DRIFT☆STREET-The Driving Ace-


レッドゾーンさん作

「prologue」

2012年4月某日…
空は雲ひとつ無い快晴であった。
そして神奈川県某所…
とある家に住む青年。
その青年の名は、「赤島 瞬佑」。
3年前に首都高の頂点に君臨した男だ。
瞬佑は玄関から外に出ると、新聞を手に取った。
そして新聞を読むと…
「何だよ…またストリートレーサーの犯罪特集!?
もう3年経ってんだからもうちっと他のニュースあんだろ!!
少なくともラ・テ欄くらい載せとけよ!腹立つな…新聞止めようかな…」
そんな愚痴を言いつつ、仕事場のファミレスに向かった。

…全ての始まりは3年前だった…
突如施行された法律「公道特別法」によって法廷速度が大幅改正。
その結果、日本はストリートレーサーを全面受け入れする形になった。
そして増加する犯罪…
ストリートレーサーの増加によって、パトカーよりずっと性能の良いクルマに、警察よりずっと腕の良いドライバーも増加…
警察に手が付けられない状態になってしまった。
治安は一気に悪化し、観光客も激減…
海外に移住する国民も増加…
なぜ国会はこんな法律を容認したのか…
そして3年もの月日が経っているというのになぜ法廷速度を戻さないのか…
今、政府や警察は国民からの集中非難を浴びている…
このままでは日本は…崩壊してしまう…

同時刻、警視庁…
ピリリリリリリ…
電話が鳴った。
ガチャ…
電話の相手は警察庁長官。
内容はやはりストリートレーサーの犯罪対策についての事だ…
『まだ対策は出来ていないのか?』
「つい最近、ようやく下準備が整ったところです。
あとはこちらからスカウトした相手側が乗ってくれるか…」
『フン、警視庁特別採用枠「Driving Ace」か…今までのようなトンチンカンな対策で無いことを祈るぞ…』
ガチャ…
電話が切れた。

そして後日、瞬佑の家にある手紙が来ていた。
警視庁から送られてきたモノだった。
「警視庁…俺、何か警察の厄介になるような事したか?」
疑問に思いながら手紙を読んだ。
『貴殿は、警視庁特別採用枠「Driving Ace」のドライバー部門候補者の1人に選ばれた。
指定の日時に警視庁まで来るように。』
手紙の内容をみて瞬佑は…
「…?…これだけか…なるほど、警察だけじゃ解決出来ない領域まで来ちまったから、ストリートレーサーにストリートレーサーをぶつけるつもりだな…」
自分なりに仮説を立てた。
ピリリリリリ!
そこで電話が鳴った。
ガチャ…
電話の相手は瞬佑の友人、「河野 涼一」だった。
「なんだ涼一か…珍しいじゃねーか、最近忙しいって聞いたが?」
『ああ忙しいさ、あの日以来ショップに客が殺到してるからな…
でも気になって仕方ない事があって…』
「あの警視庁からの手紙か?」
『お前ん家にも来たのか?』
「ああ、ドライバー部門とか書いてあった」
『俺はメカニック部門って書いてあった!』
「なるほどね…2部門ある訳か…とりあえず断わんねー方が良さそうだぜ?」
『ああ、じゃあ後日また』
「ああ」
ガチャ…
「結構スゲー事になってるようだな…」

そして4月下旬…警視庁側が指定した時間だ。

ヒュィィィィィン…
瞬佑は愛車FDで警視庁に向かった。
そして道中では…
(…RにエボにNSX…みんな家族連れって雰囲気じゃねーな…
やっぱり呼ばれたのは俺らだけじゃねーって事か…)
そして警視庁の前で…
瞬佑は涼一とほぼ同時に到着した。
流石に選ばれた人間だけに速そうな雰囲気を持っている者だらけであった。
瞬佑はクルマから降りると…
「やっぱ結構な人数が呼ばれたようだな」と言った。
「ああ、みんな愛車の自慢してるっぽいけどな」涼一はこう返した。
指定時間まではまだ余裕がある。そこで瞬佑は、
「指定の時間までまだ30分くらいあるな…暇だから近場のコンビニにでも行くか?」と言った。
「だな」
暇な時間に少し涼みに行くくらいな感じであったが、2人はコンビニに向かった。
普通に青信号で横断歩道を渡る。
すると、クラクションが鳴った。
「うわっ!危ねぇ!!」
2人は間一髪で避けたが下手すれば轢かれていた。
信号無視した上にクラクションまで鳴らす…日本人のモラルは確実に低下していた。
「やっぱ今の日本は荒れてるな…」
涼一は嘆くように言った。
「だよな…俺らが高校生だった頃、渋谷のスクランブルなんて人多すぎて通る気しなかったのに今はスッカスカだからな」
「東京も…こんなに人少なかったっけか?」
「いやもっと多かったろ…」
ほんの些細な事から今の日本がどれだけ荒れてるかを痛感する2人…
コンビニに着いたが、客は全然居なかった。
客が激減したため、コンビニの24時間営業は廃止になった。
客が居ないのに営業してても仕方ないからだ。
そして適当に飲み物を買った後、2人は警視庁まで戻った。
警視庁まで戻ると、また新しいクルマが来ていた。
クルマはGDBインプレッサ。
クルマに見覚えは無かったが、中から出てきたドライバーには見覚えがあった。
ドライバーは、高校時代瞬佑と涼一と同じ部活だった「川島 柳斗」だった。
だが瞬佑も涼一も自分の目を疑った。
恐らく第1部を読んでくれた方も同感だろう。
「涼一…幻覚が見えるんだけど俺…川島がコクピットから出てきやがった…」
「いや俺も見えるんだけど…麻薬の類をヤった覚えはねーんだけど…」
2人とも目の前の現実を認められなかった。
教習所の実技教習で何台もの教習車を再起不能にした柳斗が…あの柳斗がクルマを運転している事がどうしても理解できなかった…
そして向こうも瞬佑達に気づいたようだ。
「おー、赤島に河野じゃん!久しぶりだな〜」
普通に話しかける柳斗に対し瞬佑はこう言った。
「川島…お前どんな手使ったんだよ…」
「袖の下でもやってるみたいに言うな…まあ疑われても仕方ねーかな、俺の高校時代を知っているお前らからしてみれば」
「…??」
「…??」
2人ともまだ現実を見ていない。
「俺は変わったんだ!しっかりと正攻法で!免許を取得した!!」
そう言って柳斗は瞬佑達に自分の免許証を見せた。
瞬佑は自分の免許も出して見比べ、偽造免許証でないか念入りに見てみたが、正真正銘の免許証のようだ。
「信じらんねー…」
2人とも口を揃えて言った。
「今じゃ峠では相当名の知れた走り屋なんだぜ!」
「…マジかよ…」

ー5分後ー
ようやく「候補者」に対する説明が始まった。
まずは警視庁特別採用枠「Driving Ace」の説明だ。
話によるとこれは年々凶悪になっていくストリートレーサー…走り屋の犯罪…
最早警察ではどうしようもない状態になってしまい、そのため走り屋を警察にして犯罪者の検挙率を上げるという計画らしい。
そのためにクルマの性能を引き出すドライバーと常に最高コンディションのクルマを提供するためのメカニックを集め、そして優秀なメンバーに絞って日本を何とかする…という事だそうだ。

そして各自、2部門別々の試験が開始された。
まずはドライバー部門の試験が始まった。
純粋にドライバーの腕を見るものなので峠でのレースになる。
試験会場となるコースは埼玉県にあるらしい。
そしてドライバー部門候補者は埼玉まで移動した。
コースは埼玉県の「正丸峠」だ。
路面コンディションはハッキリ言って最悪。
見通しが悪く道も狭い…
昼に通っても薄暗く気味が悪いコースである。
抽選で選ばれた2台が一緒に走って全ての組が走り終わった際に残った者を採用するようだ。
抽選の結果…瞬佑が引いたクジは「2」と書いてあった。
「赤島は2番か…これで同時採用の可能性が出てきたな!」
「ああ」
「俺は1番目だ!絶対勝つぜ!」
そう言って柳斗は満を持してコースインした。
キャァァァァァァァ!!
2台は一気に加速する。
だがこの狭い道では抜きつ抜かれつのレースは無理なのでフロント&ラスト形式のバトルになった。
先行がゴールして10秒以内に後行がゴールしなかった場合、先行の勝利になる。
また、万が一後行が先行を抜いた場合は後行の勝利になる。
誰もが長期戦を予測したが、ダウンヒル突入後の第一コーナーで後行の柳斗が先行のドライバーを抜いて、勝負が付いた。
第2レース。
瞬佑の相手はポルシェだった。
コイントスで瞬佑が先行。
そしてスタートした。
ヒルクライムの低速コーナー。
RRであるポルシェはまともに曲がる筈がないのにしっかりと曲がっている。
「速えぇな…まさかRRであんだけ鋭いコーナリングしてくるとは…」
ダウンヒルに突入する。
もちろん瞬佑は此処で抜かれるようなヘマはしない。
上手いことクリッピングポイントに付けてクルマを走らせる。
膠着状態のまま勝負は中盤に突入。
ポルシェはリアタイヤが苦しくなってきた。
だがFDの方は前半のハーフスロットルによるタイヤマネージメントが効いてまだ余力がある。
ゴール直前でラストスパートを掛けてポルシェに12秒の差をつけゴール。
その後はあまり時間がかからずにドライバー部門が決まった。
そして警視庁に戻ってきた。
だが妙に人が少ない。
すると、メカニック部門の試験は既に始まっている事が分かった。
名簿を見てみると、やはり「金森 剛」の名があった。
2時間後、メカニック部門も決まったようだ。
そして解散。
合格者は翌日に再び警視庁に来るよう言われた。
とりあえず合格は決まった。
瞬佑は明日に備え、午後9時にはもう寝てしまった。
合格者全員にとって、明日からの毎日は今までと全く違うものになるだろう。
暫くの間、11時前にはバテて眠ってしまう事もあるだろう。
とりあえずスタートラインが完成した…といったところか。
ここからの事件に彼らがどう対応していくのか…それはまだ誰にも分からない。
今は彼らの新たなスタートを素直に祝おう。

「prologue」 完

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