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Individual Way of Life ~個々の生き様~
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二月六日
2012/06/11(月)22:37:28(12年前) 更新
Boundary between the Justice of Truth and False ~CPAO編~
街の平和を守り、市民の安全を確保する「CPAO」
しかし、警察内ではある問題が起きていた。
正義とは一体何なのか、考える暇はもうなかった・・・
朝、警察署の通信室にファックス音が鳴り響いた。
その部屋にいた亜貴は、転送されてきた用紙を受け取った。
「・・・これは・・・」
亜貴はそう呟くと、すぐに通信室の無線を手に持った。
「こちら亜貴、聞こえる?」
「こちら真利亜、良好だけど」
無線からは、真利亜の声が聞こえてきた。
「いい、用件だけを伝えるから。今日の午後一時着のオーストラリア発の飛行機に、ヘロイン10kgを密輸したらしい乗客が乗っているって、さっきファックスが届いたのよ」
と、亜貴は用紙を見ながら言った。
「乗客の詳しい情報は?」
「ファックスで送りたいんだけど、あなた今何処にいる?」
「家よ。あ、ごめんファックスないんだけど」
「そう・・・なら、空港のいつもの部屋に送っておくから確認してもらえる?」
「分かったわ。それにしてもまた空港かぁ・・・」
「何かあったらあたし達も向かうから。それじゃあ」
亜貴はそう言って無線の電源を切った。
「亜貴、今日は真利亜の手助けは無理そうだ」
そんな声が亜貴の後ろから聞こえてきた。亜貴が振り返るとそこにはザヌサーが立っていた。
「どうして?」
「北の廃港で午前八時から武器の取引だそうだ、しかも非正規なヤツのな」
「情報源は何処?」
亜貴がそう言うと、ザヌサーはポケットから何かを取り出し、亜貴に投げ渡した。
「ボイスレコーダー?」
亜貴が渡されたのはどうやらボイスレコーダーのようだった。
亜貴は早速再生を始めた。
『「M4が100丁にベレッタが300丁、手榴弾200個とは凄い量だ」
「そうなんすよー、南さんはホント人使いが荒くて大変っす」
「それだけの量を今からトラックで運ぶのか?」
「そうっす。Chaonateの廃港に八時までにブーンと行かないといけないんす」
「そうか。まぁ、用心してくれ」
「そんなこと分かってるっすよ。あそこの街はもう慣れちゃってるんで」
「ならいいんだが・・・お、やっと積み入れが終わったみたいだ」
「マジッすか。それじゃあ、これで失礼するっす。代金は南さんのほうから後で受け取る形でいいっすね?」
「大丈夫だ」
「オッケーっす。んじゃ」』
ボイスレコーダーはそこで終了していた。
「成程・・・これは何処で取った物?」
「隣の街だ。おとり捜査の最中に取ったやつだと言っていた」
「それで、実際に逮捕するのはあたしたちってこと?面倒な事は押し付けるのね」
「ヘッ、この街の事件に絡んだら面倒になるって他の警察連中は知っているからな。仕方ねぇだろ」
「じゃあ、これから廃港に行って全員逮捕の流れ?」
「だが、まだ時間がな・・・」
ザヌサーはそう言って自身の腕時計を見た。時刻は午前七時、まだ取引までに時間はある。
「そうねぇ、あたしだったらこうするかも・・・あそこは倉庫があるから、取引の流れを隠れて監視しておくってのは?で、取引の終了間際に逮捕とか」
「それ、結構いい案だな。よし、そうと決まればとっとと行くか」
「ええ、そうしましょう」
亜貴とザヌサーは通信室を後にした。
「こちらルナ・・・了解、ではまた後で」
ショッピング街の通りをパトカーで走りながら、ルナは無線を切った。
ルナは今早朝のパトロールを行っていた。この時間帯は道端で酔いつぶれているような人が多く、意外と警察の仕事があるものである。
「・・・それにしても、またリリーは一人で何処をほっつき歩いてるのかしら」
と、ルナはハンドルを握りながら呟いた。
今朝、ルナが警察署に出勤した際には既にリリーは一人でパトロールに行ってしまっていた。
あれだけ言ったのに、何故彼女はいつも一人で行動してしまうのだろうか。ルナはリリーの行動に少しウンザリしていた。
ルナはしばらくパトカーを走らせていたものの、ショッピング街は至って平和だった。
店はどこも開店しておらず、人気も殆どない。
「この辺りは今日は大丈夫そうね・・・」
ルナはそう呟いて、ふと歩道を見た。歩道に設置されているベンチに誰かが座っていたからだ。
「あれは・・・パンチさん?」
ベンチに座っていたのは、一昨日逮捕したパンチだったのだ。
取調べの後、パンチは厳重注意のみで終わったため、彼がそこにいたことは何も不思議ではなかった。
しかし、ルナはそれよりも彼の格好が気になったのだ。彼はスポーツウェアを着ており、手には水の入ったペットボトルを持っていたのだ。
今は引退してスポーツはやっていなかったはずの彼が何故そのような格好で此処にいるのか気になったルナは、道路の端にパトカーを止めた。
そして、シートベルトを外してパトカーから降りた後、パンチの座っていたベンチに近づいていった。
パンチはルナのほうを見て一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐにいつもの目つきの悪い顔に戻った。
「おはようございます、パンチさん」
と、ルナが言った。
「・・・最近の警察は一旦逮捕した奴の監視をするのか?」
と、パンチが言った。
「いえ、そういうわけではないんですけどね」
ルナはそう言って、パンチの隣に座った。
「なら、何の用だってんだ?ああ?」
「朝からこんな所にいる理由が気になりまして」
「そんなことは、お前には関係ねぇだろ?」
「もしかして、また何かスポーツでも始めるつもりで?」
「・・・良く分かったな」
「ボクシングですか?」
「さぁな・・・とにかく、一昨日のあのクソガキの言葉に腹が立ったと同時に、また現役時代の時くらい強くなりたいと思ってな」
「その強さ、スポーツで生かすというのなら私はあなたを応援しますよ」
「ヘッ、照れるじゃねぇか。ま、また警察の世話になるのは御免だからな、スポーツなら文句ねぇだろ?」
「ええ、もちろん」
「さてと、そろそろトレーニングを再開するとしようか。じゃあな」
パンチはそう言って立ち上がると、歩道を走り去っていった。
「・・・パンチさん、ああ見えて結構真面目な方だったのね」
ルナはそう言って、ふと自身の腕時計を見た。時刻は七時三十分。例の取引まで後三十分だ。
「そろそろ、リリーを呼ばないと」
ルナはそう言ってベンチから立ち上がり、パトカーに戻っていった。
街の北側の区域の歩道を、一人リリーが歩いていた。
「うーん、今日は子供達が見当たらないなぁ」
と、リリーが呟いた。
彼女は一人で例の子供の捜索を行っていたのだ。
いつもならルナと行っているであろうこの捜査だが、今日何故一人で行っているのか。リリーにはある考えがあったのだ。
リリーがしばらく歩いた後についた場所は、クリムゾンの家だった。
リリーはクリムゾンの家の扉をノックした。
「・・・誰だ?」
といういつものあの声が家の中から聞こえてきた。
「リリーだよー!」
「・・・またか」
そんな呆れの混じったような声が聞こえてくるが、リリーはそんなこと一切お構い無しだ。
「ねぇ、ちょっとお話があるんだけど、入っていい?」
「・・・どうせ駄目だと言っても入ってくるんだろ」
「エヘヘ、その通り!別に、逮捕とかそういうことはしないからいいよね?」
「・・・言いたいことは全て家の中で話す。入れ」
「はーい!」
リリーはそう言って家の扉を開けた。
やはり家の中からはシャワーの音が聞こえてくる。恐らくクリムゾンはまた風呂に入っているのだろう。
「リビングに行っとくねー!」
リリーはそう言ってリビングに向かった。
そこでしばらく待っていると、クリムゾンがバスローブ姿でやって来た。
「・・・さて、とっとと用件を言え」
と、クリムゾンが言った。
「クリムゾンってさ、この辺のこと良く知ってるよね?」
「それがどうかしたか?」
「最近ね、この辺りで子供達を捜索してるんだ。でも、中々見つからなくて困ってるの」
リリーのその言葉を聴いた瞬間、クリムゾンの表情が険しくなった。
「・・・で、その子供の捜索を手伝えと?」
「そうそう、さっすがー!」
「・・・いいか、警察の頼みを聞くほど俺は暇じゃない。そういう用件なら帰ってくれ」
「えー、何でー?」
「お前、俺の立場を知っているだろ。それでよく頼む気になったな」
「そっか・・・クリムゾンなら何か知ってると思ったんだけど、残念だなぁ」
その時、家の中に扉をノックする音が響いた。
「また来客か・・・うっとおしい」
クリムゾンはそう言って玄関のほうに歩いていった。
「誰が来たんだろー?気になるなー」
リリーはそう言ってクリムゾンの後ろをついていった。
クリムゾンは扉の前に立ち、覗き窓を覗いた。
「・・・何しにきた?」
と、クリムゾンは扉の外に立っているであろう人物に尋ねた。
「挨拶回り、って感じ?」
と、扉の外から女性のそんな声が聞こえてきた。リリーはその声をどこかで聞いた気がした。
「今は少し都合が悪い。後にしてくれ」
「都合、かぁ・・・女の子と二人っきりの所を邪魔しちゃ悪かった?」
「・・・何だと?」
「私が此処に来るちょっと前に、警察が入って行ったでしょ?それ、物陰から見てた」
「分かっているならとっとと失せろと」
「でも、リリーさんなら大丈夫」
女性がリリーという名前を発したことによって、リリーは声の正体が分かった。
「もしかして、ミストー?」
と、リリーが言った。
「・・・お前は無駄に顔が広いな」
と、クリムゾンがリリーに向かって言った。
「ねぇ、私とリリーさんは顔見知りなんだし、入れてよ」
と、外からミストの声が聞こえてくる。
「・・・俺の家は集会場じゃないんだがな」
クリムゾンはそう呟くと、玄関の扉を開けた。
外に立っていたミストは、クリムゾンの格好を見るや否や顔を赤らめた。
「ちょ、何て格好してるのよ・・・!あなた、まさかと思うけど・・・」
「とにかく中に早く入れ。そして用件を言ってとっとと帰れ」
「え、えぇ・・・」
ミストはクリムゾンのほうを直視できぬまま家の中に入った。
玄関の扉を閉めた後、クリムゾンはそそくさとリビングに戻っていった。
「へぇー、ミストもクリムゾンと知り合いだったんだー!」
と、リリーが言った。
「まぁ、いろいろあって・・・目的の一致、って感じかな」
「目的かぁー、それって何?」
「・・・ごめんなさい、まだあなたには言えない」
「えー、隠し事?ま、いっか!」
「それよりも、あなた警察なのに、何でクリムゾンさんの家に?」
「何でだろうねー?」
「彼、マフィアでしょ?警察がマフィアと関わりを持っているなんて知られたら大変じゃあ・・・」
その時、リリーの無線機の受信音が鳴り響いた。
リリーはすぐに無線機を手に持った。
「リリーだよー。何か用?」
「こちらルナ。例の取引がもうすぐ始まるから、どこかで合流するわよ」
「分かったー、何処がいい?」
「そもそも、あなたは何処にいるのよ」
「うーんとね・・・もう少し歩いたら廃港に着きそうかなぁ」
「・・・もう北側に行ってるの!?分かったわ、合流地点は昨日ミストさんに会った場所でいい?」
「いいよー!じゃ、また後でね」
リリーはそう言って無線を切った。
「ていう事だから、私はもう帰ったってクリムゾンに言っといてねー!」
リリーはそう言って玄関の扉を開けて外に出て行った。
空港の一室に、真利亜が腰をかけて座っていた。
彼女はこの部屋のファックスに届いていた紙を眺めていた。
「ふむふむ・・・うーん、見た感じ普通の人っぽいなぁ」
と、真利亜が紙に印刷されていた男の顔写真を見て呟いた。
その紙には男の顔写真を始めとした男の情報が書かれていた。
「アーネスト・エミューかぁ。一般の人がバイヤーとして利用されただけみたい。だとしたら彼には悪いけど、仕方ないか」
真利亜はそう言った後に無線機を手に持った。
「こちら真利亜、作戦会議を始めるからいつもの部屋に集合して」
と、真利亜が言った。
しばらく部屋で待っていると、次々と特殊部隊のメンバーが集まってきた。
特殊部隊のメンバー達は部屋に入った後に、真利亜に敬礼した。
そして数分後には全メンバーが集合し終わった。
「はーい、おはようございまーす。さてと、早速作戦会議を始めるから」
真利亜はそう言って席から立ち上がり、ホワイトボードの前に立った。
「今回の目的はオーストラリア発の飛行機に乗っている男性、アーネスト・エミューの逮捕。彼はこの街にヘロイン10kgを密輸しようとしているそうよ」
真利亜はそう言って、紙をホワイトボードに貼り付け、アーネストの顔写真を指で示した。
「飛行機は午後一時、第二滑走路に着く予定。だから、今回は二つの班に分かれる。一つ目の班は第二滑走路と繋がっている入国審査窓口で彼の身元確認が終わって入稿した瞬間に逮捕、って流れ」
真利亜はそう言いながら空港の地図をホワイトボードに貼り、入国審査窓口を示した。
「銃器を持ち込んでいる疑いは少ないから多分大丈夫だと思うけど、一応こちらも武装して対応する。それまでにもう一つの班は荷物室で彼の荷物を確認、ヘロインが入っていたら逮捕。こんな感じで」
と、真利亜が言った。特殊部隊のメンバーはすぐに立ち上がり、準備をし始めた。
北の区域に、何台ものパトカーがサイレンを喧しく鳴らしながら走行していた。
その一台に、ルナとリリーの乗ったパトカーがあった。
「いよいよ始まったわね・・・」
と、ルナが言った。
彼女等の乗ったパトカーには、ザヌサーからある指令が下されていた。
それは二台のトラックの追跡。ナンバープレートはAW3842とHF6924だそうだ。
「まだ多分この区域から出てないだろうねー」
と、リリーが言った。
その時、パトカーに無線が入ってきた。
ルナはすぐに無線を手に持った。
「こちらC班、AW3842のトラックを発見。他にDとE班と共に追跡しているため支援は不要。もう一台のトラックの追跡に全力を尽くしてくれ」
「了解、我々A班はHF6924の捜索及び追跡に回ります」
ルナはそう言って無線を切った。
「他の班から連絡がないってことは、まだ見つかってないってことだね」
と、リリーが言った。
今回出動しているパトカーには班分けがされており、AからFまで、合計6台のパトカーが出動している。
基本的に班名で呼び合うのは、何かしらの事件時に複数のパトカーが出動している時だけである。
「此処をしばらく進むと、廃港に行っちゃうわね・・・ん、あれは・・・まさか!?」
と、ルナは驚いた表情を浮かべて言った。
二人の乗ったパトカーの前方から、一台の大型トラックが猛スピードで走ってきたのだ。
しかも車線を無視しており、このまま行けば二台は衝突してしまうだろう。
ルナはとっさにハンドルを切って、トラックを避けようとしたが、何とそれに合わせてトラックもパトカーに向かって針路転換したのだ。
「もしかして、パトカーを潰して追っ手をなくそうとしてる?」
と、リリーが言った。
「だとしたら、早く逃げないと!」
ルナはそう言って、パトカーを歩道の近くに停車させると、座席の下からレーザーガンを取り出して素早くパトカーから降りた。リリーもパトカーから降りた。
そして二人は急いでパトカーから離れて、狭い路地に入った。
そこなら恐らくトラックは進入してこれないだろうと二人は考えていたからだ。
トラックは猛スピードでパトカーに接近し、そしてパトカーを思いっきり跳ね除けた。
パトカーは大破し、部品がそこら中に飛び散り、ボディは宙を高く舞い、地面に轟音を立てて墜落した。
ルナは無線機を手に持った。
「こちらA班、パトカーが大破してこれ以上の追跡は不能と判断」
「了解、こちらは引き続きトラックの追跡を行う。大破したパトカーは別の部隊に処理をしてもらってくれ」
無線はそこで切れた。
「ふぅ、危機一髪だったね」
と、リリーが言った。
「でも、これで私達はトラックの追跡ができなくなってしまったわね・・・」
「じゃあさ、廃港に行ってザヌサーと亜貴の手助けをするってのは?」
「そうね。それじゃあ急いで行きましょう」
ルナとリリーは、廃港に向かって走っていった。
「逃がさないんだから・・・!」
亜貴はそう言いながら、一人の男性を追いかけていた。
例の取引を廃港の倉庫で監視していたザヌサーと亜貴の二人は、取引の終了後に突撃、逮捕しようとしていたものの、一人がその場から逃走したために亜貴はその人物を追うことになったのだ。
その男は大柄なくせに逃げ足が速く、武器を持っていない亜貴にとってその足を止めるのは少々辛かった。
しかし、運動神経の良い彼女は息切れすることも一切なく、男性の背中を確実に追って行った。
「しつこい女だ・・・」
突然男性がそう言ったかと思えば、男性は急に足を止め、亜貴の方を振り返った。
「あら、もうあきらめた感じ?」
亜貴はそう言って足を止めようとした。
その時、男性は素早く腰のガンベルトのSAAに手をかけ、瞬時にSAAを抜きつつ、SAAの銃鉄を左手で弾いたのだ。
SAAから放たれた銃弾は亜貴に向かって飛んで行く。
「流石期待の若頭、クランチね」
亜貴はそう言うと、その場で地面を思いっきり蹴り、斜め前に空高くジャンプをして銃弾を避けた。
そして、足を突き出してクランチに向かって一気に降下して行った。
男性は両腕で亜貴のキックをガードした。
「その程度か?」
と、クランチが言った。
「まだ、全然本気は出してないわ」
亜貴はそう言うと、クランチの腕を踏み台にして今度は斜め後ろにジャンプした。
亜貴の全体重がクランチの体にかかり、クランチは少し体制を崩した。
クランチは体制を立て直してSAAを構えようとしたが、それよりも早く亜貴は地面に着地し、素早くクランチに近づいた。
「さて、悪いけど相手を無力化してから逮捕するのがあたしのやり方なの」
亜貴はそう言ってクランチの左足目掛けてローキックを入れた。
足と足がぶつかり、その場に鈍い音が鳴り響く。
そして、クランチは一瞬顔をゆがめつつ後ろに下がった。
「チッ、何て女だ。此処まで重い一撃を入れてくるとは・・・」
クランチはそう言って体制を立て直そうとするものの、予想以上に左足へのダメージが大きいようで、再びガクッと体制を崩してしまった。
「折れてはないでしょうけど、よく立っていられるわね」
と、亜貴が言った。
「何をしやがった?」
「別に、単純に捻挫を起こしただけじゃない?さてと、これ以上の抵抗はやめといたほうがいいかと思うけど」
亜貴はそう言って、クランチにゆっくりと近づいていった。
しかしその時、亜貴はある異変に気がついた。何者かの気配を感じたのだ。
そして、その気配は空から亜貴とクランチの間に降りてきた。
「フン、倉庫の上から観戦していたけど、こうもあっさり決着が付かれると面白くねぇな」
と、男性がマントを靡かせながら言った。
「・・・何だ、ABCDか」
と、クランチが呟いた。
「何だと!?俺様はABCDじゃねぇ!てめぇ、俺様のこと知ってるだろ!?DACBだ!!」
と、DACBはクランチのほうを向いて怒鳴りだした。
「・・・いきなり出てきて何がしたいの?」
と、亜貴がDACBに向かって言った。
DACBは亜貴の方を向き直した。
「この男をてめぇに逮捕されると気分が悪いからな」
「つまり彼をかばう気?どういうつもりか知らないけど、アンタ業務執行妨害で捕まりたいの?」
「捕まる気なんてサラッサラねぇ!」
DACBはそう言うとマントに左手を突っ込み、そこから鉤爪を取り出してきた。
「もう、これ以上面倒を増やさないで」
亜貴はそう言って後ろに数歩下がり、DACBに向かって構えた。
「それにしても、この街で素手で殺り合うなんていい度胸してやがるぜ」
DACBはそう言うと、亜貴に向かって鉤爪を前に突き出しながら突進して行った。
「誰かを傷つける為だけに生まれてきた道具を使うのはあまり好きじゃないのよ」
亜貴はそう言いながら突進を左に回避すした。
DACBは振り返りつつ鉤爪を横に振り払った。
「フン、そうやって正義の味方気取りか?」
「正義の味方、とまでは行かないけど警察って正義みたいなものでしょ?」
亜貴はそう言って鉤爪をバックステップで避けた。
DACBは亜貴の言葉を聴いた瞬間、鉤爪を降ろした。
「警察が正義だって?笑わせやがって!」
「事実でしょ?」
「賞金稼ぎを雇って犯罪者を暗殺しようとしている組織の癖に、正義を気取るつもりかよ?」
「それ・・・どういうこと?」
「何だ、まだ警察内でも出回ってねぇのか」
「アンタ、そんなデマでも流して警察の評判を下げようとしてるの?」
「デマでも何でもねぇ、事実だからな!」
「いい加減にしてちょうだい!大体アンタは部外者の癖に何で警察のことを知ってるのよ?おかしいでしょ?」
「そりゃあ、その計画に参加している・・・おっと、これ以上は話せねぇな!」
DACBはそう言うと、右手をポケットに突っ込んだ。亜貴はとっさに構えたが、それより早くDACBはポケットから爆弾を取り出したのだ。
「悪いが、こっちは怪我人がいるからここらで退かせてもらうぜ!」
DACBはそう言って爆弾を地面に叩き付けた。その瞬間あたり一面に煙幕が立ち込め、何も見えなくなってしまった。
亜貴は必死にDACBとクランチを探したものの、視界が最悪な状況でとても二人を探すことなんてできなかった。
「あたしとしたことが不覚だった・・・!あんな男の言うことに耳を貸すんじゃなかった」
と、亜貴は呟いた。
徐々に晴れていった視界の先に、二人の姿はなかった。
亜貴は無線機を手に持った。
「こちら亜貴、ザヌサーさん聞こえる?」
「聞こえるぞ」
という声が亜貴の後ろから聞こえてきた。亜貴が振り返ると、そこにはボロボロな格好をしたザヌサーが立っていた。
「ちょっと、その格好・・・!?」
「少しドジ踏んじまってよ、そっちもダメだったか?」
「・・・ええ、ごめんなさい」
「ケッ、無線機も壊れちまったし、また金が掛かりそうだぜ」
その時、亜貴の無線が鳴り響いた。
「こちら亜貴」
「こちらルナ、そちらの状況はどのような感じで?」
「状況は最悪、取引していた連中は全員逃走。そっちは?」
「こちらもパトカーを壊されてどうしようもない状況です。でも、一応他の班がトラックの追跡をしているので捕まるのは時間の問題かと」
「そうね・・・ありがとう、もうそっちは撤退していいわよ」
「了解、では」
無線はそこで切れた。
「俺達も一時撤退ってところだな」
「ええ、分かったわ」
警察署に帰っている間に、亜貴はDACBの言った言葉について考えていた。
警察が賞金稼ぎを雇っているなんて話自体、彼女は一切知らなかった。
もしそんなことを警察が行っているなんて事が出回れば、警察の信用はガタ落ちするだろう。
それ以前に、警察たる者そのような犯罪者を援助するなんてもってのほかだと彼女は考えていた。
正午過ぎ、空港の一室で真利亜は腕時計をじっと睨みながら椅子に座っていた。
もう少しで例の飛行機が到着する時間だ。一瞬たりとも油断は禁物、彼女は特殊部隊のメンバーに適切なタイミングで指示を下さないといけない。
特殊部隊のメンバーも、真利亜の後ろでじっと待機していた。
「まもなく第二滑走路に、オーストラリア、タスマニア州発の飛行機が着陸予定」
そのようなアナウンスが部屋に響き渡る。それと同時に、真利亜達の目つきが変わった。
「作戦開始、しっかりね」
と、真利亜が言うと、特殊部隊のメンバーは次々と立ち上がって部屋から出て行った。
全員が出たのを確認した真利亜は椅子から立ち上がった。
「真利亜も、入国審査窓口で待機しておかないと」
真利亜はそう呟いて、部屋を後にした。
空港内は昨日とは異なって客達はワイワイと話しながら通路を歩き、係員は笑顔で客に対応していた。
今回の事件のことを知っているのは一部の係員と警察関係者だけだったため、空港内は非常に和やかな雰囲気で包まれていた。
そんな光景を真利亜は裏道から見つつ、入国審査窓口のほうへと歩いていった。
「こういうときに、滑走路辺りの窓口が一つしかないと対応しやすくて楽ね」
と、真利亜は歩きながら呟いた。
しばらく道を歩いていくと、入国審査窓口付近に出てきた。
まだターゲットは現れていないようで、特殊部隊のメンバーもまだ裏で待機していた。
窓口の係員もスムーズに乗客を捌いていたが、一人の男性の姿を確認した瞬間顔つきが険しくなった。
その顔を見た真利亜は、ターゲットが来たことを確信した。そこからはターゲットの顔を見ることができなかったが、係員の顔を見ればすぐに分かった。
「それでは、入国審査の手続きをします、パスポートをお出しください・・・」
係員はそう言って普段どおりに男と接しつつも、チラチラと真利亜のほうを見ていた。
「・・・あなたは、アーネスト・エミューさんでお間違いないですね?」
「え、えぇ、はい」
男性がそう言うと、係員は真利亜のほうをしっかりと見て首を縦に振った。
真利亜はそれを確認した後に、男に向かって近づいていった。
そして、男の肩をポンッと叩いた。
「アーネスト・エミューさんだよね?」
真利亜のその言葉に対して一瞬驚いた後、アーネストは真利亜のほうを振り返った。
「そ、そうですけど・・・」
「こういう者だけど、少し時間貰っていい?」
真利亜はそう言って、ポケットから警察手帳を取り出し、アーネストにむけて見せた。それを見たアーネストの顔は見る見るうちに青ざめていった。
「はい・・・分かりました・・・」
アーネストはそんな全てをあきらめたように力の篭っていない声でそう言った。すると、すぐに特殊部隊のメンバーが出てきて、アーネストを取り囲った。
「うん、大体は分かっているみたいね。それじゃあ、裏で少しお話しようか」
真利亜はそう言った後に窓口に近づき、アーネストのパスポート類を係員から受け取った。
そして、真利亜達一行は再び裏道へと入っていった。
しばらく歩いた先に出てきた扉を真利亜は開けると、アーネストをその部屋にあった椅子に座らせた。
「さてと、もう少し待っててね」
真利亜がそう言うと、すぐに無線の音が鳴り響いた。
「こちら真利亜・・・うん、そう。じゃあ取調室に持ってきて」
真利亜はそう言って無線を切った。
「さてと、何でこんな場所にまで来てもらったか、もう分かってると思うけど」
「はい・・・その・・・密輸の件ですよね・・・」
「そうよ。あなた、とっても素直ね。いつもなら嘘を言われたりして面倒なんだけど、結構楽で助かるわ」
「だって、連行された時点でこちら側の罪なんてばれているようなものじゃないですか・・・」
「その通りね。それで、ヘロインを密輸した理由は?」
「そ、それは・・・えっと・・・」
「商売、それとも個人での利用?まずはそのどちらかかに答えて」
真利亜がそのような質問にしたのにはしっかりとした理由がある。
違法薬物の密輸や所持に関する罪は、その薬物をどのような理由で所持していたかによって罪の重さは異なってくる。
単純に自分が使うために所持していたのなら、罪はそこまで重くはならない。
しかし、その薬物を売買する為に所持していた場合、薬物を蔓延させようとした疑いもかけられるため、罪はかなり重たくなる。
「商売用です・・・」
「分かったわ。それじゃあ、実際に荷物を確認してから署まで来てもらうわね」
しばらくした後に、取調室に荷物を持った特殊部隊のメンバーがやって来た。
そして、荷物をアーネストの前の机に置いた。
「これで、間違いない?一応捜索には麻薬犬を使用しているから、中身は空けてないの」
「はい、この荷物です」
「開けていいわね?」
「どうぞ・・・」
アーネストがそう言った後に、真利亜は荷物の蓋を開けた。
中からは衣類や洗面用品、そして一番奥からリュックサックが出てきた。
そのリュックの中を調べると、中から白い粉の入った透明な袋が出てきた。
「・・・じゃあ、行きましょう」
真利亜はそう言うと、特殊部隊のメンバーの一人に麻薬の入った袋を渡した。
そして、他の荷物を全てしまった後に手錠を取り出し、アーネストの手に掛けた。
「麻薬及び向精神薬取締法違反で現行犯逮捕」
真利亜はそう言って手錠を引っ張り、アーネストを席から立たせた。
そしてすぐに特殊部隊のメンバーがアーネストを取り囲むように立ち、一行は部屋から出た。
そのまま一行は空港の出口まで歩いていった。その光景を見た乗客たちは一体何が起きたのかすら分からず、ざわつき始めた。
中には彼女等に携帯を向けて写真を撮ろうとする者もいたが、特殊部隊のメンバーがそれをやめさせようと注意していた。
「おいおい、こりゃあすっげぇニュースだぜ!昨日に続いて大スクープだ!」
「スチュー、これは生放送なんだからあまり大きな声を出したらマイクに乗るじゃないか」
「んなぁことは関係ねぇだろ?・・・ん、本部から無線かよ・・・ああ?カメラが煩いから一旦止めろだって?」
「ほら、言ったじゃないか。スチュー、一旦カメラを止めて外に出よう。そこで目撃者インタビュー用のVを取ればいいんじゃないか?」
「それいいな!早速行こうぜ?」
そんな声が何処からか聞こえてきたが、一行は足を止めずに空港の外に出た。
外には既にスタンバイされていたパトカーがあり、一行はそこまで歩いていった。
「ア、アーネスト!アーネストだよね!?」
突然、そんな声が聞こえてきた。
アーネストはその言葉を聞き、驚いた表情を浮かべて声のする方向を見た。
そこには一人の男性が立っていた。
「ク、クラッシュじゃないか!何で君が此処に・・・」
と、アーネストとが言った。
男はアーネストに近づこうとしたが、それより早く真利亜が男の前に立った。
「それ以上近寄っちゃ駄目よ」
と、真利亜が言った。
「で、でも・・・その人はおいらの・・・」
その時、もう一人の黒いスーツを着た男が男性に向かって歩いてきた。
「クラッシュ、此処は一旦退こう」
スーツ姿の男はそう言って男性に近づき、男性の腕を引っ張って立ち去っていってしまった。
「・・・あれは確か、PLCの・・・まぁいいわ」
亜貴はそう呟き、パトカーにアーネストを乗せて、彼女はその隣に座った。
「これで、真利亜の仕事はひとまず完了、かな?」
この街で日々起きる様々な事件、CPAOはそれらに対応し、日々努力している。
その結果がどうであれ、彼等が決して悪ではないことは明白だろう。
しかし、今回のある事件によって、警察組織にガタが生じ始めるなんて誰も予想だにしていなかった。
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