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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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第八章
2012/05/31(木)21:38:00(12年前) 更新
これより下は本編です
荒野を歩く
荒野を一人の女性が歩く
女は何も分からない
女は何も思い出せない
女はただひたすら歩く
その足が動かなくなるまで、女は歩いた
「やっと来たか・・・」
早朝の街。入り口でクリムゾンはクラッシュたちを待っていた。
薬で眠らされていた者達もすっかり目が覚めており、元気にしていた。
クリムゾンのことを知らなかった者も、クラッシュたちから話を聞いており、ある程度のことは分かっていた。
「クリムゾン、お待たせ」
クラッシュがクリムゾンに近づきながら言った。
「・・・よし、少し待ってろ」
クリムゾンはそう言うとどこかに行ってしまった。
「いかにも胡散臭そうな野郎だ。本当に信用していいのか?」
と、ポトリゲスが言った。
「南が信用していいって言ってるくらいだから大丈夫だと思う」
クラッシュが答えた。
「・・・あいつが何かやらかしても俺のせいにはするなよ」
南が呟いた。
「・・・あ!そうか、あの時の!」
突然クロックが叫んだ。
「どうしたんですか?」
シクラメンがクロックに聞いた。
「そうか、あの時クリムゾンはボクたちの宝石を狙ってたんだ・・・」
「あの時って何のこと?お兄ちゃん?」
ココがクロックに聞いた。
「二日前の夕方に、何か変な人がボクたちの家の前にいたんだよ。それがクリムゾンだったんだ」
「へぇー。じゃあその時からクリムゾンさんはアップルタウンにいたんですね・・・もしかしたら店に来たことあったのかも」
と、シクラメンが言った。
「・・・あれ、何でしょうか・・・」
ザジがある方向を指差した。皆がその方向を見ると、何とこっちに向かってトラックが走ってきていたのだ。
トラックはかなり大型で、後ろにはコンテナを積んでいるタイプのものだ。
トラックの運転席にはクリムゾンが乗っていた。
「トラック・・・!?クリムゾンって奴、あんなもの持ってやがったのか!」
ロックがトラックを見て叫んだ。
「かなり大型だな。科学者な上に大型車両の運転も出来るとは、すごいな」
と、ヘルゼルが呟いた。
クラッシュたちの目の前でトラックは停止した。
そして、トラックの運転席からクリムゾンが降りてきた。
「港町まで歩いて行ったら一日以上はかかるだろう。その間にVaterの邪魔が入る可能性もある。だから今回は俺のトラックでお前たちを運ぶことにする。そうすれば昼過ぎには着くだろうな」
クリムゾンが言った。
「乗り物か・・・酒飲みながらだと悪酔いしそうで怖いな・・・」
リタイラルはそう言うとボトルの酒を少しだけ飲んだ。
「じゃあ飲むなよ」
リタイラルを見たウォーラスが呆れながら言った。
「でさー、もしトラックで移動中にVaterが来たらどうするの?こんな大型車両じゃ振り切れないと思うよー」
と、ペタが言った。
「その問題は解消済みだ。少し待ってろ」
クリムゾンはそう言うとトラックの後ろ側に回り、コンテナの扉を開けると、中に入っていた。
そしてすぐにコンテナの中から激しい轟音が聞こえ出した。
「な、何してるんだろ・・・」
クラッシュはその様子を不安そうに見ていた。
その時、コンテナから鉄の塊が飛び出したかと思えば、物凄いスピードでクラッシュたちに向かってきた。
そして、クラッシュの目の前でそれは停止した。クリムゾンはその鉄の塊にまたがっていた。
「・・・何これ!?」
クラッシュは今までこんなものを見たことがなかった。
「ったく、物を知らない野郎だ・・・バイクも知らないのか?」
クリムゾンはバイクから降りると、クラッシュを見て呆れながら言った。
「凄い・・・ハーレーダビッドソンじゃねーか!エンジンはまさに化け物だな・・・」
ポトリゲスはバイクに釘付けになっていた。
「ポトリゲスが食いつくとは意外だな・・・」
と、南がポトリゲスを見て呟いた。
「バイクは好きだぜ。ポトルーズ時代の時、俺様はバイクを導入したいって言ってたんだけど、あの野郎は結局馬を選んだんだよな・・・」
と、ポトリゲスが言った。
「ハーレーの良さが分かるとは中々だ。さて、今回はこれと同じタイプのバイクを6台用意できた。俺はトラックの運転をするから敵が来たらお前たちはバイクで応戦して欲しい。このバイクは二人乗りまで可能だ。二人でいくもよし、一人で行くもよし。でだ、どうせお前たちはバイクなんて運転したことないんだろ?ここで練習しとけ」
クリムゾンはそう言うとバイクから離れた。
数十分後、全員がバイクの練習を終えた。
やはり短時間で運転をマスターできるものは少なかったが、数人は非常に上手く運転をすることが出来ていた。
「・・・お前が運転が上手いとは意外だな・・・」
クリムゾンはクラッシュを見て言った。クラッシュは意外にもバイクを乗りこなせていたのだ。
「へっへ~ん、おいらだってやるときはやるんだよ」
クラッシュはそのことで完全に調子に乗っていた。
「他に運転を任せれそうなのはクロック、ザジ、ポトリゲス、リタイラル、ウォーラスくらいか。よし、行くぞ」
クリムゾンはそう言ってバイクをコンテナに戻た。
その後にクラッシュたちはコンテナに入って行った。
コンテナの中はそれなりに広かったが、バイクを六台も入れている所に十二人が入るとさすがに狭かった。
「狭いな・・・この中でバイクを動かすなんて出来そうにないぜ」
コンテナの中にあった横広のベンチに座り、ポトリゲスが言った。
「そこは我慢してくれ。ほら、天井の電気をつけてくれ」
と、クリムゾンが言った。ポトリゲスは立ち上がり、天井からぶら下がっていた電球の紐を引っ張った。電球はバチバチ音を立てて光った。
電球は全く明るくなく、コンテナの中ではやっと足元が見れる程度だった。
「じゃ、閉めるぞ。あとこのコンテナは中から開けるにはかなり衝撃をかけないと無理だからな。バイクでぶつかれば開くはずだ」
クリムゾンはそう言ってコンテナの扉を思いっきり閉めた。
「バイクでぶつかれって、乱暴すぎやしないか・・・」
クロックが呟いた。
「これなら俺一人で行動した方が賢かったかもな」
南はガバメントのメンテナンスをしながら言った。
「南、ついでにボクのジェリコのメンテナンスもしてくれない?」
「お前の命を守る道具だ、お前自身で手入れをしろ。そのほうがいい」
南はそう言ってクロックのジェリコのメンテナンスを断った。
「・・・こういうのは上手い人に頼んだほうがいいと思うけどな・・・」
クロックはそう言って自分でジェリコのメンテナンスを始めた。
その時、トラックのエンジンの振動がコンテナ内に伝わり、トラックは動き出した。
「うぇ~、ガタガタ揺れすぎて気分が悪い・・・」
クラッシュは早速乗り物酔いを起こしているようだった。
元々コンテナは人を乗せる所ではないので、乗り心地は最悪だった。振動は直に伝わり、じっと座るのも困難だった。
「筋トレしようと思ってたけど、こりゃ無理だな・・・」
と、ロックが言った。
「早く街について欲しいものだ」
と、ヘルゼルが呟いた。
「港町か・・・漁師の飲んでそうなきっつい酒があるんだろかね・・・」
リタイラルはそう言ってボトルの酒をちびちび飲み始めた。
「お酒っておいしいのー?」
ペタがリタイラルを見て言った。
「僕はこの世で一番旨い物だと思ってる。でも人それぞれだねー。合わない人は本当に合わないし」
「へぇー。私も飲んでみたーい」
「これはダメ、アルコール濃度がかなり高いから少し飲んだだけで倒れるかもしれないよ」
「えー、でも飲みたいな~」
「ダメ」
「ケチ」
「ケチで結構」
リタイラルはそう言って酒をまた飲み始めた。
「・・・飲ませてやれよ。絶対他の奴にあげたくないだけだろ」
その光景を見たウォーラスが呟いた。
「そういえば、ザジさんってどこの出身なんですか?」
シクラメンがザジに聞いた。
「・・・それは教えることは出来ません」
「え?そ、そうですか・・・」
「それにしても暑いですね・・・もう少し薄着になろうかしら」
「やめといたほうがいいんじゃないですか。男の人も多いですし」
「そうそう、クラッシュ兄ちゃん、女性に弱いからそういうの見ちゃうとすぐ鼻血出して倒れちゃうんだよね・・・」
シクラメンとザジの会話に、ココが入ってきた。
「・・・クラッシュさんは相当車に酔ってるみたいですけどね」
シクラメンはクラッシュを見ながら言った。クラッシュは完全にダウンしていた。
「りんごがあれば元気になるんでしょうね」
ザジが呟いた。
「まぁ、りんご馬鹿だし、お兄ちゃん」
ココはそう言うと少し笑った。
「・・・宝石さえ手に入れば、こんな糞ども必要ないんだが、さすがに敵の数が多すぎるからな・・・」
クリムゾンはトラックを運転しながら呟いた。
クリムゾンはクラッシュたちと協力するつもりなどなかった。自らの目的のために使えそうなものは使うだけ、それが彼の考え方だった。
仲間など必要ない、一人の力だけで十分。むしろ集団行動をうっとうしいとも思っていた。
「・・・ん?」
クリムゾンの乗るトラックからかなり離れた所、真正面に何かが見える。
クリムゾンはトラックのスピードを落としながらゆっくりと近づいた。
「人・・・か?」
地面の上に女性が倒れていた。赤い髪の毛で、背中にはバズーカのようなものを背負っていた。
いつもの彼なら恐らく何もせずに通り過ぎていただろう。だが、彼の記憶の中に妙な引っ掛かりが生じたのだ。
クリムゾンはトラックを止め、運転席から降りると、女性に近づいた。
そして、女性の左手を持つと、女性の手首に指を当てた。
「・・・脈はまだあるな。おい、大丈夫か?」
女性は完全に気を失っていた。恐らく熱中症だろう。
「放っておくのも良くないな。仕方がない」
クリムゾンはそう言うとコンテナに行き、扉を開けた。
「どうしたんだ、いきなり止まって」
すぐにポトリゲスが扉の所まで来た。
「人が倒れていてな、見逃すわけにもいかないだろ?少し来てくれ」
クリムゾンはそう言って再び女性の所に行った。ポトリゲスもその後について行った。
「こりゃ完全に暑さにやられたみたいだな。クリムゾン、冷やすものあるか?」
「水くらいしかないが」
「十分だ。まずはコンテナに運ぶぞ」
ポトリゲスはそう言って女性を抱え、コンテナに向かって歩き出した。
コンテナの中に入ると、少し広いスペースで女性を降ろした。
後ろからクリムゾンが水を持ってやって来た。
「お、サンキュー」
ポトリゲスはそう言うと、クリムゾンから水入りのボトルを受け取り、ポケットからハンカチを取り出し、水でぬらすと女性の額に置いた。
「荒野を備えなしで歩くとは、向こう見ずな奴だ」
南が女性を見て言った。
「バズーカを持ってるところを見ると、戦いに身を置いてる人物みたいだ」
と、クロックが言った。
「おぇー、おいらにも水分けて・・・」
クラッシュはそう言うとポトリゲスから無理やりボトルを奪い、ごくごくと飲みだした。
「あ、お兄ちゃん!もう、バカ!」
ココはクラッシュを怒鳴りつけると、頭を軽く叩き、ボトルを取り返した。
「う、ううん・・・」
突然女性が声を上げた。
「気がついたか?」
ポトリゲスはそう言ってハンカチを持ち、女性の額の汗を拭いた。
「ここは・・・どこ・・・?」
「少なくともお前にとって悪い場所ではない」
「あたい・・・うっ」
女性は起き上がろうとしたが、頭が急に痛み、再び横になった。
「無理はするな。今はじっとしとけ」
と、南が言った。
「とりあえず、名前、教えてくれよ」
ロックが女性に聞いた。
「名前・・・名前・・・頭が・・・」
女性は必死になって名前を思い出そうとしていた。しかし頭の痛さで中々思い出せない。
「・・・悪い、無理させちまったみたいだな」
と、ロックが言った。
しばらくコンテナ内に沈黙が流れたが、急にザンナーという名の女性が声を発した。
「・・・そう、ザンナー。ザンナー・ブリッツ。あたいの名前はザンナー」
「ザンナーさん、ですか」
と、クラッシュが言った。
ザンナーはゆっくりと体を起こした。
「とにかく、助けてくれてありがとう。例を言うわ」
「・・・何故荒野で倒れていたか教えてくれないか?」
と、ヘルゼルが言った。
「・・・ダメ、思い出せない。何で思い出せないの・・・」
ザンナーはそう言って頭を抱え込んだ。
「こりゃ記憶障害って奴かな・・・」
と、リタイラルが呟いた。
「ザンナーさん、何も思い出せないんですか?名前を覚えていたなら、他にも覚えていそうですけど・・・」
と、シクラメンが言った。
「・・・本当に何も分からない。どうして・・・」
「ひとつひとつ、思い出せることから思い出してみましょう」
と、ザジが言った。
「・・・そうだ、あたいは戦いをしていた・・・でも何故?何の理由で戦っていた?そこは思い出せそうにもない・・・」
「思い出せないなら思い出さなくていいじゃん。思い出したことが悪いことだったら嫌だと思う。それに、いつかきっと思い出せる」
と、ペタが言った。
「・・・何だ」
突然クリムゾンはそう言うと、外を指差した。
「ん・・・何か来てるな」
ポトリゲスはその方向を見て言った。
「・・・トラックです。全部で12台確認。オープン型の荷台で上には何名かの人が乗っています。全員武器を持っています。あと胸部にVaterの文字も読み取れることから恐らくVaterかと」
ザジは脅威の視力で向こうから来るトラックを見て、言った。
「クソ、作戦通りに動いてくれ。俺は運転席に回る」
クリムゾンはそう言うと急いでコンテナから降り、運転席へと行った。
そしてすぐにトラックのエンジンがかかり、トラックはゆっくりと動き出した。
「何?何が起こってるの?」
と、ザンナーが言った。
「ザンナーさんは此処に残っていてください。よしみんな、行こう!」
クラッシュはそう言うとバイクの一つにまたがった。クロック、ポトリゲス、ザジ、リタイラル、ウォーラスもバイクに乗った。
「シクラメンちゃん、おいらの後ろにでも・・・」
「クロックさん、後ろいいですか?」
シクラメンはクラッシュの言葉を無視し、クロックの乗っているバイクの後ろに乗った。
「シクラメン、いいのか?危険だと思うけど」
と、クロックが言った。
「私だって戦えますから!それに・・・いえ、なんでも」
「よし、じゃあボクたちが先に行く」
クロックはそう言ってバイクのエンジンをかけた。
そして、一気にスピードを上げるとバイクはコンテナから飛び出していった。
「・・・じゃあ他においらの後ろにも誰か乗る?」
クラッシュはそう言うとバイクのエンジンをかけ、いつでも走れるようにした。
「俺が乗るぜ。そうだ、ザンナーさんはフェアーの面倒見ててくれないか」
ロックはそう言うとフェアーをザンナーに渡した。フェアーはおとなしいままでザンナーの腕の中に入った。フェアーはザンナーの腕で眠りだした。
「可愛いワニさん。フフッ、この子のことはまかしといて」
「おう、頼むぜ!」
ロックはそう言ってクラッシュの乗るバイクの後ろに乗った。
「よし、行くぞぉ!」
クラッシュはそう言ってバイクのアクセルを全開にした。バイクは一気にスピードを上げ、コンテナから飛び出していった。
「よし、じゃあ次は俺様が行くぜ。誰か乗るか?」
ポトリゲスはそう言ってバイクのエンジンをかけた。
「私が乗るー」
ペタがそう言ってポトリゲスの後ろに乗った。
「保安官から話は聞いたぜ。すげぇ能力持ってるらしいな」
「別に凄くないよ~。それより運転お願いねっ」
「まかしとけ。レディのエスコートは得意だ」
ポトリゲスはそう言うとバイクのスピードを一気に上げ、外に飛び出していった。
「次は私ですね」
と、ザジが言った。
「あたしが後ろに乗る!」
そう言ってココがザジの後ろに乗った。
「運転の安全は保障します。戦闘面は・・・」
「まかしといて!いい加減体を動かしとかないとね!」
「お元気そうで何より。では、出発します」
ザジはそう言ってバイクのエンジンをかけ、スピードを上げ、コンテナから飛び出していった。
「次は俺が行こうか」
と、ウォーラスが言った。
「では私が後ろに乗ろう」
ヘルゼルはそう言うとウォーラスの後ろに乗った。
「で、俺はどこまで運転したらいいんだ?」
「トラックの近くまで寄せてもらえると幸いだ」
「オーケー。じゃ、出発進行」
ウォーラスはそう言ってバイクで外に飛び出していった。
「最後は僕たちだね。出発の一杯っと」
リタイラルはそう言うと酒を飲みだした。
「・・・信じられん。運転前だぞ」
と、南は呆れながら言った。
「むしろアルコール入ってなかったら運転もフラフラになるからね。ささ、早く乗った」
「・・・一気にトラックまで近づけ。後はどうにかする」
南はそう言って後ろに乗った。
リタイラルはバイクのエンジンをかけ、一気にスピードを上げ、コンテナから飛び出していった。
「・・・何故だろう、彼等が危険な行為を行おうとしているのに、ワクワクしている自分が此処にいるのは・・・」
ザンナーは小さな声で呟いた。
まず最初にクロックとシクラメンの乗ったバイクが相手のトラックに物凄いスピードで近づいていった。
「シクラメン、どうやって戦うつもりなんだ?」
「トラックに飛び移ろうかと・・・」
「かなり危険だと思うけど、いいのか?」
「覚悟は出来ています。荷台の敵を片付け次第また戻ってきてもらえたら十分です」
「了解っと。じゃ、シクラメンを降ろした後は他のトラックを潰しにかかることにするか」
クロックはそう言うとバイクのスピードを更に上げ、どんどんトラックに近づいた。
「さすがにこのまま向かっても飛び乗れそうにないな・・・だからといってUターンも危険だが・・・」
「このまま向かってください。一瞬の隙に飛び移ります」
このまま正面から近づき、トラックの横につけても、乗り移れるチャンスは一瞬。かなり危険な賭けである。
クロックは一台のトラック向かって一気に突っ込んでいった。
そして、トラックの運転席を超え、荷台の部分とバイクとが一瞬平行になった。飛び乗るなら今しかない。
「今だ!」
クロックが叫んだ。
「はっ!」
シクラメンはバイクから荷台に向かってジャンプした。地面に落ちたら終わりだ。
シクラメンは荷台になんとかしがみつくことが出来た。シクラメンは急いで荷台に上がった。荷台の上には敵が三人乗っていた。
「さ、覚悟しなさい!」
いきなりの登場に驚く敵たちをよそ目に、シクラメンはポケットからフラワー・スピアを取り出した。
慌てて敵の一人がナイフを取り出すと、シクラメンに向かってじりじりとやってきた。
不安定な場所での戦いだ。バランスを崩せば地面に落ちかねない。
敵の一人がシクラメンに向かってナイフを突き出してきた。
シクラメンはそれをしゃがんで避けると、敵の脇腹にフラワー・スピアを刺した。
しばらくするとその敵はふらふらと倒れた。
「さぁ、どんどんかかってきなさい!」
シクラメンはフラワー・スピアを降り回してけん制した。
敵の一人は今度は銃でシクラメンを狙った。シクラメンは一気に敵の間合いをつめると、フラワー・スピアで突き刺した。敵はその場に倒れこんだ。
もう一人がシクラメンに向かってナイフを突き刺そうとしたが、シクラメンはその手を右に避け、フラワー・スピアで足をなぎ払った。
敵は思いっきりバランスを崩し、荷台の外に落ちていった。
「あとは運転手をどうにかしないと・・・でもここからじゃどうしようも出来ない・・・」
シクラメンはいかに運転手を倒すかを考えていた。
一方クロックは、他のトラックに向かってバイクを走らせていた。
「マグナム弾に入れ替えといて良かった・・・」
クロックはそう言って左手にジェリコを持つと、バイクを走らせたまま片手で構えた。
そして、運転手向かって引き金を引いた。
銃弾はトラックの前面ガラスを突き破ると、運転手の頭部に見事ヒットした。
運転手は前に倒れこんだ。そのことによりトラックはその場に急停車した。恐らく運転手の足がブレーキを踏んだのだろう。
荷台に乗っていた敵は前に思いっきり吹っ飛ばされた。
「ふう、あとはシクラメンを迎えに行くか」
クロックは今度はシクラメンの乗るトラックに進路を向けた。
シクラメンはまだ荷台の上にいた。
「あ、クロックさん!」
シクラメンはクロックのほうを見て言った。
「そうか・・・シクラメンの装備じゃ運転手は倒せないな」
クロックはそう言ってバイクをトラックの運転席とは逆側の扉の横につけた。
その瞬間、クロックはバイクから運転席と逆側の扉に飛び移った。
そして、ガラスを殴って突き破ると、運転手の横の席に入った。
「ボクもトラックの運転したいな・・・ハハ」
クロックはそう言うと運転手を思いっきり蹴り飛ばした。運転手は扉から落ちていってしまった。
「これでよしっと」
クロックは運転席に座ると、トラックのスピードを緩めた。トラックはゆっくりとその場に止まった。
クロックは運転席から降りた。
「シクラメン、大丈夫か?」
クロックはそう言って荷台の上のシクラメンに手を伸ばした。
「私は大丈夫ですけど・・・無茶しすぎですよ」
シクラメンはそう言ってクロックの手を掴み、荷台から降りた。
「あーあ、あのバイク高そうだったけど、どうしようか・・・」
クロックは遠くで煙を上げているバイクを見ながら言った。さすがに乱暴に扱いすぎて壊れてしまったらしい。
「でも、クロックさんが無事なだけ良かったです・・・」
「そう言ってくれるとうれしいな。じゃ、クリムゾンへの言い訳を考えつつトラックで他の敵を倒しに行くか」
クロックはそう言ってトラックの運転席に乗り込んだ。シクラメンも助手席に乗った。
「ロック、トラックの横につけるよ!」
「オッケー!後はまかせとけってんだ!」
クラッシュとロックの乗ったバイクは一台のトラックと並走状態で走っていた。
クラッシュは左手にSAAを持つと、荷台から銃を撃って来る五人の敵の一人に向けて銃弾を撃ち放った。
一発の銃弾は敵の一人の頭に見事ヒットし、その敵は荷台から転落した。
そのことに他の敵も困惑。一瞬の隙が出来た。
その瞬間、クラッシュは一気にトラックとの差を詰めた。
そして、ロックはバイクからトラックの荷台に上手く飛び移った。
「閉所でストレスがたまっててな、お前らぶっ飛ばして発散してやるぜ」
ロックはそう言って敵の一人に右ストレートを繰り出した。
右手の拳は思いっきり敵の腹部に当たり、敵は荷台の外にぶっ飛ばされていった。
いそいでもう一人の敵がナイフを構えて突っ込んできたがロックはナイフを持った手を掴むと、思いっきり振り回した。
振り回された敵の体に当たったもう二人の敵は荷台の外に飛んでいった。
「おりゃー!さあ、どこまで飛ぶかなー!?」
ロックはそう叫ぶと振り回していた敵を更に勢いよく振り回し、手を離した。
敵は物凄い勢いで空の彼方に飛んでいった。
「ふぅ。結構飛んだな。さて、あとは運転手をぶちのめさないとな」
ロックはそう言うと荷台の左側にぶら下がると、前に向かって伝って行った。
そして、運転席の横の窓までやってくると、右手で窓を突き破り、運転手の胸倉を掴んだ。
「席を譲っておくれよっと!」
ロックはそう言って窓から運転手を引きずり出すと、投げ捨てた。
その後、ロックは窓から中に入り、運転席に座った。
「よし、あとはクラッシュをサポートしてやろう」
ロックはそう言ってトラックのハンドルを握った。
一方、クラッシュのほうはもう一台のトラックに追いかけられていた。
「まずい・・・弾切れだ~!」
何とクラッシュの持つSAAの弾が切れてしまったのだ。SAAの仕様上片手でリロードは不可能に近い。だからといって両手でリロードなど出来るわけもない。
クラッシュはどうすることも出来なく、ただバイクを走らせていた。その後ろから物凄いスピードでトラックが迫ってくる。まさに絶体絶命のピンチだ。
その時、一台のトラックがクラッシュを追いかけていたトラックの横目掛けて思いっきり突っ込んできた。
二台のトラックは大クラッシュ。突っ込まれたトラックは横転した。そのことにより荷台の敵は全員吹き飛ばされ、運転手も恐らく息はなかった。
クラッシュはバイクを止め、トラックの方を見た。
「た、助かったよ・・・ロックさん」
何と突っ込んできたトラックに乗っていたのはロックだったのだ。ロックはトラックから降り、クラッシュに近づいた。
「トラックの運転くらいなら俺にも出来るしな。じゃ、またバイクの運転頼むぜ」
ロックはそう言うとクラッシュの後ろに乗った。
「任せて!・・・って言いたいけどちょっと待ってよ」
クラッシュはそう言ってSAAのりロードを行った。そして、再びバイクのハンドルを握った。
「よし、行っくぞ~!」
クラッシュはそう言ってバイクを走らせた。
ポトリゲスとペタの乗ったバイクもまたトラックに向かって走っていた。
二人の前にいるトラックの荷台には固定式の機関銃が設置されており、容易に近づくことは出来なさそうだ。
「機関銃なんかで狙われたらさすがにやばくねぇか・・・?」
「私に任せてー」
ペタがそう言った瞬間、バイクの前に光の壁が発生した。
「もしかしてこれが、例の特殊能力か・・・?」
ポトリゲスは何が起こったのかあまり理解できていなかった。
「多分これで大丈夫だと思うから、一気にトラックまで走ってー。そしたら私が適当に相手するから~」
「お、おう・・・」
ポトリゲスはとりあえずバイクのスピードを上げ、トラックに向かって行った。
トラックの機関銃から無数の銃弾が飛んできた。しかし、バリアは簡単にそれを弾き飛ばして行った。
「すげぇなこりゃ・・・怖いものなしだぜ」
ポトリゲスはそう言ってバイクを走らせた。そして、トラックとバイクが一瞬すれ違った。
その瞬間、ペタは空高く舞い揚がると、トラックの荷台に見事に着地した。
敵が戦闘体制に入る隙もなく、ペタは銃剣を構え、凄まじい速さで敵を切り裂いていった。
そして、機関銃の銃座に座っていた敵の頭に剣先を向け、銃弾をぶち込んだ。
「運転手さんは、こうしちゃえ」
ペタはそう言って銃剣の引き金を引き、高周波状態にした。
そして運転席の真後ろから銃剣を突き刺した。高周波状態の刃はトラックの鋼鉄などお構いなしだった。
運転手は即死。そのことによりトラックが暴走を始めた。
「あれー?前に崖があるよ。このまま行ったら落ちちゃうかもね~」
何とトラックの前には奈落の底に続く崖があったのだ。トラックはどんどんと前に進む。
「よっと」
ペタはさっとトラックの荷台から飛び降り、受身を取った。高速で走るトラックから落ちたはずなのにペタはほとんど傷を負っていなかった。
トラックはそのまま前進し、奈落の底へと落ちていった。
「さすがに少し疲れちゃったなー」
ペタはその場に座り込んだ。
その一方で、ポトリゲスはシカゴタイプライターを右手に持ってバイクを走らせていた。
「チッ、さすがにシカゴ片手撃ちはきっついぜ」
ポトリゲスはそう言って、右手側を走るトラックの燃料タンク目掛けて銃弾を撃ち込んでいた。しかし照準がブレブレで中々当たらない。
元々シカゴタイプライターは反動が強い上に重たいため、片手撃ちには全く適していない代物だ。
「これなら蠍を持って来たら良かったぜ・・・やっぱり銃は二丁仕込んどくもんだな・・・」
ポトリゲスはそう言いながら飛んでくる銃弾を華麗なバイクの運転で避けていった。
「オラオラオラ!下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってか!?」
ポトリゲスは完全にヤケになってシカゴタイプライターを乱射した。
そして遂に数発の銃弾が燃料タンクに当たった。燃料タンクから炎が上がり出す。
「やったか?じゃ、俺様はここらでおさらばだ!」
ポトリゲスはそう言うとバイクをトラックから遠ざけた。
その瞬間、トラックが大爆発を起こした。
「よし、あとはペタを拾うだけだな・・・」
ポトリゲスはそう言ってバイクを走らせた。
ペタは崖付近でぼーっとしていた。。
「おーい、迎えに来たぜ」
ポトリゲスはペタの目の前でバイクを止めた。
「やっと来たー。遅~い」
「悪い悪い。さ、出発だ」
「もう疲れたから戦いたくないよー」
「そうも言ってられないぜ。早く乗れ」
「はーい」
ペタはそう言ってバイクの後ろに乗った。
「じゃ、出発だ」
ポトリゲスはそう言ってバイクを走らせた。
ザジとココの乗ったバイクはトラックの後ろを走っていた。
ザジはトラックの荷台の上から飛んで来る銃弾を左右に避けながらバイクを走らせた。
「ココさん、一体どうやって戦うつもりで?」
「トラックに乗り込もうかなー、なんて思ってる」
「危険な賭けですね・・・横につけますから、そこから乗り込んでください」
「え、できればもう少し安全なほうがいいかもね・・・アハハ」
「・・・仕方がないですね」
ザジはそう言うとバイクのスピードを一気に上げた。
「いいですか、目を瞑ったまま私の左手を掴んでいてください。目を開けていいって言うまで絶対に目を閉じていてください」
「え?わ、分かった・・・」
ココはそう言ってザジの左手を掴むと、目を閉じた。
「目撃者は敵のみ。でもそろそろ私の秘密を言ってもいい頃かもしれないですね・・・」
ザジはそう言うとバイクのアクセルをオンにしたままココを抱きかかえ、バイクからジャンプした。
その瞬間、ザジの背中から大きな白い翼が生え、大空で羽ばたいた。
その光景を見た敵たちは驚愕し、つい銃撃をやめてしまった。
ザジはココを抱えたままトラックの荷台に飛んでいくと、ゆっくりと着陸した。
そして、ココの足を地面に降ろすと、ココの耳元で呟いた。
「もう目を開けていいですよ、戦闘面は自分でどうにかしてください」
ザジはそう言うとその場から急いで飛び立ち、無人状態で走るバイクにまたがった。
ココは目を開けた。そこには口を開けて突っ立ている敵が三人いた。ザジはすでに遠くまで走って行っていた。
「え、いつの間に移動したの・・・?って、とにかくあんたたち覚悟しなさい!」
ココはそう言って構えた。敵も慌てて手にナイフを握り締めた。
敵の一人がココに向かってナイフを突き出してきたが、ココはその手を蹴り飛ばした。
ナイフは遠くに飛んで行ってしまい、敵は手を押さえた。ココはその瞬間敵のこめかみ目掛けハイキックをかました。足は見事ヒットし、敵は思いっきり場外に吹っ飛ばされた。
他の敵二人がまたナイフを持って突っ込んできたが、ココはそれをしゃがんで避けると、足払いをした。
敵二人はバランスを崩して倒れてしまい、そこにココは敵の一人の腹部を蹴り上げた。敵は荷台の外に落ちていった。
そして、ココは敵のナイフを持つと、立ち上がろうとする敵に馬乗りになり、ナイフを敵の首に突きつけた。
「命が惜しいなら、どうにかしてトラックを止めてよ、ねぇ?」
敵は恐怖で顔が青褪めたまま、ポケットから無線機を取り出した。
「ト、トラックを止めてくれ!早くしてくれー!」
敵が無線機に向かって叫んだ。
そして、トラックはゆっくりとスピードを落としていった。
「あ、本当に止めてくれたんだ。ありがとう!」
ココはそう言うとナイフを捨て、敵の上半身にストンピングをした。
その衝撃で敵は気絶した。
その時、運転手が荷台で何が起こっているか確認するため、荷台の近くにやってきた。
「最後はあなただけね」
ココはそう言うと敵の方向向かって荷台から飛び降りながら、とび蹴りをかました。
攻撃は勢いよく敵の上半身に当たり、ジャンプによる威力も重なって敵は思いっきり後ろに吹き飛ばされ、気絶した。
「これでよしっと。あとはザジさんのサポート行かないとね」
ココはそう言うとトラックの運転席に乗り込み、エンジンをかけた。
「敵はマシンガン持ちが二人、ロケットランチャー持ちが一人、か・・・」
一方、ザジはそう呟きながら一台のトラックを追いかけていた。
ザジは左手にワルサーを持つと、マシンガン持ちの敵に対し、引き金を引いた。
弾丸は見事敵の一人の額にヒット。敵は倒れた。
「このまま倒して行きたいところですが・・・無理そうですね」
ザジが呟いた。
何と敵の一人がロケットランチャーを発射したのだ。
ロケット弾は誘導型のようで、ザジは大きく右に進路を取ったが、ロケット弾はバイクを追いかけてくる。
「・・・また翼をお見せしなければならないようで」
ザジはそう呟くと、背中に再び大きな翼を生やし、大空に舞い上がった。
ロケット弾はバイクに直撃、大爆発を生じた。
ザジは空から素早くワルサーを二発撃った。二発の銃弾は敵二人に当たった。
「運転手もこのまま始末しましょうか」
ザジはそう言うと物凄いスピードでトラックを追いかけた。
そして、一瞬でトラックの前まで到達した。
トラックの運転手はいきなりザジが目の前に現れたことに驚き、とっさにハンドルを右に大きく回した。
「死の直前に天使が見れるって、ある意味光栄ですね・・・」
小さな声でザジは呟くと、ワルサーの引き金を引いた。
運転手の頭部に弾丸は命中し、トラックは横に大きく転倒した。
ザジは地面にゆっくりと降り、翼をしまった。
「できれば無益な殺生はしたくないのですが、これも正義の為・・・」
ザジは小さな声で呟いた。
その時、ココの乗ったトラックがザジの近くで停車した。
「ザジさん、大丈夫?」
「私は別に。ココさんのほうもうまくいかれたようで」
「ええ、なんとかね。それより早く乗って。バイク壊れちゃったんでしょ?」
「・・・はい。では、今度は運転お任せします」
ザジはそう言うと助手席に乗り込んだ。
「さぁ、行くわよー!」
ココはそう言ってトラックのアクセルを踏んだ。
ウォーラスとヘルゼルの乗ったバイクは一台のトラックと並走していた。
トラックとバイクの間はかなり空いており、さすがにそこからジャンプで乗り込むのは不可能だ。
「ウォーラス、これ以上近づけないか?さすがに此処からだと乗り込めそうにないが」
「そんな時にこいつが役に立つんだよ」
ウォーラスはそう言うと左手に巨大な水中銃を持った。
そして、左側を走るトラック向けて水中銃の引き金を引いた。
銃口から巨大な槍が飛び出し、トラックの鉄の壁をたやすく貫いた。槍の後ろからはロープが伸びており、それは水中銃とつながっていた。
「ほらよ、準備完了だ」
「・・・まさか私にこれを伝って行けと?」
「そうだけど?だってこれ以上近づいたら蜂の巣にされちまうだろ」
「仕方がない」
ヘルゼルはそう言うとさっとロープの上に乗った。
脅威のバランス感覚で細いロープの上をヘルゼルは素早く走っていった。
敵が撃って来る銃弾を、ヘルゼルはヌンチャクを振り回すことではじき返していった。
「あまり私を見縊らないほうがいいぞ」
ヘルゼルはそう言うと一気に荷台まで駆け寄り、着地した。
そして、ヌンチャクを素早く振り回し、敵を次々と吹き飛ばしていった。
「お、荷台の敵を倒してくれたみたいだな」
ウォーラスはそう言うと水中銃のロープを切り、新しい槍を装填した。
そして、一気にトラックとの距離を縮めると、今度は運転席に向かって水中銃を撃った。
槍は運転席に突き刺さり、運転手を真横から貫いた。
「ヘルゼル、飛び移れ!」
「分かった」
ヘルゼルはそう言ってバイクに向かって飛び降りた。そして、ウォーラスの後ろに座った。
その瞬間、トラックが転倒した。
「凄い威力の銃だな・・・」
「鯨や鮫に比べりゃ、トラックなんて大したことねーしな。よし、行くぞ」
ウォーラスとヘルゼルの乗ったバイクは再びスピードを上げて走り出した。
リタイラルと南の乗ったバイクは一台のトラックを追いかけていた。
しかし、リタイラルは酒を飲んでいただけあって、かなりおぼつかない運転だった。
「・・・だから飲酒運転はやめろと」
南は呆れながら言った。
「フッフッフ、実はもう一杯酒を飲んでいたらもっと華麗な運転が出来ていたのさ!」
「・・・とりあえず黙れ。ほら、とっとと横につけろ」
「分かってるから少し黙っていてよ!」
リタイラルはそう言うとバイクのスピードをどんどん上げた。
敵は何発も銃を撃ってくるが、ふらふら運転のバイクには奇跡的に当たらなかった。
そして、一瞬バイクとトラックの差が縮まった。
その瞬間、南はバイクからトラックの荷台に飛び移った。リタイラルの乗ったバイクはどこかに行った。
「斬撃か貫通、どっちが好みだ?ま、お前等に選ぶ権利はないけどな」
南はそう言うと刀を構えた。
敵は南に向かって銃を撃ったが、南はそれをいとも簡単に切り落としていった。
「ん、その程度か?じゃあ次俺の攻撃の番な」
南はそう言うと刀を一瞬で横になぎ払いつつ敵の横をすり抜けた。
そして、荷台の敵全員が腹を押さえながらその場に倒れていった。
「・・・雑魚が。あとは運転手だけだな」
南はそう言うと刀を鞘に納め、前に向かって走り出した。そして、トラックの一番前まで来ると、斜め左に向かって思いっきりダイビングジャンプをした。
逆さまに落下中、南は右手にガバメントを持つと、運転席に向かって引き金を引いた。
銃弾は見事運転手の頭部に命中。運転手はフロントガラスにもたれかかった。
そのことによりトラックはバランスを崩し、転倒した。
南は体勢を立て直し、奇麗に着地した。
「あの酒飲み、どこに行きやがった・・・」
南は辺りを見回しながら言った。
「あのトラック辺りが狙いやすそうだ!」
一方で、リタイラルは一台のトラックを追いかけていた。
「待て待てー!僕の散弾を食らえー!」
リタイラルは左手にM1887を持つと、一気にバイクのスピードを上げた。
バイクとトラックが並んだ瞬間、リタイラルはM1887をトラックに向けて撃った。
散弾は数人にヒットしたが、距離が少し遠かったのかまだ倒れていない者もいた。
リタイラルはM1887を回転させ、再び撃った。
今度は全ての荷台の敵が倒れた。
「トラックはこうしてやろう」
リタイラルはそう言うとM1887をしまい、肩に担いでいたバズーカを構えた。
「食らえー!!!!」
リタイラルはそう言うとバズーカの引き金を引いた。
バズーカ弾はトラックに命中。その瞬間トラックは大爆発を起こした。
リタイラルは炎に飲み込まれていくトラックを見ながらバイクを止めた。
「ふぅ、対人用でも何とかなったか・・・よしよし」
リタイラルはそう言ってバズーカをしまうと、ボトルを手に持ち、酒を飲み始めた。
「・・・まだ飲むか、お前」
突然リタイラルの後ろから声がした。リタイラルは驚いて後ろを振り返った。そこには南が立っていた。
「あ、今から迎えに行こうと思っていたのに、自分の足で来ちゃったのか」
「お前一人じゃ心配だったが、案外武器持ってたんだな」
「まあね。で、もう見た感じトラックはいないみたいだけど?」
「・・・でももう12台も倒したのか?まぁ、ぱっと見敵はいないな・・・」
南とリタイラルは、他のメンバーが何台のトラックを倒したかまでは把握できていなかった。
クロックとシクラメンのペア、クラッシュとロックのペア、ザジとココのペア、南とリタイラルのペアは各2台ずつ。そして、ヘルゼルとウォーラスのペアは1台、合計11台倒したことになる。
そう、後1台トラックを倒していないのだ。しかし荒野を見回しても敵のトラックは1台もいない。はるか彼方にクリムゾンとザンナーの乗ったトラックが走っているくらいだ。
ここであることに南は気づいた。
「・・・囮か」
「え?」
「敵は俺たちの戦力を分散させるためにあえて多数のトラックで攻めてきた。そして戦力の少なくなった俺たちのトラックを叩く。そんな戦法なんだろう」
「でも何でトラックだけを襲う必要があったんだろ?てか僕たちごと一気に襲っても良かったんじゃないの?」
「・・・クリムゾンのみを倒したかった、が恐らく一番の理由だろう。恐らくVaterが宝石を奪った後、俺たちとクリムゾンが手を組んだことも盗み聞きしてたんだろう。敵にとってはクリムゾンの存在は脅威なんだろうな」
「なるほどねー・・・ってじゃあ早く助けに行かないとまずいんじゃない?」
「だな。クリムゾンはともかくザンナーを危険に晒すわけにはいかない。よしリタイラル、バイクを出せ」
南はそう言ってバイクの後ろに乗った。
「オッケー!!」
リタイラルはそう言うとバイクを走らせた。
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