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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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第十六章・1
2012/06/02(土)00:32:51(12年前) 更新
これより下は本編です
クラッシュたち一行は、Vater基地前に来ていた。
周りには何故か敵はおらず、さらに正面入り口も空きっぱなしでいかにも入って欲しいといわんばかりの状況だった。
「ここに・・・ザンナーさんや、町の住人がいるんだね・・・」
クラッシュは巨大な基地を見ながら言った。
「中心には恐らく敵の中枢である巨大な施設、周りには様々な軍事兵器があるみたいだ・・・おそらく今まで以上に厳しい戦いになるな」
と、クロックが言った。
「だが、ここまで来たからにはやるしかねぇな」
と、ロックが言った。
「早く行かないと、いつ敵がやってきてもおかしくないぞ」
南はそう言うと、基地の中に足を踏み入れた。
「分かった、じゃあみんな、行こう」
クラッシュの言葉と共に、一行は基地の中に入った。
基地内をしばらく歩き、特に敵の邪魔もなく中心の施設への侵入に成功した。
こちらの施設も入り口が開けっ放しだった。
「ここまで敵の気配がないと逆に怪しい・・・」
と、ザジが呟いた。
施設の中に入ると、まず目の前に施設内の地図らしき物が壁に張られていた。
「ややこしい所だな・・・」
と、リタイラルは地図を見て言った。
この施設内は非常に廊下が多く、さらに部屋の数も多い。エレベーターや階段の位置もバラバラで、捜索には非常に時間がかかりそうだった。
「とりあえず、目ぼしい部屋を当たっていくしかないだろうな。時間がかかるがどうしようもない」
と、ポトリゲスが言った。
その時、突然施設内にサイレンが鳴り響いた。
「侵入者発見!第一施設玄関ホールにて侵入者発見!」
アナウンスと共に、施設の入り口のほうから次々とVater組員がやってきた。
一行は敵に向かって武器を構えた。
「やっと来たんかいな・・・待ったで」
そのような声が聞こえたかと思えば、Vater組員の一番前までリラ・ルーが歩いてやってきた。
「リラ・ルー・・・てめぇ、おれっちたちと本気で戦うのか?」
と、ディンゴが言った。
「当たり前やんけ。言っとくけど、容赦はせえへんで」
リラ・ルーはそう言うとSAAをクラッシュたちに向けた。
「お前ら、ここは俺とディンゴに任せて先に行ってくれ」
ウォーラスはそう言うと、マグロ包丁を構えた。
「そうだな、そっちの方が都合がいいだろ?」
と、ディンゴが言った。
「え!?そんなことできないよ!」
と、クラッシュが言った。
「つべこべ言うな!早く行けってんだ!」
と、ウォーラスが叫んだ。
「・・・皆、全員で固まって行動したら一網打尽にされる可能性がある。ここからは二人一組になって分かれて行動しよう!ディンゴ、ウォーラス!ここは任せたよ!」
クラッシュがそう言った後、一行は二人一組になって各廊下へと散らばっていった。
まず一番左の廊下へはクロックとシクラメンが、その隣の廊下へはザジとココが、そしてその隣の廊下はクラッシュとリタイラル、その隣はロックとヘルゼル、その隣はポトリゲスとペタ、そしてその隣の廊下へは南とクリムゾンが入っていった。
「・・・二対沢山とはえらい余裕なんやな?」
と、リラ・ルーがディンゴとウォーラスに向かって言った。
「あんたを殺す気はさらさらないぜ、リラ・ルー。洗脳を解くだけの話だ」
と、ウォーラスが言った。
「だが他の連中の命は知ったこっちゃねぇ、焼肉パーティだ!」
ディンゴはそう言った瞬間、火炎放射器を構え、後ろの組員向かって火炎弾を発射した。
組員たちに炎は次々に燃え移っていき、組員は暑さにもだえ苦しんだ。
「ようやってくれるわ・・・」
リラ・ルーはそう言うとウォーラスに向けてSAAを撃とうとした。が、ウォーラスは一気にリラ・ルーとの距離を詰めると、リラ・ルーの持つSAAをマグロ包丁の峰で弾き飛ばした。
「しばらく倒れてりゃ、記憶も戻るよな」
ウォーラスはそう言うと、リラ・ルーの頭部目掛けてマグロ包丁の峰部分を振り下ろした。
「ちょ、待てって・・・」
リラ・ルーはどうにかしようとしたが、その前にマグロ包丁が頭部にヒットした。
リラ・ルーはその場に倒れこんでしまった。
「よっしゃ、後は邪魔者を排除するだけだな!」
ディンゴはそう言うと更に炎を放った。あまりの火力の強さに組員たちはパニック状態だ。
「あんまり強くしたら、リラ・ルーにも火が移っちまうだろ」
ウォーラスはそう言うと手当たり次第に組員たちをマグロ包丁で裁いていった。
一方その頃、クロックとシクラメンは複雑に入り組んだ廊下を走っていた。
「クロックさん、どこか行く当てでもあるんですか!?」
シクラメンは前方を走るクロックを懸命に追いかけながら言った。
「ないけど、まぁまっすぐ行けばどうにかなるはずだ」
クロックはそう言うと走りながらジェリコにマグナム弾をリロードした。
二人は廊下を走り続け、ついに突き当たりに差し掛かった。その時、突き当りの右方向から次々とVater組員がやってきた。
「やっべぇ!シクラメン、近くの部屋に入ろう!」
「分かりました!」
クロックとシクラメンは急いで近くの扉を開けた。扉には怪しいマークが書かれていたが、そんなことお構いなしだった。
クロックとシクラメンの二人が入った扉の先には、何やら不気味な薬品が大量に置かれていた。
クロックは急いで扉を閉めると、部屋を見渡した。部屋は比較的広く、どうやら薬品の実験などを行う部屋のようだった。
「何だか不気味な部屋ですね・・・」
と、シクラメンが部屋を見渡しながら言った。
「とりあえず、この部屋からどこか違う場所に出られるかもしれない。探索しよう」
クロックはそう言うと、ジェリコを構えながらゆっくりと前進した。
シクラメンもクロックの後をついて行った。
その時、どこからか試験管がクロックたちに向かって飛んできた。クロックとシクラメンはそれをさっと避けた。
試験管は地面に落ち、その場で砕け散った。その瞬間、中に入っていた薬品から大量の煙が発生した。
クロックとシクラメンは思わずその場で咳き込んでしまった。辺りは煙のせいで何も見えない。
「だ、誰なんですか!?研究室に入るときはノックをしてくださいって、いっつも言ってるじゃないですか!あまりにびっくりしちゃって薬品を投げてしまったでしょ!」
部屋のどこかから声が聞こえる。だが、姿は確認できない。
「ゲホッ・・・だったら扉にノックしろって書いておけばいいだろ・・・」
と、クロックが咳き込みながら言った。
「ヒィ!!その声、Vaterの連中ではないですね!もしかして例の侵入者!?お、お助けー!!」
と、男は叫んだ。
だんだんと煙が晴れ、部屋の様子が大方分かってきた。クロックとシクラメンの目の前に、男がいたのだ。
「この人って、確か船にいた人ですよね?」
と、シクラメンが言った。
その男は頭にボルトが打ち込まれていた。
「そうそう、たしか・・・マリオだったか?」
と、クロックが言った。
「ちょ、ちょっと、あなた明らかにボケで言ったでしょ!ワタシの名前ほど覚えやすい物はないはず・・・とは言ってもまだあなたたちには名乗ってないはずですよね?」
「えっと・・・ブリブリさんでしたっけ?」
と、シクラメンが言った。クロックはいきなりのボケに吹き出しそうになったが、何とかこらえた。シクラメンは本気で間違えていたからだ。
「ブリブリって、もうどう考えても狙って言ってるでしょ・・・ワタシの名前はニトラス・ブリオですよ!ホント失礼なんですから!」
「そうか、ブリオだ・・・何かぱっとしない野郎だと思っていたんだ」
と、クロックが言った。
「パッとしないってどういうことですか!ええい、侵入者無勢がワタシをコケにしやがって、もう怒りましたよ!ワタシ、本気出しちゃうから!ヒェ~ヒェッヒェ!」
ブリオはそう言うと、近くにあった試験管におもむろに薬品を注ぎ、あたかもカクテルをシェイクするかのごとく試験管を上下に降り始めた。
「す、すごい腕の使い方・・・私でもあそこまで見事なカクテルのシェイクはできないわ・・・」
と、シクラメンはブリオのシェイク捌きに見とれていた。
「これでもバーテンダーの仕事をしていたことがありましてねぇ~。科学とバーテンダーの融合の結果がこの腕使いなんですねぇ~!さぁ、できました!ワタシの芸術の結晶‘ヒュージタイラント’!」
ブリオはそう言うと、おもむろに完成した薬品を飲み始めた。
「何をする気だ・・・?」
クロックはそう言うと、ブリオに向けてジェリコを向けた。
ブリオは薬品を飲み終わると、試験管を地面にたたきつけた。
「ふぅ・・・さぁ、世界最高の薬品製造技術を持つワタシの力、その身で味わうといいでしょう・・・!」
ブリオがそう言った瞬間、ブリオの体色が緑色に変化し始めた。
そして、体の皮膚が激しく動き始めたかと思えば、瞬く間に体が巨大化していったのだ。
「な、何なのこれ・・・!?」
シクラメンは状況が理解できず、後ろに数歩下がった。
ブリオは見る見るうちに大きくなり、気がつけは身長は三メートルを越しそうだ。
さらに、異常なまでに筋肉が発達しており、腕の太さはクロックの胴回りはありそうな太さだ。
「シクラメン、手加減は絶対にするな。本気でいかなきゃこっちがやられる」
「分かりました、可能な限り相手の足止めをします。そこをクロックさんが狙ってください」
シクラメンはそう言うと、フラワー・スピアを取り出した。
「グワァアァアアアアアア!!!」
ブリオはもはや人間とは思えないような雄叫びを発すると、クロックたちに向かってタックルを繰り出してきた。
それをクロックは左に、そしてシクラメンは右側に回避した。
続けざまにブリオは、両手を大きく振り回した。
クロックは勢いよく振り回される右腕をジャンプで回避し、シクラメンは相手の左腕をしゃがんで回避した。
そこですかさずシクラメンは、ブリオの脚にフラワー・スピアを突き刺した。だが、その程度の攻撃ではブリオはびくともしなかった。
「グォオォォオオオォオオ!」
ブリオは雄叫びを上げると、シクラメンのほうを向いた。
「さすがに体が大きすぎて、効果が現れるのが遅いようね・・・」
シクラメンはそう言うと、再びブリオの脚にフラワー・スピアを突き刺した。だがやはりブリオには効いてないようだった。
ブリオは太い右腕を後ろに引くと、拳を握り、勢い良くシクラメンに向かってパンチを繰り出した。
シクラメンは間一髪のところでパンチを避けた。
ブリオの拳は床にヒットし、床が思いっきりへこんだ。
「すごい力だな・・・殴られたら即死レベルか」
クロックはそう言うと、ジェリコをブリオに向けて一発発射した。
マグナム弾はブリオの背中にヒットした。だが、ブリオの分厚い筋肉にはあまり効いてないようだった。
ブリオは素早く振り返りながら、左腕を大きく振り回した。
クロックはそれを再びジャンプして避ける。そして、空中でブリオの顔面目掛けてジェリコを撃ち放った。
マグナム弾は今度はブリオの脳天にヒットした。さすがのブリオも頭部へのダメージは大きいようで、その場で頭を押さえながら悲鳴を発した。
「体が大きくなっても、頭へのダメージは軽減できないみたいですね」
シクラメンはそう言うと、更にフラワー・スピアをブリオの胴体に突き刺した。
三回目にしてやっとブリオの体から力が抜けてきたようで、ブリオはその場で立て膝をついた。
「よし、そろそろケリをつけようか」
クロックはそう言うと、ブリオに近づき、頭部にジェリコの照準を向けた。
その時、突然ブリオが雄叫びを上げだした。
「グォォ・・・ギャオオオオオオオオ!」
ブリオはそう言うと、クロック向けて右ストレートを放った。クロックはそれを避け損ねてしまった。
クロックは後ろに大きく吹き飛ばされて、壁に勢い良くぶつかった。その衝撃で、右目を隠していた眼帯が取れてしまった。
「グ・・・クソ・・・」
クロックは立ち上がろうとしたが、ダメージが大きすぎて無理だった。
「クロックさん!」
シクラメンは急いでクロックの元に行こうとしたが、ブリオがシクラメンの前に立ちはだかった。
「クロックさんをよくも・・・!あなただけは絶対に許さないですからね!」
シクラメンはそう言うと、フラワー・スピアを構えなおした。
ブリオは勢い良くパンチを繰り出してきた。シクラメンはそれをジャンプで避けた。
そして、太いブリオの腕にさっと飛び乗ったのだ。
「体が大きいと、こういう欠点もありますからね」
シクラメンはそう言うと、素早くブリオの肩の方まで走っていった。
振り下ろそうと必死になるブリオから落ちないように体制を整えると、ブリオの首目掛けてフラワー・スピアを思いっきり突き刺した。
いくら殺傷能力の低いフラワー・スピアとはいえ、首に突き刺されれば致命傷になりかねない。
ブリオはその場でもだえ苦しんだ。シクラメンは素早く地面に飛び降りた。
「早くクロックさんのところに行かないと!」
シクラメンはそう言うと、その場で暴れているブリオをよそに、クロックの元に走っていった。
「クロックさん、大丈夫ですか!?」
「・・・こ、このくらいどうってことないさ・・・」
クロックは小さな声でそう言って立ち上がろうとした。
「よかった・・・」
シクラメンはそう言うと、クロックに手を差し伸べた。
「・・・あ、危ない!」
クロックはそう言うと、いきなりシクラメンを横に押しのけた。シクラメンはその場でよろけ、こけてしまった。
シクラメンは訳が分からないまま、ふと後ろを見ると、何とブリオがクロック目掛けて拳を構えていた。
「クロックさん!!」
シクラメンの言葉もむなしく、クロックは再びブリオの拳に直撃してしまった。
その場に粉塵が舞い、辺りの視界が一気に悪くなった。
「ク、クロックさん・・・そんな、嘘でしょ・・・」
シクラメンは涙声になりながらそう言った。
だが、状況は予想外の展開になっていた。
辺りの視界がよくなってきたとき、シクラメンの目の前にはまさかの光景が広がっていた。
何と、クロックがブリオの巨大な拳を手で受け止めていたのだ。
今までクロックと一緒にいたシクラメンでさえ、クロックにそこまでの力があるとは思いもしなかった。
「あんまり、ボクをなめるな・・・!」
クロックはそう言うと、更に力を加え、何とブリオの体制を崩したのだ。
更にそこからクロックは、凄まじい速さでブリオに飛び蹴りを入れた。
足はブリオの胴体にヒットし、ブリオは後ろの壁まで一気に飛ばされた。
壁に当たり、ぐったりとしているブリオ向かってクロックは近づくと、フィニッシュに思いっきりブリオの股間を踏みつけた。
「ギャアアアアアア!!!」
ブリオは叫び声を上げると、見る見るうちに体が小さくなっていった。
もちろん、服なんて大きくなった際に破けてしまっていたので、ブリオは全裸の状態だった。
「キャア!」
シクラメンは思わず手で顔を隠した。
「あのさ、ボクたち捕まった仲間を探してるんだけど、どこにいるか知らない?」
と、クロックは倒れているブリオに向かって言った。
「ヒェェ・・・。ワ、ワタシは敵には一切情報を流さない性分でして・・・」
と、ブリオは今にもかき消されそうな声で言った。
「状況くらい理解したらどうなんだい?」
クロックはそう言うと、ジェリコをブリオに向けた。
「わ、分かった、分かった!いいか、一度しか言わないぞ!この部屋を抜けて、廊下をひたすら走り抜けるんだ。そうしたら大きな一本道に出てくる。そこを更に突き進めば巨大なホールがある。仲間は恐らくそこにいるはずだ・・・!」
「情報どうも。そんじゃ、ゆっくり休んでくれよ」
クロックはそう言うと、ジェリコの引き金を引いた。銃声が部屋に響き、ブリオの息は途切れた。
「クロックさん・・・とりあえず何とかなりましたね。でも、いくらなんでも瀕死の相手を仕留める必要はなかったのでは・・・」
シクラメンはそう言うと、クロックに近づいた。
「もしかしたら変な薬品で復活される可能性もあったしな・・・こちらの安全を考えたらこうするが妥当だったと思う」
その時、シクラメンはふとクロックの体に起きている何らかの異変に気づいた。
クロックの腕がいつもとは違い、どこか爬虫類のような質感に見えたのだ。
「あ、あの・・・」
シクラメンがそのことを伝えようとしたとき、クロックは右目に手を当てた。
「あ!!」
クロックは驚いた表情を浮かべると、急いで地面に落ちていた眼帯を拾い、右目が隠れるように顔に巻きつけた。
すると、みるみるうちに腕がいつも通りの質感に戻っていった。
「え、何が起こったの?」
シクラメンは訳が分からない状態だった。
「気のせいって奴なんじゃないかな・・・それか薬品が腕にかかって変になってたのかも。さぁ、早く先に行こう」
クロックはそう言うと、部屋の出口に向かって歩いていった。
「・・・クロックさん、何か秘密を隠してるみたい。いつか私にも話してくれるといいなぁ・・・二人っきりになって、ボクの秘密を全部君に曝け出すよ、なんて言われて、それからそれから・・・」
「おーい、早く行くぞ」
「あ、ちょっと待ってくださいよー!」
シクラメンはそう言ってフラワー・スピアをしまい、クロックのところまで走っていった。
その頃、ココとザジもまた、廊下の迷宮で迷っていた。
「もう、わけわかんない!何なのよこの基地、道が複雑すぎる!」
と、ココは若干いらいらしながら言った。
「恐らく外敵からの侵入に備えて設計したんでしょうけど・・・今は部屋を一つずつ当たっていくしかないです」
と、ザジがワルサーを構えながら言った。
「そうね・・・それじゃあこの部屋行ってみよう!」
ココはそう言うと、近くの扉を勢い良く開けた。
扉の先にあったのは、沢山の机と椅子、そして奥には厨房のような物が見えた。部屋は非常に広く、天井も高い。
「この部屋は・・・食堂ですかね?」
と、ザジが言った。
「恐らくそうね・・・次を当たろうか」
「待って、何物かの気配がします・・・この部屋に誰かいます」
「ホント?でも、無視したほうがいいんじゃ・・・」
「このオーラ・・・かなり上層部の連中のようです。ここは仕留めておいたほうが得策かと・・・」
「ザジさんがそう言うなら、仕方ないわね」
ココとザジは食堂へと足を踏み入れた。
その時、厨房の方から誰かがココたちの方向に向かって歩いてきた。
「戦いの前にハンバーガーでも喰おうかと思ったら、トマトがねーじゃねーか・・・仕方ねぇ、ハンバーグとケチャップだけで喰うか」
相手はハンバーガーを頬張りながら、ドンドン近づいてくる。
ココとザジは相手を見てすぐに気がついた。フレイだ。
フレイはハンバーガーを食べるのに夢中でココたちには気づいていないようだった。
「・・・呑気なことでして」
ザジは小さな声で呟くと、フレイに向かってワルサーを向けた。
その時、フレイはふと前方を向いた。そこにはココとザジが立っていた。
「うぉ!!・・・何だ、お前たちかよ。驚かせやがって。あぶねぇ、ハンバーガー喰ってる所をニーナに見られてたらボコボコにされてたぜ」
と、フレイは落ち着いた表情で言った。
「・・・命が惜しかったら両手を挙げて」
と、ザジも冷静に言った。
「ん、俺と殺り合おうってのか?でもなぁ、女の子二人だとどうも本気で戦えそうにねぇな・・・」
と、フレイはザジの命令を無視してそう言った。
「ちょっと、こっちは本気でいくわよ!そんな調子に乗ってていいの?」
と、ココが言った。
「そうそう、お前たちの仲間のイカれたコックにこう言っといてくれよ。風切羽は治ったってな。此処の科学者はこういう技術はすげぇよなあ」
フレイはそう言うと、ココとザジに風切羽を見せた。
「・・・忠告する意味もなし」
ザジはそう言った瞬間、ワルサーの引き金を引いた。
弾丸は高速でフレイに向かって飛んでいく。
「・・・ったく、こっちに戦意がないってアピールした時点で逃げようとしろよ。せっかくの作戦が台無しだ」
フレイはそう言うと、さっと上空に飛び上がった。
「作戦・・・?」
と、ココが言った。
「お前たちが背中を向けた瞬間にバン、って寸法だったんだけどな。言っとくが相手が誰でも俺は容赦しない性格だぜ?」
フレイはそう言うと、素早く部屋の中を飛び回った。
「小癪な・・・」
ザジはそう呟くと、フレイに向かってドンドン弾丸を撃ち込んでいく。
だが、フレイは素早く避け続けた。そしてついに、ワルサーの弾が尽きてしまった。
「このご時世にワルサー使いとは、骨董マニアか?」
と、フレイはホバリングしながら言った。
「・・・煩い」
ザジは小さな声で呟くと、ポケットからカートリッジを取り出し、リロードを行おうとした。
その瞬間、フレイがザジに向かって一気に急降下してきた。
「危ない!」
ココがそう叫び、ザジの目の前に飛び出した。
そして、突っ込んでくるフレイ目掛けて回し蹴りを仕掛けた。
が、フレイは急旋回し、回し蹴りを回避した。
「あっぶねぇことしやがるなぁおい」
フレイはそう言ってさっと地面に降りると、即座に右手にグロックを持ち、二発放った。
ザジとココは素早く避け、さらにココはフレイに向かって走っていった。
「これでも食らいなさい!」
ココはそう言うと、前に向かってとび蹴りを繰り出した。
「あらよっと」
フレイはココの蹴りを軽々と避けた。
ココはその場に着地し、すぐに近くの椅子を手に持つと、思いっきり振り回した。
フレイはそれを再び空に飛ぶことで避けた。
「もう、空に逃げるなんて卑怯よ!」
ココはそう言うと、空を飛ぶフレイに向かって椅子を投げつけた。フレイはそれもまた軽々と避けた。
「空に逃げるのが卑怯?そっちにだって空を飛べる奴はいるじゃねぇか」
フレイの言葉に、ザジは一瞬驚いた。
「な、何言ってるの?あたしたちは普通の女の子よ?」
と、ココが焦りながら言った。
「とぼけても無駄だぜ?リラ・ルーがお前たちの話を全部盗み聞きしてたからな。最初に見たときから訳の分からないメンバーだと思ってたが、まさか此処までとんでもないメンツの集まりだったとは思わなかったぜ」
と、フレイはホバリングしながら言った。
「・・・なら、私の本性に気づいているのですね?」
と、ザジがワルサーをフレイに向けながら言った。
「ああ知ってるぜ、天使さん」
「フッ、ならいいでしょう」
ザジがそう言った瞬間、ザジの背中に大きな白い翼が現れた。
「奇麗な翼だ・・・汚し甲斐がありそうだ」
と、フレイはザジの翼を見て言った。
「私の翼には埃一つつけませんよ」
ザジはそう言うと、翼を羽ばたかせて、宙に飛び立った。
そして、ワルサーを構えると、フレイに向かって一発撃ち込んだ。
フレイはそれをさっと横に避けた。その瞬間、ザジが一気にフレイとの間合いを詰め、瞬時にフレイの目の前まで到達した。
「・・・落ちろ」
ザジはそう言うと、回避の直後でどうすることもできないフレイに向かってワルサーの引き金を引こうとした。
これで勝負が決まる。ザジはそう思っていた。
「その程度で撃墜させれると思うなってんだ」
フレイはそう言うと、空中で即座にサマーソルトキックを繰り出した。
フレイの鋭い足の爪が、ザジのワルサーを持った腕の肉を引き裂き、腕に生々しい傷がついた。
さらに、ザジは衝撃でワルサーを手放してしまった。
ザジはとっさにワルサーを取り戻そうと急降下したが、今度はその上からフレイが急降下攻撃を仕掛けてきた。
「まずい・・・」
ザジは小さな声で呟き、左方向に急旋回しながら一気に上昇することでそれを避けた。
「おいおい、天使ってその程度の力しかないのか?予想よりも全然弱っちいな」
と、フレイは空中で制止して言った。
「・・・言わせておけば・・・!」
流石のザジもフレイの度重なる挑発にいらだち始めていた。
「そろそろ終わりにするか」
フレイはそう言うと、ザジに向けてグロックを構え、引き金を引こうとした。
が、その時下にいたココが、ザジのワルサーをフレイに向かって構えていたのだ。
「銃はあんまり好きじゃないけど、そんなこと言ってられないものね!」
ココはそう言うと、フレイに向かってワルサーの引き金を引いた。
銃声の音を聞いてフレイは下を向いたが、銃弾は既に彼の翼に当たっていた。
「うぉ!」
銃弾は致命傷にはならなかったものの、フレイは一瞬体制を崩してしまった。
「ザジさん!パス!」
ココはそう言うと、ワルサーをザジに向かって放り投げた。
ザジは素早く飛んで行き、ワルサーをキャッチすると瞬時にフレイに向けて銃弾を放った。引き金を引く際、ザジは何か引っかかりを感じたが、銃弾は問題なく発射された。
銃弾は今度はフレイの風切羽を貫通した。
フレイは体制を立て直そうとしたが、地面に向かって落ちていく一方だった。
だが、フレイは何とか着地の態勢はとることができ、地面に落ちた際のダメージは少なかった。
しかし、フレイが顔を上げたその時、既にココが目の前で足を大きく振りかぶっていた。
「・・・手加減とかないよな?」
「当たり前でしょ!」
ココはそう言うと、フレイの胴体目掛けて強烈なミドルキックを放った。
フレイは後ろに大きく吹き飛ばされ、壁に激突した。
「・・・やべぇ、どこか折れたか」
壁にぶつかったフレイは立ち上がろうとしたが、腰に激痛が走り、とても動ける状況ではなかった。
「勝負ありですね」
ザジはそう言って地面に着地し、フレイの目の前まで歩いていった。
「さすが此処まで来れただけの実力はあるな・・・」
「少なくともあなた達よりかは戦闘経験は豊富ですからね」
「経験豊富か・・・どの口が言うか」
フレイはそう言った瞬間、グロックを右手に持つと、ザジに向けた。
「往生際の悪い事で」
ザジはそう言うと、ワルサーをフレイに向けた。
「悪役がすんなり負けを認めると思うなよ」
「・・・だが、負けには違いない」
ザジはそう言うと、ワルサーの引き金を引こうとした。だが、引き金が何故か動かない。
ザジは何回も引き金を引こうとしたが、ワルサーから銃弾が放たれる気配は一行になかった。
「お前が格闘女からワルサーをパスされて、引き金を引いた際、何か違和感を感じなかったのか?俺でもアクシデントが起きたって分かっていたぞ?」
「・・・チッ」
と、ザジは舌打ちをした。
今回は明らかに自分のミスだ。銃の異常に気づいていれば、このような事態にならなかっただろう。
「・・・だが、俺も撃てないさ」
フレイはそう言うと、グロックを構えたままグロックのマガジンを地面に落とした。
「・・・どういうつもりで?」
「飛べない鳥なんて死んだも同然。今からお前の頭を撃ち抜いた所で意味なんてないんだよ。お前の翼を見た瞬間、俺は負けたと思ったさ。俺は今までそんな立派な翼を見たことがなかった」
「・・・何なんですかいきなり」
「此処を出てしばらく歩いて、右の扉を開けば工具室がある。そこでワルサーのメンテを済まして、更に廊下を突き進め。そうすれば望みの場所にはいけるさ」
「敵にアドバイスですか?それでも情けをかけたつもりで?」
「天使を殺したら本格的に地獄に落ちそうだからな。さぁ、早く行けよ」
「・・・礼を言う気は無いですから」
ザジはそう言うと、フレイのそばを離れ、ココと一緒に部屋から出て行った。
「ザジさん、あいつを仕留めなくてよかったの?」
と、ココがザジに言ってきた。
「いいんですよ」
ザジはそう言って廊下を歩いていった。
食堂にはフレイがただ一人残っている。
「・・・行ったか」
フレイはそう言うと、無線機を手に持った。
「こちらフレイ。作戦通りだ」
「おお、よくやった」
「ったく、負けの演技をするのも大変だよな。確実にしとめれるタイミングでも何かしら言い訳をつけて見逃さないといけねぇしな」
「それにしても、殺されずにすんだようだな。さっき連絡が入ってきたが、ブリオはやられたそうだ」
「やられたっつーか、この作戦を知ってるのは俺とニーナとカタパルトとザンナーくらいだろ?」
「そうだったか。それで、今すぐ動ける状況か?」
「心配は要らない。すぐにそっちに向かう」
「よし、できるだけ早く来てくれ」
無線はそこで切れた。
フレイは、今までのことが嘘だったかのようにすんなりと立ち上がると、グロックをホルスターにしまった。
「クラッシュバンディクーの妹と、天使か。こりゃ面白いことになりそうだ」
フレイはそう言うと、食堂から出て行った。
リタイラルとクラッシュは、長い廊下を全力疾走していた。
「クッソー!訳の分からない仕掛けに引っかかったらこの様だ!」
「リタイラル、とにかく走り続けよう!」
二人が急いでいるのには訳があった。さっきから廊下を区切るシャッターが次々と閉まっていっていたのだ。
今も目の前でどんどんとシャッターが下りていく。クラッシュとリタイラルは上手く滑り込み、また立ち上がって走っていった。
「元々クラッシュが監視カメラに見つかるから悪いんだぞ!」
「まさかあんな場所にカメラがあるなんて気づかなかったんだよ!」
そう言って二人は息を切らしながら走っていった。
ふと目の前に広く開けた光景が見える。もうすぐ出口のようだ。
「よし、もう少しだ!」
リタイラルはそう言って最後の追い込みをかけた。シャッターは刻一刻と閉まっていく。
「ちょっと待って・・・うわ!」
何とここでクラッシュが躓いてこけてしまった。
リタイラルは間一髪シャッターをくぐることができた。しかし、クラッシュとは離れ離れになってしまった。
リタイラルはシャッターを持ち上げようとしたが、びくともしなかった。
「クラッシュ、すぐにシャッターを開ける方法を探すから待ってて!」
「分かった!」
リタイラルはその場を見渡した。その部屋には小型のコンテナが大量に置かれており、戦闘時には壁にはなりそうだ。
リタイラルは次にシャッター付近の壁を見た。そこには何やら四角いボックスが壁にくっついていた。
リタイラルはそれに近づき、蓋に書かれている文字を読んだ。
「シャッター開閉装置・・・これか!この蓋を開ければいいのか?」
リタイラルは蓋を開けようとしたが、鍵がかかっており無理だった。
「鍵を探さないと・・・」
「・・・これが欲しいのか?」
突然、リタイラルの背後から声が聞こえた。リタイラルは急いで振り返った。
「・・・カタパルト」
彼の振り向いた先にはカタパルトがいた。彼はコンテナの上に立ち、左手に持っている鍵をちらつかせていた。
「・・・無駄な話はいらない。御前、ここまで来たということは覚悟はできたんだな?」
「ああ。悪いけど、正義のためなら血の繋がった兄弟相手でも戦うよ」
「フッ、愚かなものだ。俺の忠告を無視して戦おうとするとはな。はっきり言うが、御前に俺は殺せない。戦闘技術の面でも、精神の面でも御前は俺に負けているからな」
「そんなことはない・・・僕はもう迷ったりしない。正義のために、みんなのために、そして自分のために、カタパルト、あんたを絶対倒す!」
リタイラルはそう言うと、M1887を両手に持ち、カタパルトに向けた。
「兄弟相手なら少しは楽しめそうだな」
カタパルトはそう言って鍵をポケットにしまうと、両手にM1887を構えた。
「それじゃあ、行くぞ!」
リタイラルはそう言うと、右手のM1887の引き金を引いた。
カタパルトは素早くコンテナから下りると、横に走りながら右手のM1887を撃ち放った。
リタイラルはさっとコンテナの後ろに隠れた。カタパルトも別のコンテナの陰に隠れた。
リタイラルはコンテナの上から左手を出し、M1887をカタパルトのいる方向に向かって一発撃ち込んだ。
「無駄弾を撃っていていいのか?」
カタパルトはそう言うと素早く顔を出し、リタイラルの左手のM1887目掛けて左手のM1887を撃ち込んだ。
「うわ!」
リタイラルはとっさに左手を引いたが、M1887には銃弾がヒットし、銃は宙を舞った。
さらにカタパルトは宙を舞うM1887を、左手のM1887で撃ち落とすという荒技をやってのけた。
リタイラルは落ちてきたM1887を拾ったが、銃身が銃弾によってへこんでしまっており、使うのは不可能な状態だった。
「両方に散弾を装填するとは何を考えているんだ?俺みたいに左にはスラッグ弾を入れておけばいいものを」
と、カタパルトが言った。カタパルトは左手に持つM1887に、弾の散らばる散弾ではなく、単発弾であるスラッグ弾を装填していたのだ。
「くそぉ・・・宙を舞うものを撃ち落すなんてさすがカタパルトだ・・・」
リタイラルはそう言うと、使用不可のM1887から散弾を全て取り出し、ジャンバーのポケットにしまった。
そして、コンテナの上に飛び乗った。そこからならカタパルトを直接狙うことができるからだ。
リタイラルはカタパルトに向かってM1887を一発撃ち込んだ。
「隠れておけばいいものを」
カタパルトは散弾を走って避けつつ、左手のM1887をリタイラル向かって撃った。
リタイラルはそれをジャンプして避けると、空中でレバーアクションをしつつ、さらにカタパルトに向かって撃ち込んだ。
カタパルトは再びコンテナの後ろに隠れ、リタイラルがコンテナの下に着地した瞬間に左手のM1887を撃ち込んだ。
リタイラルは素早く横転で回避し、コンテナの後ろに隠れた。
「これじゃあ勝敗がつきそうにないな・・・」
リタイラルはそう言うと、背中に担いでいたバズーカを構え、身を乗り出した。
そして、カタパルトのいる方向目掛けて発射した。
「・・・ついにバズーカを使ったか」
カタパルトはそう言うと素早く右手のM1887の引き金を引いた。複数の散弾はバズーカ弾に当たり、空中で爆発を起こした。
そのことにより、辺りに粉塵が舞い、一気に視界が悪くなった。
その瞬間、リタイラルはM1887を構えてコンテナから身を乗り出し、一気にカタパルトに向かって走っていった。
「・・・甘い」
カタパルトはコンテナの後ろに隠れたまま背中に担いでいたM70を構えると、天井に向かって引き金を引いた。
ライフル弾は天井に当たると、何と跳ね返ってリタイラル目掛けて飛んで行ったのだ。
そして、ライフル弾はリタイラルの足元にヒットした。
「おっと!」
リタイラルは一瞬その場に踏みとどまり、ライフル弾を回避した。
その時、カタパルトもコンテナから身を乗り出し、リタイラル向かって左手のM1887を撃ち込んだ。
リタイラルは横に回避したが、その瞬間カタパルトが一気にリタイラルに接近した。
そして、リタイラルの上半身目掛けて勢い良く左手のM1887を振り下ろした。
リタイラルはそれを避けることができず、M1887は背中に思いっきりヒットした。
「グハァ!」
リタイラルは地面に叩きつけられた。
「まだまだだな」
カタパルトはそう言うと、地面に倒れるリタイラルに左手のM1887を向けた。
既に勝敗は決している。後は左手のM1887の引き金を引くだけだ。カタパルトはそう思っていた。
だが、ここで思いがけぬミスを犯してしまったのだ。
「カ、カタパルト・・・何だかんだ言ってカタパルトもミスってるじゃん・・・」
と、リタイラルが言った。
「ミス?俺がいつミスを犯した・・・もういい、おとなしく眠れ」
カタパルトはそう言うと左手のM1887の引き金を引いた。だが、弾は発射されない。
「物も数えられないのかい?まだまだだね!」
リタイラルはそう言った瞬間素早くカタパルトの足元をすくった。
足はカタパルトの膝にヒットし、カタパルトはその場で立てひざを突く体制になってしまった。
カタパルトは左手に装填していた弾の数を数え間違えていたのだ。M1887の装弾数は5発。だが、カタパルトは6発装填していたと勘違いしていたのだ。
恐らくスラッグ弾に入れ替えていたせいで、弾数の計算をミスしてしまっていたのだろう。
リタイラルは素早く立ち上がると、カタパルトに向かってM1887を撃った。
散弾はカタパルトの胴体に全弾ヒットし、カタパルトは後ろに大きく吹き飛ばされた。
カタパルトは地面に打ち付けられ、仰向けに倒れた。
リタイラルはカタパルトに近づき、M1887をカタパルトの頭に向けた。
「・・・自惚れていたのかもな」
と、カタパルトが呟いた。リタイラルは黙ったままカタパルトを見つめている。
「どうした・・・とっとととどめを刺せ」
と、カタパルトが言った。だが、リタイラルはM1887の銃口を下ろした。
「僕には・・・やっぱりできない。どうしても無理だ」
と、リタイラルが言った。
「・・・御前もまだまだだな」
カタパルトはそう言うと、ポケットから鍵を取り出し、リタイラルに向かって投げた。
リタイラルはそれをキャッチした。
「それより、傷は・・・」
と、リタイラルは言った。カタパルトの服には無数の弾痕が残っていたが、何故か血は流れていなかった。
「俺だって簡単に殺されたくはないからな」
カタパルトはそう言うと、着ていた服をおもむろに破いた。中には灰色の防弾チョッキが隠されていたのだ。
「じゃあ、別にたいした怪我は負ってない?」
「ああ、別になんともない」
カタパルトはそう言うと立ち上がった。
「だが、戦う気もない。一応御前に負けたからな」
と、カタパルトは呟いた。
「カタパルト・・・これからどうする気?」
「・・・御前たちの仲間にはならないぞ」
「そうか・・・」
「・・・だがこれだけは言っておく。御前たちはこの基地に来た時点で罠にかかった」
「罠・・・!?」
「これからもっと悲惨なことが起こるだろう・・・だからリタイラル、御前だけでも逃げろ・・・と言いたかったんだが、もう遅いな」
「ああ、もう僕は皆と前に進むだけだ。今更引き返すわけにはいかない」
「フッ、御前の選んだ道なら、仕方がない。俺はもう引き止めない」
カタパルトはそう言うと、その場を立ち去ろうとした。
「カタパルト!」
と、リタイラルはカタパルトを呼び止めた。
「・・・どうした」
カタパルトはそう言って振り返った。
「この戦いが終わったら・・・一緒に酒の旨い店に行かない?」
「・・・生きて帰れたらな」
カタパルトはそう言うと、部屋から立ち去っていった。
「・・・あ!」
リタイラルは突然思い出したかのようにボックスに近づき、鍵で蓋を開け、中のスイッチを押した。
すると、シャッターがゆっくりと開き、中からクラッシュが出てきた。
「ふぅ・・・」
長い間閉じ込められていたからか、クラッシュは疲れているようだった。
「ごめんごめん、少し手間取っちゃって」
「そうみたいだね・・・こっちからも銃の音が聞こえていたし。それで、敵はもう倒した?」
「ま、まあね。しばらくここら辺は安全だと思う」
「そうか・・・じゃあ、どんどん進もう!」
クラッシュはそう言うと先を目指して走り出した。
「ちょ、ちょっと休憩させてくれよー!」
リタイラルはそう言いながらボトルを取り出し、中の酒を少し飲むと、クラッシュを追いかけて行った。
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