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クラッシュ・ウェスタン2 ~Leute beim Edelstein~
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最終章
2012/06/02(土)01:11:37(12年前) 更新
これより下は本編です
風が吹き乱れ、太陽は高い場所からギラギラと地面を照らす。
クラッシュとコルテックスは、Vater基地の屋上に立っていた。
屋上に柵は一切なかった。少しでもバランスを崩せば、地上に落ちてしまうだろう。
屋上の端に、一人の女性が立っていた。クラッシュはすぐにザンナーだと分かった。
「まさか、ある人物って・・・」
と、クラッシュが言った。
「そう、貴様は今からザンナー・ブリッツと戦ってもらう」
と、コルテックスが言った。
「ザ、ザンナーさんに何をした!また洗脳でもしたのか!」
「違うわ!あたいは洗脳なんかされていない!」
ザンナーは大声でそう言うと、クラッシュの方を振り返った。
「じゃあ、どうして・・・」
「これが、あたいの本当の姿だからよ」
「ど、どういうこと・・・?」
「ザンナーは元々殺し屋でな、ワシがザンナーに貴様を殺すように依頼したんだ。だが、途中でアクシデントが発生して、ザンナーは記憶を失った。そして今、ザンナーは記憶を取り戻したというわけだ」
と、コルテックスが言った。
「ザンナーさんが、殺し屋・・・!?」
クラッシュは驚きを隠せなかった。
「ザンナーは依頼を成功させることを望んでいる。だから、今から何をするか分かるな?」
コルテックスはそう言うと、クラッシュのSAAを取り出し、クラッシュの右手に握らせた。
「い、嫌だ!ザンナーさんと戦えるわけないだろ!彼女は、おいらたちの仲間だ!!」
クラッシュは訳が分からなかった。共に戦い、共に笑ってきたザンナーと、今では敵対関係にあるなんて、信じたくなかった。
「貴様が何もしなくてもザンナーは容赦なく貴様を殺すぞ。ワシは後ろで、ゆっくり観戦しておこう」
コルテックスはそう言うと、クラッシュから離れていった。
「クラッシュ、準備はいい?」
ザンナーはそう言うと、アタッシュケースを開け、中からバズーカを取り出し、弾を装填し始めた。
「ザンナーさん、どうしても戦う気なの?」
「当たり前でしょ。あたいはあんたを殺すために、ここにいるのよ」
「そんな・・・今まで仲間だったじゃん・・・」
「それはあくまで記憶を失っていたから仲間になっていただけじゃない!記憶が戻って、自分が何をすべきか分かった結果がこれなのよ!」
「・・・でも、おいらは、ザンナーさんを傷つけることなんて出来ない・・・」
「弱弱しいことを言わないで!あんたは、仲間から言われたことを忘れたの!?自分の身を最優先に考えろって、皆から言われていたじゃない!なのに、敵の目の前で、銃もロクに構えずに突っ立って、そんなにあっさり殺されたいわけ!?」
「そうじゃない!おいらは、ただザンナーさんと戦いたくないだけで・・・」
「もういい!あんたと話していたらこっちまでナヨナヨしてくるわ!あんたが戦う気がないなら、あたいはとっととあんたを殺すだけよ!」
ザンナーはそう言うと、アタッシュケースを地面に置き、バズーカをクラッシュに向かって構えた。
そして、クラッシュの足元に向かって撃ち放った。
「うわ!」
クラッシュはとっさに右に大きく避けた。バズーカ弾は地面に当たり、爆発を起こした。
爆風がクラッシュを襲い、クラッシュは後ろに吹き飛ばされそうになったが、クラッシュはぐっと足に力をこめ、何とかその場に踏みとどまった。
「さぁ、これでも戦わない気?あたいは本気なんだよ!」
と、ザンナーは叫んだ。
クラッシュは、ザンナーの一撃でついに目が覚めた。やらなければ、やられる。
「・・・戦うしかないのなら、おいらも本気で行かせてもらうよ!」
クラッシュはそう言うと、SAAを構えた。
「やっとその気になったのね。本気でかかってきなさい!」
ザンナーはそう言って再びバズーカの引き金を引いた。
クラッシュはそれを左に避けると、SAAを一発撃った。ザンナーは左にさっと避けた。
そして、一気にクラッシュに向かって走っていくと、バズーカを縦に持ち、思いっきり振り回した。
クラッシュは持ち前の身体能力を生かし、その場で空高くジャンプをし、砲身を避けた。
「すごい、あんたにそんな高い身体能力があるとは思わなかったわ」
ザンナーはそう言って、再びバズーカを構えると、宙を舞うクラッシュに向かってバズーカを撃った。
「これでも、保安官だからね!」
クラッシュはそう言うと、空中でSAAを構え、飛んで来るバズーカ弾を撃ち落した。バズーカ弾は空中で大爆発を起こした。
爆風でクラッシュは体制を崩したが、素早く空中で受身を取り、さっと地面に着地した。
「少し、あんたの戦闘能力を見縊っていたわ」
ザンナーはそう言って、バズーカをクラッシュに向かって構えなおした。
クラッシュも、SAAをザンナーに向かって構えた。
「でも、そろそろ終わりにしないとね」
ザンナーはそう言うと、バズーカの引き金を引いた。
クラッシュはバズーカ弾をSAAで見事に撃ち落した。が、その瞬間、あたり一面を白煙が襲い掛かった。
クラッシュはザンナーの姿を探したが、煙が濃すぎてどこにいるか分からない。
「そこよ!」
その時、ザンナーが一気にクラッシュに近づき、砲身で思いっきりクラッシュを突いた。
クラッシュは不意打ちを避けることが出来ず、後ろに吹き飛ばされた。
そして、クラッシュは地面に強く打ち付けられた。
「いたた・・・」
クラッシュはすぐに立ち上がると、そこにはバズーカを構えたザンナーが立っていた。
そして、ザンナーはバズーカの引き金を引いた。
「おっと!」
クラッシュはとっさにSAAを構え、引き金を引いた。
弾丸はバズーカ弾にヒットした。
その瞬間、クラッシュは引き金を引いたまま即座に銃鉄を左手で弾いた。
「ごめん」
クラッシュの早撃ちをザンナーは避けきることができず、二発目はザンナーの胸部にヒットした。
「えっ・・・」
ザンナーはバズーカを地面に落とし、地面に倒れこんだ。
辺りの白煙は、いつの間にか晴れていた。
「ザンナーさん!」
クラッシュは倒れたザンナーの元に駆け寄った。
「何よ、あんた。自分では弱いって言ってたくせに、十分強いじゃないの・・・」
と、ザンナーは小さい声で言った。
「ザンナーさん・・・」
クラッシュは自分がとんでもないことをしてしまったと思った。
「あたいも、もう腕が鈍っていたのかもしれないわね・・・」
「ザンナーさん、大丈夫?ごめんね、銃で撃ったりなんてして」
「何であんたが謝るのよ・・・ホント、あんたは優しすぎるわね」
ザンナーはそう言うと、傷口を左手で押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「でも、その優しさ、あたいは嫌いじゃなかったわよ・・・」
クラッシュはとてつもなく嫌な予感がした。
「あんたのお陰で、普通の女の子の感情を、持つことが出来たわ・・・短い間だったけど、とっても楽しかった」
ザンナーはそう言うと、屋上の縁にゆっくりと歩いていった。
「ごめんね、さっきまできつい事ばっかり言って。あんたを戦わせないと、あたいは、あんたを殺さなくちゃならなかったから」
クラッシュは泣きそうだった。
「ホントは、あんたと戦いたくなかった。でも、記憶が戻っちゃったから仕方がなかったの・・・本当に、ごめんね」
クラッシュはザンナーの元に走り寄ろうとした。
「今度は、普通の女の子として、ずっと一緒にいたいわ」
クラッシュはザンナーの腕を掴もうとした。
「今までありがとう、クラッシュ」
ザンナーの影は、屋上から消えた。
「ザンナーさーーーん!!!!!」
クラッシュは屋上から身を乗り出して下を見た。だが、人影は既に点となって消えていった。
「う、うぅ・・・ザンナーさん・・・」
クラッシュは目から涙をぼろぼろと流していた。
今回も、また仲間の犠牲で自分が助かってしまった。クラッシュの心の中にはとてつもなく大きな罪悪感と、かつてのトラウマで溢れかえっていた。
「ザンナーめ、ハナから戦う気など無かったのか・・・なら、ワシが殺すまでだ」
コルテックスは小さな声でそう言うと、うつむいて泣いているクラッシュの背中に銃を向けた。
その時、後ろで何かの物音がした。コルテックスはそれがエレベーターの音だと分かった。
「そこで一体何をしているんだい?」
コルテックスは声のする方向を恐る恐る振り返った。
「か、会長!これは、その・・・」
「貴様の言い訳なんて聞きたくない。死ね」
アーネストはそう言って、ブラックホークの引き金を引いた。銃弾はコルテックスの頭を正確に捉えた。
コルテックスは、銃を落としてその場に倒れこんだ。
クラッシュは、銃声を聞いてとっさに振り返った。
「え・・・?」
クラッシュは、もう何が起こっているのか理解できなかった。
「こんにちは、保安官さん」
アーネストはそう言うと、少し微笑んだ。だが、クラッシュはアーネストの目が笑っていないことに気づいた。
「そ、村長さん・・・どうしてここに?」
「保安官さんには、全てを話してあげましょうか」
アーネストはそう言うと、その場にしゃがみこんでコルテックスの服のポケットからオパールを取り出し、再び立ち上がると、クラッシュに近づいていった。
「村長さん、あなたは一体何者なんですか・・・?」
「アップルタウンの村長。それがあなたの思う僕の姿なんでしょう。でも、実は僕は、Vater会長、つまるところVaterを立ち上げた張本人ですね」
「村長さんが、Vater会長!?」
「如何にも。今回の事件、あなたは宝石目当てのVaterが、アップルタウンを襲っただけの単純明快な事件だと思っているはず。でも、実際は違う。アップルタウンを襲い、宝石を奪うように仕向けたのは、他でもなく僕の命令です」
「と、いうことは・・・」
「僕が黒幕ってことですね。大体不思議に思わなかったんですか?町の南側からも攻め込んできたVaterが、村長である僕をスルーするわけないでしょ?」
「・・・」
「まぁ、これだけ回りくどいことをしたことには理由がありましてね。それは保安官さん、あなたです」
「お、おいら・・・?」
「あなたは非常に強い。それはポトルーズの撲滅によって確証された。僕はあなたの強さを最大限まで引き起こさせたいと思いましてね」
アーネストはそう言うと、ブラックホークをクラッシュに見せ付けた。
「それは!?」
「保安官さん、君はまた一人の仲間の命を見捨ててしまったようだね。そんなことじゃあ、ビロードさんに示しがつかないんじゃないんですか?」
アーネストはそう言うと、ブラックホークをクラッシュに渡した。
「仲間のことをろくに考えることもできず、仲間が犠牲になって自分はのうのうと生き残る。口では保安官と言っているくせに、やっていることは下種の極みなんですよ、あなたは」
クラッシュは吐きそうになっていた。胸のうちから何ともいいがたい感情がどっとこみ上げてくる。
「どうです、いっそのこと楽になりませんか?あなたの持つ汚らわしい感情を全て正直に吐き出せばいいじゃないですか。僕と一緒に来れば、あなたは楽な気持ちで過ごすことが出来る」
「う、うぅ・・・」
「そのために、まずはあなたに一仕事してもらわないといけない」
アーネストがそう言ったその時、エレベーターの扉が開き、中からカタパルト一行がやってきた。
カタパルトは、地面に転がっていたコルテックスの死体を見た。
「遅かったか・・・」
と、カタパルトが呟いた。
「あ、あれって、村長さん!?」
と、クロックは驚きながら言った。
「・・・どういうことだ?」
と、ポトリゲスが呟いた。
「おやおや、皆さん揃ってわざわざ来てくれたんですか」
と、アーネストが言った。
「ついに本性を見せやがったか。手間かけさせやがって」
と、南が言った。
「おや、南さんは僕のことを知っていたんですか?」
と、アーネストが言った。
「知っていたも何も、お前を殺すためにアップルタウンに潜伏していたようなもんだ。お前が本性を見せたら殺そうと思っていたんだよ」
と、南が言った。
「あー!!この人、Vaterの一番悪い人じゃん!」
と、ペタが言った。
「ペタさん、村長さんのことをご存知なんですか?」
と、シクラメンが言った。
「この人、すっごく悪いんだよ!もう、言葉に言い表せないほどむごい事をしててね・・・」
「あなたは、誰ですか?」
と、アーネストが言った。
「あんたみたいな野郎に、名乗る名前なんてないね!」
と、ペタは今まで聞いたこともないような怖い声で言った。
「・・・とにかく、クラッシュさんをこっちに渡しなさい」
ザジはそう言うと、ワルサーをアーネストに向かって構えた。
「僕にそんなちゃちな物を見せても無駄ですよ。こちらには、保安官さんがいますからね。さぁ保安官さん、あなたの最後の大仕事です。その英雄の証を構えなさい」
と、アーネストが言った。
クラッシュは、アーネストに言われたとおり、ブラックホークをゆっくりと構えた。
「お兄ちゃん、どうしちゃったの!?もう村長さんは村長さんじゃないんだよ!敵なんだよ!そんな奴の言うこと聞いちゃダメ!」
と、ココが大声で言った。しかし、クラッシュは相変らずブラックホークを構えたままだ。
「ココさん、あなたの兄は所詮この程度なんですよ。結局は自分が一番楽になるほうに流れる、そんな野郎なんですよ」
アーネストはそう言うと、ニヤリと笑った。
アーネストは、このままクラッシュが思い通り動いてくれると思っていた。クラッシュはもう自分の思うがままに言うことを聞くと思っていた。
だが、クラッシュの意志はそこまで弱くはなかった。
クラッシュは、素早くアーネストに照準を向けると、アーネストの翼部分に銃弾を撃ち込んだのだ。
「なっ!?」
アーネストは予想外の展開に驚きを隠せなかった。
クラッシュは、急いで仲間たちの方に走っていった。
「おいらが、そこまで弱いと思ったら大間違いだ!もうおいらは、仲間を犠牲になんかしないんだ!」
と、クラッシュはアーネストに向かって言った。
「流石アップルシェリフ、男気だけは立派だな」
と、クランチが言った。
「クソ・・・僕に従っておけば楽になれたものを・・・まぁいい、保安官、貴様がそういう選択をするならどうぞ自由にしたらいい。でも、僕には宝石がある。それだけでも十分だ・・・」
アーネストはそう言うと、翼の傷を押さえながら、屋上の端まで歩いていった。
「アーネスト、どこに行く気だ?エミューのクセに空を飛ぼうってか?」
と、ポトリゲスが言った。
「黙れ、下種が。貴様等は此処で野垂れ死ねばいいんだよ・・・それじゃあ、永遠にさようなら」
アーネストはそう言うと、屋上から飛び降りたのだ。クラッシュたちはアーネストを見るために屋上の縁に行った。
アーネストは、予め仕込んでおいたのであろうパラシュートを開き、ゆっくりと地面に降りようとしていたのだ。
「・・・みんな、迷惑掛けてごめん」
と、クラッシュが言った。
「何謝ってるんだ、クラッシュ。村長・・・いや、アーネストの言うことを聞かなかっただけ十分さ」
と、クロックが言った。
「・・・話は後にして、今は脱出を優先すべきだ」
カタパルトはそう言うと、エレベーターに向かって走っていった。
「そういえば、何でカタパルトが・・・?」
と、クラッシュが言った。
「カタパルトは気まぐれだからさ、僕たちのことを助けてくれたんだ」
と、リタイラルが言った。
「そうなんだ・・・よし、それじゃあ皆で脱出しよう!」
クラッシュたちは、エレベーターの中に入って行った。
Vater基地内、玄関ホールにて。
フレイ、ニーナ、エヌ・トロピーは、玄関ホールまでやってきた。
途中で何回か敵と出会い、戦闘を行っていたため三人ともかなり疲れていた。
「はぁ、はぁ・・・此処まで来れば、後は外に出るだけだな・・・」
と、フレイが言った。
「そうね・・・ん、あれって・・・?」
ニーナはそう言うと、ある方向を指差した。フレイとエヌ・トロピーはその方向を向いた。
床の上にディンゴ、ウォーラス、リラ・ルーの三人が倒れていた。
「アップルタウンのデカ物三兄弟じゃねぇか。会長にやられちまったのか?」
フレイはそう言って、ディンゴに近づいた。ディンゴはイビキをたてながら眠っていた。
「どうやら、スリーピングさせられたみたいだね」
と、エヌ・トロピーが言った。
「フレイ、どうする?」
と、ニーナが言った。
「別にほっといていいだろ。俺たちには関係ない野郎だし・・・」
「ウェーィッツ!!罪無き一般ピーポウのライフを、ユーは見捨てるつもりなのかい?」
「な、何だよ急に」
「さっきも言ったとおり、ワタクシはもうイーブルパーソンじゃなく、ジェントルマンなのだよ。ジャントルマンたる者、アザーピーポウのライフは助けるべきだと思うんだよ」
「・・・もういい、勝手にしてくれ」
「よし、じゃあ早速ゲッツアップさせよう。ヘイ!ゲッツアップ!」
エヌ・トロピーはしゃがんでディンゴの肩を叩いた。
ディンゴが、ゆっくりと目を開けた。
「ふわぁ・・・よく寝たぜ・・・ハッ!」
ディンゴは、三人の姿を見て素早く飛び起きた。
「てめぇら、おれっちはいつでも戦えるぜ!」
ディンゴはそう言ってファイティングポーズをとった。
「いや、もうお前等と戦う理由はない」
と、フレイが言った。
「はぁ?」
ディンゴは構えを解いた。
「とにかく早く脱出しねぇと、死ぬぜ?他の奴等をとっとと起こして、俺たちについて来いよ」
「何だかよく分からねぇし、保安官どもはどうなったんだよ?」
「そうよ、フレイ。おじさんたちの様子が心配だわ!」
と、ニーナが言った。
「確かにそうだな」
フレイはそう言うと、無線機を手に持った。
「こちらフレイ。カタパルト、聞こえるか?」
「・・・エレベーターの中だから電波が悪いな」
「そうか、それで、コルテックスはどうなった?」
「・・・一足遅かった」
「そ、そんな・・・」
ニーナはそう言って、その場で項垂れた。
「マジか・・・会長は?」
「屋上から逃げた。恐らく自家用飛行船か何かでどこかに逃げるつもりだ」
「分かった。それで、クラッシュたちは?」
「・・・何という答えが欲しい」
「別に何でもいい」
「・・・ザンナーと、ロックという男を除いて全員無事だ」
「カ、カタパルト、それはどういうことだ?まさか、全員助けたとかじゃあ・・・」
「・・・悪いか」
「いや、カタパルトってそんなお人よしな性格だったっけと思ってな。それじゃあ、早急に飛行場まできてくれ。大型飛行船を待機させておくから」
「・・・承知した」
無線はそこで切れた。
「・・・ニーナ、とにかく今は脱出優先で行こうぜ」
と、フレイは項垂れているニーナに向かって言った。
「・・・アハハ、まさか、こんなにあっさりおじさんが死んじゃうなんてね」
「そうだな、コルテックスの死は予想外だった」
「・・・あんたには、家族っているの?」
「いきなりどうした?」
「おじさんがいなくなっちゃったから、もう、あたいと血の繋がった人間は誰もいなくなっちゃたのよね・・・もう、これからあたいは一人ぼっちなのよ」
「・・・」
「恐らくあたい等はVaterから追放されるでしょ。あんたやカタパルトには頼る身がいるかもしれないけど、あたいにはもう頼る人なんて誰もいないのよ!あたい、これから、どうしていいか、全然分からないのよ・・・」
フレイは、ニーナが泣いていることに気づいた。
ニーナはまだ若い。小さい頃からVaterに所属し、ありとあらゆる非道なことをして来たとはいえ、中身は普通の女の子だ。
そんな彼女にとって、頼る身が一切ないという事実は、相当不安なのに違いない。
「・・・一人ぼっち?何言ってんだよ。二人ぼっちの間違いだろ」
「え・・・?」
「一人ぼっちが嫌なんだったら、今までどおり俺と一緒にいればいいだけじゃねぇか」
「フレイ・・・!」
ニーナは、フレイに思いっきり抱きついた。
「い、痛い、痛いって!背骨が砕けるって!」
「あ、ごめんごめん!じゃあ、早く逃げるわよ!」
「よし、そうと決まれば早く行くぞ!」
ニーナとフレイは、そのまま外に向かって走っていった。
二人のやり取りを見て、エヌ・トロピーとディンゴはずっとニヤニヤしていた。
「いやぁ、若いっていいもんだな・・・って、とっとと脱出だ!」
ディンゴはそう言って、ウォーラスとリラ・ルーをたたき起こし、外に向かって行った。
「ちょ、ワタクシを忘れないでほしいね~!」
エヌ・トロピーも息を切らしながら必死に走っていった。
Vater基地内、一室にて。
クラッシュたち一行はエレベーターから降り、部屋から出ようと扉の前まで走っていった。
クラッシュは扉を開けようとしたが、扉はびくともしない。
「だ、ダメだ!全然開かない!」
「どけ」
カタパルトはそう言ってクラッシュを押しのけると、M1887を構えて扉に向かって引き金を引いた。
だが、それでも扉は開く気配がない。
「・・・閉じ込められたか」
と、カタパルトが呟いた。
その時、部屋に設置されていた巨大モニターが光った。
モニターには、何とアーネストが映っていた。
「やあやあ、愚民ども」
背景から察するに、恐らく飛行船のコックピットに座っているのだろう。
クラッシュたちは、モニターの方を見た。
「早く逃げないと、爆発に巻き込まれて死んじゃうと思うけど?あ、そうか。僕が貴様等を閉じ込めていたんだったね」
「どういうことだ・・・?いつの間に鍵をかけやがった?」
と、ポトリゲスが言った。
「基地の持ち主がいつ裏切ってもいいように、この基地の全ての扉には、遠隔操作が可能なロックシステムがあってね。こいつのお陰で、自由に操作することが出来るのさ」
アーネストはそう言って、何かの端末を見せ付けた。
「・・・クソが」
と、カタパルトが呟いた。
「その部屋には、屋上に通じているエレベーターと、廊下に出るための扉しかないから、他の脱出口を探しても無駄だよ?貴様等の命運もそこで終わりというわけさ、ハッハッハ!」
と、アーネストは大笑いしながら言った。
その時、モニターからアーネストとは違う男の声が聞こえてきた。
「・・・宝石を渡せ」
男の声は聞こえるが、画面には映っていない。
「一体誰だい?Vaterの生き残りか、それとも玄関で寝ていたアップルタウンの愚民かい?どちらにしても、僕は宝石を渡す気はないけどね」
アーネストは視線をこちらに向けたままそう言った。
「・・・なら」
男の声と共に、モニターの端から銃口が延びてくるのが確認された。
「ほう、僕を撃つ気かい?村長であり、Vaterのリーダーである僕を撃つことができるのかい?今すぐ謝れば、許してあげてもいいけど?」
アーネストはそう言って声のする方を向き、固まった。
「お前に何の思い入れなどない。俺にとってはただの障害なだけだ」
男がそう言った瞬間、銃口から閃光が発せられた。
「キャア!!」
シクラメンはとっさに顔を背けた。銃口はアーネストの頭を確実に捕らえていた。
男はアーネストのポケットの中に入っていたオパールを奪い、端末を手に持つと、アーネストの死体を操縦席から蹴り飛ばした。
そして、男が操縦席に座った。
「・・・最後まで何をしでかすか分からない野郎だ」
と、南が呟いた。操縦席に座っていたのはクリムゾンだった。
「・・・カメラか?何故お前たちが映っている?まぁいい。お前たちも早く逃げたほうがいい。今回は命は見逃してやる」
と、クリムゾンが言った。
「逃げることが出来ればとっとと逃げてるっつーの」
と、リタイラルが言った。
「クリムゾン、その端末を使って、此処の扉を開けて欲しいんだけど・・・」
と、クラッシュが言った。
「・・・閉じ込められたのか。ちょうどいい」
と、クリムゾンが言った。
「ちょうどいいって、まさかこのままにしておく気か?」
と、ヘルゼルが言った。
「いや、やはりやめておこう。南もいることだしな」
「・・・何だよその理由」
と、南が嫌そうな顔をして言った。
クリムゾンは端末をいじり始めた。
「・・・これで全ロックが外れたはずだ。至る所に時限爆弾が仕掛けられているから早く脱出しろ。Vaterの生き残りは全員避難し終わったらしいから、逃げることだけに専念するんだな」
と、クリムゾンが言った。
「クリムゾン、どこに行く気だ?」
と、南が言った。
「・・・自分で探せ。いつでも待っている。それじゃあ、またな」
クリムゾンがそう言って、モニター前方に手を伸ばした。そして、モニターの電源は切れた。
「・・・チッ、面倒な野郎だ」
と、南が言った。
「ホントお前好かれてるな」
と、ポトリゲスが言った。
「あんな野郎に好かれるなら死んだほうがマシだ」
と、南が言った。
「・・・とにかく脱出だ」
カタパルトはそう呟き、扉に近づき、勢いよく蹴り開けた。
「俺について来い。二分あれば脱出できる」
カタパルトはそう言って部屋を飛び出していった。他の者達も次々と部屋を飛び出していった。
Vater基地、飛行場にて。
巨大な飛行船一機が飛行場に止まっていた。
中にはフレイ、ニーナ、ディンゴ、ウォーラス、リラ・ルー、エヌ・トロピーが乗っていた。
フレイは操縦席に座り、様々な機械をいじっていた。
「・・・よし、いつでも離陸可能だぜ」
と、フレイが言った。
「後はポトリゲスたちを待つだけね・・・大丈夫かしら」
と、ニーナが言った。
「・・・お、あれ保安官たちじゃねーか!!」
ディンゴはそう言って、飛行船の窓の外にかすかに見えるクラッシュたちを指差した。
「ホントや。それじゃあ、乗り込み口を開けるわ」
リラ・ルーはそう言って乗り込み口を開けた。
しばらくして、クラッシュたちが次々と飛行船の中に入ってきた。
「はぁ、はぁ・・・皆、お待たせ!」
と、クラッシュが言った。
「全く、遅すぎるぜ・・・ん、ザンナーとロックはどうした?」
と、ウォーラスが言った。
「二人は・・・助けることが出来なかったんだ」
と、クラッシュが言った。
「そうなのか・・・残念だな・・・」
と、ウォーラスが言った。
「おい、とっとと逃げようぜ?早く乗り込み口を閉めろって」
と、フレイが言った。
「よっしゃ、閉めるで」
リラ・ルーはそう言って乗り込み口を閉めた。
「よし、飛ばすぜ・・・!」
フレイがそう言った瞬間、飛行船を繋いでいたロープが切断され、飛行船のプロペラが回り始めた。
そして、飛行船はゆっくりと浮かび上がった。
その時、遠方から凄まじい爆発音が聞こえた。
クラッシュたちは窓から外を見た。基地が煙を上げて燃えているのが確認できた。
「危機一髪ってところだね・・・」
と、クロックが言った。
「んで、これからどうするの?」
と、ペタが言った。
「アップルタウンまで送ってやるよ。半日もあれば着くと思うから、休んでおけよ。俺たちはもう何もしねぇからさ」
と、フレイが言った。
「・・・やっぱりおいら、納得できないんだ」
と、クラッシュが言った。
「アーネストのことか」
と、南が言った。
「ああ、一体アーネストが何をしたかったのか、いつからVaterのトップとして暮らしていたのか、どうしても気になるんだ」
「確かに今回の事件は複雑だな。いくら終わったこととはいえ、このままじゃあ俺様もどうもパッとしねぇ」
と、ポトリゲスが言った。
「・・・かなり長い話になるぞ?」
と、南が言った。
「お願い、事件の全容を聞かせて」
と、クラッシュが言った。
「それじゃあ、まずはVaterが出来た頃の話からだが・・・その点についてはVaterのが詳しいんじゃねぇのか?」
その言葉を聞いたニーナが、南のほうを向いた。
「そうねぇ、じゃああたいが話してあげる。Vaterを創立したのは、紛れもなくアーネスト本人。確か今から8年くらい前だったはずね。アーネストがVaterを創った理由はよく分からない。世界征服、なんて漠然としたな考えを持っていたのかもしれないし、単純に力と金がほしかったのかもしれない。
さて、あたいやおじさんのコルテックスがVaterに加入したのはほぼ同じくらいの時期ね。おじさんがVaterに入ったのは、研究資金が欲しかったかららしいの。アーネストは多額の研究資金の投資と引き換えに、Vater加入を条件としたらしい。口封じを容易く行うためか、人員確保のためかのどちらか、あるいは両方でしょうね。
Vaterの本拠地って言うのは特に決まっていなかった。Vaterのメンバーはアーネストが買収した軍隊の基地や、研究所なんかに配備されたりした。
そして、アーネスト自身はオーストラリア西部に農場を作ったのよ。彼が言うには、表の顔を作っておく必要があることと、Vaterにとって最大の脅威であるギャングたちの抗争を監視するためだったらしい。彼はそれから研究者の力を借りて、ある農作物を完成させた」
「それが、デザートアップルってわけだな」
と、クランチが言った。
「そうね、確かそんな名前だったと思う。あたいが話せるのはここら辺までかしら」
「なら、次は俺が話すとするか」
クランチはそう言って話を始めた。
「今から7年前くらい、ここにいる中でその頃のアップルタウン付近を知るのは俺くらいだな。
オーストラリア西部では熾烈なギャング間の抗争が行われていた。俺たち一般人に危害が加わることはなかったが、いつ町が戦場になってもおかしくないような状況だったんだ。
そんなある日、俺たちの住んでいた町にある男がやってきた。アーネストだ。彼は近くで農場を経営している者だと言っていた。
アーネストは俺たちと手を組んで、ある町を作らないかと言って来た。デザートアップルという特産品を栽培して生計をたて、更に塀で周りを囲まれた町を作ることでギャングたちの争いに巻き込まれないようにする、そんな町作りをしないかってな。しかも町を作るための費用はアーネスト自身が負担し、俺たちは建設の作業だけをすればいいって条件でだ。今考えてみれば、アーネストが自分の身を守るためにとった策だったんだよな。Vaterのトップが野放しじゃあいつ殺されもおかしくないしな。
訳の分からない男の話なんて信用したくなかったんだが、砂漠で栽培可能な林檎を見たときは度肝を抜かれた。今までそんな夢のような作物を見たことがなかったからな。
俺たちはあっさりと同意して町作りを行った。約一年で町は完成。その町こそがアップルタウンだ。巨大な塀に囲まれ、荒野のど真ん中で農業を営む異質な町、それがアップルタウンのイメージだ。
安全かつ確実な仕事があるってことで瞬く間に移民が増えていった。それこそバンディクー一家や、ディンゴ、リラ・ルー、タイニーの三人、そしてビロードといった面々もこの頃にやってきたって訳だ。ウォーラスが来たのは移民ラッシュより少し遅れた頃だな。そして、今から約5年前、ある男が町にやってきた」
「・・・俺のことか」
と、南が言った。
「そうだ。いやー、お前が始めにやってきたときは大変だったんだぜ?町の住民に斬りかかろうとしたり、話しかけても無視されたりしてな」
「・・・悪かったな。あの頃は誰も信用できなかったんだ。
俺がアップルタウンなんて町に来た理由、それは二つだ。一つはVater会長であるアーネストの殺害。俺にとってVaterの存在は邪魔だったからな。ある場所でアーネストがオーストラリアの町に潜伏しているって聞いて、アップルタウンまでやってきた。
俺は自分の目を疑った。Vaterのお偉いさんがツナギを着て農業なんかしていたからな。
とっとと殺して帰るつもりだったが、その状況ではアーネストがVaterの会長と言い張っても誰も信用してくれなかっただろうし、何よりその町に証拠が一つもなかった。仕方ないから俺はもう一つの目的を果たすついでに、アーネストが本性を見せるまで町に住むことにしたわけだ。
もう一つの理由は、宝石だ。かつて俺は宝石を探すために世界を周っていた。最終的に、俺は宝石はオーストラリアにあると睨んで、アップルタウンにまでやってきた。
ちなみにクリムゾンとは世界を周っている時に知り合った仲だ。
さて、俺がアップルタウンに来てからは、しばらく大きな事件はなかったはずだ。クラッシュが保安官に就任するみたいなことはあったけどな。
大きな動きがあったのは、今から1年前、あの事件だ」
「・・・ポトルーズとの戦いだね」
と、クロックが言った。
「なら、そこの細かい話は俺様がしようか」
ポトリゲスはそう言って話を始めた。
「今から1年半位前、オーストラリアで起きていたポトルーズや他のギャングたちの領土争いが終結した。結果はポトルーズがオーストラリア全土を支配することで収まった。
俺様はそれまでポトルーズのメンバーとして常に戦っていた。はっきり言っていつ死んでもおかしくない状況だったな。だが、そんな戦いの中で自分はいつの間にかポトルーズというギャングのメンバーであることを誇りに思っていた。最強、無敵、それが自分の中でのポトルーズのイメージだった。
だが戦いが終わった途端、ポトルーズは変わった。まず手始めに付近の町を潰していき、捕まえた者達は売り払う、そんな腐れ外道なことを始めたんだ。
次に行ったのは大規模な森林伐採。元々木の少ないところに本拠地を構えていたんだが、更に木を伐採したために、オーストラリア西部はほとんど緑が消えたな。木を伐採した理由は、例の要塞を作るためだ。
俺様はそんな糞みたいなことをしたくなかった。俺様だって罪もない奴等を殺すことはしたくなかったからな。
そして遂にアップルタウンへの侵攻命令が俺様に下された。そして俺様は遂に耐えられなって、アップルタウンに寝返ったわけだが・・・今思えばアップルタウンへの侵攻の最大の理由は、Vater会長であるアーネストを殺すためだったんだろうな」
「そうだそうだ、丁度ギャング間の抗争が終わり、ギャングたちの矛先が俺たちVaterに向いたんだよ。俺はその頃にVaterに入って、地獄を見たからな。毎日が負け戦。その頃のVaterはホントに弱かった」
と、フレイが言った。
「それまではギャングとの戦いで必死だったからな。ある程度気が収まったところで、Vaterを潰すつもりだったんだろうな。結局、俺様が寝返った上に、アップルタウンの住民の予想以上の戦闘能力の高さ、更にザジやリサと言った面々の加勢によってギャングたちは返り討ちにあって全滅ってわけだ」
「そこから俺たちVaterは飛躍的に戦力を向上させていった。ギャングがなくなったことで途方にくれていたワルどもを積極的に招き入れたことによって大幅にVaterは大きくなっていった」
「丁度そこら辺で、カタパルトが僕の目の前から姿を消した」
と、リタイラルが言った。
「・・・いきなり俺のことか。俺がVaterに加入したのはその頃だ。俺は単純に稼ぎのいい職に就きたかっただけだ」
と、カタパルトが言った。
「カタパルトも始めはまぁ怖かったぜ。何も喋らないし、目つきは怖いしな」
と、フレイが言った。
「・・・もう俺の話はしなくていいだろ」
と、カタパルトは少し嫌そうな顔をして言った。
「Vaterはドンドンと成長していき、最終的に誰もが知る悪の組織というイメージがついたのよね。
そして、一ヶ月前にアタイ等にアーネストから重大な任務が下される」
と、ニーナが言った。
「・・・それが今回の事件ですね」
と、ザジが言った。
「そう、事の発端はあの宝石が見つかったということだった。あたい等は宝石の価値なんてまったく知らなかったんだけど、アーネストが言うには世界を変える事ができるほどの力があるらしいわね」
「如何にも。あの宝石の力は絶対に使用してはならない物なのです・・・」
「・・・そろそろ、あの宝石の真実を話してくれよ」
と、南が言った。
「・・・あの宝石には世界で起こった全ての出来事が封印されている。宝石自身に物理的な力はないけれど、あの宝石を使えば、ありとあらゆることを知ることが出来る。
恐らく、その力を応用して、ザンナーさんの記憶を呼び覚ましたのでしょう。ザンナーさんに起こった出来事をザンナーさんに見せたことで、ザンナーさんを記憶を呼び戻したように錯覚させた。それが引き金となって、ザンナーさんの感情も呼び戻すことが出来た。あくまで私の予想ですけどね」
「そんな力があったの・・・おじさんから、宝石を見せろって言われたからその通りにしたんだけど、そんなことが起こっていたのね・・・」
と、ニーナが言った。
「その宝石を使えば、今起きていることも全て知ることが出来るのか?」
と、ヘルゼルが言った。
「恐らく、今も全ての出来事を吸収しているでしょうね。ですが、私の任務はあくまでもあなたたちを助けることであり、宝石の管理は管轄外。私が手出しできるほどの問題ではないのです」
と、ザジが言った。
「とんでもない物をクラッシュは見つけたんだな・・・安易に手放さなくてよかったかもしれない」
と、クロックが言った。
「でも、あの宝石のせいで今回の事件がおきてしまったんだよね」
と、クラッシュが言った。
「アーネストの立てた作戦は二つ。一つは宝石の強奪、そしてもう一つはクラッシュを誘き出す事だった。手始めにアーネストはわざと宝石の存在を世界中に発信した。そうすれば、おのずと人も集まる。そして俺たちVaterも自然な形で町に侵攻できるからな。宝石のある町に悪役がやってくるのは至極自然な流れだからな。
今回の作戦の実行グループは俺たちの支部が任命された。多少複雑だが、決して難しくはない任務のはずだったんだ。コルテックスの裏切りがなければな」
と、フレイが言った。
「裏切り・・・?内ゲバでも起こす気だったのか?」
と、ポトリゲスが言った。
「おじさんはアーネストに従う気なんて元からなかったのよ。おじさんの目的はあくまで研究資金だけ。だからいつ裏切りをかけてもおかしくなかった。
おじさんはアーネストの作戦内容を全て知っていたから、今回のキーパーソンであるクラッシュの存在も知っていた。
おじさんはクラッシュを殺すことで、アーネストの描くシナリオをメチャクチャにしようとした。でも、結局アーネストに見破られて、殺されちゃったのよ。そして、現在に至ると」
「アーネストは、クリムゾンに殺されちゃって、Vaterももう終わりだね」
と、ペタが言った。
「・・・それにしても不思議なものだ。今まで敵対していたのに、今はこうやって互いに情報交換をしているんだからな」
と、カタパルトが言った。
「もう、戦うことに意味なんてないからね・・・」
と、クラッシュが言った。
「・・・いや、まだ俺には残っている」
と、南が言った。
「クリムゾンか・・・」
と、ポトリゲスが言った。
「あいつを早く止めなければ、何をしでかすか分からないからな」
「・・・町を出る気か?もしそうなら、俺様もついて行くぜ。南一人じゃ厳しいかもしれねぇしな」
「いや、俺一人で行く。あいつを止めることができるのは、俺だけだからな・・・」
南はそう言って、飛行船の窓から外を見た。太陽は少しずつ地平線に沈みつつあった。
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