人見ています。 |
Individual Way of Life ~個々の生き様~
|
- TOP
- >
- リボルバー
- >
- Individual Way of Life ~個々の生き様~
- >
- 二月八日
もみみ(4年前)
バート・ラマー(5年前)
2199(6年前)
2199ノークラ(6年前)
クラットン2(6年前)
ココバンディクー(7年前)
水無月ニトロ(7年前)
RITAL(8年前)
イエクラ(8年前)
asRiche3j8bh(8年前)
テトラピアノ(8年前)
asRichp4zuit(8年前)
オリキャラ短編集協会(8年前)
asRichg3gtwn(8年前)
わいるどた~ぼ(8年前)
asRichajohom(8年前)
ショートケーキ(8年前)
asRichw7ffmu(8年前)
スティックス・ザ・バジャー(8年前)
asRichqi316v(8年前)
asRichct3qjk(8年前)
リボルバー(9年前)
ぽぴゅらあ(9年前)
りんごっち(9年前)
sasuke(10年前)
回転撃(10年前)
ルイカメ(10年前)
ヴァイオレット(10年前)
えぞももんが(/・ω・)/(10年前)
隼人 (10年前)
まんじねーしょん(10年前)
CURA(10年前)
ハートオブハート(11年前)
フレイム(11年前)
ゲーマー(11年前)
クラットン(11年前)
ひろき(11年前)
ひろき(11年前)
HIROKI(11年前)
GGGGGGGGG(11年前)
IA・N(11年前)
かめちき(11年前)
霧雨(11年前)
てんし(11年前)
昇太/神馬当瑠(12年前)
風のクロノア(12年前)
オリキャララジオ放送社(12年前)
ここなっつココ(12年前)
いお太(12年前)
テクノしん(12年前)
リレー小説委員会(12年前)
ここなっつ(12年前)
気まぐれCocoちゃん(12年前)
たクラッシュ(12年前)
ダークネス(12年前)
早川昇吾(12年前)
しんごwww(12年前)
サム(12年前)
クランチバンディクー(12年前)
闇っぽいけど闇じゃない。永遠の炎の神様メフィレス(12年前)
イエクラ.com(12年前)
イエクラ@山手(12年前)
回転撃(12年前)
二月八日
2012/08/07(火)21:13:07(12年前) 更新
The Exitence of Absolute Evil ~Devil Family編~
裏社会を思うがままに支配し、恐怖政治で街を恐れさせる「Devil Family」
だが、その恐怖もまもなく終焉を迎えようとしている。
組織の崩壊の危機は、刻一刻と迫ってくる・・・
朝、ビスカントは自身の部屋で誰かと電話をしていた。
「・・・ほう、早速やる気かい?」
「ええ、こういうことはとっとと終わらしたほうがええやろと思いまして」
「成程ねぇ・・・うーむ、まあいい。こちらも少し暇でねぇ」
「そうでっか、そりゃあよかったですわ。で、日程でっけど、明日とかどないでっか?」
「明日かい?それは幾らなんでも急過ぎやしないかい。やっぱり準備というものは必要だろ?」
「それが、ちょっとええ話を聞きましたんや」
「ん、何だい?」
「実は、竜の所のボスのコモド・ジョーはレースが好きやって聞いたんですわ」
「ほう、つまり十二日のレースにその男を誘き出して、仕留めるという寸法かい?」
「そうなんですけど、はっきり言ってこの街のレースなんて態々国外から足を運ぶほどでっかいもんやないやろ?せやから、ジョーがこの街に来る理由を作るんですわ」
「・・・面白いねぇ。じゃあレースまでにモーを殺したいと?」
「そうですわ!さすがビスカントはん、よう分かってますわ!流石にモーが死んでもたらジョーもこっちに来るやろうって寸法ですねん」
「そういうことなら、多少無理をしてでも明日行動に移したほうがいいだろうねぇ。分かった、じゃあ詳しい話は今日の十九時、ショッピング街中央のグリーンウッドビルで」
「グ、グリーンウッドって、ビスカントはんのところが持ってる超一等地ビルやないですか!ワ、ワテ等が入ってももええんですか?」
「そりゃあ勿論。何てったって、君達の所とは同盟を結んでいるからねぇ」
「ホンマ、同盟様様やわ・・・おおきに、ではまた後で」
電話は其処で切れた。
「・・・さて、次は・・・」
ビスカントがそう言った時、部屋の中にフレイが入ってきた。
「よぉ」
と、フレイは相変わらず軽いノリでビスカントに向かって挨拶した。
「やれやれ、本当に礼儀知らずな男だよ。無礼ホークに改名したほうがいいんじゃないのかい?」
「ん、いきなり親父ギャグをかましてくるなんてどうした?人間しょうもないギャグを言うようになったらもうおしまいだぜ?」
「・・・全く、こうも気分を害する男もそういない。それで、一体何の用だね?」
「例の麻薬の話。明後日には持って来れるそうだってよ」
「ほぅ、そうかい。そういえば、何処に依頼したんだい、麻薬強奪の件」
「南の所。ああいう仕事はあいつに任しとけばどうにでもなるだろ?」
「確かにねぇ・・・南・・・実にいい人材だ・・・」
「あ?」
「あの男ぐらい何でも出来る部下がいれば、もっと我々は勢力を大きくできそうだけどねぇ」
「ハン、嫌味かよ」
「願望さ。さてと、話は変わるが、クランチのほうは・・・」
「クランチさんは、まだ少し怪我のほうが・・・!」
そう言いながらドタバタと部屋に入ってきたのはアネットだった。
「アネットちゃ~ん、タイミングが良すぎるねぇ」
「いえ、そこを歩いていた時に、クランチさんという単語が聞こえたので、つい・・・」
「ヘッ、クランチは、可愛い部下に恵まれて幸せもんだな」
と、フレイが言った。
「とにかく、流石にまたクランチを駆り出すのは酷だからねぇ。どうだい、フレイ、今日の会合に来ないかい?」
「ああ、会合ってアレだろ?椅子に座ってオッサン共のしょうもねぇ話をじっと聞かないといけない奴だろ?出てくる飯は不味いし、拷問と変わらねぇじゃねぇか」
「・・・フレイ、そしてついでにアネットちゃんにも今伝えておこう。明日、予定では竜の所と一発やるつもりだ」
「え、Dragon Familyとですか・・・!?」
と、アネットが言った。
「ああ、そうさ。だから今回の会合は、実質明日の作戦会議みたいなものさ。だから、一人ぐらい実戦部隊を連れて行っておいたほうがいいと思ってねぇ」
「何だよ、それを先に言ってくれよ。そういう話だったら喜んで参加してやるぜ?」
「そうかい、そりゃあ良かった。じゃあ今回の会合にはフレイに来てもらおう。アネットちゃんは、お留守番を頼むよ」
「は、はい・・・それにしても、本格的な抗争は初めてです・・・」
「その点は心配すんなって。此処にいる時点で勝ちは保障済みだからよ」
と、フレイが言った。
「それって、どういうことでしょうか・・・?」
「アネットちゃんは、新米にもかかわらず自由にボスである私の部屋に出入りしている。そして、私はそのことを別に何とも思っていない。どうしてか分かるかい?」
と、ビスカントが言った。
「・・・すみません、分かりません・・・」
「それだけ、信頼されてるってことだろ?腕も立つし、誠実だし、典型的なエリートだもんな、アネットは」
と、フレイが言った。
「ま、そんな感じだねぇ。だから、いつも通り仕事をこなせば、何も恐れることはない」
「そ、そうですか・・・ありがとうございます、少し気分が楽になりました」
「とりあえず、会合は十九時にグリーンウッドで行う予定だ。フレイ、悪いけど下の者に会議室をセッティングするように指示してくれるかい?」
「グリーンウッドで会合かよ、張り切ってるなぁ。とにかく、連絡はしておくから心配いらねぇ。で、俺はいつ入ればいいんだ?」
「会合が始まるまでに直接会議室に向かってくれ。私は此処から送迎してもらうつもりだ」
「おいおい、俺はリムジンに乗せてくれねぇのかよ!?」
「車より空を飛ぶほうが好きなんだろ?」
「・・・あーはいはい分かった分かった。確かに良く考えてみればあんな無駄に長い車なんて、乗ったところで何もメリットがねぇもんな。じゃ、また後で」
フレイはそう言って、ビスカントの部屋から出て行った。
「私も、そろそろ失礼しますね」
アネットもまた、部屋から立ち去っていった。
昼前、ショッピング街中央通りに一台の青いスポーツカーが走っていた。
「カスタマイズが終わった車に、あまり他人を乗せたくは無かったんですが、ルミナリーさんなら仕方ないですね」
運転席でハンドルを握っていた舞姫は、そう呟いた。
「だってさー、ビスカントの相手ばっかするのって全然面白くないんだもーん!」
と、助手席に座っていたルミナリーが言った。
「確かに、年齢差がありすぎて世間話の類は合いそうになさそうですしね」
「それもそうだし、下心見え見えで接してくるしでもうホントダメダメ上司みたいなー?」
「・・・否定はできませんね。さて、食事はどちらで取られたいですか?」
「そうだねー、パイが食べたいけど、お昼ご飯にアップルパイとかはちょっとねー・・・舞姫に任せちゃう!」
「では、和食料理店は如何でしょうか?」
「和食ってさー、生臭い魚を加熱せずに食べるんでしょー?寄生虫とか怖いじゃん」
「寿司や刺身に抵抗があるのは分かりますが、一度食べてみれば美味ですよ」
「ホントにー?じゃあさ、口に合わなかったら舞姫が全額負担してよー!」
「・・・とんでもない条件ですね。まぁいいですよ」
舞姫はしばらく車を走らせて、ある店の前で車を停めた。
二人は車から降りて、その店の暖簾を潜った。
「いらっしゃいませ・・・あ、舞姫さん、いつもありがとうございます」
店のカウンターの奥で、板前の服を着ていた男がそう言った。
「二人ですが、カウンターでよろしいでしょうか?」
と、舞姫が言った。
「ええ、どうぞ。まだ時間が早いのでお客さんもいないですし、何処でも座ってください」
「分かりました」
舞姫はそう言って、カウンター席の一つに腰を掛けた。ルミナリーも、舞姫の隣に座った。
「ま、まぁ店舗の雰囲気は合格、かなー?」
「え、いきなり何なんですか・・・?」
と、男が言った。
「とりあえず、クロスさん。適当に寿司を二人分」
と、舞姫がクロスという名の男に向かって言った。
「分かりました・・・少々お待ちください」
クロスはそう言って、寿司を握り始めた。
素手で寿司を握る光景を見て、ルミナリーは少し嫌そうな顔をした。
「ちゃんと、手とか洗ってるんだよね、それ」
「それは常識ですよ・・・はい、お待たせしました」
クロスはそう言って、舞姫の前に卵焼きの寿司を出した。
そしてすぐにルミナリーの前にも同じ寿司を出した。
「あれ、魚じゃない?」
と、ルミナリーが言った。
「寿司の最初は、卵焼きを希望される方が多いんですよね。ですので、お任せの際にも卵焼きを最初に出させてもらっています」
「ふーん、とりあえずさぁ、これどうやって食べたらいいの?」
「手、ないしは箸ですね」
と、舞姫が言った。
「手・・・手!?パイみたいに外側がカリカリしてるものだったらいいけど、こんな湿ってそうなものを手で触って食べるの!?」
「でしたら、お箸をお使いください・・・」
クロスはそう言って、カウンターに置かれていた割り箸立てを指差した。
「い、言われなくてもそうするもん!」
ルミナリーはそう言って割り箸を手に持って割ると、それでやっと寿司を食べ始めた。
「・・・うん、卵」
と、ルミナリーが呟いた。
「意外と、お箸の使い方が上手ですね」
舞姫はそう言った後に箸を持ち、寿司に醤油をつけて手早く食べた。
「では、次のネタを握りますね・・・」
と、クロスが言ったその時、店の扉が開かれる音が店内に響いた。
そして、それと同時に複数の男達がガヤガヤと騒ぎ立てながら店内に入ってきた。
ルミナリー、舞姫、そしてクロスの三人は、その男達が只者ではないことをすぐに察知した。
「い、いらっしゃいませ・・・えっと、何名様で・・・」
「ああ?とにかく大人数だから、でっけぇテーブル席で頼むわ」
と、男達の先頭に立っていた、パーカーを来た男が言った。
「分かりました、では奥のお座敷へ・・・」
と、クロスが言ったにもかかわらず、男はルミナリーのほうを見ると、何故か彼女に近づいていった。
「何、ルミに用でもあるの?」
ルミナリーはそう言って、席から立ち上がった。
「・・・ヘッ、此処の店は和風なのに、こんなメイドなんか雇ってやがるのかよ!いい趣味してやがるなぁおい!」
「ルミ、此処で働いてなんか無いんだけど」
「じゃあそれ、私服かよ。そんな格好を街中でしてちゃあ、男に襲ってくれって言ってるのと同じだぜ?ヘッヘッヘ」
「・・・ふーん、噂には聞いてたけど、Fox Fangsって此処まで馬鹿な集まりだなんて思ってなかった」
「何だと?お前、俺達がFox Fangsだと知ってるくせにそんな生意気なこと言っていいのかよ?」
「マフィアごっこしかできない分際で、偉そうな態度を取れると思ってるあんた達のほうがよっぽど生意気だけどねー」
「こ、このクソアマ・・・どこの馬の骨だか知らねぇけど、このゴルブ様に力で勝てるなんて思わないほうがいいぜ!?」
ゴルブと名乗った男性はそう言うと、突然右手にナイフを持ち出し、ルミナリーに向かって構えた。
しかし、それと同時に、ゴルブとルミナリーの間に長い棒状のものが割り込んできたのだ。
そしてその棒はゴルブの顔面に思いっきりぶつかったのだ。
「ウブッ!?」
ゴルブは鼻を強打し、後ろに数歩よろめいてしまった。
「お客様、申し訳ないんですが、刃物を店内で見せびらかす行為はやめてもらえますか?」
そう言ったのは、クロスだった。クロスはさっきの時間で手早く店の前に掛かっていた暖簾を持ってきていたのだ。
「こ、この野郎・・・客を棒で殴りやがったぜ・・・!?お客様は神様じゃねぇのかよ!?」
ゴルブはそう言いながら、ドクドクと滴る鼻血を服で拭った。
「お客様が神様でしたら、そのような不適切な行為は行わないはずかと・・・」
クロスはそう言うと、今度は暖簾の先端部分に刺身包丁を取り付け、ゴルブに向かって刃先を向けたのだ。
「ヘ、ヘヘッ、でもこっちには仲間がたくさんいるんだぜ?それに対して、そっちは生意気な女と子供みてぇな女、そしてお前だけ。どっちが勝つかくらい考えたら分かるよな?」
「もしかして、ルミ達も巻き込むの?でもねぇ、あんた達より、ルミ達のほうが仲間はいっぱいいるんだよねー」
「はぁ?寝言は寝て言えっつー・・・」
「この街で非行行為を行う者であるなら、ある程度相手の職種を推定してから行動に移すべきかと」
舞姫はそう言ってゆっくりと立ち上がった。
「・・・職種の推定・・・って、まさか!?」
ゴルブは一瞬で顔色を変えると、後ろに大きく下がりながら、ナイフをしまった。
「多分ねぇ、そのまさかだと思うけどー、ルミ達さぁ、あんまり大きな声で言えない職業についてるんだー」
「まぁ、あなた達相手なら別に公開した所で問題ないので言っておきますが、我々はDevil Familyのメンバーとして働いている者です」
Devil Familyという単語を聞いた瞬間、ゴルブはまるで別人になったかの如くその場で土下座をしたのだ。
「す、すみません!どうか私の愚行をお許しください!」
と、ゴルブは頭を地面につけながら叫んだ。
ルミナリーはゴルブに近づくと、ゴルブの後頭部を右足で踏みつけた。
「ほら、あんた達のリーダーはこうやって謝ってるのに、あんた達はボーっと突っ立ってるだけなのー?」
ルミナリーがそう言うと、他の男達も次々と土下座の体制に移っていった。
「す、凄い・・・名前を言うだけで此処まで態度が変わるだなんて・・・」
と、クロスは目の前に広がる光景を呆然としながら見ていた。
「ま、そこまでやったなら許してあげてもいいかなー?」
ルミナリーはゴルブの頭から足をのけた。
ゴルブは少し顔を上げると、何故かまたしても鼻血をタラタラと流し始めた。
「・・・白」
ゴルブがそう呟いた瞬間、ルミナリーは顔を真っ赤にしてゴルブの顔にサッカーボールキックをかました。
後ろに大きく吹き飛ばされ、仰向けになって倒れたゴルブにルミナリーは近づくと、ゴルブの体にまたがり、ゴルブの顔を爪をたてて思いっきり引っかき始めた。
「この、変態!スケベ!屑男!この、この、このー!!」
そのあまりに恐ろしい光景に、ゴルブの仲間達や舞姫やクロスは、どうすることもできずに黙ったままだった。
数分後、やっとルミナリーの気が治まり、ゴルブから離れた頃には、ゴルブは顔を傷だらけにして地面にぶっ倒れていた。
「ゴ、ゴルブさん!!」
ゴルブの仲間達はゴルブを担ぐと、そそくさと店から出て行ってしまった。
「・・・あーあ、食欲とかなくなっちゃった」
と、ルミナリーが呟いた。
「・・・で、では、もう今日は帰りますか・・・?」
と、舞姫は少し怖がりつつもルミナリーに向かって言った。
「うん、そうするー」
「では・・・クロスさん、勘定を・・・」
「え、あ、はい・・・いや、今回は卵焼きだけなんで、結構です・・・」
「そうですか・・・では、これで失礼します」
「また今度、時間があったら来てあーげる」
ルミナリーと舞姫は、その後店から出て行った。
十八時五十分頃、フレイはショッピング街中央に位置する超高層ビル「グリーンウッド」の屋上でたそがれていた。
「やっぱり、ここの風は別格だぜ」
と、フレイが呟いたその時、フレイの携帯が鳴った。
「ったくせっかく気持ちよく風を受けてたってのによ・・・あーもしもし?」
「もしもし、ビスカントだが。もう相手は到着してるかい?」
「ワリッ、まだ俺が会議室に入ってない」
「それは流石に困るねぇ。早くしたまえ」
「はいはいっと」
フレイはそう言って、携帯電話を切り、屋上からビルの内部に入った。
今回の会合のある会議室は、この五十階建てビルの十五階に存在する。
フレイは近くにあったエレベーターに乗り込むと、十五階のボタンを押した。
その時、またしてもフレイの携帯が鳴った。
「あ?今度は誰だよ・・・もしもし?」
「もしもし、フレイさんですか?」
「おお、お前は確か会議室の掃除担当の」
「はい、そうです。それで、実は今更なんですが、どうやら昼ごろに何者かがビルに侵入したそうなんです」
「本当に今更だなおい。もっと詳しい情報はねぇのかよ」
「すみません・・・監視カメラに少し影が映ってた程度で、良く分からないです」
「じゃあ、会議室に何か仕掛けられたとか」
「爆弾らしきものも、何も見つかりませんでした」
「じゃあ、それ多分見間違いだわ。んじゃ」
「え、ちょっとフレイさん・・・」
フレイはそこで携帯を切った。
数分後、エレベーターは十五階に停まった。
フレイはエレベーターから降りて、色んな係員が行き交う廊下を進んでいった。
そして、会議室前の扉に着くと、フレイは扉を勢いよく開けた。
「うぃーっす」
フレイはそう言いながら中に入ると、其処には既にRoo FamilyのメンバーとDevil Familyのメンバーが全員揃っていた。
話し声は一斉に途絶えて、全員がフレイのほうを向いた。
「・・・ん、どっちも結構早めについてたんだな。ワリィワリィ」
フレイはそう言いながら、ビスカントの座っている席の隣に歩いていった。
この会議室はDevil FamilyとRoo Familyが向かい合うように机がセットされており、一番奥の壁は前面ガラス張りになっていた。
「・・・もう呆れて声も出せないねぇ」
と、ビスカントがフレイのほうを見て言った。
「いや、だって会合は十九時だろ?俺はギリギリセーフなはずだぜ?」
フレイはそう言って、壁に掛かっていた時計を指差した。時刻は十九時丁度だ。
「マフィアといえども社会人なんだから、そのぐらいのマナーは弁えたまえ・・・」
「うるせーな」
フレイはそう言って、何故か不機嫌な表情を浮かべながら席に着いた。
ビスカントはそれを確認して、話を始めた。
「さて、本日は我がグリーンウッドビルに態々来てもらってすまなかった。それでは、Devil FamilyとRoo Familyの会合を始めよう。さて、今回話し合う内容をざっとリストにまとめておいたから、見てくれたまえ」
ビスカントがそう言うと、ガラス張りの壁のほうに巨大なスクリーンが現われた。
そして、会議室の電気が消され、スクリーンに大きな文字が映った。
「さて、今回我々二つのグループは、明日Dragon FamilyのChaonate市部長であるコモド・モーの暗殺、そしてそれに続いたDragon Familyのボスであるコモド・ジョーの殺害が目的だ。そうだね?」
「そうでっせ、それでや、その具体的な作戦を決めようって話ですわ」
と、ビスカントの向かい側に座っていたリラ・ルーが言った。
「まずは明日の作戦からだねぇ。正面から襲撃するか、暗殺するかのどちらかが一番ベタだとは思うけど、どうだい?」
「でも、相手も腐ってもマフィアや。正面から行けば負傷者が出るのは避けられへんやろう。それに、暗殺ゆうてもそんなザル警備やあらへんやろうしな・・・」
「だったら、両方すればいい」
「どういうこっちゃ?」
「まず正面からぶつかって、相手の人員を戦闘に移させる、そして手薄になったところでモーを暗殺する、といったありきたりな作戦さ」
「なるほど、そういうやり方かいな・・・それやったら、早速二つの班を決めてまわんとなぁ」
「まず正面からぶつかる陽動班だが、こちらは我々Devil FmilyとRoo Familyの二つから適当な数を出せばいいだろう。あくまで陽動だ、強さは関係ない」
「それで、問題は暗殺班やなぁ・・・班つっても、多分一人になるやろうし・・・」
フレイは、二人が繰り広げる会議を暇そうに聞き流しつつ、ふとスクリーンを見た。
スクリーンには、口頭で説明できるようなことしか書かれておらず、正直誰も見ていなかった。
そのため、スクリーンの異常に気づいたのはフレイだけだったのだ。
フレイは、スクリーンに何か黒い影が映っていることに気がついた。
「・・・何だ?」
フレイはそう呟いてスクリーンを見ていた。影はどんどんと大きくなっていき、数秒後には影の正体がある程度分かるまでになっていた。
その影は、どうやらバイクに乗った人間のようだった。
「おいおい、これってもしかして・・・」
フレイがそう言った瞬間、ガラス張りの壁は凄まじい音を立てて粉砕され、スクリーンはぐしゃぐしゃになって地面に落ちた。
会議室にいた者達も、すぐに異変に気づき、その方向を見た。
突っ込んできたのは、影に写っていただろうバイクだった。バイクは会議室の中に着地し、しばらく走った後に、ビスカントとリラ・ルーの間のスペースで停車した。
そして運転手がバイクから降りて、ヘルメットを外した瞬間、フレイはその正体が分かったのだ。
「お前は、DACB!?」
そう、そこにはあの口煩いDACBがいたのだ。
「暗殺と聞いて黙ってられるほど、俺様は甘くねぇ」
と、DACBが言った。
「な、何やこいつ!?」
リラ・ルーはDACBのことを知らなかったらしく、刀を抜いた。他のRoo Familyのメンバーや、Devil Familyのメンバーもまた武器を一斉に構えた。
一方で、ビスカントとフレイは特に何もせずにDACBのほうを見ていた。
「もしかして、昼に此処に忍び込んだ野郎ってのは、お前のことかよ」
と、フレイが言った。
「その通り、この部屋に盗聴器を仕掛けさせてもらって、さっきまで隣のビルで聞いていたところだ!」
「それでだ・・・何がしたい?」
と、ビスカントが言った。
「簡単だ、俺様にモーの暗殺を請け負わせろ!」
「はぁ?いきなりお前は何言ってんだよ。お前みたいな小物が出る幕じゃねぇんだよ」
と、フレイが言った。しかし、ビスカントの意見は違った。
「面白いねぇ、態々盗聴器を仕掛けてまで、この仕事を欲しがるとは・・・でも、桁違いな額を請求されても払うことはできないけど、いいのかい?」
「・・・100万だ」
DACBの口から発せられた額に、ビスカント以外の全員が驚愕した。
「あ、あんさんアホなんでっか!?100万ドルって、一億円のことでっせ!?」
と、リラ・ルーが叫んだ。どう考えてもこの場では100万ドルのほうが通じるはずだが、リラ・ルーは驚きすぎて其処まで頭が回らなかった。
「こ、こいつは本物の馬鹿だ・・・」
と、フレイですら天を仰いで呆れる始末だった。
だが、ビスカントの一言で更に会議室は波乱を巻き起こす。
「私はいいけど」
ビスカントがそう言った瞬間、会議室は大荒れとなった。
「お、おいおい、それ本気かよ・・・」
と、フレイが言った。
「フレイ、金なんて腐るほどあるんだから、ちょっとくらいギャンブルに当ててもいいとは思わないかい?」
と、ビスカントがフレイに向かって言った。
「でもよ、相手はあのABCDだぜ?幾らなんでも博打すぎる気もするが・・・」
「おいてめぇ!!俺様の名前はDACBだってもう何回言った!?」
DACBはそう言いながら、フレイに向かって近づいてきた。
「あーもうこっちに来るなよ鬱陶しい!」
と、フレイがいらいらしながら言った。
フレイですら、今回のビスカントの言動が全く理解できずにいた。あのDACBに対し、100万もの大金を払う価値なんて本当にあるのだろうか、少なくともフレイはそんな価値は全く無いと考えていた。
「ビ、ビスカントはん、わて等の所は流石に100万全額なんて出せまへんで・・・」
と、リラ・ルーが言った。
「ああ、こっちが全額負担しよう。DACB、そういうことだ。それじゃあ大まかな作戦について。明日の二十三時に、Chaonate東部にあるDragon Family邸を陽動班が襲撃、戦闘中にDACBは中に忍び込んで、モーを殺す。それだけ。じゃあ解散で」
もはやビスカントの勢いに誰もついていけず、ただ首を縦に振るだけだった。
唯一、DACBだけがガッツポーズをしていた。
二十二時頃、Chaonate東部の森を抜けた先にある刑務所の近くに、南がいた。
「まさか薬物の保管も刑務所で行ってやがったとは、こりゃあラッキーだ」
と、南は呟いた。
彼は刑務所の高い壁に近づくと、ガバメントを右手に持ち、壁の天辺に向けて構えた。
そして、引き金を引いた瞬間、銃口からロープがついた弾丸が飛び出し、壁の天辺付近に着弾した。
「PLCの連中がヘマして目立ってくれてたらいいんだけどな」
南はそう言いながらロープを引っ張って強度を確認し、ロープを伝って壁を登っていった。
数分後、壁を登り終えた南は、そこから刑務所の全景を見渡した。
彼が今いるのは、刑務所の北側の壁だった。其処の真下には大きなグラウンドがあり、壁に設置されたライトによって照らされていた。
「確か、保管室は南西だったな。壁伝いにいけば大丈夫だろ」
南はそう言って、誰もいない壁の上を歩いていった。
壁の上には所々マンホールがあり、そこから下へ降りることが出来るのだろう。
しばらく壁の上を歩いていった南だが、途中でふと下のほうを見た。グラウンドに何者かの影が見えたからだ。
「監視員みたいだが・・・こっちに気づく訳無いか」
と、南が言ったその時、後ろで何かの物音が聞こえた。
振り返ってみると、何とマンホールの蓋が開いていたのだ。
「予想的中って所か」
またしても南の背後からそのような音が聞こえる。しかし今度は背中に何かを突きつけられている感覚も同時に察知した。
「・・・お勤めご苦労」
南はそう言って、両手をゆっくりと挙げた。
「さぁ、こっちを向いてくれ。一応顔を確認したいから」
と、背後の男が言った。南はゆっくりと振り返り、男の顔を見た。
「・・・お前、早速警察の犬として働いてんのか」
と、南が言った。彼は男性の顔に見覚え、どころか男性とはっきりとした面識があったのだ。
男性は南の言葉を無視したまま、グロックを南の頭に向けて構えた。
「ソル、一つ聞かせてくれよ。俺は幾らなんだ?」
と、南はソルと言う名の男性に向かって言った。
「・・・三万だったはず」
と、ソルは呟いた。
「おいおい、えらく警察はケチなんだな。俺レベルで三万だったら、他の連中なんてもっと低いだろうに」
「・・・お前さ、何でそんなに余裕なんだ?お前の命は、俺の手で今簡単に奪える状況なのに」
「何でって言われてもなぁ・・・お前なんかに俺が殺せるわけ無いっていう確信みたいな?」
「・・・もしかして、俺のことナメてる?警察から公に殺しの許可が下りた今、俺はこの街で最も強いって言っても過言じゃない」
「そういう考えしてるからナメられるってことぐらい分かれって」
南はそう言った瞬間、素早く左足を蹴り上げたのだ。足はソルの下半身を確実に捕らえていた。
「ハゥッ!?」
ソルは突然の一撃を避けることができず、グロックを右手から落としてその場で悶えた。
南は素早く刀を抜き、剣先をソルに向けた。
「お前のバックに警官がいたところで、別に何も怖くない。お前は警官じゃないからな」
「ナメやがって・・・!」
ソルはそう言って、ガンベルトからもう一丁のグロックを素早く取り出し、南に向かって引き金を引いた。
南は銃弾を手早く刀で切り落とし、数歩下がった。
ソルは落ちていたグロックを右手に持ち、立ち上がって南に向かってグロックを構えた。
「悪いが、あんまり此処で時間を取るわけにもいかねぇんだ。とっとと失せてくれ」
南はそう言って、ソルに向かって走りながら、刀を横になぎ払った。
真横に振られた刀を、ソルはジャンプして避けて、空中でひたすらグロックの引き金を引いた。
弾丸が次々と二つの銃口から飛び出し、豪雨の如く南に降りかかってきた。
しかし、南は落ちついた表情のまま刀を上に掲げると、素早く刀身を回転させたのだ。
回転する刃に当たった銃弾は次々と軌道が乱れ、南に接触することなく地面に落ちていった。
そして、地面に着地しようとしていたソルに向かってジャンプして、空中でソル目掛けて刀を振り下ろした。
ソルは刃を両手のグロックを利用して何とかガードしたが、その際の衝撃で地面に叩きつけられる形で着地してしまった。
其処から南は地面に降り、ソルに対し怒涛のラッシュをしかけに向かった。
南はソルに近づくと、刀をとんでもないスピードで振り回し始めたのだ。
「な、何て速さだ・・・!」
ソルは後ろに下がりつつ、グロックを使って刀身を受け流すのに精一杯だった。
「ん、どうした?お前の実力ってそんなものなのかよ?せっかく二つもいい武器持ってるってのに、間違った使い方しかしてないじゃねぇか」
南はそう言った後に、フィニッシュとして刀を構え直し、ソルに向かって突き刺そうと手を伸ばした。
ソルはそれをバク転で何とか回避したが、南は素早く左手にガバメントを持つと、ソルのいる方向に向かって引き金を引いた。
地面に着地した瞬間腹部に銃弾はヒットし、ソルは腹部を押さえてしゃがみこんだ。
「いつから警察に尻尾振ってたかは知らねぇけど、今日でそれも終わりだな」
南はそう言ってガバメントをしまうと、ソルに近づいていった。
「ちょっとストーップ!」
突然、女性の声が夜空に響く。
「何だ、そんなに俺の邪魔ばっかりして楽しいか?」
南はうんざりした表情を浮かべてそう言うと、後ろを振り返った。
其処には、一人の小柄な女性警官が、USPを構えて立っていた。
「お、やっと本職のお出ましか。お前の所の雇われクンはもう少し鍛えてやったほうがいいと思うぞ?」
と、南が言った。
「雇われクン・・・あれ、もしかしてルナのお兄ちゃんのソル?」
と、女性が言った。
「ああ、確かリリー・・・だっけ・・・」
と、ソルはしゃがみながら言った。
「リリー・・・リリー・・・あ、お前もしかしてクリムゾンの家に入り浸ってる警官か?」
「うーん、そうかもー?」
「よくあんな奴の家に出入りできるな、いつか実験材料にされるぞ?」
「クリムゾンはねぇ、私の命の恩人だから!」
「・・・信じられないな・・・あいつが人助けなんて・・・ま、今はそんなことどうでもいいか。で、俺をどうするつもりだ?」
「そりゃあ決まってるよ!フシンシャは、タイホ!」
「だと思った。でも、こんな所で御用になんかなりたくねぇからな」
「だから、逃げたいとか?」
「ご名答。じゃ、後はこの怪我人の面倒でも見てやってくれよ」
南はそう言うと、何とグラウンド側に向かって壁から飛び降りたのだ。
「あらら、そんな高いところから落ちちゃったら怪我しちゃうよ?」
というリリーの声がかすかに聞こえてきたが、南は最初に壁を登る際に使ったガバメントを左手に持ち、壁に向かって引き金を引いた。
そして、ロープを素早く掴み、地面まであと数十センチのところで静止した。
「流石に、警官を手にかけるのはマズいからなぁ」
南はそう言って、ロープを掴みながらゆっくりと地面に着地すると、グラウンドを走って西側の廊下へと向かった。
その時、何処からか何かが爆発するような音が聞こえてきた。
「お、派手にやってやがるな」
南はそう呟き、廊下を南側に向かって走って行った。
「待て、侵入者!」
そんな声が遥か後方から聞こえてきたが、南は一切構わずに先を目指した。
廊下は殆ど一本道だったため、特に迷うことも無く、目的地である保管室にはすぐにたどり着いた。
南は保管室の扉を蹴り開けて、中に入った。
「はっはぁ・・・こいつは凄いな・・・」
部屋の中には、無数の棚と、其処に置かれた大量の白い粉の入った袋が保管されていた。
袋には、何かの番号が書かれていた。恐らくどの事件の際に回収したものか区別するためだろう。
「正直、どれを持って帰ってもよさそうなくらい大量にあるな・・・」
「そうだろぉ?此処にあるのはこの街で取引されてきた一級品ばかり!迷って当然なくらいさ」
いきなりそのような声が保管室に響いたため、南はとっさにガバメントを構えて声の主を探した。
「そんなにビビるなって、別にアンタを取って食うわけじゃあねぇ」
そう言いながら、何者かが南の前にやって来た。
「・・・何だお前、気持ち悪い」
まるで腐った柿みたいな色をしたその頭をした男を見て、南はそう呟いた。
「俺は麻薬取締官のウィリー・ワンパ・チークス。新しい麻薬が入ったって聞いたから、その確認をしに来たってわけだ」
と、ウィリーという名の男性が言った。
「麻薬取締官だって?そんな役所のお偉いさんが態々深夜にこんな場所まで出向くか?」
「はぁーん、そういうところに疑問を持つとは、アンタ結構頭いいな?」
「煽てたところで何も持ってないからな?」
「ま、どうせアンタも普通の人間じゃないんだろ?少し話をしてやるよ」
ウィリーはそう言って、保管室の扉を閉め、鍵もかけた。
「俺は麻薬取締官として、この街で薬物に関係した事件が発生した際に派遣されてくる。此処はとにかく薬物の取引が多いだろ?
普通、薬物ってのはきちんとした目的があって製造されるわけだが、その途中で正規ルートを離れ、違法な取引に利用されることがある。
中には最初から違法取引の為に麻薬を作らせることもあるが、人件費も掛かるし効率的ではねぇんだ」
「で、麻薬取締官はその違法取引へ転用されるのを防ぐのが仕事なんだろ」
「まぁ俺は、もっぱら薬物の出所を探る仕事ばっかりだけどな。でも、この薬物ってのは凄くてよぉ、ちょっとの量に何万という額がつくわけだ。
いわば金銀財宝、宝の山!それなのに、一度違法薬物として押収された薬物は、出所が判明した後処分されちまうんだ。
どう考えても、勿体無いと思わねぇか?だから、俺は今の地位を利用して・・・」
「更に薬物を転売、って所か」
「ヘッヘッヘ、アンタ流石だよ!その通り、俺はそうやって現に何億という金を稼いできてるわけだ。まぁ、全部売りさばいちまうと怪しまれるから、此処に保管という形でいくらか置いてるんだけどな」
「それで、新しい麻薬がどれだけの質か確認しに来たと。でも悪いが、それは俺がいただく」
「おいちょっと待てって!ここまで話させといてタダで渡すとでも思ってるのか?」
「・・・幾らだ」
「正直、ありゃあ量は多いが質はよくない。貧乏人のトーシロが加工した代物だし、20万が妥当だろうが・・・此処は別の取引といこうぜ?」
「何だよ、急に」
「・・・どうだ、此処は俺と組まないか?」
「は?」
「俺も、直接マフィア連中に売り歩くのは怖いんだよ。あいつ等人の命を何とも思ってねぇからな」
「・・・だから、俺に仲介役になれとでも?」
「何%か持って行っていいから、どうだ?」
「・・・面白い、こりゃあいいビジネスになりそうだ」
「気に入ってくれたか!いやぁ、アンタいい奴だよホントに!で、アンタ名前は?」
「南だ。この街で何でも屋をやってる」
「南さんか!じゃあ、これからよろしく頼むぜ?ああそうだ、じゃあ契約記念にさっきのヤクはタダでいいぜ!」
「お、じゃあありがたく受け取っておくわ。でだ、携帯番号はこれだから、また後日連絡してくれよ」
南はそう言って、ポケットからメモ帳を取り出すと、ページに携帯番号を書きなぐり、ページを破ってウィリーに渡した。
ウィリーはそれを受け取った後、一旦保管室の奥へと歩いていった。そしてすぐに、大きな袋を抱きかかえて戻ってきた。
「ほら、こいつが例のヤクだ!それで、帰りは俺専用のルートでこっそり帰してやるから心配するなよ?」
「ヘッ、悪いな。それじゃあ、これから何でも屋、ご贔屓にしてくれよ?」
その時、保管室の扉が激しくノックされた。
「アンタは俺の付添い人としてじっとしてればいい。そのヤクは調査用に持って帰ることにしてな」
ウィリーはそう言って、保管室の扉を開けた。
扉の奥には数人の警官と、一人の女性警官がいた。見たところリリーではないようだ。
「あ、ウィリーさんでしたか。すみません、こちらに誰か来ませんでしたか?」
と、女性が言った。
「ん、此処には俺と付き添いしかいないが・・・何か?」
「今、刑務所内が大変なことになってまして・・・とにかく、ウィリーさん達も今日は一旦帰られたほうがよろしいです」
「うむ、丁度そうしようと考えてたんだよ。そうそう、例の薬物は調査用に持って帰らせてもらうけど、構わんね?」
「ええ、恐らく・・・では、私達はこれで・・・クッ、お兄ちゃんを傷つけた野郎は何処に行ったの・・・!?」
女性と警官達は、保管室前から姿を消した。
「・・・じゃあ、とっとと行こうぜ」
と、ウィリーが言った。
15625