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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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第十八章
2012/06/02(土)00:54:20(12年前) 更新
これより下は本編です
とある一室にて。男が豪華な椅子にもたれかかって座っていた。
そこに、クランチ、ニーナ、フレイ、カタパルトの四人がやってきた。
「やつ等の投獄が終わったぞ」
と、クランチが言った。
「ご苦労・・・さぁ、いよいよ作戦は大詰めだ」
と、男が言った。
「詳しい作戦説明してよ、おじさん」
と、ニーナが言った。
「大雑把に言えば、これからクラッシュバンディクーの精神を破壊していく」
「精神の破壊?そんなことして何になるんだ?」
と、フレイが言った。
「この作戦はアーネスト会長の提案された物だ。会長はクラッシュバンディクーの戦力、そして精神の危うさに目をつけられた。会長の最終目的は、クラッシュバンディクーを生きる殺戮兵器とすることらしい」
「生きる殺戮兵器・・・相当むごいな」
と、クランチが言った。
「おじさん、あんなネズミよりも強そうな奴は一杯いるのに、何でそいつ等は殺戮兵器にしないの?」
と、ニーナが言った。
「会長が言うには、精神を容易く壊すことができそうなのがクラッシュだったかららしい。確かに、ポトリゲスや南のような強豪もいるのだが、彼等は今まで悪として生きていた分精神が強いらしいからな。かと言って他のメンバーは精神が弱くても、力がないものが多い。二つが上手く吊りあっていたのがクラッシュだったというわけだ」
「なるほどな・・・それで、精神を壊すにはどうすればいい」
と、フレイが言った。
「王道かつ最も効果のある方法を使う。クラッシュの目の前で仲間を拷問し、上手くクラッシュを悟らせて、彼自身の手で仲間を殺させる。それが会長の理想の作戦らしい」
「その手法、よく少年兵を育てる際にも使われるわね。あたいですらも流石に引いてしまう内容だったけど、まさかそれを行う立場になるとはね・・・」
と、ニーナが言った。
「ニーナよ、確かにこの作戦は残虐かつ非道な物だ。だから、ワシはこの作戦を実行しないつもりだ」
と、男が言った。その言葉に、四人は驚いた。
「そ、それってアーネスト会長に従わないってことか!?」
と、フレイが言った。
「その通り。会長の切り札とも言えるクラッシュバンディクー。そいつを此処で殺してしまえば、あいつは頼みの綱がなくなる。そうなればあいつなんか怖くもなんともない。あいつをトップから蹴り落とし、あいつの座を、このワシが奪い取るのだ!ヌハハハハ!」
と、男は大笑いしながら言った。
「・・・他の連中はどうする気だ?」
と、カタパルトが言った。
「そいつ等の処理は適当に決める。まぁ、全員処刑する気だがな!」
「・・・そうか」
カタパルトはそう言うと、その場を立ち去ろうとした。
「カタパルト、どこへ行く気だ?」
と、男が言った。
「牢屋の見回りだ」
カタパルトはそう言って部屋から立ち去っていった。
「カタパルトが自分から動くとは珍しいな・・・」
と、フレイが言った。
「まぁ、カタパルトのことだから放っておいてもいいでしょ。それよりもおじさん、もしかして下克上を狙う気?」
と、ニーナが言った。
「そうだ!このチャンスを逃せば、ワシらは一生あいつの下で働かなければならんだろう。あいつの描くシナリオを此処でメチャクチャにしてしまうのだ!フレイ、ニーナ、クランチ。お前たちは今からクラッシュを此処に連れて来い。クラッシュを屋上にいるザンナーと戦わせるのだ。ザンナーがクラッシュをその場で殺してしまえば最高だし、たとえザンナーが敗れても、ワシがこの手でクラッシュを殺すだけだ。ザンナーの望みも叶え、ワシらも満足する。最高の作戦だと思わないか!」
「上手くいくといいけどなぁ・・・よし、じゃあクラッシュを連れてくるか」
フレイはそう言って部屋から出て行き、ニーナとクランチも彼に続けて出て行った。
「ヌハ、ヌハ、ヌハハハハハ!これからのことを考えると、笑いが止まらんわ!」
男は椅子に座り、大笑いし続けていた。
Vater基地内、牢獄にて。
クラッシュたちは、一人ずつ別々の牢屋に入れられていた。牢屋は比較的奇麗であり、あまり使われていないことが分かる。
「はぁ・・・まさかこんなことになっちゃうとは・・・クソ!」
クラッシュはそう言って牢屋の檻を殴り、あまりの痛さに手を引っ込めた。
クラッシュの目の前の牢屋には、クロックが入れられていた。
「クラッシュ、今はおとなしくしておこう。下手に暴れれば、何をされるか分からないから」
と、クロックが言った。
「分かったよ、兄ちゃん。あーあ、これからどうなるんだろう、おいらたち・・・」
「パッと思いつくのは、処刑くらいか・・・」
「あーあ・・・」
その時、クラッシュの入っている牢屋に、フレイ、ニーナ、クランチの三人がやってきた。
「よう、アホ面」
と、フレイがクラッシュに向かって言った。
「アホ面って言うな!」
「アハハハハ!近くで見るともっとアホに見えるわ!さて、今からあんたを牢屋から出して、ある場所に連れて行くわ。変な真似はしないほうがいいわよ?今おかれている立場を考えれば、馬鹿な真似はないだろうけど。クランチ、鍵を開けて頂戴」
クランチは、ニーナの言うとおり牢屋の鍵を開け、扉を開けた。
「クラッシュに何をする気だ?」
と、クロックが言った。
「確かあんたは、クラッシュの兄貴だっけか?まぁ、心配はしなくていいさ」
と、フレイがクロックのほうを見て言った。
「クラッシュに傷一つつけてみろ、絶対許さないからな」
と、クロックはフレイを睨みつけながら言った。
「何もできないクセに言うことだけは大層ね。さ、行きましょ」
ニーナはそう言って、その場を立ち去っていった。クランチは、クラッシュの手に縄を巻きつけ、強引に引っ張っていった。フレイはその後を歩いていった。
「何だか、嫌な予感がするな・・・」
と、クロックは呟いた。
すると、今度はニーナたちが言った方向とは別の方向から、カタパルトが歩いてきた。
そして、クロックの牢屋の前で立ち止まった。
「・・・知りたいか?」
突然、カタパルトがクロックに向かって言った。
「何をだ?」
と、クロックが言った。
「Vater、いや、コルテックスの目的だ」
「コルテックス・・・それって誰?」
「Dr.ネオ・コルテックス。Vater内でもトップレベルの地位に着く男であり、このオーストラリア基地リーダーだ」
「へぇ・・・今回の黒幕はそのコルテックスって訳だ」
「いや、もう一人黒幕がいるが、それを言う必要はないだろう。さて、コルテックスがこれから何をするか、予想できるか?」
「いや・・・分からない」
「クラッシュバンディクーの抹殺だ。その後、順次御前たちを処刑する予定らしい」
「え・・・!?」
クロックは驚愕した。このままでは弟が殺されてしまう。
「兄弟だったら助けたいと思うのが当然だろうな」
「そりゃ、もちろんだ。だけど、今のボクにはどうすることもできない・・・クソ!」
「・・・言っておくが、俺は御前を助けようとは思わないからな」
「ああ、あんたがそんなお人好しではないことくらい知っている。でも、あんたにも、リタイラルって兄弟がいるんだろ?彼を助けてやらなくていいのか?」
「・・・あいつの選んだ道だ。俺がどうこう言えることではない」
「だからって、兄弟を見捨てる気か!?」
「仕方がないだろ・・・!俺だってあいつを助けてやりたいさ。だがな、敵と味方という関係上、どうすることもできないんだ・・・!」
と、カタパルトは言った。クロックは、彼の目に涙がにじんでいるのが分かった。
「あんたも、いろいろ苦悩があるんだな・・・」
「・・・悪いな、無様な所を見せてしまって」
「あんたもボクも、もう運命に流されるしかないんだね・・・仕方がないか」
「こんなことになってしまった運命を憎んでくれ・・・じゃあな」
カタパルトはそう言って、その場から立ち去った。
カタパルトは、どうすればリタイラルを助けることができるかを考えながら歩いていた。
「・・・運命の流れに逆らってみるか」
カタパルトはそう呟くと、どこかに行ってしまった。
Vater基地内、男のいる部屋にて。
男は椅子にどっしりと構えて座っていた。そこに、フレイ、ニーナ、クランチ、そしてクラッシュが入ってきた。
クランチはクラッシュを男の前に突き飛ばした。
「うわ!」
クラッシュはよろめきつつも、男の前に立ち止まった。
男の顔は、まるでプリンを逆に置いたような形で、髪の毛ははっきり言ってほとんど生えていなかった。
口元にはぼさぼさした髭が生えていた。
「貴様が、クラッシュバンディクーか・・・初めまして、とでも言っておこうか」
「あ、あんたがVaterのリーダーか!?」
「如何にも。ワシがVaterオーストラリア支部総隊長、ネオ・コルテックスだ」
と、コルテックスという名の男が言った。
「ネオ・コルテックス・・・皆を解放しろ!」
「それはできない相談だな・・・貴様等にはここで全員死んでもらわなければならないからな」
「な・・・!?」
「貴様等を生かしておいても我々には何のメリットもない。我々の目的は、自らのち・・・ゲフン!この宝石だからな」
コルテックスはそう言うと、ポケットから例のオパールを取り出した。
「・・・おいらはどうなってもいいから、皆だけでも助けてあげることはできないのか?」
「ほう・・・どうなってもいいんだな?」
「それで、皆が助かるならね!」
「よし分かった、考えておこう・・・だが、今から貴様にはある人物と戦ってもらう」
「ある人物?誰のことだ!?」
「それは会ってからのお楽しみだ・・・ワシについて来るんだ」
コルテックスはそう言うと立ち上がり、後ろを振り向き、歩きだした。
クラッシュも仕方なく彼の後ろを歩いていった。
部屋の奥まで来ると、コルテックスは壁のスイッチを押した。
すると、壁の一部が開き、中に小さな空間が現れた。どうやらエレベーターのようだ。
「フレイ、ニーナ、クランチ。三人はカメラで基地内の監視をしておいてくれ。恐らくまだあいつは来ないと思うが、念のためにな」
コルテックスはそう言って、部屋の一室にある大量のモニタを指差した。
そして、コルテックスはエレベーターに入った。クラッシュも続けて入って行った。
そしてしばらくすると、エレベーターの扉は閉まった。
「・・・それじゃあ、俺らも仕事するか」
フレイはそう言って、モニタの前に設置されている椅子に座った。
ニーナとクランチは、彼の両隣に立った。
モニタには基地の様々な地点の映像が映っていたが、三人は瞬時にある異変に気づいた。
「フレイ・・・玄関ホールのカメラが壊れているみたいね」
ニーナはそう言って、モニタの一つを指差した。玄関ホールが映っているはずのモニタには、砂嵐が流れていた。
「多分、リラ・ルーたちとクラッシュたちが暴れたからだと思うが・・・一応見ておくか」
フレイはそう言ってモニタの前のキーボードをいじった。すると、モニタに録画されていた玄関ホールの映像が映った。
クラッシュたちが入ってきた場面・・・ディンゴとウォーラスが、リラ・ルーたちと戦っている場面・・・そして、最後に予想外の映像が飛び込んできた。
「こ、これは!?まさか、アーネスト会長か!?」
と、フレイは驚きながら言った。そこにはアーネストと複数の兵士が映っていたのだ。
すると、アーネストがカメラに気がついたのか、銃のようなものをカメラに向けた。
そして、銃声と共に映像は途切れた。
「・・・もう、会長が到着したってこと?」
と、ニーナが言った。
「やっべぇな・・・もしコルテックスの作戦がばれたらとんでもないことになるぞ・・・よし、ニーナ。俺たちは会長を探しに行こうぜ!クランチは此処に残って監視カメラをチャックしていてくれ!これを渡しておくから!」
フレイはそう言うと、無線機をクランチに渡した。
「ああ、何かあったら連絡する」
と、クランチが言った。
「一応カタパルトにも連絡しておくか・・・」
フレイはそう言ってもう一つの無線機を手に持った。
「おい、カタパルト。聞こえるか?」
「・・・どうかしたか?」
無線からカタパルトの声が聞こえてきた。
「会長がもうやってきたらしい!今作戦がばれればかなりまずいことになっちまう!俺とニーナは会長を探しに行くから、カタパルトも何かあったら連絡してくれ!」
「・・・俺は行かなくていいのか?」
「この騒動をそこの連中に知られたら、それを利用されて脱獄されるかもしれないからな、カタパルトは引き続き監視を頼む!」
「・・・承知した」
そこで、無線は切れた。
「ニーナ、行こうぜ!」
「ええ!」
フレイとニーナは、部屋を飛び出して行った。
Vater基地内、牢屋にて。
「チッ、目の前に鍵があるって言うのに、どうすることもできねぇなんて・・・!」
ロックは、牢屋の中で歯痒い思いをしていた。
此処の牢獄は、一直線上の道の両隣に牢屋が設置されており、ロックの入っている牢屋は、他の部屋に行くための廊下に最も近い場所に設置されていた。
さらに、ロックの目の前は牢屋ではなく、机と椅子が設置されており、更に机の上には此処の牢屋の物だと思われる鍵束が置かれていたのだ。
「どうしたらいいだろうか・・・そうだ!」
ロックはここである方法を思いついた。
ロックは肩に乗っていたフェアーをそっと地面に降ろした。
「フェアー、あの机に置いてある鍵を取ってきて欲しいんだ。誰かの気配がしたらすぐ戻ってこいよ!」
と、ロックはフェアーに向かって言った。
フェアーは早速檻に近づいた。フェアーの小さな体にとって、檻の存在など無に等しかった。
フェアーはすんなり牢屋から出ると、あたりを見渡した。幸いにも誰もいないようだ。
フェアーはさっと椅子に飛び乗り、さらにそこから机の上に飛び移った。
そして、机の上の鍵束を咥えると、地面に飛び降り、ロックの元に戻っていった。
「よしよし、よくやった!」
ロックはフェアーの頭をなでると、フェアーの口から鍵束を取り、立ち上がった。
そして、牢屋から鍵束を持った右手を出すと、鍵穴に向かって鍵を差し込み始めた。
だが、中々差し込むことができない上に、どの鍵が正解かも分からなかったので、鍵を開けるのにはかなり苦労した。
更に不幸なことにも、何とその行動をすべて見ていた者がいたのだ。牢屋の斜め左部分には監視カメラが設置されており、全ての映像をクランチは監視し続けていたのだ。
「・・・カタパルトはいないみたいだし、俺が行くしかないか」
クランチはそう言って、部屋から急いで出て行った。
そんなこととが起こっているとは知らず、ロックは無我夢中で扉を開けようとしていた。
「これでもない・・・これはどうだ!」
ロックはそう言って鍵を差し込んだ。すると、鍵は奇麗に鍵穴に刺さり、カチッという音が鳴った。
「よっしゃ!」
ロックはそう言って腕を檻から抜き、扉をそっと押した。牢屋の扉はゆっくりと開いた。
「フェアー、行こうぜ。皆を助けないとな」
ロックはそう言って牢屋から顔を出し、辺りに誰もいないことを確認して牢屋から出て行った。フェアーは彼の後を追って行った。
ロックはまず隣の牢屋の前で立ち止まった。そこにはシクラメンが入れられていた。
シクラメンは、いきなりロックが現れたことにびっくりした。
「ロ、ロックさん!どうして・・・?」
「シィー!とにかく今から鍵を開けるから、待っていてくれよ」
ロックはそう言って鍵穴に鍵を差し込み始めた。鍵には番号など一切振られていないため、どの鍵かを調べるには総当りしかない。
「何で牢屋の鍵が一つ一つ違ってるんだよ・・・!」
ロックはいらいらしながら次々と鍵を差し込み続けた。
だがその時、最悪の事態が発生した。
「よく脱獄することができたな・・・」
何と廊下側から何者かの声がしたのだ。ロックは急いでその方向を向いた。そこにはクランチが立っていた。
クランチは物凄い速さでSAAをホルスターから取り出し、それと同時に銃声が鳴り響いた。ロックはあまりの早撃ちのスピードにどうすることもできなかった。
銃弾はロックの胸部にヒットした。ロックは後ろに倒れこんだ。
「ロ、ロックさん!!」
シクラメンは、一瞬の出来事に驚愕した。
「監視カメラに気づかないとは、愚かな奴だ!ハッハッハ!」
と、クランチは大笑いしながら言った。が、その瞬間更に銃声が鳴り響いた。
クランチは前に大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。クランチは急いで立ち上がり、後ろを振り返った。
それと同時に、何者かの影がクランチに向かって飛び蹴りをかましたのだ。足はクランチの頭部にヒットし、クランチは更に後ろに吹き飛ばされた。
流石のクランチも耐えることができず、その場で気絶してしまった。
シクラメンは、何が起きたのか全く理解できなかった。
「クソ、間に合わなかったか・・・」
何者かはそう呟くと、倒れたロックに近づいた。ロックは虫の息だったが、何者かの正体がわかった。
「あ、あんたは・・・カタパルトか・・・?」
正体はカタパルトだった。
「・・・もう少し早く着ていれば・・・すまないな」
「何で、敵のはずのあんたが・・・グッ!」
ロックは胸を押さえた。
「詳しいことは後だ、今はおとなしくしておけ」
「お、俺はもう無理だ・・・敵のあんたに頼むのもおかしい話だが、他の皆と、フェアーを助けてくれよ・・・」
ロックはそう言うと、ゆっくり目を閉じた。
「チッ・・・」
カタパルトは舌打ちをすると、ポケットから鍵を取り出し、シクラメンのいる牢屋の鍵穴に差し込んだ。どうやらマスターキーのようで、一発で鍵は開いた。
牢屋の扉が開くと、シクラメンは一目散にロックのところに行った。
「ロックさん・・・!ロックさん!」
シクラメンは必死でロックの名を呼びかけた。だが、ロックから返事は返ってこなかった。
「そ、そんな・・・」
シクラメンは目に涙を浮かべた。涙はシクラメンの頬を伝っていき、ロックの顔に落ちた。
フェアーは悲しそうにロックの頬に擦り寄っていた。
「・・・」
カタパルトは黙ったまま、他の牢屋の鍵を開け始めていった。
Vater基地内、廊下にて。
フレイとニーナは、廊下を走り回っていた。廊下の至る所にはVater組員の死体が転がっていた。
「この数・・・クラッシュたちだけでやったとは到底思えないわね」
と、ニーナが走りながら言った。
「・・・一つ気になることがあるんだよな。クリムゾンはどこに行ったんだ?」
と、フレイはグロックを構えながら言った。
「そういえば、いなかったわね・・・待って。だとしたら、この基地にはアーネスト会長とその護衛隊、そしてクリムゾンが潜んでるって訳!?」
「超危険だな・・・ん?」
フレイは突然立ち止まると、壁の方向を向いた。
「フレイ、どうしたの?」
「これ、まさかと思うが・・・」
と、フレイは壁にくっついてる何かを指差して言った。
「ん・・・フ、フレイ、これって、まさか、あの・・・」
「ば、爆弾だ!!」
そう、壁に設置されていたのは爆弾だった。爆弾からは電子音がかすかに聞こえる。どうやら時限爆弾のようだ。
フレイは他の壁も見渡した。壁の至る所に爆弾が設置されていた。
「これ、会長がやったの!?」
「恐らくな・・・会長の野郎、最初から俺たちのことなんて信用してなかったんだな・・・!」
「おやおや、Vaterのエリート二人じゃないですか」
突然、フレイとニーナの後ろから声が聞こえてきた。二人は急いで振り返った。
そこにはアーネストと、複数の兵士が立っていた。
「か、会長!!もういらしていたんですか!」
と、フレイは急に改まった態度でそう言った。
「さっき野郎呼ばわりしていたくせに、今更改まっても遅いですよ。さて、この状況、あなたたち二人ならどう理解しますか?」
「・・・殺す気満々って感じ?」
と、ニーナが言った。
「さすがコルテックスの姪、状況判断能力が高いですね。ご名答ですよ」
「あんた、おじさんをどうする気!?基地に爆弾なんか仕掛けて!」
「あいつはちょっと余計なことをしすぎた。これ以上生かしておいても、無駄なことをするばかりだろう」
「じゃあ、おじさんを殺すの!?」
「そうですよ。ああ、お葬式はきちんと行いますよ。コルテックスと、あなたの死体二つ同時に。では、僕はこの辺で行かせて貰いましょう」
アーネストはそう言うと、後ろを向いて立ち去っていった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
ニーナはそう言うと、アーネストに向かって走っていこうとしたが、兵士たちが立ち塞がった。
ニーナはその場で立ち止まり、後ろに数歩下がった。
「おいおい、俺たちと本気で殺り合う気か?いくら会長の護衛隊といっても、俺たちはVater戦闘員トップ3のうちの二人だぜ?」
フレイはそう言うと、グロックを構えた。
兵士たちはフレイの言葉に一切反応しないまま銃を構えている。
「フレイ、あたいの予想ではこいつ等は今から銃を撃ってくると思うんだけど」
「だろうな」
「もう、今こんな障害物のない状況で、銃を乱射されたらどうする気よ!」
「知らねぇよ。でも、今はこうするしかねーだろ!」
フレイはそう言った瞬間、グロックの引き金を引いた。銃弾は兵士の一人の頭部にヒットした。兵士は後ろに倒れた。
その瞬間、兵士たちは一斉に銃を撃ち始めた。
フレイとニーナは銃弾を避けようと後ろに下がろうとしたその時、突如フレイたちの目の前に巨大な音叉が降ってきた。その瞬間、音叉から衝撃波が発生し、フレイとニーナ、そして兵士たちは大きく吹き飛ばされた。
「いてて・・・何なんだよ一体」
「何が落ちてきたのよ・・・」
フレイとニーナは立ち上がり、後ろを振り向いた。そこにはエヌ・トロピーが立っていた。
「ちょっとストロングすぎたかもねぇ、ソーリー」
エヌ・トロピーはそう言うと、右手を前に伸ばした。すると、地面に突き刺さっていた音叉が瞬時にエヌ・トロピーの手に戻ってきた。
「エヌ・トロピーおじさん!生きてたんだ!」
と、ニーナが言った。
「まぁ、色々あってねぇ・・・それより、二人ともワタクシのバックにハイド!」
と、エヌ・トロピーが言った。フレイとニーナはエヌ・トロピーの後ろに回った。
兵士たちも続々と立ち上がり、エヌ・トロピーに向かって銃を撃ち始めた。
その時、エヌ・トロピーが音叉を地面に叩き付けた。すると、音叉からバリア状に衝撃波が発生した。
更にエヌ・トロピーは音叉で銃弾を弾き返していった。
「おい、バリアを展開してるのに銃弾を弾く必要なんてねーだろ?」
と、フレイが言った。
「そこでルッキングしていれば分かるさ・・・行くぞ!!」
エヌ・トロピーはそう言うと、音叉を真横に素早くなぎ払った。
その瞬間、衝撃波が刃の如く発生し、兵士たちに向かって飛んで行った。
衝撃波は兵士たちの体を次々と引き裂いていった。
「す、すごい!おじさんつよーい!」
「なるほど・・・銃弾を当てることで音叉の振動を増幅させていたのか・・・インテリの考えることは訳分かんねぇ。にしても助かった、悪いな」
「フッ、ユーたちみたいなヤングメンを見放すわけにはいかないからね、裏切り者のワタクシでも・・・ハッ!!」
「・・・ちょっと、おじさんどういうことよ」
と、ニーナが言った。
「ワタクシは金輪際イーブルなことはしないと決めたんだよ。だから、ここからこっそりエスケープしようとしていたところで、ユーたちを見つけたって訳だ」
「へぇ・・・それじゃあ、今から逃げる気か?」
と、フレイが言った。
「そのつもりだ。ユーたちも早くエスケープした方がいいと思うね。そこらじゅうに爆弾があって、いつボン!するか分からないからねぇ」
「そうだな・・・ニーナ、俺たちは脱出口の確保を優先しないか?」
と、フレイが言った。
「でも、会長をアーネストの元に行かせない様にしないと、おじさんが・・・・」
「それはカタパルトやクランチに任せればいいだろ?」
「それもそうね・・・」
「そうと決まれば実行だ・・・とりあえずカタパルトに連絡を取るか」
フレイはそう言うと、無線を手に持った。
「こちらフレイ、聞こえるか?」
「・・・良好だ」
「いいか、手短に話す。今コルテックスの元に会長が向かっている。会長はコルテックスを殺す気でいるから、何とかして会長を止めて欲しい。まぁ、屋上に通じるエレベーターのある部屋にはクランチもいるから大丈夫とは思うが・・・」
「・・・クランチはやられた。命に別状はないと思うが、恐らく洗脳は解けてしまったはずだ」
「何だって!?じゃあ、カタパルトだけで頑張ってくれ!俺たちは脱出口の確保に取り掛かる。コルテックスを救出次第下まで来てくれ」
「承知した」
無線はそこで切れた。
「よし、とりあえず外に出よう」
フレイはそう言うと、廊下を走っていった。ニーナとエヌ・トロピーも彼を追って走っていった。
Vater基地内、牢獄にて。
「承知した」
カタパルトはそう言って無線を切った。
牢屋に入れられていた者達も全員カタパルトによって救出され、カタパルトの持ってきていた各々の武器をセッティングしている最中だった。
「ロック・・・こんなところでお別れとはな・・・」
ヘルゼルはそう言うと、フェアーを抱きかかえた。フェアーは特に暴れたりもしなかった。
「フェアーちゃんは、ヘルゼルさんが預かる予定で?」
と、シクラメンが言った。
「ああ、私がしっかりと面倒を見ようと思う」
と、ヘルゼルが言った。
「カタパルト・・・どうして僕たちを助けたんだ?」
と、リタイラルがカタパルトに向かって言った。
「・・・ただの気紛れだ」
と、カタパルトが言った。クロックはその言葉を聞いて少し笑った。
「何がおかしい?」
と、カタパルトがクロックに向かって言った。
「格好つけないで、正直に言えばいいのに、って思っただけさ」
と、クロックが言った。
「・・・感情表現は苦手でな」
と、カタパルトが呟いた。
一方、ココは気絶しているクランチを起こそうとしていた。
「クランチさん、起きて」
ココはそう言ってクランチの体をゆすった。すると、クランチはゆっくりと目を開けた。
「う、うぅ・・・体が痛むな・・・」
クランチはそう言って、ゆっくりと立ち上がった。
「クランチさん、私たちのことが分かりますか?」
と、ザジが言った。
「・・・ああ、分かる。そして、すまない」
クランチはそう言って頭を下げた。
「マスター、洗脳されていたんだからこればかりはどうしようもないだろ?」
と、ポトリゲスが言った。
「いや、簡単に洗脳されるほどの弱い精神を持っていた自分も悪いからな・・・なんて詫びたら良いかわからねぇ」
と、クランチが言った。
「ロックも、事実を知ったら許してくれると思うよ」
と、ペタが言った。
「・・・これで全員だな」
と、カタパルトが言った。
「・・・とっとと保安官を助けに行くぞ。カタパルト、道を教えろ」
と、南はカタパルトを睨みながら言った。
「そう怖い目をするな。これからクラッシュバンディクーのいる屋上まで行く。そこにはクラッシュバンディクー、ザンナー、そしてVaterオーストラリア支部リーダーのネオ・コルテックスがいる可能性が高い。そして、今基地にはあるグループが爆弾を仕掛けて回っている。そいつ等の気分次第でいつでも基地は爆破可能な状態だ。屋上まで行けば、後は俺と御前達の目的を果たして脱出するだけだ」
「ちょっと待て、何故ザンナーがそこにいる」
「・・・詳しく話すと長くなる。要点だけを言うと、記憶が戻った結果だ」
「記憶が戻っただと?チッ、お前たちはとことん趣味が悪い。どうせ保安官とザンナーを戦わせようとしているんだろ?」
と、南が言った。南の発言に、皆は驚愕した。
「・・・勘が良いのか、全て知っていたのかのどちらかか」
と、カタパルトが言った。
「さあ、どっちだろうな。それより、早く道案内をしてくれ」
「分かった。俺について来い」
カタパルトはそう言うと後ろを向き、部屋を飛び出していった。他の者達も、彼の後を追って走っていった。
その様子を、またもや監視カメラを使って見ていた者がいた。アーネストだ。
「アップルタウンの面々も動き始めたか。彼等を失うのは多少もったいないが、これが最もリスクの低い作戦だからな」
その時、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。
「やっと来たか・・・屋上から此処まで3分もかかるなんて、設計ミスをしてしまったみたいだ」
アーネストはそう言って、エレベーターまで歩いていき、中に入った。そして、ボタンを押し、エレベーターのドアを閉めた。
アーネストは、エレベーターの中である銃を握っていた。
「英雄の証が、一転して裏切りの証になるのか・・・保安官の精神を壊すには、やはりこれだ」
アーネストの手には、ビロードの使っていたブラックホークが握られていた。
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