マルクはおもむろに懐から何かを取り出す。クロワから受け取った材料だ。それを見たダークは目の色を変えて声を上げる。
ダー「・・・!それは!貴様、どこでそれを・・・!?」
マル「お前が倒れていた時、近くにいた女子生徒がこれを渡してくれとな」
ダー「何・・・?!(アイツはワシの材料を奪ったのではないのか・・・?)」
マル「どうした?要らないのか?」
ダー「チッ、よこせっ!」
そう言ってダークは乱暴にマルクから材料をぶんどった。何にせよ目的の材料はこれで手に入った。だからと言ってセリカを許す気は微塵もなかったが、とりあえずその場の怒りは落ち着いてきた。
すると、保健室の扉が開く音が聞こえてきた。そこに入ってきたのは、大胆にもロバートを肩で担いだザヌサーだった。何とも窮屈そうに扉をくぐり抜け、こちらに向かって歩いてくる様は非常に迫力に満ちており、なおかつ滑稽にも見えた。
マル「・・・?どうしました?また何かあったんですか?」
ザヌ「ああ、まったくこの仕事は楽じゃないな」
ザヌサーはそう言いながら豪快にロバートをベッドへ下した。投げつけたといってもいい。端から見ればベッドが壊れてしまわないかと冷や冷やさせられてしまう。
ザヌ「一日くらい何事もない日があったっていいような気がするんだが」
マル「えぇ、まったくですな。それで、その生徒が気絶しているのは・・・?」
ザヌ「ネイキッドだ。こいつが派手に喧嘩してたところを俺とネイキッドで止めた」
マル「成程。ということは・・・」
ザヌ「まぁ、そりゃあ居残り確定だろうな」
マル「・・・校長も大変ですな」
マルクが呆れ気味にそう言うと、ザヌサーも呆れたような表情をして言った。しかし、彼が呆れているのはマルクが思っているのとは別の者に対してだった。
ザヌ「いや、校長も校長で楽しんでやってるな、ありゃ。実際あれにゃ何の意味もないだろ」
その証拠に、彼らはこうして毎日のように問題児の対処に明け暮れている。マルクは反論できずにしばらく無言のままだった。
ザヌ「で、そっちはどうなんだ?」
マル「それが、私もよく分からないのです。ただ、私が見た時には彼がセリカに攻撃を受けて気絶していた」
ザヌ「成程、ま、どうせそっちもくだらん喧嘩かなんかだろ」
ダー「何だと!?」
ダークは心外だとばかりに声を上げたが、相手が相手だけに、ザヌサーがそう考えるのも無理はなかった。実際、マルクも同じことを予想していた。
ダー「ワシはアイツらから材料を取り返そうとしただけだ!それを奴がいきなり邪魔してきよったんだ!」
マル「落ち着け。状況がよくわからない」
ザヌ「そいつは無理な注文ってもんだ。何しろダークだぜ?」
ダー「黙れ!」
マルクは呆れた様子でため息をつきながらも、改めてダークに尋ねた。
マル「・・・それで、お前の言ってるアイツとは一体誰の事だ?」
ダー「女だ。恐らくはお前が見たとき近くにいた女と同じ奴だろう」
マル「・・・?どういう事だ?私は女子生徒からその材料をお前に渡すように言われたんだぞ?現に私はお前にそれを渡した。"取り返そうとした"とはどういう事だ?」
そう問い詰めると、ダークは数秒口をつぐんでしまった。その点はダーク本人にも不可解な点だ。
ダー「ぐっ・・・そんなこと知るかッ!」
ザヌ「どうせまたお前の勘違いなんじゃないのか?」
事実、ダークはこれまでにもこのような早とちりをすることは少なくなかった。大雑把なうえに攻撃的な彼の性格が原因と言えるだろう。
マル「その可能性は高いな。あの生徒がお前に材料を届けようとしたところをお前が勘違いして襲ったんじゃないのか?」
ダークは否定できずに顔を下に向ける。事実なのだから当然のことだ。
ザヌ「ったく、どこまでも世話の焼ける野郎だ」
ザヌサーは頭を掻きながら呆れたようにそう言った。とかく、この学校は呆れることだらけだ。
マル「ろくな考えもなしに生徒を襲ってもらっては困る。お前にも校長の居残り授業が必要だな・・・」
ダー「チッ!」
彼は大げさに舌打ちをすると、そのまま起き上がって保健室の扉へと歩き出した。
マル「おい、大丈夫なのか?」
ダー「うるさい!これくらいなんともない」
マル「だったらちゃんと午後の授業に出るんだぞ」
ダークはそれに答えないまま保健室を出て行った。
その頃、ブリオはシエラを連れて自身の寮部屋へやって来ていた。彼の寮部屋には棚に様々な薬剤が並べられており、別の棚にはその材料であろう気味の悪い物体が小奇麗に整理されていた。
シエラはそんな彼の部屋を目を輝かせながら見渡していた。
シエ「わぁ~、ブリオ先輩のお部屋・・・久しぶりなのです」
ブリ「そう言えばそうでしたね」
シエ「あ、この乾燥したドクガエル、とっても可愛いですね」
材料が並ぶ棚の一角を見て、シエラはそのドクガエルを指して言った。ただでさえザラザラとした皮膚が乾燥してしぼんでおり、あまり可愛いと言える要素はないように思われた。しかし、彼女の目はあくまで純粋だ。
ブリ「そ、そうですか・・・?そうだ、ところで、私に相談とは一体何なのでしょう?」
ブリオが話を切り替えると、シエラは徐々に真剣な表情に変わっていった。
シエ「ブリオ先輩、アミュータの事は、知っていますか?」
ブリ「あぁ、去年たった1年でこの学校を卒業し、今年になって教師になったというあの人ですか。かなり話題になりましたし、私もそれくらいのことは知っていますよ。あなたの双子のお姉さんでしたね?」
シエ「えぇ、そうなのです・・・もう少し、私たちの話をしてもよろしいですか?」
ブリ「えぇ、構いませんよ」
シエ「ここに入学する以前、私たちは両親を亡くして叔母の家で暮らしていたのです。けど、そこでの生活はひどいものでした・・・」
ブリ「虐待、ですか・・・」
シエ「えぇ、それで私たちはこの学校に入学することを決めたのです」
ブリ「成程、確かに全寮制のうえ、所在もあまり知れていないこの学校に入ることができれば、それは避けられるでしょうね」
シエ「その通りなのです。そして、私たちは試験に合格したのです。でも、私が入学するには1つ大きな問題があったのです」
ブリ「問題・・・?」
シエ「この学校に奨学生制度があるのは知っていますよね?」
それを聞いて、ブリオはああ、と声を漏らして納得した。この学校における奨学生制度とは、入学試験の際の点数が上位10名の者には入学金が免除されるというものである。入学金を工面してくれる者もいなければ、自分たちでその額を稼げるはずもない彼女たちには、最早その道しか残されていなかった。
シエ「私たちはその奨学生制度を利用しなければいけなかったのです。でも、私は10位以内には入れなかったのです・・・」
その時のシエラの成績は11位。まさにあと一歩というところで、運は彼女を突き放した。
シエ「それでも、お姉ちゃんは校長先生に必死にお願いして、何とか1年だけ無償で入学を許可させてもらうことができたのです」
ブリ「ほぅ・・・意外ですね」
シエ「・・・えぇ、私ももう駄目かと・・・」
シエラは頷きながらそう言ったが、どうやらブリオが考えていたことはそれとは違っていたようだった。
ブリ「いえ、私は校長が無償措置を渋ったことが意外だと言ったのです」
シエ「え・・・?」
ブリ「あの人が特例を出すことなどそう珍しいことではありませんからね。むしろそういうことに関しては寛大な人だと思っていたのですが・・・」
彼からしてみれば、軽薄とも思える普段の校長の振る舞いから、彼女に対しての処置が思いのほか厳しいもののように感じられたのだ。いや、確かに通常ならかなり良心的な処置ととられるのだろうが。
シエ「そうなのですか・・・?」
ブリ「少なくとも、私たちからすれば・・・」
シエ「でも、確かに私は1年限りの入学を許可されたのです。そんな私が今ここにいることができるのは、やっぱりお姉ちゃんのおかげだったのです」
この言葉を聞くと、ブリオも大方の察しはついた。
ブリ「成程・・・それで彼女は1年でこの学校を卒業し、教師となったのですね?」
シエ「そうなのです。お姉ちゃんは教師となって再び校長先生と交渉したのです・・・だから、私は今もここで暮らしていられるのです。それも、今度は卒業までここにいられるように・・・」
ブリ「それは素敵なお姉さんですね。あなたのお姉さんは」
彼は素直に感じたことをそのまま口にした。すると、シエラは純真な目をさらに輝かせて嬉しそうに答えた。
シエ「ブリオ先輩もそう思いますか?」
ブリ「ええ、立派だと思いますよ」
シエ「お姉ちゃんは私の自慢の姉なのです。だからこそ、私はお姉ちゃんに恩返しをしたいのです」
ブリ「ほぅ」
シエ「それで、できればブリオ先輩にも協力してほしいと思ったのですが・・・いいですか?」
すると、ブリオは腑に落ちたといった様子で頷きながら答えた。
ブリ「あぁ、相談とはそういう事だったんですね」
シエ「はい」
ブリ「私でよければ喜んで協力しますよ」
彼の返事にシエラは心底喜んだ。誰の目にもそう分かる程に彼女は喜んでいた。
シエ「本当ですか・・・?ありがとうございます!」
シエラは勢いよく頭を下げてお辞儀をした。するとその時、昼休み終了5分前を告げる予鈴が学校中に鳴り響いた。その音に反応してシエラは再び素早く姿勢を元に戻した。
シエ「あっ、もう次の授業が始まってしまうのです。今日はこれで失礼します。本当にありがとうございました」
ブリ「はい、頑張ってくださいね」
シエラはそれに深く頷きながら元気よくブリオの寮部屋を出て行った。
今日の午後の授業も終わりを迎えた頃、ごく少数の生徒にとって地獄そのものである例の時間がやってきた。校長による居残り授業という名の体罰行為である。しかし、宣告を受けた生徒は、この授業から逃れる術はない。
仮にこの授業に行かなかったとしても、学校内にいる限り、校長から逃れることはできない。校長に見つかった瞬間、それまでのツケが一気に回ってくるだけだ。そういうわけで、どんな悪童でも居残り授業だけは受けざるを得ないのである。
今回居残り授業を受ける者は、セリカ、ダーク、ブラック、ロバートの4人だ。もともと喧嘩が原因で宣告を受けたとあって、この4人は皆一様に不満げな表情を浮かべている。
ブラ「今回ばかりは納得いかねぇぜ!何で俺様がコイツなんかと一緒に居残り授業を受けなきゃならねぇんだよ!」
ロバ「お前、おいどんを馬鹿にしているのか!?もう一度大怪我を負いたいか?!」
早くも一触即発の事態と化し始めた丁度その時、やはり上空から甲高い声が響き渡ってきた。声の主は、勿論マダム・アンバリーその人だ。
アン「あらあら、皆さん仲良くしなさいな~」
調子のいい声と共に、例によってロープにつりさげられたアンバリーが登場してきた。
ダー「チッ、来たか・・・」
セリ「今度こそぜってぇ打ち負かしてやる・・・!」
アン「ウフフ、可愛いわね。いいわよ、存分に相手してあげる」
そう言うとアンバリーは早速両の掌から激しい電気を溜め始めた。そして、その電気をセリカたちに向かって一気に放出しながら再び甲高い声を上げた。
アン「さぁ、居残り授業の始まりよ~!」
降り注ぐ電撃を4人は必死でかわしていく。こうしていられるうちはまだいい方だ。もとより電気などという攻撃を、人間の足で避けられるはずがないのだ。アンバリーはこうして4人を徐々に追いつめて楽しもうとしているに違いない。
ダー「ちっ、コイツ、やる気があるのか?!」
アン「あら、そんなこと言う割にはもう息が上がってきてるみたいだけど?」
ブラ「くそっ、なめやがって・・・!」
まず最初に動いたのはブラックだった。空中に浮いているアンバリーに届く攻撃をするため、ブラックは激しい電撃を掻い潜りながらあたりを見回した。そして、小さなテーブルの上に置いてあった壺に目を付けた。
ブラ「これでもくらえっ!」
ブラックはとっさにその壺を掴んでアンバリーに投げつけた。すると、アンバリーは驚いた表情をして電撃を放つのをやめた。
セリ(・・・!今だ・・・!)
チャンスとばかりにセリカは頭の中であるものを思い浮かべた。そして素早くそれを現実にする。そこに現れたのは弓矢だった。そしてアンバリーがうまく壺をキャッチしたのも束の間、セリカは弓矢を凄まじい速さで射った。
狙いを精密に定めなくとも、セリカの描いた運命が正確にアンバリーを狙ってくれる。アンバリーはとっさに手に取っていた壺を盾代わりにしたが、その壺は見事に高い音を立てて砕け散ってしまった。
それによって多少の威力は軽減されたものの、矢はアンバリーの腹部にしっかりと命中してしまった。彼女は珍しく深刻な表情を浮かべ、呆然と落ちてゆく壺の欠片を見つめていた。あまりに予想外の表情に、セリカを始めとする居残り組は逆に動くことがはばかられた。
セリ「やったか・・・?」
セリカ自身、今の一撃が決定打になりうるとは予想していなかった。アンバリーなら矢の一つや二つ刺さったところで致命傷になるとも思えなかったのだ。しかし、どうやら実際はその通りのようだった。
アン「あなたたち・・・よくも・・・よくも私のコレクションを・・・」
彼女にとって、問題なのは身体に矢が刺さったことではなく、壺が粉砕してしまったことだったのだ。そのショックは、4人には到底想像しようもないものであり、その怒りもまた彼らには理解できないものだった。
ブラ「ハァ?コレクションだとぉ?」
ロバ「おいお前ら、何て厄介なことをしてくれたんだ!」
ブラ「知らねぇよ!こんなん普通予想つかねぇだろがっ!」
アン「これは許されない行為よ・・・身をもってあの壺の重みを知りなさい!!」
彼女の怒号の声は、まるで部屋中に直接の振動となって体にぶつかってくるかのように感じられた。見たこともないようなアンバリーの怒りの姿には、流石の4人も恐怖を覚えざるを得なかったのだ。
最早彼女の怒りの理由に疑問を抱く余裕すらない。直後に彼女の体全体から電気がスパークを起こしながら溢れ出してきた。低いうなり声を上げながらそれを発する様は、恐怖そのものが具現化したものであるようにすら思える。
4人は身構える。いや、身体が緊張して動かせなかいだけなのかもしれない。とにかく今の彼らにはそれしかできなかった。そして、ついにアンバリーから無数の電撃が四散した。
アン「はああああああああああ!!!」
さっきとは比べ物にならないほどの激しい攻撃に4人はどうすることもできず、瞬く間に彼女の電撃の前に力なく倒れていってしまった。それでもアンバリーの攻撃は止まらない。彼女は怒りに任せて自らの力を垂れ流している状態だった。
しばらくして、ようやくアンバリーの電撃が納まると、彼女はゆっくりとロープを下して地面に降り立った。多少落ち着きを取り戻したのか、先ほどよりは幾分マシな表情だ。
アン「ふぅ、少しやりすぎてしまったかしら」
すると、突如背後から呻き声が鳴り響いてきた。振り返ると、そこには激しい電撃を受けてなお立ち上がろうとするロバートの姿があった。彼が精一杯振り絞った雄叫びは、まさしく獣のそれと同じだった。
アン「まぁ、私の全力の攻撃を受けて意識があるなんて・・・大したものね」
彼女は驚きの表情を見せたが、そこにはどこか余裕を感じさせるものも含まれていた。ロバートはどうにか立ち上がると、彼はやはり気合の雄叫びを上げながら必死の形相でアンバリーに向かって突っ走った。
その速さは彼の巨体からは想像もつかないほどのものだったが、それでもアンバリーの電撃には間に合わなかった。彼はアンバリーに殴り掛かる一歩手前のところで、ついに意識を失い地面に伏してしまった。
校長室から響き渡ってくる激しい電撃の音、校長の怒りの声、生徒のあまりにも悲痛な叫び声はその周囲にも漏れ出していた。今日は関係のないコルテックスでさえも、その音を聞いただけで背筋が凍ってしまう。
彼は一刻も早くその音の及ばない場所へ逃げ出したい一心で、校長室の扉の前を横切った。
コル「ふぅ、まったく今日はやけに恐ろしかったな・・・音を聞いただけで身震いしてしまう・・・」
ひとまず音は聞こえなくなり安堵したコルテックスだったが、それでも歩くペースだけは変えなかった。寮部屋に置いてあるミストから借りた本を読むためだ。あまり乗り気な態度を示さなかったコルテックスも、本の内容にはそれなりに興味があったのだ。
数分掛けて自身の寮部屋へたどり着くと、まずは部屋の隅にあるデスクの椅子に腰かける。そしてデスクの上に置いておいた本を早速手に取った。内容は、ドラゴンの生成過程のレポートから始まっているようだった。
コル「ふむ、成程な・・・」
見たところ、実験は複数の生物の合成や遺伝子操作などを中心にして進められていたようだ。確かにコルテックスが今行っている実験と似ていた。さらにそこには実験に使われた材料や遺伝子操作の内容も事細かに記されている。
コル「これは・・・思ったより参考になるな・・・」
コルテックスはさらにページをめくっていく。やがて実験過程の項目は終わりを迎え、その結果のまとめから導き出された法則や考察などが書かれたページまで到達した。中にはこれまでにコルテックス自身が見つけた法則もいくつか見受けられた。
それによって調子づいたコルテックスは、さらにペースを上げて読み進めていく。その後には完成したドラゴンの観察、実験による特性のまとめなどが記されていた。そして、とうとう彼はその本をわずか数時間で読み終えてしまった。
ため息とともに分厚い本の最後の裏表紙を閉じた時、ようやく外がもうだいぶ暗くなってきていることに気が付いた。本をデスクの上に置き、しばらく固まっていた体勢を少し崩して楽にする。
そうしてから彼は静かに呟いた。
コル「・・・これなら、もしかしたらいけるかもしれない」
次章、ドラゴン計画がいよいよ本格始動!
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