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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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- 第七章
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第七章
2012/05/30(水)22:46:12(12年前) 更新
これより下は本編です
日の光も地平線に吸い込まれていくように消えてゆく頃、クラッシュたちは遂に一つ目の街に着いた。
しかし、街とは決して呼べないほど寂れていて、人の気も全く無かった。
「こ、ここが街だよね・・・?」
クラッシュは辺りを見渡しながら言った。
「もう何年も人が住んでないみたいだぞ。おいリタイラル、ここがお前の寄ったことのある街か?」
ポトリゲスはそう言いながらリタイラルのほうを見た。
「いや、僕の寄った街はもっと人がいた。てかこんなとこ街じゃないじゃん」
と、リタイラルは答えた。
「とりあえず人がいないか調べよう。ボクはちょっとここらを見てくるよ」
クロックはそう言いながら前に歩き出した。
「ですね、私も一緒に探します!」
シクラメンもそう言ってクロックの後を追った。
「俺は少し疲れちまった。しばらくフェアーと休んどくわ」
ロックはそう言うと近くにあったベンチの上に寝転がった。ロックの腹の上にフェアーが乗っかった。
「私もさすがに疲れた」
ヘルゼルはそう言ってその場に座り込んだ。
「私も人を探すとしましょうか。ココさんはどうしますか?」
「あたしも探しに行くわ。ザジさん、こっちの道に行きましょ」
ザジとココは二人で、クロックとシクラメンとは違う道を進んでいった。
「人気の無い街、か。いかにも危険な香りが漂ってくるな。俺は安全な場所を見つけて来る」
南はそう言うと建物に飛び乗り、どこかに行ってしまった。
「私はここにいるー。別に行く所無いしね」
ペタはそう言うと銃剣を取り出し、メンテナンスを始めた。
「僕は酒を探してくるよ。ボトルが切れちゃった」
リタイラルはそう言ってどこかに行ってしまった。
「俺はここに残るぜ」
ウォーラスが言った。
「んじゃ、おいらはこの辺りの探索に行くよ。ポトリゲスは?」
「俺様もそうする。このメンツなら敵に出会ってもある程度対処できるだろ?」
クラッシュとポトリゲスも辺りの探索に行った。
「誰もいないな・・・」
「そうですね・・・」
クロックとシクラメンは人気の無い建物の前を歩いていた。
「建物自体は奇麗だし、人がいてもおかしくないはずなんだけどな・・・」
「確かに、店みたいな建物もありますし、結構最近まで人が住んでたのかもしれないですね」
シクラメンは建物の一つを見ながら言った。そこには様々な服が飾られていた。
普段なら立ち寄ってみたいところだが、今はそれどころではない。
「もう少し歩いて、誰もいなかったら引き返すか」
「そうですね」
クロックとシクラメンは更に道を進んだ。
「・・・いる」
クロックが呟いた。
「え?」
「気配を感じる・・・そこか!?」
クロックはそう言った瞬間振り向きながらジェリコを構えた。しかしそこには誰もいなかった。
「おっかしいな・・・」
クロックはそう言ってジェリコをしまった。
「なんか不気味ですね・・・もう戻りませんか?」
「だな・・・みんなと行動した方が賢いかもしれない」
クロックとシクラメンは来た道を引き返し始めた。
「・・・気配を感じる」
「やっぱり誰かいますよ・・・!」
ザジとココも何者かの気配を感じていた。しかし周りを見ても誰もいない。
「・・・あれは?」
ザジはふと建物の中をみた。一瞬何かが動いたように見えたのだ。
「ザジさん、何か見つけたんですか?」
「何かが動いたような・・・この建物に入ってみましょう」
ザジはそう言うと右手にワルサーを持ち、建物の中に入っていった。
「だ、大丈夫かな・・・」
ココもその後を追った。
建物の中は獣臭が漂っており、至る所に蝿が飛んでいた。
ザジとココはその中を歩いていった。
「・・・人じゃなかった」
ザジが呟いた。
「え?」
「犬ですよ。この建物は犬の住処みたいです。ほら」
ザジはそう言うと指を差した。その方向には犬が数匹いたのだ。
「本当だ・・・みんな同じ種類。ドーベルマンかな?」
その犬たちはドーベルマンという種類のようだった。中型だが力は強い黒色の犬だ。数匹で襲われたらひとたまりも無いだろう。
その時、犬の一匹がザジの方に近づいてきた。
ザジはもしもの時のためにワルサーをいつでも撃てるように準備した。
幸いにも犬はこちらを敵だと認識していないようで、ザジをしばらく見た後はまた群れに戻っていった。
「ザジさん・・・帰りましょうよ。ここには誰もいないみたいですし」
「ですね・・・もうこれ以上探索しても誰もいないみたいですし、一旦最初の場所に戻りましょう」
ザジとココは建物を後にし、道を引き返していった。
「忽然と人が消える・・・本当にそんなことがあるのか・・・?」
南は建物の屋根を跳び回りながら安全な場所を探していた。
どの建物を見ても人はいない。南はその状況を不思議に思っていた。
「建築物を見ても決して古い物ではない。住みにくい街でもないしな・・・何があったんだ?」
南はそう言って、地面に降りた。そして、建物の一つに入った。
「・・・鋏か?」
南は建物の床に落ちていた鋏を拾った。医療などに使われるタイプの鋏だ。
鋏には血の跡がついていた。比較的新しいものだった。
南はさらに建物の探索をした。どうやら病院のようで、医療用ベッドや様々な医療器具が置かれていた。
ベッドの上には布をかけられた何かが置かれているものもあった。恐らく死体だろう。
「・・・ここには何もなし、か」
南は建物から立ち去った。
「病院・・・にしては不気味な場所だ。最近まで使用した痕跡もある。どうやらまずい街に来ちまったみたいだな」
南はそう呟くと、他の者達が集まっている場所に戻っていった。
「ったく、こんなことしてる場合じゃねぇだろ保安官!」
「待って!ちょっとだけ待って!」
ポトリゲスとクラッシュはある建物の中に入っていた。
その建物は飲食店のようで、店の中には大量の食べ物が置かれていた。その中にはクラッシュの大好物のりんごもあった。
「りんご!りんご!り・ん・ご!」
クラッシュは夢中でりんごを食べていたのだ。
「・・・こんな奴と行動するんじゃなかったぜ」
ポトリゲスはすっかり呆れていた。それでもクラッシュはりんごを食べ続けていた。
数分後、ついにポトリゲスが動いた。
「おい保安官、もうここには何も無いみたいだし帰るぞ」
「ゲップ・・・うん、おいらもいい加減お腹一杯」
クラッシュとポトリゲスは結局何もせずに戻ることになった。
「ここは酒屋かな・・・?」
リタイラルもある建物の中にいた。
その建物は酒屋のようで、酒樽が置かれていたりした。リタイラルは樽の一つのコックを捻った。樽についていた蛇口からは紫色の液体が出てきた。リタイラルはそれをぺロッとなめた。
「お、ワインじゃん!しかもかなりいい感じに仕上がってる!」
リタイラルはボトルを取り出し、ワインを入れた。
そして、リタイラルはその場を去ろうとした。
「おいあんたぁ!ちょっと待ちなよぉ!」
突然リタイラルの後ろから声がした。
「だ、誰だ!?」
リタイラルはいきなり呼び止められたことに驚き、後ろを振り向いた。
リタイラルの目の前には意味不明な生物が二本足で立っていた。
頭部は何かの果物のようで、人間ではないことは間違いないだろう。
「な、何だこいつ!?」
リタイラルはその生物を見て更に驚いた。
「脅かしてわるかったなぁ。オレはウィリー・ワンパ・チークス!まぁウィリーとでも呼んでくれよ」
「ウィリー・・・さんか。もしかしてこの街の人?」
「ま、まぁな。それよりこんな所によく来たな。夜は危ないぜ?どうだ、オレの家に泊まっていかねぇか?」
「ほ、本当!?でも、僕一人じゃないんだよね」
「へぇ、仲間がいるのか。そりゃあいい実験た・・・いや、何でもない!何人でも歓迎だぜ!」
「やった!じゃあ皆の所に案内するから来てくれよ」
リタイラルとウィリーは建物から出ると、クラッシュたちの所に行った。
「えーと、あとはリタイラルだけか・・・」
クラッシュ達はすでに一箇所に集合していた。
「リタイラルの野郎、どっかで酒飲んで倒れてるんじゃねぇのか?」
ポトリゲスは辺りを見ながら言った。
「あり得るかもな」
南が言った。
「おーい!みんな!」
どこかからリタイラルの声がした。皆はその方向を見た。
「・・・誰だあいつ?」
クロックはリタイラルと一緒に歩いているウィリーを見て言った。
「このウィリーって人が一晩泊めてくれるんだってさ!」
クラッシュたちの前に立つと、リタイラルがそう言った。
「おお!かなりの団体さんじゃねぇか!しかもいろんな種族がいやがるぜ!」
ウィリーがクラッシュたちを見ながら言った。
「ウィリーさん・・・いいんですか?」
ココがウィリーに言った。
「もちろん!あんたみたいな可愛い女の子、夜に荒野を歩いてたら何に襲われるか分からねぇしな!」
「ちょっとやだ、可愛いなんて!」
ココが照れながら言った。
「で、宿泊できるのはどこなんだよ?俺もうクタクタだぜ」
ロックはベンチから立ち上がりながら言った。
「まぁそう急かすなって!じゃ、今から団体さんご案内~。さ、ついて来な」
ウィリーはそう言うと道を歩き始めた。一行はその後をついて行った。
「さぁ、ここだ!ささ、早速中に入ってくれよ!」
ウィリーはある建物の前で立ち止まり、中に入っていった。
「じゃ、行こうか」
クラッシュはそう言うと中に入っていった。皆もその後を着いていった。
中に入ると大きなテーブルといくつもの椅子が置かれていた。
「長旅で疲れたんだろう?椅子に座って待っててくれよ」
ウィリーはそう言ってどこかに行ってしまった。皆は言われたとおり椅子に座った。
「おい保安官。これ、返しておくぞ」
一番奥の席に座ったクラッシュの横に、南が座った。南は右手に持っていたオパールをテーブルに置いた。
「これって、おいらのオパールじゃん!?何で南が持ってるの?」
「返してもらった、とでも言っておこう」
「そ、そうなんだ・・・」
「にしても色々怪しい野郎だ。何か裏がありそうだ・・・」
「南、怪しむ癖はやめたほうがいいとボクは思う」
南の隣に座ったクロックが言った。
「クロック、あいつが怪しくないとでも?」
「うーん、分からないけど・・・」
「最悪の事態も想定する、この世の中そうじゃないと損ばっかりだし、な?」
南はそう言うとクラッシュの前に座っていたポトリゲスのほうを見た。
「どうした、南?俺様の顔に何かついてるか?」
ポトリゲスは南の話を聞いていなかったようだ。
「いや、何にもないさ」
と、南が言った。
「気楽に行こうよ。酒を飲んだら世の中どーでもよくなるよ」
と、南の前に座っていたリタイラルが言った。
「お前は酒を飲みすぎだ!」
リタイラルの隣に座っていたロックが言った。
「ロック・・・実は僕、ある人物を探してるんだ」
「ん、いきなり重い話になったな・・・で、誰のことだ?」
「双子の兄のカタパルトって奴なんだ。中々連絡取れなくて心配してるんだ・・・」
「へぇ、お前に双子の兄弟がいたとはな・・・」
「それで、ここからが本題。実はカタパルトに似てる奴ともう出会ってるんだ」
「そうなのか。じゃあそいつに聞いてみたらどうだ?」
「でもそいつがね・・・荒野で僕たちを襲ってきた奴なんだ」
「何だって?お前の兄貴はVaterなのか!?」
「そんな訳ないと思うんだ・・・あの兄がそんな悪い奴じゃないし」
リタイラルとロックの話の中に、ロックの横に座っていたヘルゼルが入ってきた。
「そのリタイラルの双子の兄に似ている奴は、なぜ私たちを殺さなかった?もしかしたら弟を殺したくなかったから、じゃないのだろうか」
「ヘルゼル・・・あいつが僕の兄だって言うのか?」
「そういう訳ではないが・・・色々おかしいと思うんだ」
三人の会話に南が割り込んだ。
「あの野郎がお前たちを殺さなかったのは、殺せ、と言われなかったかららしい」
「そうだったんだ・・・じゃああいつが兄の可能性は低くなったってことだ」
リタイラルはそう言ってホッとため息をついた。
「それより飯はまだか?俺が手伝いに行ったほうがいいか?」
ヘルゼルの前に座っていたウォーラスは、運ばれてくるであろう料理を待ちながらイライラしていた。
「確かに、ウォーラスさんの料理食べたいかも」
ウォーラスの隣に座っていたココが言った。
「ウォーラスさんの料理おいしいですもんねー」
ココの前に座っていたシクラメンが言った。
「にしてもこんなところで出す料理だからな・・・変なもん入ってそうで怖いぜ」
と、ウォーラスが言った。
「私にとっては地上の食べ物は全て変ですけどね」
シクラメンの隣に座っていたザジが小さな声で呟いた。
「え?何か言いました?ザジさん」
と、シクラメンが言った。
「いいえ、何でも」
と、ザジは答えた。
「お腹すいたなー。早く食べたいなー」
ザジの前に座っていたペタが言った。その時、ウィリーが料理を持ってきた。
「ほら、料理を持ってきたぜぇ」
ウィリーはそう言って様々な種類の料理を置いていった。
ウィリーはクラッシュの前に料理を置こうとした時、テーブルの上のオパールを見て驚いた。
「こ、こいつはあんたのかい!?」
「え?うん、そうだけど」
と、クラッシュは答えた。
「ほう・・・ま、まあとりあえず料理を置くから片付けてくれよ」
「分かった」
クラッシュはそう言ってオパールをポケットにしまった。その後に、ウィリーは料理を置いた。
「それじゃあ、ごゆっくり!ヘッヘッヘ・・・」
全てのテーブルに料理を置いた後、ウィリーはまたどこかに行った。
皆は料理をがっつき始めた。半日も歩きっぱなしでさすがに腹も減っていたのだろう。
「・・・うまい!」
料理を口に運んだクロックが言った。
「確かに、うまいなこれは」
ポトリゲスも料理の旨さに舌鼓を打った。
「・・・コックの俺が認めよう。これはかなり旨いぞ」
ウォーラスも料理の味に驚いていた。
ロックは料理の中の肉をフェアーにあげていた。
「酒に合う飯だ・・・いやー、うまい!」
リタイラルは自分のボトルのワインを飲みながら言った。
「美味だ・・・」
ヘルゼルが呟いた。
「ココさん、美味しいですね!」
シクラメンがココに言った。
「そうね」
ココが料理を食べながら言った。
「・・・美味しい」
ザジが呟いた。
「おいしいー!もっと食べたい!」
ペタは既に自分の分の料理を食べ終わっていた。
しかし、この中で料理に手をつけてないものが二人いた。
「うぇー・・・さっきりんご食べたばっかりなのに・・・」
クラッシュはテーブルの上に顔を伏せていた。
クラッシュは先ほど食べたりんごのせいで料理を食べることが出来なかった。
「・・・」
南は黙ったまま料理を睨んでいた。
「どうしたの、南。嫌いなものでもあった?」
クラッシュが南に聞いた。
「毒だ」
南が呟いた。
「え?」
「料理に毒を盛るとはな・・・とんだクソ野郎だ」
「南・・・それ知ってたの!?」
「いや、料理を見て気がついた。言おうとしたらこれだ」
南はそう言って周りを見た。なんと料理を食べた者が皆倒れているのだ。
「え!?みんな大丈夫!?」
「心配するな。催眠薬の一種らしい。命に別状はない・・・って」
南はある人物を見て驚いた。
「ペタ・・・どうもないのか?」
何とペタだけは普通だったのだ。
「私、別になーんともないよ」
「ペタさん・・・どうして・・・?とりあえず、皆を起こして此処から逃げよう!」
クラッシュはそう言うと、立ち上がろうとした。
その時、ウィリーがリビングに入ってきた。ウィリーは眠っていないクラッシュたちを見て驚いた。しかしあえて冷静に喋りだした。
「おや?皆さん疲れてたみたいで。他の三人方も部屋を用意するから眠ってきたらどうだい?」
平然を装うウィリーに南はゆっくり近づいた。
「死にたくなければ俺達を見逃せ、腐れりんご」
南はガバメントをウィリーの頭に突きつけ、ウィリーの耳元で呟いた。
「そ、それはできない相談だ!」
ウィリーは恐怖で声が震えながら言った。
「じゃあ逃がしてくれないの?」
ペタもウィリーに近づきながら言った。
「当たり前だ!!」
「ふーん、じゃあ仕方ないね」
ペタはそう言うと銃剣を取り出し、剣先をウィリーの目に近づけた。
「やめ、やめてくれ!分かった分かった!逃がしてやるから物騒なもん向けないでくれ!」
ウィリーが叫んだ。南とペタは武器をしまった。
「それで、何でおいらたちをこんな風にしたんだ?」
クラッシュがウィリーに近づいて言った。
「単純な話さ。あんたたちを眠らせて実験材料にする予定だったんだ!」
「実験・・・だと?」
南が言った。
「そうさ。この街に来た奴を呼んで、飯を食わせ、眠らせ、実験を行う。それが俺たちがやってることさ」
「俺たちってどういうこと?まだ仲間がいるの?」
ペタが言った。
「ああ。この料理を作ったのもそいつだし、実験も元はと言えばそいつがやるためだ。いいか、そいつに見つかる前に仲間を起こして逃げないと、死ぬより恐ろしい目に合うぜ」
「その通りだな。ウィリー・ワンパ・チークス」
突然ウィリーの後ろから声が聞こえた。
「も、もしかして全て聞いてたのですか?」
ウィリーは声を震わしながら言った。
「そうさ。お前は喋りすぎだ。もう少し使える野郎かと思ったが、作って間違いだったようだ。死ね」
その瞬間、部屋に銃声が鳴り響いた。そして、ウィリーは前に倒れこんだ。
そして、声の主が部屋に入って来た。
「・・・マッドサイエンティストが」
南はその正体を見て呟いた。
「団体客だと聞いてたがお前たちだったのか。偶然だ」
「み、南・・・この人誰?」
クラッシュが南に聞いた。
「クリムゾン・アイズ・マッド・サイエンティスト、通称クリムゾン。まぁ、敵には違いない」
南はそう言うと刀を抜いた。
「実験も出来る上に宝石も手に入れることができるとは。一石二鳥とはこのことだな」
クリムゾンはそう言って右手のハンドガンをしまい、代わりにレーザーソードを持った。
「保安官、宝石を持って窓から逃げろ。ペタも逃げてくれ」
南は右手の刀を両手持ちで構えた。
「分かった!行こう、ペタさん!」
クラッシュはそう言うと窓に向かって走り、窓にダイブし、外に出た。ペタもその後を追った。
「宝石はあいつが持ってやがるのか」
「・・・どうせこの街の住民もお前が殺したんだろ?」
「殺したなんて物騒な。ただ実験させてもらっただけだ。ウィリーもその一人だ」
「人体実験とはさすが狂ってやがる」
「狂ってる?俺はただ正式な実験データが欲しいだけさ。それにmマウスにはもう飽きたところだったからな」
クリムゾンはそう言ってレーザーソードを構え、南に向かって突っ込んだ。
「おっと危ない」
南はそれを左に避けた。しかしクリムゾンは南の方を向くことなく窓に向かって走っていった。
「悪いな、今は宝石が優先だ」
クリムゾンはそう言って窓から出て行ってしまった。
「・・・させるか」
南はすぐにその後を追って行った。
クラッシュとペタは夜の街をひたすら走り回っていた。
「これだけ逃げれば追ってこないかな・・・」
クラッシュはそう言ってその場に立ち止まった。
「うーん、でも何かいるよ」
ペタはそう言うと前を指差した。クラッシュもその方向を見た。
暗闇に小さな光が無数に輝いていた。
「・・・まずいかも」
クラッシュはその光の正体が何か分かった。目だ。暗闇の中に大量の犬が溶け込んでいたのだ。どうやらココとザジが見たドーベルマンらしい。
「もしかして、ワンちゃん?」
「多分ね。襲ってこなかったらいいけど・・・」
クラッシュはそう言ってSAAを構えた。ペタも銃剣を構えた。
その時、犬の一匹がクラッシュ向かって飛び掛ってきた。
「うわ!」
クラッシュはとっさにSAAの引き金を引いた。銃弾は犬の頭部に当たり、犬は地面に倒れた。
その瞬間、次々と犬がクラッシュたちに向かって飛び掛ってきた。
「まずい!どうしよう!」
再装填に時間のかかるSAAでは大量の敵相手に立ち回ることが出来ない。
その時、ペタがクラッシュの前に出た。
「こういう時はこうすればいいんだよっと」
ペタがそう言うと、左手を前に突き出した。その瞬間、ペタの前面に光の壁が発生した。それに衝突した犬は次々と吹き飛ばされた。
「な、何これ・・・」
クラッシュはその光景を見て唖然とした。
「シールド展開術。このくらいは出来ないとね。さ、まだまだ来るみたいだよー」
ペタはそう言って銃剣を構え、引き金を引いた。しかし先端部から弾丸は出ない。
「ペタさん・・・不発?」
クラッシュがペタに聞いた。
「ま、見てたらいいよー」
ペタはそう言うと次々と突っ込んでくる犬に刃を当てていった。
ペタ自身全く力を入れておらず、走ってくる犬にただ刃の部分を当てているだけだった。
そのはずなのに犬は次々と真っ二つに切り裂かれていく。クラッシュはただただその光景を口を開けて見ていた。
「な、何で力を入れてないのに切れるの・・・」
クラッシュが呟いた。
「高周波状態にしたから、簡単に切れちゃうんだー」
ペタはそう言って次々と犬の群れを片付けていった。すぐに犬はいなくなり、辺りには犬の亡骸が転がっていた。
「これで終わりっと」
ペタはそう言うと銃剣の血を払い、鞘に戻した。
「俺の可愛いペットをよくも殺してくれたな」
突然クラッシュとペタの後ろから声がした。二人が振り向くと、そこにはクリムゾンが立っていた。
「クリムゾン!ほ、宝石は渡さないからな!」
クラッシュはそう言ってSAAをクリムゾンに向けた。
「あれ、サトリは?もしかしてあなたが倒しちゃったの?じゃあ私たちがあなたを倒さないとね」
ペタはそう言って再び銃剣を構えた。
「南なら今頃迷いに迷っているはずだ。さすがのあいつでも闇の中、こんな入り組んだ街で迷わず俺に着いて来れるわけがない」
クリムゾンはそう言うとレーザーソードを構えた。
「行くぞ!」
クラッシュはそう言うと、SAAの引き金を引いた。しかしクリムゾンはそれを右に避けると、クラッシュに向かって突進した。
「危ないよー」
ペタはさっとクラッシュの前に出て、シールドを展開した。予想外の攻撃にクリムゾンはどうすることもできず、シールドに直撃し、後ろに飛ばされた。
「シールドとは考えてもなかった。お前達は人外ばっかりだな・・・」
クリムゾンはさっと立ち上がり、左手に爆弾を持ち、クラッシュに向かって投げた。クリムゾンはすぐに左手にハンドガンを持った。
そして、クラッシュの頭上当たりでクリムゾンはハンドガンの引き金を引いた。銃弾は爆弾に当たり、大爆発を起こした。
ペタのシールドも爆発には耐えることが出来ず、ペタはシールドを解除した。
その瞬間、再びクリムゾンはペタに向かって突進した。
「慌てない慌てないっと」
ペタは冷静に銃剣を構え、レーザーソードを刃で受けた。ペタとクリムゾンは鍔迫り合いになった。
「レーザーを受けただと・・・!?考えられんぞ・・・」
クリムゾンは予想外な行動を起こし続けるペタに驚いた。
「それ、スライディング!」
二人が鍔迫り合いをしている隙にクラッシュはクリムゾンの横に回りこみ、クリムゾンの足元向かってスライディングをかました。
クリムゾンは即座に鍔迫り合いをやめ、斜め後ろにジャンプした。
その瞬間、ペタは銃剣の剣先をクリムゾンに向け、引き金を引いた。この行動をクリムゾンが読めるわけもなく、銃弾はクリムゾンの胸部にヒットした。クリムゾンは体制が崩れ、地面に背中から落ちた。
「クソ・・・」
クリムゾンは小さな声で呟いた。
「これで終わりだ!」
クラッシュがクリムゾンに向かって走った。そしてクラッシュはSAAをクリムゾンに向けようとした。
「・・・まだ負けたわけではない」
クリムゾンはそう言って横になったままレーザーソードを振り払った。
クラッシュはそれをバックステップで避けたが、その際にオパールがポケットから落ちてしまったのだ。
オパールはまさに地面に落ちようとする寸前だ。
「あ!」
クラッシュは急いでオパールを取ろうとする。クリムゾンもオパールを見ると急いで立ち上がり、手を伸ばした。
その瞬間、クラッシュとクリムゾンの間に物凄いスピードで何かが通り過ぎた。
「何!?」
クラッシュは何が起きたのか分かからなかったが、前を見て驚愕した。何とオパールがないのだ。
驚いたのはクラッシュだけではなかった。クリムゾンもオパールがどこに行ったか分からなかったのだ。
「クソ、宝石はどこだ!?」
クリムゾンは必死になってオパールを探した。
「あれなーに?」
ペタはそう言うと空に向かって指を差した。クラッシュとクリムゾンはその方向を見た。
「上から見てて面白かったぜ、お前たちの戦い」
何と空を飛んでいたのはフレイだった。フレイの右手にはしっかりとオパールが握られていた。
「あ!Vaterだな!」
クラッシュは彼に見覚えがあった。クラッシュは急いでSAAをフレイに構えた。
「クソが・・・宝石をよこせ」
クリムゾンもハンドガンをフレイに向けた。
「嫌なこったい!宝石欲しけりゃここまで来いよーだ!んじゃーな」
フレイはそう言うと物凄いスピードでその場から飛び去った。クラッシュとクリムゾンは何発も銃を撃ったが一発も当たらなかった。
「ふう・・・此処にいやがったか・・・おいクリムゾン、覚悟しやがれ」
後ろからやっと南がやってきた。どうやらさっきの出来事を見てなかったらしい。南は刀を構えた。
クリムゾンは黙ったままハンドガンとレーザーソードをしまった。
「は?何で武器をしまった?」
南はいまいち状況が分からなかった。
「宝石がこの場からなくなった今、お前達と戦う理由もなくなった」
クリムゾンが呟いた。南はその瞬間一体何があったかを読み取った。
「・・・なるほどな」
南はそう言って刀を鞘に収めた。
「お前達の目的もVaterと関係してるのか?」
クリムゾンが言った。
「そうだけど?」
クラッシュが答えた。
「そうか・・・じゃあ今からVaterの本拠地に乗り込むわけだ」
「うん・・・」
「分かった」
クリムゾンはそう言うとクラッシュたちに背中を向けた。
「日が昇ったら街の入り口に来い。いろいろ用意してやる」
クリムゾンは背中を向けたまま言った。
「まさか俺たちと行動する気か?」
南がクリムゾンに聞いた。
「勘違いするな、仲間になったわけじゃない。目的が重なっただけだ。俺は一風呂浴びてくる」
クリムゾンはそう言って闇の中に消えていった。
「・・・本当に信じていいと思う?」
クラッシュが言った。
「いいんじゃないのー。あの人強そうだし、いろいろ知ってるみたいだから」
ペタが軽いノリで言った。
「・・・あいつは自分の目的以外に無駄な殺生はしない。ああ言った以上宝石が手に入るまでは協力してくれるだろうな。じゃ、他の連中の所に行くか」
南はそう言って他の者の所に向かって歩き出した。クラッシュとペタもその後を追った。
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