人見ています。 |
クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
|
- TOP
- >
- リボルバー
- >
- クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
- >
- 第十一章
もみみ(4年前)
バート・ラマー(5年前)
2199(6年前)
2199ノークラ(6年前)
クラットン2(6年前)
ココバンディクー(7年前)
水無月ニトロ(7年前)
RITAL(8年前)
イエクラ(8年前)
asRiche3j8bh(8年前)
テトラピアノ(8年前)
asRichp4zuit(8年前)
オリキャラ短編集協会(8年前)
asRichg3gtwn(8年前)
わいるどた~ぼ(8年前)
asRichajohom(8年前)
ショートケーキ(8年前)
asRichw7ffmu(8年前)
スティックス・ザ・バジャー(8年前)
asRichqi316v(8年前)
asRichct3qjk(8年前)
リボルバー(9年前)
ぽぴゅらあ(9年前)
りんごっち(9年前)
sasuke(10年前)
回転撃(10年前)
ルイカメ(10年前)
ヴァイオレット(10年前)
えぞももんが(/・ω・)/(10年前)
隼人 (10年前)
まんじねーしょん(10年前)
CURA(10年前)
ハートオブハート(11年前)
フレイム(11年前)
ゲーマー(11年前)
クラットン(11年前)
ひろき(11年前)
ひろき(11年前)
HIROKI(11年前)
GGGGGGGGG(11年前)
IA・N(11年前)
かめちき(11年前)
霧雨(11年前)
てんし(11年前)
昇太/神馬当瑠(12年前)
風のクロノア(12年前)
オリキャララジオ放送社(12年前)
ここなっつココ(12年前)
いお太(12年前)
テクノしん(12年前)
リレー小説委員会(12年前)
ここなっつ(12年前)
気まぐれCocoちゃん(12年前)
たクラッシュ(12年前)
ダークネス(12年前)
早川昇吾(12年前)
しんごwww(12年前)
サム(12年前)
クランチバンディクー(12年前)
闇っぽいけど闇じゃない。永遠の炎の神様メフィレス(12年前)
イエクラ.com(12年前)
イエクラ@山手(12年前)
回転撃(12年前)
第十一章
2012/05/31(木)22:10:49(12年前) 更新
これより下は本編です
「よし、ここだ」
ウォーラスはそう言って足を止めた。
一行が着いた先は、人通りの少ない船着場だった。港には何席もの漁船が泊まっていた。
ウォーラスは、船着場の近くにあったボロ小屋の扉を開けた。
「ここは俺が漁の道具とかを置いてた小屋だ。ま、実際は漁師仲間と馬鹿騒ぎするために建てたんだけどな。この人数くらいなら入ると思うぜ」
ウォーラスはそう言って小屋の中に入った。他の者達も次々と小屋の中に入った。
小屋の中には鉄のさびた匂いと、潮の香りの混じった何ともいえない香りが漂っていた。おそらく長い間使っていなかったのだろう。
「・・・くさ」
ココはそう言って鼻を押さえた。どうやらこの類の匂いが嫌いなようだ。
「ぼろそうに見えてかなり頑丈に作られてるな。ウォーラスの性格が出てやがるぜ」
ディンゴは小屋の中を見回しながら言った。
「こう見えて几帳面だからな、俺。ハッハッハ!」
「あんまり調子に乗るなよってんだ!ハッハ!」
ディンゴはそう言ってウォーラスの肩に手を回した。ウォーラスも肩を組んだ。
「盛り上がってるとこ悪いけど、とりあえず作戦会議しよう」
クラッシュは二人に向かって言った。
「わりいわりい、椅子はあると思うから適当に座ってくれよ」
と、ウォーラスは言った。
皆は言われたとおりに、机を取り囲むようにして座った。
「よし、それじゃ現状の確認からいこう」
と、クラッシュが言った。
「じゃ、ボクが説明しよう」
クロックはそう言うと、現在の状況確認を始めた。
「まずは敵について。現在、ボクたちの敵はVaterと呼ばれる犯罪組織。Vaterの一番の目的は宝石を盗み出すこと。それは既に達成済み。だから現在の奴等の目的はボクたちを倒すことだろう」
「Vaterの中でも主犯格は三人。恐らくまだ年齢は低いニーナという女性。空を飛ぶことが出来るフレイという鷹の男性。そして謎の鼬の男性ってところか?俺様が見た感じその三人が厄介だと思うが」
と、ポトリゲスが言った。
「ニーナとフレイは基本的に一緒に行動している。もう一人はあまり知らないな。俺が戦った感じじゃ、決して強くはなかったが、それなりに頭はいいらしい」
と、クリムゾンが言った。
「Vaterはまだまだ人員は豊富。この調子じゃまだまだいそうだな。だが一人一人の戦力は高くない、むしろ低いな。はっきり言って俺たちの敵ではないぜ」
と、ロックが言った。
「Vaterの話はそんなもんでいいだろうな。次は俺たちの話だ。俺達の目的、一人一人によってかなり違うんじゃないのか?」
と、南が言った。
「確かに、中には同じ仲間だと思っていない者もいるしな」
と、ヘルゼルが言った。
「でも、皆の敵は同じだから、気にすることじゃないよ。問題ないって」
と、リタイラルが言った。
「もし裏切り者が出たら・・・その者に死あるのみ。その時は容赦なしで」
と、ザジが言った。
「みんな裏切りなんてしないと思うけど・・・私は皆さんのこと、信じてますから」
と、シクラメンが言った。
「ねー、とりあえず今からの動きの確認しようよー」
と、ペタが言った。
「確かに作戦は重要だしね。リーダーお願い」
と、ザンナーが言った。
「分かった。そうだウォーラス、この近海の地図ってない?」
と、クラッシュが言った。
「多分あると思うぜ。待ってろ」
ウォーラスはそう言うと立ち上がり、ガラクタに埋もれた地図を取り出し、机の上に広げた。
「サンキュー。それで、この町はここかな?」
クラッシュは、現在地点を指で差した。
「ディンゴ、Vaterの本拠地がどの島か分かる?」
と、クラッシュが言った。
「この付近の島って、このくらいしかねぇか?」
ディンゴは、町から南に500マイル進んだ場所にある孤島を指差した。
「500マイルかぁ・・・最初は小型漁船二隻で大丈夫かと思ったが、仕方ねぇ、あいつを使うか」
と、ウォーラスが言った。
「ウォーラスさん、どうするつもり?」
と、ココが言った。
「ダチと一緒に使ってた捕鯨船をまた動かす時が来た。こりゃ胸騒ぎがするぜ!」
何とウォーラスは捕鯨船でVater本拠地に乗り込もうと企んでいたのだ。
「そ、そんなもの動かせるの!?」
クラッシュは驚きながら言った。
「免許は持ってるし、実際船長やってたこともあるから大丈夫さ。そいつを使えば一日くらいで着くと思うぜ」
「じゃあ、船はそれでオッケーだね。後はまぁ、現地で考えるようにしよう。ウォーラス、出発はどのくらいで出来そう?」
「うーん、準備とか色々しねぇといけないから・・・夜七時には出せると思うぜ」
「そうか・・・それで、今何時?」
「ちょっと待ってくれよ」
ウォーラスはそう言ってポケットから懐中時計を取り出した。
「今は、昼の一時くらいか?」
「分かった。よしみんな、今から自由時間だ。物資の補給をしてもいいし、飯を食いに行ってもいいし、遊んでてもいい。七時までにこの小屋に集合、分かった?じゃあ、解散!」
クラッシュがそう言った後、皆は立ち上がった。
「あの・・・ココさん」
「何?ザジさん」
「暑いですね」
「そだね。まあ夏だしね」
「・・・泳ぎません?」
「え?」
「ほら、砂浜とかあったし、泳ぎましょうよ」
「あたしはいいけど・・・シクラメンは?」
「私ですか?水着持ってないし・・・さすがにこの服で泳ぐのは・・・それより、ザジさんは水着持ってきてるんですか?」
「まぁ、この服の下に着てるのは水着ですし」
「み、水着だって!?」
ザジ、ココ、シクラメン三人の会話を聞いていたクラッシュは、水着という言葉に反応した。
「もう、お兄ちゃんまたやらしいこと考えてたでしょ!」
ココはクラッシュに向かって怒鳴りながら言った。
「そ、そんなわけないじゃん!いや、ザジさんとかスタイルよくないのに、水着とか着るんだなー、って思って。ああいうのって、スタイルいい子がつけてこそいいもんじゃん」
「・・・失礼にもほどがあります、エロネズミ」
ザジは怒り気味にそう言った。ザジのスタイルははっきり言っていいわけではない。彼女も多少のコンプレックスを抱いていたのだろう。
「エ、エロネズミは言い過ぎだよ・・・」
クラッシュはザジの一言が心に思いっきり突き刺さった。
「こんなアホ兄ちゃんほっといて行こう!」
「ですね」
ココとザジは砂浜に向かって歩きだした。
「確かに、ザジさんちょっと言いすぎですよねー」
シクラメンはクラッシュに向かって言った。
「シ、シクラメンちゃん・・・」
「でも、女の子に向かってスタイルがよくないみたいなことを言うクラッシュさんはもっと悪い」
「や、やっぱり・・・」
「じゃあ、私も行きますからね」
シクラメンはそう言ってココとザジを追って歩いて行った。
一方、クロック、ポトリゲス、ペタの三人はレストランにいた。
別に行く所もやることもない三人で飯を食おうということになったのだ。
「クロック、注文どうするよ」
「ボクはじゃあパスタでも頼もうかな」
「分かった。んじゃ、ペタは?」
「ピザ~」
「じゃ、俺様もピザにするか。おーい」
ポトリゲスはそう言って店員を呼ぶと、パスタ一人前とピザ二人前、そして適当なドリンクを注文した。
「何か、まったりしてるよね」
と、クロックが言った。
「息抜きも必要さ。それに今日は朝から何も食ってないしな」
「恐らくこれからは激戦が繰り広げられるんだろうけど」
「だな。飯食い終わったら銃のメンテなりでもして時間潰すか」
「え~。もっといろんな所見に行ってみようよ~」
と、ペタが言った。
「なんか見たいものでもあるのか?」
「別にないけど、ひまじゃんかー」
「確かにひまだけど、そう言ってられるのも今のうちだぜ。お、料理が着たぞ」
その時、店員が料理を運んできた。一通りの料理が置かれた後、三人は料理に手をつけた。
「ボクも町を散歩したいな」
クロックはフォークでパスタをグルグル巻きながら言った。
「クロックもかよ。じゃあ二人で行って来たらいいんじゃね?俺様は疲れた」
ポトリゲスはピザを手に持ちながら言った。
「クロック~、どこ行くー?」
ペタは既にクロックとどこかに行く気になっていた。
「そうだな・・・そこら辺の店巡りとかでよくないか?」
「賛成ー。じゃ、ご飯食べ終わったらポトリゲスとは別行動だねー」
数分後、食事を終え、勘定を済ました三人はレストランの前にいた。
「んじゃ、デートでも楽しんでこいよ」
ポトリゲスは二人を冷やかしながら言ったが、恋愛感情など無に等しいクロックと、マイペース過ぎるペタには何の効果もなかった。
「じゃあまたな」
「ばーいばーい」
二人はそう言って他の店の方に歩いていった。
「・・・恋愛という言葉が全く似合わないのってあいつ等以外にいないんじゃないのか?」
ポトリゲスはそう呟いた後、葉巻を口に銜えると、ジッポで火をつけた。
「・・・ほう、中々いいもん揃ってるな」
クリムゾンは魚屋で魚を見ていた。
彼はウォーラスにある事を頼まれていたのだ。
話は遡り、クリムゾンが小屋から出た所。
「クリムゾン、ちょっといいか?」
ウォーラスはそう言ってクリムゾンを呼んだ。
「何か用か?」
クリムゾンはそう言ってウォーラスに近づいた。
「あんたって料理上手いんだよな?街で食った飯、相当の出来だったぜ」
「確かに人並みには出来るが」
「よし来た。あんたに頼みがある。夕食の材料を買ってきて欲しいんだ。俺は今から船の点検しなきゃならねぇから」
「・・・」
「ダメか?」
「いいだろう。だが、料理も俺にやらせろ。お前には一切手伝わせない」
「おお、さすが一流コック!まかせたぜ!」
ウォーラスはそう言ってその場を後にした。
話は戻り、再び魚屋前。
クリムゾンは店に置かれているロブスターを見ていた。
「中々のロブスターだ。おい、ちょっとこっちにきてくれ」
クリムゾンは店員を呼んだ。
「このロブスター、詳しいことを教えてくれ」
と、クリムゾンは言った。
「お、兄ちゃん若いのにこいつに興味を持つとはいい目してるねぇ。このロブスターたち、今日獲れたての新鮮ピチピチ!しかも平均体重五キロ!どうだ!?」
店員は威勢良く言った。
「・・・一尾いくらだ?」
「何と40ドル!出血大サービスだよ!これ以上下げたらおっちゃん生活できないよ!」
「40ドルか・・・実は15人分買わないといけなくてな。それだと600ドルになる訳だ。さすがに高すぎだろ?もう少し下げてくれないか?」
クリムゾンは値下げの交渉に踏み切った。
「そんな大人数でパーティーかい!・・・でも値下げはできないな!」
「そうか・・・」
クリムゾンは呟くと、近くに置かれた牡蠣を指差した。
「この牡蠣の値段は?」
「そいつか?一杯1ドルだな!どうだ、凄く安いだろ!?」
「なるほど・・・これでどうだ?もしロブスター一尾を40から35ドルにしてくれたら、牡蠣を50杯買うことにしよう。だが、値下げしないなら牡蠣は買わない」
「むむむ・・・そう来たか・・・」
「新鮮な魚介類は取れたその日に売り払うべきものだ。この調子だと、その牡蠣は少し売れ残りそうだが、それでもいいなら値下げはしなくていい」
「・・・よし分かった!兄ちゃんの勝ちだ!ロブスター15尾と牡蠣50杯、合計575ドルだ!」
クリムゾンはポケットから財布を取り出すと、575ドルを店員に渡した。
店員はそのお金を受け取り、ポケットにしまうと、奥から氷の入った発泡スチロールを大量に運んできた。そして、大量のロブスターと牡蠣を詰め込むと、手押し台車の上に乗せ、ロープで縛った。
「この発泡スチロールと台車はサービスだ!」
「悪いな、そこまでしてもらって」
クリムゾンはそう言うと台車を押し始めた。
「また来てくれよ!」
店員はクリムゾンの後姿に向かって言った。
クリムゾンはその後も様々な店を回り、いろんな食材を購入した。
一通り買い物が終わったあと、クリムゾンは小屋に戻っていった。
海沿いの砂浜。まさに海水浴にうってつけの場所。
そこでは既にザジとココが楽しそうに泳いでいた。シクラメンは泳がずに、波打ち際で二人のことをニコニコしながら見ていた。
「向こうのブイまで競争だー!」
「その勝負、私がもらいましたよ」
ココとザジは少し遠くにあるブイに向かって泳ぎだした。両者とも泳ぎは中々の腕だったが、ザジのほうがやや優勢だった。
そして、ザジの手がブイについた。
「私の勝ち、ですね」
一足遅れてココがブイをタッチした。
「あ~、悔しい!!よし、今度は砂浜まで競争!」
ココはそう言うと今度は砂浜に向かって泳ぎだした。
「あ、フライングはずるいですよ」
ザジは急いでその後を泳いでいった。
「フフ、二人とも楽しそう」
シクラメンは小さな声で呟いた。
「どうした、泳がないのか?」
突然シクラメンの後ろから声が聞こえた。シクラメンは後ろを振り返った。そこにはポトリゲスが立っていた。
「ポトリゲスさんですか。私、水着もってなくて・・・」
「そうなのか。シクラメンの水着姿、俺様も拝みたかったんだけどな」
「もう、やめてくださいよ!」
「悪い悪い、つい本音が、な?」
ポトリゲスはそう言ってシクラメンの横に座った。
「・・・シクラメン、どう思う?」
「え?何ですか?」
「マスターのことさ。まだ生きてると思うか?」
「絶対にクランチさんは生きてます!絶対・・・」
「だよな。そう思わないとやってられないよな。だが、こういう可能性もある。洗脳されて、俺様達の前に出てくるっていうな」
「せ、洗脳!?そうか・・・可能性は十分にありますね・・・」
「でだ、もしそんな事態になった時、俺様達は全力を挙げてマスターの洗脳を解くつもりだ。だが、もし無理なときは・・・」
「・・・そんなこと考えたくもない」
「・・・悪いな、暗い話にしちまって」
二人の間に少しの沈黙が流れた。
「・・・あ、そういえばポトリゲスさん、クロックさんと一緒にいたんじゃ?」
しばらくして、シクラメンが口を開いた。
「そうだけど、クロックはペタとデート中だぜ」
「デデデデデデデデデート!?!?!?!?」
シクラメンは、ポトリゲスから飛び出したデートという言葉に動揺した。
「まぁ、俺様が冷やかしで言っただけなんだけどな。今頃そこらで買い物でもしてるんじゃねーの?」
「そ、そうですか・・・ホッ」
シクラメンは溜息をついた。
「別にそこまで驚くことじゃねぇと思うんだけどな・・・もしかして、クロックのことが・・・」
「い、いや、なんでもないですから、ね、ね!?クロックさんのことが好きなんてこと・・・あ!!!!」
「おいおい、自分から言ってるじゃねーか」
「う、うぅ・・・」
シクラメンは顔を真っ赤にし、うつむいた。遂に自分の心情がばれてしまった。一体ポトリゲスに何て言われるのか不安になった。しかし、ポトリゲスの口から飛び出したのは意外と普通の言葉だった。
「あいつ恋心とか一切ないからな、気づいてもらうの相当難しいぜ」
「そ、そうですよね・・・クロックさん本当に鈍いし・・・」
「でも、あいつだって男だ。女が嫌いな男なんていない訳がない。いつか気づいてくれるさ」
「ほ、本当ですか!」
「シクラメン位いい女に猛アタックされたら普通どんな男だって落ちるさ。あいつが例外中の例外なだけ」
「でも、どれだけ頑張ってもクロックさん、私のことあんまり気にしてないみたいで・・・」
「俺様がクロックに伝えてやってもいいぜ」
「いや、それはちょっと・・・やっぱり自分だけの力でなんとかしたいし」
「そうか。まぁ、そうだよな。じゃ、俺様は陰から応援してるぜ。それじゃ、俺様はそろそろ行くぜ」
ポトリゲスはそう言うと立ち上がり、その場を後にした。
「ポトリゲスさん・・・初めて会った時は少し怖い方かと思ってたけど、意外と優しいんだ・・・」
と、シクラメンは呟いた。
砂浜から離れた場所、海岸付近でロックとヘルゼルはウォーラスから借りた釣具で釣りをしていた。
二人もウォーラスから食材の捕獲を任されていたのだ。
「・・・」
「・・・」
ロックとヘルゼルは黙ったままウキを睨んでいた。しかしウキはピクリとも動かない。
「だぁー!!俺はじっとしていたくないんだよ!」
嫌気がさしたのか、遂にロックが叫んだ。
「どうやら魚がいないみたいだな・・・」
ヘルゼルはそう言って、釣り糸を巻き上げた。
「ヘルゼル、後は任せた。俺はそろそろ筋トレの時間だ」
ロックはそう言うとうつ伏せになり、腕立て伏せを始めた。
「食材確保しないと、夕食が抜きかもしれないぞ」
「だって、クリムゾンの野郎が買い物行ってるんだろ?俺たちが食材持って帰る必要ないって!」
「クリムゾンも魚は買っていないかもしれない」
ヘルゼルはそう言って再び釣り糸をたらした。
ちなみに、クリムゾンは二人が釣りをしていることなんて全く知らない。
「・・・」
ヘルゼルは再び海面との睨めっこを始めた。
その時、ウキがピクッと動いた。
「・・・来た!」
ヘルゼルは釣竿をグッと上げ、糸を巻き始めた。
「おお、ヘルゼルやるじゃねぇか!」
ロックは腕立て伏せをやめ、釣り糸を見た。
釣り糸は順調に巻かれていく。だがその時、釣り糸に物凄い衝撃がかかった。
「な、何だ!?」
ヘルゼルは必死でリールを回すが、逆に糸はどんどん出て行く。
「ヘルゼル、どうした!?」
「まさか、他の魚が食いついたのか・・・?」
「ど、どういうことだ?」
「えさに一匹の魚が食いつく。それにもっと大きな魚が食いつくという、まさに漫画みたいな話だが・・・これは凄い大物だぞ」
「マジかよ・・・!」
ヘルゼルは巨大な魚と必死に戦った。その時、はるか沖の彼方で一匹の魚がジャンプをした。
「鮫だ・・・!」
そう、その魚の正体は鮫だったのだ。体長5メートルはありそうだ。
「鮫とかすげぇな!ヘルゼル、早く釣り上げようぜ!」
「そうは言っても、釣り上げた際に危険じゃないか・・・」
ヘルゼルはそう言いながらもリールを巻き続けた。
ヘルゼルと鮫との凄まじい戦い。いかに糸を切らずに釣れるかどうか。
糸を切ってしまったらそこで終わりである。その微妙な加減をヘルゼルは必死に守りつつ、リールを巻き取った。
その戦いは何分にもおよび、遂に勝敗が下った。
「こ、ここまで来れば大丈夫のはずだ・・・」
鮫は既に疲れ果てていた。ヘルゼルは最後の力を振り絞り、鮫を海面から持ち上げ、陸に置いた。
「す、凄い迫力だな・・・」
ロックは鮫を見ながら言った。
「・・・さて、これからどうしようか」
と、ヘルゼルは呟いた。
「どうするって、もって帰ったらいいんじゃないのか?」
「鮫なんて食べることが出来るのか?鮫の刺身なんて聞いたことないが」
「何で生で食うんだよ。そんなもん煮りゃ食えるに決まってるだろ?」
「私も少しは勉強していてね、鮫っていうのはアンモニア臭が強くて身はとても食することが出来ないらしい」
「でもフカヒレとかあるんだし、ウォーラスとかなら何とかしてくれるって」
「だといいが・・・それでは、運ぶとするか」
ヘルゼルとロックは、既に息のない巨大な鮫を運び出した。非常に重かったが、何とか持ち上げることが出来た。
「中々いい品揃えしてるな。観光街の癖してしっかりしてやがる」
南は人通りの少ない場所に立つガンショップにいた。
「俺のガバメントも新しく改造しておきたいんだけど・・・いいパーツが多くて迷っちまうな。威力増強、連射力向上、散弾発射。それ以外の改造は・・・これとかどうだ?」
南はそう言って、ハンドガンにも装着可能なスコープを手に取った。
「倍率はスナイパーライフル並みか・・・ハンドガンで狙撃なんて誰がするんだよ」
南は一人でそんなツッコミを入れた後にスコープを元に戻した。
「・・・いいこと思いついたぜ。せっかくハンドガン3丁もあるんだし、こういう改造もいいかもな」
南はそう言うと店員を呼ぶと、様々なパーツを購入した。
「そうだ、ついでに改造もしていっていいか?色々工具がある場所の方がやりやすいし」
南がそう言うと、店員は頭を縦に振った。
「お、ありがてぇ」
南はそう言って奥の工房に入り、ハンドガンの改造を始めた。
数時間後、改造の終わった銃を見て南はニヤニヤした。
「フッ、我ながらいいものが出来上がったぜ。あいつ等これを見たら腰を抜かすだろうな」
南はそう言ってガバメント3丁をしまうと、店を後にした。
リタイラルは、街のバーのカウンターで酒を飲んでいた。
「このカクテル、いい味してるねぇー!もう一杯!」
リタイラルは相変らず物凄いペースで酒を飲んでいた。
その時、バーの扉が開き、一人の男が入ってきた。しかしリタイラルはそんなことを気にせず酒を飲み続けた。
男はリタイラルの横の席に座った。
「・・・ウィスキー水割り」
男は店員に向かって注文をした。リタイラルはその声を聞いて顔を上げた。
どこかで聞いた声だ。リタイラルは男の方を見た。
「カ、カタパルト兄ちゃん!?」
リタイラルは男の顔を見て驚いた。何とそこには双子の兄であるカタパルトが座っていたのだ。
「・・・リタイラル、久しぶりだな」
「久しぶりじゃないよ!僕がどれだけ心配したか知ってるの!?」
「・・・最後に会ったのは一年前だったか。心配させてすまなかった」
「でも、会えて良かった・・・本当に良かった」
「・・・御前、ここで何やってるんだ?」
「僕?僕これから悪をぶちのめしに行くんだ!仲間と一緒にね!」
「・・・悪って誰のことだ?」
「Vaterっていう犯罪組織だよ!もう超ワルな奴らなんだ!」
「そうか・・・」
カタパルトはそう言って少し黙った。
やはりリタイラルはVaterと戦うつもりだ。このままでは俺とリタイラルは絶対に敵同士戦わなくてはならないだろう。それだけは絶対に避けたい、とカタパルトは思った。
「ん?どうしたの?」
「・・・兄弟の身としては、御前を危険に晒したくない」
「・・・もしかして、僕が死ぬとでも?大丈夫!僕自身強くなったし、他の皆もとっても強いんだから!」
「どうしても、行くのか?」
「もちろん!そうだ、カタパルトも一緒に来たらいいじゃん!二人がいれば怖いものなんて・・・」
「黙れ!」
カタパルトはいきなり大声を上げた。そのことにリタイラルはびっくりした。
「・・・え?」
「Vaterがどれだけ危険な組織か知っているのか?少なくとも御前が勝てるような相手じゃない。それは仲間が何人いても同じだ。御前、そんな生きるか死ぬかの戦いなのに、あたかも遊びに行くかのように言いやがって・・・」
「遊びだって!?僕はこれでも本気なんだ!」
「本気?本気な奴がこんな場所で呑気に酒なんか飲む訳ないだろ。いいか、御前は絶対にその戦いに行くな」
「・・・カタパルト、いい加減僕を子ども扱いしないでくれよ」
「子ども扱い?俺はただ御前のことが心配で言っているだけだ」
「カタパルトはいっつもこうだよ!双子なのにお兄ちゃん面してさ!いい?これは僕が決めたことなんだ。だからカタパルトに何言われても絶対行くから!」
「・・・そうか、そこまで言うなら仕方ない。だがそうと決めた以上、何が起こってもその道を突き通せよ」
「もちろん!」
「・・・じゃあ、この酒を飲んだら俺は行くからな」
カタパルトはそう言ってウィスキーを飲み干した。
「カタパルト、これからどうするの?」
「・・・仕事だ」
「何の仕事?」
「・・・それは言えないな」
カタパルトはそう言うとポケットからお金を取り出し、カウンターの上におくと立ち上がった。
「言えないって、どういうこと?」
「いずれ分かる」
カタパルトはそう言ってバーを後にした。
「・・・いずれってどういうこと・・・・?」
リタイラルはカタパルトの言葉に疑問を持ちながら、酒を飲んだ。
クラッシュとザンナーは、二人で海を見ていた。
「奇麗な海ね・・・」
と、ザンナーは呟いた。
「そうだね」
と、クラッシュは言った。
「・・・あのさ、あたい、思うんだ」
「ん、何?」
「もう、記憶戻らなくてもいいのかもって」
「え、何で?」
「もし記憶が戻ってさ、皆と離れないといけないのって、少し寂しいじゃん」
「記憶が戻っても一緒にいたらいいと思うけど?」
「もしかしたらそうはできない気がする・・・もしかしたらだけど」
「え?」
「・・・ううん、なんでもない」
ザンナーはそう言うと、クラッシュのほうを見た。
クラッシュは海を見ている。しかしその顔はどこか暗い。何かを悩んでいるようだった。
「クラッシュ、何か悩み事でもあるんじゃない?」
「・・・考えてみれば、今まで上手くいきすぎだと思うんだ」
「もしかして、戦闘のこと?」
「そう。今までは誰一人として負傷者を出すことはなかった。でも、これからはどうなるかは分からない」
「うーん、でもみんな実力は物凄いじゃん。あれだけのトラック部隊に勝てたんだし」
「・・・恐らく今のメンバーの中で一番弱いのは、おいらだと思うんだ。これからの戦いで、おいらのせいで負傷者が出るのが怖くて・・・」
「・・・その口調から察するに、過去にそんな出来事があったのね」
「・・・うん。一年ほど前、おいら達の住む町のリーダーは、おいらの不注意のせいで、敵にやられて死んじゃったんだ」
「へぇー・・・」
「あの時素直においらが撃たれて、リーダーが生きていたら良かったのかもって思うんだ」
「それは間違ってる。確かにそのリーダーをなくしたのは惜しいことだと思う。でもリーダーの犠牲があってクラッシュが生きているんだから、リーダーの分までしっかり生きれば、それで十分なんだよ」
「・・・うん、ありがとう。ちょっと元気出たよ」
太陽の光は徐々に水平線に吸い込まれていく。もうすぐ七時だ。
クラッシュとザンナーは小屋へと戻っていった。
小屋には既に全員が戻ってきていた。
小屋の中ではヘルゼルの釣り上げた鮫の話題で盛り上がっていた。
そこに、ウォーラスがやってきた。
「よし、準備完了だ!俺について来い!」
ウォーラスはそう言って小屋から出た。みんなもそれについていった。
しばらく歩いた所で、ウォーラスが足を止めた。
皆の目の前の海に、巨大な船が一隻泊まっていた。
「こいつが大型捕鯨船、その名も“レオパルド一世”だ!この船の船長は俺、そして副船長にはディンゴについてもらうことにした」
「俺っちにまかせとけって!」
「さ、全員早く乗り込んでくれよ。個室の割り当てなんかは中で決めちまうから」
ウォーラスはそう言って先に船に乗り込んだ。他の者達も次々と乗り込んで行った。
7622