DRIFT☆STREET-The Driving Ace-


レッドゾーンさん作

ACT.1「連続強盗事件」

チュンチュン…と、小鳥の囀りが聞こえる。
空は鉛色の曇り空。
風がヒンヤリしていて過ごしやすそうだ。
ピピピピピピピピピピピピピピ!!
目覚まし時計の音で瞬佑は目覚めた。
「…ふぁ〜…もう朝か…」
そして顔を洗い、朝食を摂った。
朝の情報番組を観ようとテレビを点けた瞬間、衝撃的な事実が明らかとなる!
テレビのチャンネルはいつもと変わらない。
情報番組が映るはずのテレビに映っていたのは、なんと昼ドラだった。
「…昼ドラ?…え?じゃあ今の時間は…?」
そう言って瞬佑は再び時計に目をやるが…時計の針が指し示す時間は「6:25」…問題はない筈が…携帯を開くと…!?
「…13:23」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!完全に遅刻じゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
瞬佑は急いで着替え、FDに乗り込み、エンジンを掛けるとすぐにフルスロットルをかまして今日からの職場…警視庁に向かった。

キャァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
駐車場にスピンして飛び込むという神業をやってのけた瞬佑だったが、結局警視庁に着いたのは午後2時を回ったあたりだった。
瞬佑は捜査一課に配属されたようだ。
持久走並みに頑張って指定の場所に急ぐも、元々遅刻確定していただけに、どうしても間に合わなかった。
「今のところ分かっている情報はそれだけ…」
バタンッ!!
「すみません!!!!!遅れました!!!!!」
・・・・・これは無いだろというタイミングで入ってきた瞬佑…場は完全に白けている…
すると、先ほどまで事件の概要を話していたと思われる男が口を開いた。
「…『Driving Ace』枠で入った『赤島 瞬佑』だな?初日から遅刻ってどういうことだ?」
「すみません…時計が壊れてたみたいで…」
「まあいい…これからこういう事の無いように気をつけろ。
俺は『鉄 翔平(くろがね しょうへい)だ。
お前達新人の世話係…っつーかもう警視庁の人間ってこのデカイ建物の割りに殆どいねーからな…
俺が捜査一課のトップって事になってるらしい。
じゃあ、遅れてきた奴もいるから、もう1度事件の内容を説明するぞ」
そう言うと、鉄は再び喋り始めた。
「この連続強盗事件が起きたのは去年の暮れあたりだ。
被害に遭ったのは全て首都圏の銀行ばかり…
だが犯人は逃げるのが上手くてな…結局これまで分かったのは犯人のクルマがベンツって事と、クルマのナンバーだけだ。
だが陸運局で調べても住所不定らしくて…首都圏のホテル全て調べても様々な偽名を使って泊まってるらしいから犯人の足取りが全く掴めない…
どうにかして首都圏の銀行全て襲い終わる前に事件を片付けないと…東北や関西まで進出したら正に手が付けられなくなってしまう…
いそいで犯人を探し出して逮捕するんだ!」
その言葉を聞いた後、各自捜索を始めた。
その後すぐ涼一が話しかけてきた。
「瞬佑…お前初日に遅刻はねーだろ…」
「しょーがねーだろ…ホントに時計が狂ってたんだって!!」
更にその後、涼一は外に行った。
聞き込みをするらしい。
瞬佑は、まずネットで身を隠すのに都合の良い場所を捜索する。
その後、様々な防犯カメラの映像にアクセスして見てみるらしい。
「犯人のクルマは紺色のベンツか…ここらに外車乗ってる奴は少ないから目立ちそうだが…」
身を隠せる場所が多すぎて特定できない。
カメラ映像へのアクセスに切り替えた。
そしてカメラ映像を見続ける瞬佑。
「今のカメラって性能良いんだな」
確かに画像はかなり鮮明だ。
だが都内のカメラ映像を全て見ても解決の糸口は全く掴めない。
まるで犯人は都内の防犯カメラの位置、死角を全て知っているかのようだ…
捜査は難航しそうだ…そんな事を考えながら、瞬佑はベンツの写真を手にした。…すると、もしかしたら重大かもしれない事に気づいた。
ナンバープレートに僅かだが赤の塗料が付着していた。
「コレって…まさか犯人のクルマを紺色だと決め付けて捜査をしていた俺らが完璧に間違ってたって事か…!?
いや、まだそうだと決まった訳じゃない…決定的な証拠を見つけるまでは俺個人で動いた方がよさそうだな…
下手にそこを報告して結局関係ありませんでしたじゃシャレになんねーからな…

こうして瞬佑は「赤の塗料」をヒントとして捜査をする事にした。
一方…聞き込み等をしている涼一達は…

「…畜生!まだ全く収穫が無い!!犯人側も人間なんだから必ず何かしらミスを犯していると思ったのに…」
涼一も苦労しているようだ。
首都圏内のベンツを全て調べていたらキリがない…
どうしたものか…そう思っていると剛が現れた。
「あれ?剛さんどうしたんですか?」
ここらは涼一の担当だ。剛はもう少し離れた場所で聞き込みをしている筈…
疑問に思って質問すると…
「涼一…東京って…広いな…」
意味不明の返答をする剛…そこで涼一が立てた推測は…
「剛さん…まさか迷子になったんじゃあ…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その場で剛は黙り込んでしまった。
「コンビニならあそこにありますよ…」
「分かった、じゃあ地図でも買ってくる…」
「頑張って下さい」
「ああ…」
…まさか迷子になる者が出てくると思っていなかった涼一は…
「大丈夫か?コレ…」
内心心配だった。
と、そこで隣を一台のクルマが走り去った。
紺色のベンツだ。
「え!?まさか…っ!!」
涼一はすぐにランエボを走らせる。
ベンツのドライバーは…
「なんだ!?なんで追って来るんだよ…っ…!!」
ヴォォォォォォォン!!!
100km/h以上でかっ飛ばす2台…その後ベンツはスピンしてしまった。
ベンツを捕まえ、聞きだせることを聞き出そうとしたその時…
ナンバープレートに目をやると…「八王子365 に 37−09」と書いてある。
写真のベンツのナンバーは「品川332 ほ 47−99」…捜査は振り出しに戻った。
結局この日は何の収穫も無いまま、翌日を迎える結果になってしまった。

ー3日後ー
まだ犯人の足取りは掴めない…
今のところ犯人に最も近づいているのは瞬佑だ。
偶然にも発見したベンツのナンバーに付着している赤の塗料…
今日も目立ちにくい場所に赤塗料がないか探している。
涼一と剛は今日も聞き込み調査。
鉄は襲われそうな銀行で張り込んでいる。
犯人はまだ目立った行動はしていない。
そして…
「紺色のベンツ?赤のベンツなら見たんだけどねぇ…」
「紺じゃないんですか…ならいいです。ありがとうございました」
涼一の聞き込み調査は難航している。
そこで涼一の携帯に連絡が来た。
相手は剛だ。
「何ですか?剛さん…」
『涼一、捜査、進展あったか?』
「いいえ…ありません」
『コレはあくまでも推測だが…紺色のベンツの事を聞くと必ず「赤のベンツなら見た」と言われる。
クルマの色なんて塗料で簡単に変えられる…
もし奴が行動起こすたびに紺から赤に変えて、逃げ切ると紺に戻す…なんて事してたら…』
「…!?…それは思いつかなかった!瞬佑達にも教えてやってください!」
『分かった。じゃあお前は鉄警部に連絡してくれ』
「分かりました!」

その頃瞬佑…
「…此処には2つ…他のポイントより3つ少ないな…
あとは他のメンバーがそれを匂わすような情報を掴めば塗料でクルマの色を変えていることが確定的になる…」
そこで電話がかかった。
「もしもし?剛さんですか?」
『そうだ、実は重大な情報を掴んだ!』
「それって…赤の塗料の事ですか?」
『気づいていたのか?』
「はい。でもこれほど大きな事件になると確定的な証拠を見つける前に連絡して取り越し苦労なんて事になったらシャレになんないですから、だれかそんな感じの情報を掴むまで待っていたんです」
その後瞬佑は自身の掴んだ情報を全て剛に話した。
『なるほど…じゃあ涼一に教えてくれ。俺は警部の方に伝える』
「お願いします」
少しずつ犯人に近づく捜査本部…あとは、犯人が動くのを待つだけだ…

ー翌日ー
この日は、前日に入手した情報の事があるので捜査本部のメンバー全員が集まった。
「昨日手に入れた情報から俺らは犯人にグンと近づいた。
赤の塗料は全6ポイント中1ポイントだけ付着した塗料の数が少ない事も分かった。
そして次に襲われる可能性が高いのは都内で唯一襲われていない…っていうか完成したばかり…っていうのが正確な表現だな…『帝国銀行霞ヶ関支店』だ。
奴が行動を起こしたらその6ポイントのどこかに現れる…
奴を見つけ次第追跡しろ。
相手が必要以上に抵抗…例えば、発砲してきたりした場合は殺さない程度に少々手荒な方法を取っても構わん。
じゃあ配置に着け!」
鉄の説明の後、全員が指定の場所に向かった。

ー某裏路地ー
此処は人目につかない…
それだけにオールペン入れるには最適の場所だ。
…犯人が現れるまでは暇だ。
少し仮眠を取ろうとしたとき、メールが来たようだ。
相手は、3年前まで瞬佑の家の近くに住んでいた「木下 優里」だ。
彼女は卒業後に京都の大学に進学した。
それ以来何の連絡も取っていなかったが…
瞬佑はそのメールを開いた。
『久しぶり瞬佑!元気?
そっちの方では色々と大変みたいだけど…
私は元気よ!
大学の方も3月に卒業して、バイトも今月で終わりだから来月にそっちの方に戻るわ。
それじゃ、またね♪』
向こうは元気そうで良かった。
「そういやアイツ、京都の短大に行ったんだっけ…だから3年間で卒業か…
前の仕事も忙しくてアイツの事考える余裕無かったもんな…
特に4月に入ってからあんな手紙来るし…すっかり忘れてた…」
ピリリリリリ!!
思い出に浸っている最中に、鉄から電話が来た。
「赤島!緊急だ!!予想通り帝国銀行が襲われた!!
犯人は金を持ったまま逃走している!!
人目の付かない場所に移動した後オールペン入れるつもりだ!!
紺色のベンツがオールペン入れてるのを見たら即刻逮捕しろ!
逃げられた場合はハンズフリー状態で俺に連絡入れろ!!」
…遂に犯人が行動を起こした…
瞬佑は念のため今のうちに携帯をハンズフリー状態にする…
それらしいクルマはまだ来ていない…
ほぼ同時刻に涼一と剛にも連絡が来て、2人とも警戒している。
2分経った…
だが、この状況では5分は経っているように感じる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴォゥン!ヴォゥン!
アレだ!
瞬佑の所に紺色のベンツがやって来た。
男が、エンジンを掛けたまま降りてきた。
中々用心深いようだ。
降りた後男はリアシートから赤の塗料を取り出した。
犯人決定だ。
瞬佑は男に近寄ると…警察手帳を取り出し…
「ちょっと待て、俺…こういうモンなんだけど、トランクの中検めさせてもらえるかな?」
「…」
男は同様を隠せずにいる…「何故バレた?」と言うかのように…
このままではしょっ引かれる…そう思った男は、懐からハンドガンを取り出した。
ガチャッ…パァン!!!!
取り出したかと思えば突然発砲した!!
バタン!
瞬佑は間一髪で銃弾を避ける事が出来た…
だが、その一瞬の隙で逃げられてしまった。
瞬佑も後を追うようにFDを出す。
ヴォォォォォォン!!!!
キャァァァァァ!!
狭い路地にスキール音が響き渡る。
そのまま鉄に連絡を入れた。
「鉄警部!!犯人を発見しました!!
逃げられましたが直ぐに追いつきます!!
13号地の方から湾岸線に追い込みます!!
その後大井から環状線に追い込むので、霞ヶ関トンネルを封鎖して下さい!」
『分かった。今すぐ手配する』
ヴュオン!!グァァァァァ!!
いくら合法になったところで公道での暴走行為が周囲の迷惑になっている事に変わりは無い…
無駄の無いルートでなるべく早く終わらせなければならない…
だが、霞ヶ関トンネルの封鎖が終わる前に着いてしまっては本末転倒だ。
どうする…
とりあえず湾岸線に追い込むポイントに着いた。
13号地から合流。
トンネルを抜け、すぐに大井だ。
環状線に追い込む。
幸い、一般車は少ないようだ。
バイパスを抜けて環状に入る。
キャ…キャ…
グォォォォォ…
尚も疾走する2台…
(クソ…ッ!!もうすぐ霞ヶ関だ!!手配はまだか!?)
そこで鉄から連絡が入った。
『赤島、封鎖地点を霞ヶ関から赤坂ストレート後の分岐に変更させてもらった。
封鎖は終わったから安心してくれ』
間一髪だ。
そして霞ヶ関…
まさか封鎖されているとは思っていない犯人。
霞ヶ関を抜け、赤坂ストレート。
(しめた!此処を待っていた!クルマの性能が違う!フルスロットルでチギって…)
だが、封鎖されていた…
約4ヶ月間、警察を苦しめ続けた連続強盗犯の逃走劇は此処で終了した。
そして高速を降り…鉄がこう聞いた。
「折角だ、ブタ箱にブチ込む前に何故こんな事したのか、聞いてみようじゃねーか」
すると犯人は…
「フッ…何故強盗をしたか…?別に強盗じゃなくても良かった…
俺はただ、このベンツってクルマが大嫌いなだけだからな…!!」
その動機について周りは理解できなかったが…鉄はその真意を察知した。
「なるほど…お前はベンツに乗って犯罪を犯す事でベンツの品位を落としたかったってワケか…」
「そうだ…」
ベンツの品位を落としたいから犯罪に走った…
恐らく、よほどの理由があったのだろう…例えば、昔ベンツに乗っている奴が家族を手にかけた…などの理由が…
「で、なんでベンツがそんなに憎いんだ?」
「…俺がベンツを憎むようになったのは小学生の頃だ…」
周りは緊迫したムードだ…
小学生の頃、何があったのか…
「俺は県内でも有名な私立の小学校に通っていた…」
「フン…で?」
「クラスの連中…」
な…何があったんだ…小学生の頃…
そんな事を周りが思っていると…
「アイツら!!!!!自分達がみんなベンツに乗ってるからって俺ん家のクルマが国産車のクラウンだってだけで俺を馬鹿ににしやがったんだ!!!!!」
…ヒュゥゥゥゥゥ……
風の音だけがした。
周囲は一瞬で白けてしまった。
「そんだけ?」
口を揃えてそう言った。
「重大な理由じゃねーか!!!!!」
犯人はそう主張するが…
「連行!!!!!!!!!!」
鉄、瞬佑、涼一、剛の4人が一斉に言った。
犯人をパトカーに乗せた刑事もしかり、周りの人間も、犯人に同情する者は1人もいなかった。
ブォォォン…
犯人を乗せたパトカーが走り去ったところで瞬佑は鉄に尋ねた。
「警部…なんか頭痛がしてきたんで帰っていいですか?」
鉄はこう返す。
「ああ構わん…っていうか正直言って俺も帰りたい…」
鉄がそう言った後、現場に居た人間は全員帰った。

ー翌日、京都ー
『えー、昨夜、4ヶ月近く首都圏を騒がせた強盗が逮捕されました。
犯人は「金橋 集一(28)」で、犯行に到った動機は「自分の家のクルマが国産車ってだけで色々馬鹿にされた。とにかくベンツの品位を落としたかった。」らしいです。』
「何それ…下らない動機ね…」
京都に居る優里も、全く犯人に同情しなかった。

ACT.1 完

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