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二月八日
2012/09/08(土)03:23:15(12年前) 更新
Boundary between the Justice of Truth and False ~CPAO編~
街の平和を守り、市民の安全を確保する「CPAO」
しかし、警察内ではある問題が起きていた。
正義とは一体何なのか、考える暇はもうなかった・・・
早朝、警察署の会議室に全警察官が集合していた。
度重なる事件の発生などによって警官達は疲労困憊しており、特に前列の刑事達は席についた瞬間転寝を始める者もいた。
しかしそんな中、亜貴は朝にも関わらず妙に生き生きとしていた。
「今日は、早く上がらせてもらって、訓練施設に直行して・・・ああー、楽しみ!」
亜貴はそんなことを呟きつつ、周りを見渡した。彼女の左隣の席はまだ空席だ。
いつもは真利亜がそこに座っているのだが、今日はどうやら特殊部隊という括りで席が決められているらしく、亜貴のいる場所からはかなり遠い場所に座っていた。
「・・・あぁダルイ、筋肉痛が抜けやしねぇ」
そう言いながら、亜貴の隣に座ったのはザヌサーだった。
「あら、今日は前に立つ側じゃないの?」
と、亜貴が言った。
「今日は別に何もなかったぜ。まぁどうせ、一昨日の損害費についての何かだろ」
「そのついでに、もっと経費を出してくれたらいいのに」
「あのドケチ署長がそんなことしてくれるわけないだろ?むしろ今回の件で経費を削減されるかもな」
その時、会議室にエヌ・トロピーが入ってきた。多少ざわついていた会議室は、一気に静かになった。
「ああ?署長が直接前に立つなんて珍しいな」
と、ザヌサーが呟いた。
エヌ・トロピーは咳払いをした後に、マイクを持った。
「グッドモーニング。さて、トゥデイはある決定事項を皆にティーチングしなければならならない・・・」
「決定事項・・・何かしら」
と、亜貴が呟いた。
「まぁ何というか、通報があった事件で、ワタクシの指示があったものは少々現場検証の仕方をチェンジして欲しいわけだ」
「どういうことだ、それ?」
と、ザヌサーが言った。
「現場で調べたオールデータをワタクシにギビングしてもらいたい。それで、その事件のサーチはエンド、それだけを覚えてくれたまえ」
「・・・全く意図が読めないんだけど」
と、亜貴が言った。
「そうだねぇ・・・亜貴、キミにはもっと重要なシングをティーチしなければならない。後で署長室にカミングしたまえ」
「え、えぇ、了解」
「これでワタクシのトークはジエンド。解散したまえ」
エヌ・トロピーはそう言った後に、会議室から出て行った。
部屋に残された警官達は、エヌ・トロピーの言ったことの意味が全く分からず、困惑していた。
「・・・とりあえず、あたしは署長の部屋に行って来るわ」
亜貴はそう言って、席を立ち上がり、部屋を後にした。
「・・・ケッ、嫌な予感しかしねぇな」
と、ザヌサーが呟いた。
亜貴は廊下に出た後すぐに、署長室に向かって歩いていった。
しばらくして見えてきたドアの前に立ち、扉をノックすると、エヌ・トロピーの声が中から聞こえてくる。
「ん、亜貴かい?」
「ええ、そうですけど」
「レッツカミングー」
エヌ・トロピーの言葉の後に、亜貴は扉を開けて中に入った。
そして、エヌ・トロピーの前のソファーに腰をかけた。
「やはり亜貴はザヌサーとはディフェレンツ、オーダーをすぐに聞いてくれる」
「それで、話とは?」
「亜貴、キミはこの警察署のフォン番を担当しているはずだ」
「確かに、通報があった際に応じるのは大抵あたしですが、それが?」
「これから、メイビーある変わった電話が掛かってくるかもしれない」
「・・・脅迫とか?」
「ノンノンノン。ある不可解なワーズさ。合言葉、とでも言っておこうか」
「合言葉・・・?」
「その合言葉に対し、キミにはそのアンサーを返してもらいたい。相手が『太陽が役目を終えて沈んだ時』とセイしてきたら、キミは『月が残りの役目をするために昇る』とセイ」
亜貴は、エヌ・トロピーの言葉をただ顔をしかめながら聞くだけだった。
「そしてその相手から事件のあった場所を聞いた後、キミは電話を切り、ワタクシにティーチしたまえ」
「・・・その行動が何を意味するのか、全く分からないんだけど」
「まぁ、キミはそれ以上ノウイングする必要はナッシング。話はこれでエンディング。さっさと此処からゴーイング」
「・・・何、これだけの情報であたしが納得して実行すると思ってんの?」
と、亜貴は少し低いトーンで喋った。
「ホワッツ?」
「訳分かんないこといきなり言われて、それを何も知らないまま実行しろなんて、少なくともあたしには出来ない」
「しかしだな・・・フォン番であるキミにこの役目を行ってもらわんと・・・」
「じゃあ、しっかりと全てを説明して。あたしが求めることはそれだけ」
「・・・なら、トークしよう。この合言葉は、ある賞金稼ぎとワタクシを繋ぐ物だ。この合言葉があった事件は隠蔽し、その賞金稼ぎにマネーを渡す。要は、賞金稼ぎをユーズした犯罪者撲滅計画さ」
「それを・・・警察署長直々に認めているの?」
「ああ、いい考えとは思わないかい。賞金稼ぎはワークが出来てハッピー、我々は処理する事件が少なくなってハッピー、街は平和になって皆ハッピー!」
亜貴は彼の話を聞き、今までの話の辻褄が合致したことを確認した。
DACBという男の言っていた話は事実だったのだ。警察が犯罪者を援助する、そんな馬鹿げた話があったのだ。
「これで満足かい?さぁ、それじゃあ早速仕事を・・・」
「悪いけど、そういう話ならあたしは引き受けない。ていうか、警察が犯罪者を守るなんて、アホなん?」
亜貴がそう言うと、エヌ・トロピーはいきなり立ち上がった。
「なら、キミ以外の人物にこの仕事は任せよう。キミもザヌサーと同じく頭がストーンだったとはね」
「それで逃げれるとでも?そんな事を聞いて、黙ってられるほどあたしは優しくないの」
「ほぅ、ワタクシにシールド突くつもりかい?ま、署長であるワタクシの計画を、刑事無勢のキミが曲げることなどインポッシブル」
「いいえ、絶対にそんな馬鹿げた計画、阻止して見せるわ」
亜貴はそう言って立ち上がり、エヌ・トロピーを睨んだ後に部屋を後にした。
部屋の外では、ザヌサーが腕組みをして壁にもたれかかっていた。
「外まで聞こえてたぜ」
と、ザヌサーが呟いた。
「ザヌサーさんも、例の話は知ってたの?」
「・・・まぁな。お前もあの計画に関しては反対だって聞いて、安心したぜ」
「当たり前でしょ、あんな計画を許して良いわけないじゃない。ホント、あの署長は何がしたくてあんな計画を進めてるのかしら」
亜貴がそう言うと、ザヌサーは一瞬目線を下にやった。
「・・・どうかした?」
「いや、何でもない。とりあえず、仕事は山積みだからとっとと行こうぜ」
「そうね、行きましょう」
亜貴とザヌサーは、警察署の廊下を歩いていった。
昼過ぎ、一台のパトカーが北の区域を走っていた。
「まさか、もう失踪した子供達が見つかるなんて・・・」
と、パトカーを運転しながらルナが言った。
「あっさりだったね、良かった良かった!」
と、隣に座っていたリリーが言った。
先ほど、ミストから一通の電話が二人の所に掛かってきたのだ。
内容は、例の人身売買事件の際に失踪した子供の内、数人が発見されたとのことだった。
二人の乗ったパトカーは、ミストとの合流地点であったある家の前で停車した。
二人は車から降りた後に、家の扉をノックした。
「・・・警察の二人?」
という声が扉の内側から聞こえる。
「そだよー!」
と、リリーが言った。すると、扉はゆっくりと開かれ、中からミストが出てきた。
「入って」
ミストはそう言って、家の奥へと進んでいった。二人も家の中に入り、ミストの後を追った。
家の中は物で溢れ返っており、廊下にも服や本、更にはオモチャまで様々な物が床に広がっていた。
ミストは、あるドアの前で立ち止まり、二人のほうを振り返った。
「此処で待ってて。すぐに連れて来る」
ミストはそう言って、部屋の中に入って行った。部屋の中からは、子供達の元気な声が聞こえてきた。
すぐに、ミストは二人の子供を連れて出てきた。
「この子達が、インドネシアから連れて来られた子達。大きな怪我や病気はしてないから大丈夫」
二人の子供は、それぞれミストの手をぎゅっと握り、ルナとリリーのほうをじっと見つめていた。
「二人は、何処で見つかったんですか?」
と、ルナが言った。
「この区域の、所謂溜まり場にいたところを保護したの」
「溜まり場って何ー?」
と、リリーが言った。
「説明が難しいんだけど・・・まぁ、家の無い人達が夜に襲われたりしないように集まっている簡易集会所みたいな感じかしら」
「それで、今回見つけることの出来たのは二人だけですか・・・残りの子達はまだ見つかってないんでしょうか?」
ルナがそう言うと、ミストは一瞬表情を曇らせた。
「・・・えぇ、そうなの。ごめんなさい」
「でも二人も見つかっただけで十分だよ!ありがとう!」
「そう・・・じゃあ、この子達に関してはあなた達に任せるわ。優しくしてあげてね、まだ幼稚園児ぐらいの歳だから・・・」
ミストはそう言って手を離そうとしたが、二人の子供はどちらとも手を離そうとはしなかった。
すると、ミストは聞いたことのない言語で二人の子供達と話し始めた。
会話の全容はルナとリリーには理解できなかったが、ミストと離れ離れになりたくない子供達をなだめているということは分かった。
しばらくして会話が終わった後に、二人の子供はルナとリリーのほうに近づいてきた。
「二人ともインドネシア語しか知らないから、できれば警察署内でその言葉が話せる人を傍に置いてあげて」
「分かりました。捜査のご協力、ありがとうございました」
ルナはそう言って敬礼をした。
「あまり此処に警察がいると危ないから、早く行ったほうがいいわ」
「じゃあ、またよろしく!」
リリーはそう言うと、二人の子供に手を差し伸べた。子供達はすぐにリリーの手を握った。
そして、ルナとリリーの二人と子供達は家を後にした。
夜、ザヌサーは警察署で子供達の相手をしていた。
子供達は警察署内を楽しそうに駆け回り、ザヌサーはその後を忙しく追っていた。
「だぁー!頼むからじっとしててくれ!・・・何でよりによってガキの御守り担当が俺なんだよ・・・」
と、ザヌサーは息を切らして走りながら言った。
生憎署内にインドネシア語が話せる者がおらず、今日は子供達を署内で預かることになったのだ。
そんな日に限って、亜貴を始めとする女性陣は他の仕事や訓練に出かけており、成り行きで彼が子供達の相手をすることになったのだ。
言葉も通じないため、幾ら注意しようと子供達はじっとしようとしない。
「・・・お前等ぁ、いい加減にしやがれ!!」
ザヌサーは突如大声でそう叫び、壁を思いっきり殴った。
流石の子供達も、あまりの気迫にパタリと足を止めた。
やっとじっとしてくれた子供達を見てほっと一息ついたザヌサーだったが、どうも子供達の様子がおかしい。
「・・・うぅ・・・グスッ・・・」
「あ・・・こいつはマズイ」
ザヌサーは先手を打とうとしたが遅かった。子供達はその場でしゃがみこんで号泣しだしたのだ。
「わ、悪い悪い、俺が悪かった!
な、アイスとか買って・・・いや、この時期にアイスは寒いな・・・ほら、ガムとかやるから・・・って禁煙用ガムなんてガキに食わせちゃ駄目だし・・・
何だ、インドネシアでメジャーな菓子って何だ・・・?ああ、あれだな、チャイ!!・・・チャイ!?チャイって何処に売ってんだ!?てかあれって飲み物だろ!?
ああー、こんな時どうしたらいいんだ全く・・・そうだ、誰かに電話だ!それがいい!!」
ザヌサーはそう言いながら急いで携帯電話を手に持ち、番号を打った。
しかし、いつまで経っても携帯からは呼び出し音が響くだけだ。
「何なんだよ、たくよぉ・・・そんなに空手が楽しいのかよ・・・」
この間もずっと子供達は泣きっぱなしだ。
「そうか、飯食わせればいいって考えが駄目なのか、ならアレだな!」
ザヌサーはそう言って携帯をしまい、号泣する子供を無理やり抱きかかえた。
「ほら、高い高いって奴だ!どうだ、俺様より高い目線から見る世界は!?」
ザヌサーはそう言いながら子供を高く抱きかかえた。すると、子供はすっかり泣き止み、すぐに笑い出した。
「こいつは効果覿面だな」
抱きかかえていた子供を右肩に座らせ、ザヌサーは左手で軽々ともう一人の子供を持ち上げた。
もう一人の子供もすぐに涙が止まった。
ザヌサーはキャッキャと笑う子供達を抱えたまま、署内を歩き回った。
「・・・はぁ、こんなことしてると子供が欲しくなっちまうなぁ」
と、ザヌサーが呟いたその時、コートの無線機が鳴った。
「ん、悪いな。少し降りてくれ」
ザヌサーはそう言って二人の子供を降ろした後、無線機を持った。
「こちらザヌサー」
「こちら中央管理室、刑務所にて無断開錠が発見。全警官は即座に刑務所に直行するように」
「了解だ」
ザヌサーはそう言って無線機を切り、その場でしゃがみこんで子供達のほうを見た。
「・・・流石に連れて行くのは無理だからなぁ」
その時、彼の横を急いで走り抜けようとする警官がいた。
「おい、其処の若いの!」
彼が呼び止めると、その警官は一瞬ビクッとなった後にザヌサーのほうを向いた。
「お前、この二人の世話をしろ」
「ええ、でも指令が・・・」
「俺様の命令だ、二人の世話をしやがれ」
ザヌサーはそう言うと、警官をギロリと睨んだ。
「は、はいー!!」
「それでいい、これも立派な仕事だからな」
ザヌサーはそう言って立ち上がり、廊下を走っていった。
「面倒なことになってなければいいが」
時を同じくして、別の指令が刑務所の体育館にいる亜貴達の耳に入ってきていた。
「北グラウンドで銃声・・・これは練習どころじゃないわね・・・」
と、空手の道着を着た亜貴が呟いた。
「亜貴、真利亜達は此処の装備で十分だけど、あなたはどうするの?」
と、トレーニングウェアを着た真利亜が亜貴の方に走ってきてから言った。
「あたしには、装備なんてあって無いような物だから大丈夫。いい、全員すぐに一式装備して、北グラウンドへ」
「真利亜達は、外周の確認に回るつもり。侵入者の出入り口は予測できるし」
「そうね、それじゃあ二つの班に分かれることになるか。さぁ、全員早く行動して!」
亜貴がそう言うと、体育館にいた警官達はすぐに各々の装備を取りに散り散りになった。
「亜貴、幸運を」
真利亜はそう言って、体育館から走り去っていった。
亜貴は体育館の端に向かい、彼女の無線機と携帯電話を持ち、正面玄関に向かった。
正面玄関には既に数人の警官達がスタンバイしており、その中にはルナとリリーの姿もあった。
「ルナ、リリー!早かったわね」
亜貴はそう言って二人に近づいた。
「亜貴さん、北グラウンドへ行きましょう」
と、ルナが言った。
「ええ、分かってる。じゃあ全員東廊下を通って北グラウンドへ・・・」
その時、亜貴の無線機から受信音が鳴り響いた。
「今度は何・・・こちら亜貴・・・え、無断開錠!?了解、すぐに向かうわ」
「もしかして、脱獄?」
と、リリーが言った。
「恐らく・・・おかしい、同一犯にしては動きが早すぎる・・・」
「亜貴さん、指示を!」
と、ルナが言った。
「・・・ルナ、リリーは此処から半分ほど連れて北グラウンドへ向かって。残りで中央の牢獄に向かうから」
「了解。では私達は先に行きます」
ルナとリリーは、複数の警官を引き連れて、東側の廊下の方へと走って行った。
「あたし達も東側から突入する。あそこのライトの電源は其処にしかないから。さぁ、行くわよ」
亜貴はそう言って、東側の廊下へ向かった。その後ろを、武装した警官達が追って行った。
暗い夜道を、一台の車が物凄いスピードで走っていた。
車は刑務所の正面玄関に停車し、中からザヌサーが降りてきた。
ザヌサーは後部座席の扉を開けて、席に置かれていた大剣を背中に担ぐと、すぐに刑務所内に入った。
「正面からとっとと突っ切るのが楽か?」
ザヌサーはそう言うと、正面玄関からすぐに伸びている正面の廊下へ向かった。
其処からはすぐに牢獄内に入ることが出来る。その分警備システムも厳重だが、刑事であるザヌサーには関係ない話だった。
彼は廊下を走りぬけ、扉の横のパネルに手をかけた。
「こちらはChaonate市立刑務所、牢獄施設入室管理システム。ただいま牢獄施設内でトラブルが発生しているため、関係者以外の立ち入りを禁じております」
そんな音声がパネルから聞こえてくる。
「いっちいちうるせぇんだよ、これでいいんだろ!?」
ザヌサーはそう言って、パネルに右手の人差し指を突き付けた。
「認証中・・・あなたは、ザヌサー・ベアーさんで間違いないですね」
「とっとと開けろよ!」
「質問にお答えください」
「クッソが・・・そうだ、俺がザヌサーだ!分かったら早く開けやがれ!」
「認証完了、ロックを解除します」
そんな音声の後に、牢獄への扉が開いた。が、その先には想定外の光景が広がっていた。
「なっ・・・道が塞がってるだと!?」
何と、牢獄施設へ向かう道の壁が崩れて、先に進めなくなっていたのだ。
「どんだけ暴れてやがるんだよ、全く」
普通なら、違う道を進むなりして牢獄へ侵入するだろう。しかし彼は違った。
ザヌサーは瓦礫の前に立つと、何と大剣を構えたのだ。
「道が無ければ、切り開けばいいだけだろ?」
ザヌサーはそう言って、大剣を思いっきり横に振り回したのだ。
凄まじい力で放たれた分厚い刀身は、瓦礫をいとも簡単に砕いた。
彼は其処からどんどんと瓦礫を崩しながら前に進んでいった。通常では考えられない行動である。
そして、ついに最後の瓦礫の前に立ち、ザヌサーは大剣を構えなおした。
「こいつで、終わりだ!」
そう言いながら、大剣を盾のように構えて一気に前に向かってタックルをかましたのだ。
瓦礫を吹き飛ばし埃を巻き上げつつ、ザヌサーは豪快に牢獄への侵入に成功した。
「だ、誰!?」
そんな声が牢獄内に響く。ザヌサーはその声が亜貴のものだと分かった。
「・・・デカブツの登場か」
「どうやら、そうみたいだね」
という二人の男性の声も聞こえてきた。
視界が晴れ、ザヌサーは辺りの状況を把握した。
今、牢獄施設には亜貴と二人の男性、そして牢屋内で何が起こったのかわからず騒ぎ立てている大量の囚人達がいるだけだった。
亜貴は東側の廊下付近で、二人の男性に追い詰められていたところだったようだ。
「亜貴、お前二人を相手してたのか」
亜貴は見るからに苦戦していたらしく、道着にいくつかの血も滲んでいた。
「えぇ、まぁ・・・」
と、亜貴が言った。
「これでやっとフェアな勝負が楽しめるってことだね」
「・・・くだらん」
二人の男性は、ザヌサーのほうを見ながらそう言った。
「・・・ビットと、クリムゾンか。PLCが此処までやらかすとは珍しいな」
「流石、キャリアだけは無駄に長い刑事なだけはあるね」
と、ビットという名のスーツを着た男性が言った。
「無駄話はいい。ビット、とっとと終わらせるぞ。亜貴のほうはかなり消耗しているから、実質ザヌサーを倒すことだけに全神経を尖らせればいい」
と、クリムゾンという名の白衣を着た男性が言った。
「なら、この場に亜貴は必要ないだろ。亜貴、此処は俺一人で十分だ!他の場所に回れ」
「・・・今度はしくじらないでよ?」
「ヘッ、そのくらい分かってる」
「・・・幸運を」
亜貴はそう言うと、東側の廊下に向かって走って行った。
「・・・無駄だ」
クリムゾンはそう言うと、白衣のポケットに左手を突っ込んで何かをしようとした。
そこですかさずザヌサーは、右手を使って左腕に装備していたホルスターからUSPを取り出し、クリムゾンの左肩目掛けて引き金を引いた。
弾丸は即座にクリムゾンの左肩をかすめ、クリムゾンは左手をポケットから抜いて一瞬ひるんだ。
ザヌサーはUSPを地面に捨て、大剣を構えつつ一気に二人に向かって突っ込んだ。
「・・・クックック、不快なものだ・・・!」
クリムゾンはそう言って、前進するザヌサー目掛けてレーザーソードを構えて走っていった。
二人は剣を前に突き出した状態で激突し、そこから鍔迫り合いへと発展した。
「受け切ったか、流石だな」
と、ザヌサーが呟いた。
彼はクリムゾンのことをある程度は知っていた。細身の体に関わらず、一度キレるととてつもない力を発揮するということを。
しかし、正面からの力比べに関しては、ザヌサーのほうに分があったようだ。
ザヌサーは大剣に力を更に加え、クリムゾンの体制を崩したのだ。
「こいつでも食らっとけ!」
其処に更にザヌサーは、クリムゾン目掛けて思いっきり大剣をなぎ払ったのだ。
「チッ・・・」
クリムゾンはレーザーソードでガードしようとしたが、凄まじいパワーで放たれた大剣を受け止めることは不可能だった。
レーザーソードは手から離れ、クリムゾンは後ろに大きく吹き飛ばされたのだ。
その際にポケットから何かの機械が落ちたようだったが、詳細は確認できなかった。
クリムゾンは宙を舞い、なんと東側の廊下まで飛ばされたのだ。
そのままクリムゾンは地面に倒れこんでしまい、起き上がろうとしなかった。
「マズイな・・・」
ビットはそう言って、ザヌサーに向かって走って行った。
ザヌサーは再びガード体制に入った。が、ビットはザヌサーのいる場所まで走ってこずに、ある地点で立ち止まったのだ。
そしてしゃがみこんで何かを地面から拾い上げた。
「ビット・・・お前・・・」
そんな声が、遠くから聞こえてくる。クリムゾンが横になりながら声を発していた。
「怪我人が近くにいると厄介だからさ」
ビットがさっき拾ったのは、クリムゾンの落とした機械だった。
ザヌサーは、その機械が良からぬ物であること位推測していた。
「させるか!」
ザヌサーはそう言って大剣を構えてビットに向かって走って行ったが、それより早くビットは機械のスイッチを押した。
その瞬間、東廊下入り口の壁で大爆発が起き、壁がバタバタと崩れ始めたのだ。
「やりたい放題しやがって!」
ザヌサーはそのままビットに向かって大剣を振り下ろした。しかし、ビットは機械を手から離すと、素早く刀に手をかけた。
そして一瞬でザヌサーの視界から消えたのだ。
「・・・?」
大剣は空を切り、地面に剣先がぶつかった。
「新しい戦い方を知ると、いかにキミの戦法がガサツか良く分かるや」
というビットの声が後ろから聞こえてきた。ザヌサーの腹には一筋のどす黒い線が残っていた。
「ケッ、そんなほっせぇ剣なんぞで・・・」
ザヌサーは左手で傷を押さえながら、ビットのほうを見た。
「歳をとっても頑丈だね、ホント」
ビットの握っていた刀の剣先からは血が滴り落ちていた。
ザヌサーは右手の力だけで大剣を振りかぶり、肩に担いだ。
「誰かさんのせいで、肉体労働が増えたからな」
と、ザヌサーが呟いた。
「へぇ、誰のことだろうか?」
ビットは軽口を叩きながらも、ザヌサーに向かっていつでも攻撃できるように刀を構えた。
「・・・ビット、お前も落ちたな。何の狙いがあるかは知らないが、態々マフィアに転職するとは物好きなこった」
「キミになら分かるんじゃない?僕がマフィアになった理由、というよりかは警察を辞めた理由」
「あ?」
「こっちでは結構有名になってるよ、署長の件。大物刑事のキミが知らないはずないと思うけど」
「それがどうしたってんだ・・・?」
署長の件、といえばアレしかないはずである。署長直々に賞金稼ぎに伴う殺人を認める、馬鹿げたあの計画。
「いつかやると思ってたわけさ。それだけ」
ビットはそう言うと、構えていた刀を何故か一旦鞘に収めた。
「つまり署長のやり方が気に食わなかったからってことかよ、くだらねぇ」
「要約するとそうなるんじゃないかな。それで、いつまでお喋りを続けるつもり?」
「そう言うんだったら、終わらせてやるぜ」
ザヌサーはそう言いながら、大剣を片手で素早く横に振り払った。
ビットは大剣をしゃがんで避けると、再び柄に右手をかけて、一気に刀を抜いた。
しかし、二度も同じ型の攻撃を食らうほどザヌサーも単純ではない。
ザヌサーはとっさに両手で大剣を持ち直し、大剣を振り払った状態から一気に上方向に向かって大剣で切り上げたのだ。
ビットの刀は大剣と激しくぶつかり、刀は真上に打ち上げられてしまった。
一瞬、ビットは焦りの表情を浮かべたが、すぐに我に返って後ろに数歩下がった。
ザヌサーは大剣を盾のように構えると、無防備な状態のビット目掛けて突進を繰り出した。
「・・・あ、いいモン落ちてる」
ビットは小さな声で呟いてから、右方向に受身を取りながら回避しつつ、地面に落ちていた何かを拾って立ち上がった。
「いい加減、しんどくなってきたぜ」
ザヌサーがそう言いながらビットのほうを振り返った瞬間、牢獄内に乾いた火薬音が鳴り響いた。
火薬の破裂する音はいくつも繰り出され、それと同時にザヌサーのコートには無数の穴が開いた。
「弾の入った拳銃のポイ捨ては厳禁、その位分かってただろうに」
銃声が鳴り終わった後、ビットは手に持っていたザヌサーのUSPを遠くに放り投げた。
「・・・防弾チョッキを貫通できる弾を込めておいたんだが、それが裏目に出るとは」
ザヌサーの視界は既に朦朧とし始めていた。弾丸は全て腹部にヒットしていたため、即死は間逃れることは出来ていた。
だが出血がさらに酷くなり、もはや立っていることすら限界に近かった。
「・・・どうやら、お仲間さんが近くに駆けつけてきたみたいだ。止めをさせないのは残念だけど、仕方ないか」
ビットの言葉がかすかに聞こえてきた後、ザヌサーの視界は深い暗闇に包まれた。
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