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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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第十章
2012/05/31(木)21:54:33(12年前) 更新
これより下は本編です
荒野を二台のトラックが走っていた。どちらもオープンタイプの荷台だ。
一台目のトラックはウォーラスが運転しており、助手席にはココ、荷台には四台のバイク、そしてロック、ヘルゼルが乗っていた。
もう片方のトラックは一台目より少し大きめで、運転席にはクリムゾン、助手席には南、そして荷台にはクラッシュ、クロック、ポトリゲス、リタイラル、ザジ、ザンナー、シクラメン、ペタ、そしてディンゴが乗っていた。
「それでディンゴ、できれば知ってること全てを話して」
クラッシュはディンゴに向かって言った。
「ああ。結論から言うと、俺っち達は洗脳されたんだ」
「洗脳だって?あいつ等そんな方法とってたんだ・・・」
と、クロックが言った。
「そうさ。二日前のアップルタウンで、俺っち、タイニー、リラ・ルーはVaterの一人、フレイという鷹の男に敗れた」
「鷹の男って、宝石盗んだ人のことかなー?」
と、ペタが言った。
「ああ、同一人物だ。そして、あいつは何かの機械を使って洗脳を施した。それで俺っちとリラ・ルーはVaterと共に行動。タイニーはアップルタウンでてめぇ等の相手をしたって訳だ。タイニーは大丈夫なのか?」
「タイニーさんは心配要りません。今もきっとアップルタウンにいるかと」
と、ザジが言った。
「そりゃ良かった。で、洗脳は解けてたのか?」
「話した感じでは普通みたいでしたけど・・・」
と、シクラメンが言った。
「なら大丈夫だな。それで、俺っちも今はこうやって洗脳が解けてる訳だが、どうやらその洗脳装置、あまり性能がよくないらしくて簡単な衝撃で以前の記憶がバックしてくるらしい。実際俺っちも爆発に巻き込まれて記憶が戻ったからな」
「そりゃ単純だね。アルコールみたいな作用だ」
リタイラルはそう言いながら酒を飲んだ。
「アルコールとはちと違うけどな。それで、まだリラ・ルーは洗脳状態らしいし、クランチを始めとする住民も捕らわれの身って訳だ」
「なるほどな。それより、Vaterについて他に何か分かることはあるか?」
と、ポトリゲスが言った。
「実を言うとよぉ、俺っちの記憶が戻ることもある程度予測されたみたいであまり詳しい事情は聞かされてないんだわ。でもこれだけは聞いたぜ。奴等の本拠地は今向かっている港町から船に乗り、進んだ先にある孤島らしいんだ」
「船・・・船?そうだ、あたいも船に乗っていた」
突然ザンナーが喋りだした。
「ザンナーさん?」
と、クラッシュが言った。
「そう、あたいは船でこの土地に来たんだ!・・・でも何故かしら。何故ここに来る必要があったのかしら・・・」
ザンナーはそう言って頭を抱えた。
「少しずつ思い出せてきてるじゃん!この調子だと絶対に思い出せるよ!」
と、クラッシュが言った。
「思い出せたらいいけど・・・」
ザンナーが呟いた。
「まだ着かないのかよ、クリムゾン」
「急かすな。もうすぐだから」
トラックの運転席と助手席ではクリムゾンと南が話をしていた。
「・・・お、新聞じゃねーか」
南はそう言うと助手席の前の棚に入っていた新聞を取り出し、読み始めた。
「何々・・・オーストラリア南部の海域で、フェリー沈没。行方不明者多数・・・へぇー、そんなことあったんだな」
「そのニュースか・・・だったら五日前のやつか」
「お前このニュース知ってるのか?」
「・・・まぁな」
クリムゾンは何かを隠しているかのように言った。
「俺の前で隠し事しても無駄だってことくらい知ってるだろ?ま、とりあえず自分の口で言えよ」
南は既にクリムゾンの心を読んでいたのだ。彼には何と心の内を読み取る能力があるのだ。
「そうだったな、忘れてた。じゃあ言うぞ。その事件、犯人は俺だ」
と、クリムゾンが言った。
「・・・何故こんなことをした?理由なしにこんな面倒なことする訳ないよな?」
「単純な話、宝石狙いの競争相手を減らすためだ。大多数がただのオパール狙いだったみたいだがな」
「お前にしちゃ、しょうもない事件を起こしたもんだ」
「まぁな。ちょっとした手違いで、Vaterが乗っていた船と間違えてな。それよりも、ザンナーのことについてだが・・・」
「・・・」
ザンナーという名前を聞いた瞬間、南は急に黙り込んだ。
「・・・そうか、やはり全て読めていたか」
「過去に流すべき記憶も存在する。今は記憶が戻らないことを祈るだけだ」
と、南は小さな声で呟いた。
「そろそろ町が見えてきたか・・・?」
トラックの荷台からヘルゼルは前を見ながら言った。
「マジか?」
ロックはそう言って前を見た。
「・・・ロック、一ついいか?」
「どうした、ヘルゼル」
「私達はこのまま戦い続けていいのか?」
「いきなりそんな質問されてもな・・・」
「ある者は住民救出のため、ある者は宝石を奪い返すため。皆様々な目的を持っている。だが私は何も目的を持っていない。それはロック、あなたも同じではないのか?」
「悪を叩きのめす、正義の役に立てる。それができれば後はどうでもいいんだよ。善人が泣いて悪人が喜ぶ世界なんて、誰が住みたいんだ?」
「・・・ロック」
その時、トラックが停車した。遂に港町に着いたのだ。
「よし、到着したぜ。降りていいぞ」
ウォーラスがそう言いながら運転席から降りてきた。
「ふぅ・・・やっと町に着いたね」
ココはそう言って助手席から降りた。
「私達も降りるか」
「だな」
ヘルゼルとロックも荷台から飛び降りた。
そして、すぐ後にクラッシュたちの乗ったトラックも到着、次々とトラックから降りた。
「久しぶりに帰ってきたな・・・懐かしいぜ」
ウォーラスは港町の入り口を見て言った。
「よし、まずは作戦会議をしよう。ウォーラス、どこかに団体で集まれる場所ない?」
クラッシュはウォーラスに近づいて言った。
「そうだなー。よし、俺について来い」
ウォーラスはそう言うと町に向かって歩き出した。他の者達もウォーラスを追って歩き出した。
この町は海に近いこともあって漁業が盛ん。いたるところで魚市場が開かれており、道の両脇に並ぶ店には新鮮な魚が置かれていた。
また、レジャー業も発達しており、砂浜には水着姿の男女が戯れていた。
「そうか、もう十二月だったんだな」
ポトリゲスは砂浜の方角を見ながら言った。今のオーストラリアは十二月の始め。まさに夏真っ盛りだ。そして道にはクリスマスツリーも置かれているという南半球独特の光景が広がっていた。
「クリスマスかー・・・今年こそは絶対に・・・!」
と、シクラメンが言った。
「恋人作り?応援してるよ」
クロックがシクラメンに対して言った。
「え!?が、頑張りますよ!私!」
シクラメンは顔を赤らめながら言った。シクラメンは恋愛感情とは全く無関係のクロックの口からそんな言葉が出るとは思いもしなかった。
「そうそうこの町だよ、僕が寄ったのは」
と、リタイラルは周りを見渡しながら言った。
「そうだったんだ。まぁ、此処くらいしかまともな町もないしな」
ロックがリタイラルに向かって言った。
「私自身、あまり暑い所は好きではないな・・・とは言ってもこの時期のオーストラリアはどこも暑いけど」
と、ヘルゼルが呟いた。
「あら、悪魔は暑い所がお嫌いなようで。私と同じとは思いもしませんでした」
ザジがヘルゼルに向かって言った。
「何故そこまで悪魔にこだわる?」
「悪魔は妬み嫌われる存在。この世に存在すること自体が罪なのですよ」
「・・・いい加減にしてくれ。私は悪魔だが悪魔は嫌いなんだ」
「前から言おうとしてましたけど、ただの同族嫌悪ですよね。所詮は悪魔、表の世界にしゃしゃり出てこないでください」
「・・・言いすぎだ」
南はそう言って二人の会話に割り込んできた。
「南さん・・・私のいうことに何か間違いでも?」
ザジが南に言った。
「悪魔だろうと何だろうと関係ないことだ。結局一番大事なのはそいつ自身の心だ。ヘルゼルは悪を嫌っている。それだけでいいじゃねぇか。な?」
南はそう言うとヘルゼルのほうを見た。
「そうだ、私は悪を嫌っている」
「・・・悪魔と妖怪。同じ悪同士仲良くやってください」
ザジはそう言うと二人のそばから離れた。
「何なんだあの人は・・・」
と、ヘルゼルが言った。
「まぁ、気にすんなよ。結構いい奴だし、あいつ」
と、南が言った。
「人の生まれをとやかく言うのがいい人とは思えないが・・・」
「事実を言われただけじゃねぇか。そんなこと気にしてたら体が持たないぜ」
南はそう言ってヘルゼルから離れて行った。
「海だー、奇麗だー、でも入りたくないー」
ペタは相変らず呑気そうに海を見ながらそう言っていた。
「呑気な野郎だ。緊張感なんて一切ないんだろうな」
クリムゾンはペタを見ながら言った。
「緊張?こんな時まで緊張しないといけないの?」
ペタはクリムゾンのほうを見て言った。
「別にそういうことではない。ただお前はいつも能天気だからな」
「こう見えて色々勉強してるんだよー。すいへいりーべぼくのふね!さいん、こさいん、たんじぇんと!ね、すごい?」
「・・・こっちまで馬鹿になりそうだ」
クリムゾンはそう言って自分の頭を押さえた。
「・・・見覚えのある場所・・・」
と、ザンナーは辺りを見ながら言った。
「本当?もしかしたらこの町に来たことがあるのかも」
と、クラッシュは言った。
「そうかもね。確証はないけど」
「ザンナーさんって、過去に何をやっていたかも思い出せないの?」
「うーん。このバズーカが使えるってことは恐らく戦う仕事をしてたと思う」
ザンナーは背中に背負っているバズーカを指で指しながら言った。
「なるほど・・・それ以外には?」
「・・・無理、思い出せない。あたいって悪い職業についていたから記憶を消されたとかなのかな・・・」
「悪い職業か・・・ザンナーさんって人もよさそうだからそんな仕事してなかったと思うよ」
「フフ、そう言ってもらえるとうれしい」
ザンナーはそう言うと少し微笑んだ。クラッシュもザンナーの顔を見て少し笑った。
今まで辛い戦闘続きだったクラッシュにとって、ザンナーの笑顔はちょっとした癒しにもなった。
記憶を失い、右も左も分からない彼女を守ってあげたい。クラッシュはそうも感じるのであった。
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