DRIFT☆STREET-The Driving Ace-


レッドゾーンさん作

ACT.3「C1ドリフトコンテスト」

例の連続窃盗事件から早半月…
5月の下旬の事。
「瞬佑!コレ見ろ、コレ!」
涼一が慌てて駆け寄ってきた。
「なんだよ朝から騒々しいな…」
瞬佑は心なしかテンション低めである。
駆け寄ってきた涼一が見せた物は1枚の紙であった。
『第4回C1ドリフトコンテスト開催決定!
開催場所:C1高速都心環状線
開催日時:2012年6月17日(日)
ドラテク自慢したい方、大歓迎!』
「へぇ…」
瞬佑は未だにテンション低めである。
「気が向いたら行ってみるよ」
そんな瞬佑に涼一が
「お前冷めてるなー…高校時代のお前だったら絶対喜んで参加する筈なのに…」
「4年前は4年前、今はそこまでバカやるタチじゃねーよ」
「…」
涼一はそこを去った。

ー翌日ー
ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ…
聞きなれないEg音がする。
瞬佑と涼一は一緒に出勤してきて、2人とも気になったので見に行った。
そのクルマはブラックのGC8インプレッサだった。
「インプ…?川島のインプは確かGDB…それも廃車になったって聞いたけど…」
誰が出てくるのか…知らない奴が出てくると踏んだ2人の予想に反して出てきたのは柳斗だった。
「よー、赤島に河野じゃねーか」
もうGDBを失ったショックからは立ち直ったらしい。
「か…川島…どうしたんだ?そのGC8…」
疑問に思った瞬佑は聞いてみた。
「あーこのインプ?コレはこの前中古屋で程度の良いタマがあったから買ったんだ。
やっぱ足はあった方が便利だろ?」
「へぇ…あ、そうだ」
今度は涼一が口を開いた。
「来月の17日にC1でドリコンがあるって知ってるか?」
「いや初耳だけど…」
「参加費は2500円だってさ、良かったら参加しろよ」
「ああ」
この会話の後それぞれ分かれて仕事場に向かった。

ー午後ー
仕事を一通りこなし、昼休みになった。
瞬佑はああ言いつつも参加する気はあるらしく、C1に向かった。
C1で、どこかで見た911ターボがいた。
「あの911…もしかして採用試験の時(prologue参照)の…?
SAで話を始めた。
「あんた、あの時のFDか?」
向こうも覚えているらしい。
「ああ、俺は『赤島 瞬佑』だ」
「俺は『大崎 慶太(おおざき けいた)』だ」
名乗った後は…
「ところで、あんたはドリコンに参加する気は…」
この瞬佑の問いに大崎は…
「あるに決まってるだろ、だからC1で練習してんだろが」
大崎はやはりドリコンに参加するつもりでC1に来ているらしい。
「もしかしてそのポルシェで参加する気か?」
「…最初はそのつもりだったけど…前回まではポルシェで優勝出来たワケだし…けど今回速そうなS15シルビアがいてな…その為に以前売ったクルマ探してるんだ。良かったら手伝ってくれないか?」
大崎が探すクルマ…そこまでして探したいのなら相当なクルマなのだろう。興味が湧いてきた瞬佑は手伝う事にした。
「で、その探してるクルマは?」
「S13シルビアだ。此処に写真がある」
大崎は写真を取り出した。
そこに写っているのはボディカラーがブラックでGTウイングを装着している13だった。
「…なるほどね、確かに速そうだ。
この写真預かっても良いか?そっちはシルビアの特徴理解してんだろ?」
「ああ」
「じゃあ俺、仕事に戻るから。終わったら連絡する」
「分かった」
そして2人は分かれて行動した。

ー1年前ー
「慶太!大丈夫か!?しっかりしろ!!!」
一人の男が大崎に向かって叫ぶ。
だが大崎の返事は無い。
意識を失っているようだ。
『首都高速横羽線で事故。乗用車とタンクローリーが絡んだ様子。
乗用車1台大破。消防隊出動要請』
大崎が乗っているのはS13シルビア…だがクラッシュしてグチャグチャになっている。
ピーポーピーポーピーポーピーポー…
救急車のサイレンが鳴り響く。

それから1週間後…
大崎はようやく意識を取り戻した様だ。
「・・・・・・・・・・!?・・・此処は…」
「やっと目覚めたか?慶太」
走り屋仲間の1人が話しかけてきた。
「…俺…確か横羽線でクラッシュして…!?…そういや俺の13は!?」
「13か…売ったよ…あんな危なっかしいクルマ乗ってたら本当に死ぬぞお前…勝手に売ったのは悪かったと思う。それは誤るよ…
でも俺らはお前の事心配してたんだ。
売った金は後日返す。お前はゆっくり休んでろ、会社には俺が連絡つけとく」
そう言ってその走り屋仲間は去っていった。
「狂気のモンスター」それがそのシルビアの通称であった。
SR20DETをツインターボ化しさらにEgのボアアップも行った。
800psオーバーのそのマシン…駆動系に冷却系もしっかりとチューニングされている。
だがそのマシンは異様に扱いにくかった。
まっすぐ走らせる事すら容易ではなかった。
そんなマシンで大クラッシュ…死ななかったのは奇跡だとまで言われた…

そんな今何処にあるかすら分からないクルマを俺は探している。
傍から見れば狂ってるとも言われるかもしれない…
だが初参戦のあのS15に勝つにはどうしてもあの13が必要だ。
ただの13シルビアじゃダメだ…あの13じゃなければ…
ピリリリリ!
電話が掛かってきた。
「もしもし?…赤島か、仕事終わったのか?」
『ああ、今からそっち行くけど、どこで待ち合わせる?』
「神田橋JCT前」
『どっちの?』
「外回り」
『分かった』
いよいよ2人がかりでのクルマ探しが始まる!

ーC1外回り 神田橋JCTー
「よぉ、待たせたな!」
瞬佑がやってきた。
「仕事終わるの結構遅いらしいな」
「ああ」
「まあいい、早速クルマ探し始めるぞ」
とりあえず計画を立てる事にした。
「どうする?」
大崎は計画について相談した。
「そうだな…まず中古屋…それと解体屋だな」

ー中古屋ー
瞬佑は店長に写真を見せた。
「うーん…このクルマ…どっかで見たことあるんだけどな〜…とりあえずウチには無いよ」
「そうですか…」
次をあたる事にした。
だが、どこに行っても手がかりは無い。
ー解体屋ー
「…?このクルマ…確か引き取っていった奴がいたなぁ…」
その言葉に大崎は焦って追求した。
「ホントですか!?何処に!?」
店長は少し引いた様子でこう返した。
「あー…確か京都に住んでるって言ってた様な…」

解体屋を出て瞬佑がこう言った。
「なるほど京都か…関東地方って決め付けてたせいで見つけられなかった様だな」
「ああ、とりあえず今日はもう遅いし、明日にするか」
「そうだな、最近はデカイ事件もねーし…有給取っても問題ねーだろ」

ー翌日ー
AM7:30
「よし!早速京都に行くぞ!!」
大崎はなんだかウキウキしているようだ。
今まで手がかり0だったのだから大崎がウキウキするのも分かる。
ヴォゥン!ヴォゥン!
発進だ。
そしてー

ーPM5:03 謎の道ー
「…ヤベェ、迷った」
瞬佑が地図を読み間違えたせいで道に迷ってしまった。
「どうすんだよ…」
「どうしよ…」
道路が舗装されているので人が使っていたのは間違いない。
恐らくバイパス道路の増設に伴い、こんな変に暗い峠道を行く必要が無くなった…というところだろう。
つまり、人が来る確立は限りなく0に近いという事だ。
「こっから先はダウンヒルだな…走ってくか?」
「そうするか」
ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ…
勿論、エンスト起こすなんてヘマはしない。
ヴォゥン!ヴォゥン!
Egを2回フカし、クラッチを繋いでスタート!
キャァァァァァァァァ!!!!
激しいスキール音と共に大量のスモークが出てきた。
ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
3速9000回転、126km/h、油音水温異常なし、タイヤの状態良好。
FDのコンディションは最高だ。
780psもの大パワーを持っていても瞬佑の操作に対し従順に反応する。
良く曲がって良く停まる。いいクルマだ。
キャァァァァァァァァァァァ!!
ヘアピンも普通に曲がる。
瞬佑も基本のアウトインアウトのライン取りをしている。
曲がりきれないと判断したコーナーではサイドブレーキを上手く活用し、シフトダウンの必要はなく、なおかつそのままの速度では曲がりきれないコーナーでは左足ブレーキを使っている。
スピードレンジが低くても100km/h以上の速度を出している。
少なくとも基本操作はしっかりやらなくては谷底行きである。
そうならないようにしっかりした操作をキチンと行っている。
そして…
ー麓ー
「おお、麓のあたりは大通りだ!」
麓に来て訳の分からない道に来たりしないか…大崎の心配は外れて良かった。
さらにさっきまで使えなかった携帯のGPS機能も復活している。
無事に京都に着いたようだ。
「で、どうする?京都に着くの予定より大幅に遅れたけど」
「…とりあえず12時くらいまでは探そうぜ」
「分かった」

最近、方言の存在がほぼ忘れられたと言っていい。
言葉が理解できないなんて事が起きない安心感があって良い。

ー中古屋ー
「ああ、このクルマなら数日前に引き取ってった奴がいたなぁ…すぐに他の店に売っぱらったらしいが…」

その証言が最後だった。
その後はどの店に行ってもRPGばりに同じような事を言うだけで何の進展も無かった。

「弱ったな…」
2人は真剣に悩んでいた。
時刻はPM8:00を回っていた。

とりあえず近場をプラプラ歩いていた時だった。
とある本屋にて…通りすぎようとした時、店員用の駐車場にどっかで見た32Rがあった。
…っていうか明らかに優里のRだろ…と、瞬佑は思っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
じっとRを見つめる瞬佑に対し大崎はこう聞いた。
「どうした赤島?」
「いや、幼馴染のクルマっぽいのがあってな…」
「あの32か?」
「ああ」
…10秒程度の沈黙の後、大崎はこんな事を提案した。
「そうだ赤島、コイツにも協力してもらったらどうだ?
京都に住んでんだろ?俺らは好きな時に京都に来れるワケじゃねーしさ、どうだ?」
その提案に対し瞬佑は、
「そうだな…アイツ、大学卒業後も事情話して学生寮にまだ住んでるみたいだし、空き部屋がかなりあったらしくてな…
とりあえず俺らは捜索を続けて、たまに此処に来てRが無くなっていたら寮に向かう事にしよう」
「オッケ、決まりだな!」
こうしてとりあえず捜索を続行する事にした。

ーPM9:00ー
「まだ見つかんねーな…」
「ああ…」
未だに見つからず落胆する2人。とりあえずさっきの書店に向かう事にした。
「Rは無くなってるな」
「よし、行くぞ」
2人はFDに乗って、優里の元に向かった。
ウォォォォォォォォォォン!!!!!!
一般道でも思い切り飛ばしている。
一応今の法律では違反になってはいないのでOKである。
「お…おい赤島!少し飛ばしすぎじゃねぇか!?」
「何言ってんだよ!寮まで結構距離あるんだぜ?こんくらい出さねーと日付が変わっちまう!」
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!…」
車内に大崎の悲鳴がこだました。
ヴォォォォォォォォォ…キャァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
目的地にスピンターンで飛び込む瞬佑!
壁にブツけるなんてカッコ悪い事は勿論していない。
バタン!
2人はクルマから降りた。
「ぜー、ぜー、ぜー、ぜー、ぜー…」
大崎はかなり疲れを感じている様だ。
「どうした大崎、酔ったのか?走り屋としてどーなんだよそれ…」
「いやマジで吐きそうだから止めてくれ酔っただの何だの言うの…」
だがとりあえずは目的地に着いた。
「でも入っていいのか?」
大崎の問いに瞬佑は、
「問題ねーよ、別に男子禁制なんて聞いてねーし、去年の暮れにエアコンぶっ壊れたとかメール着たから中はボロいかもしんねーけど」
「おいおい…」
話している内に部屋の前に着いた。
ピンポーン
インターホンを鳴らした。
「・・・・・・・・・・」
ピンポーン
「・・・・・・・・・・」
ピンポーン
「・・・・・・・・・・出ねーな…寝てんのか?」
「さぁ…」
ドアを見ても優里の部屋に間違いない。
更にじっくりドアを見ると…
『セールス、押し売りお断り』と書いてあるシールが貼ってあった。
そのシールを見て瞬佑は…
「ひょっとしてセールスとか押し売りとかと勘違いされてんのか?」
そして「さあな?でも来るって言ってないならそう勘違いされても仕方ないんじゃないか?」と、大崎。
「仕方ねーな…こーなるんなら最初に電話しとくんだった…」
そう言って瞬佑は電話を掛けた。
その後ようやく優里が出てきた。
「来るんなら来るって言いなさいよ全く…」
出てきた直後の優里に注意を受けた。
「やっぱセールスの類に間違えられてたんだよ赤島…」
「らしいな」
瞬佑は全く反省の様子を見せない。
「で?なんでわざわざ京都まで来たのかしら?っていうか仕事どうしたのよ?まさか無職とか無いわよね…」
「んなわけあるか、ちゃんと有給取ってきたんだよ!京都まで来たのはクルマ探しだ」
「クルマ探し?」
「ああ、コイツ、大崎っていうんだけど…来月の中旬辺りにC1で開かれるドリコンの為に以前乗ってたS13探してるらしい」
その後大崎が事の詳細を優里に説明した。
「なるほどね〜、でもポルシェに乗ってるんでしょ?クルマの性能としてはシルビアよりもずっとポルシェのが良いんじゃないの?」
その事については瞬佑が自分なりに考えた事を話した。
「ああ、優里の言うとおりポルシェは真に走りを追求したクルマだ。
大してシルビアは元々はデートカーとしての位置づけだった。
クルマとしてはポルシェやGT−Rには敵わねーだろ…
けど肝心なのはクルマを乗りこなせるかどうか…
例えば小学生がF1マシン乗ってたって早くは走れない…正に宝の持ち腐れだ…ここまで言えば分かるな?」
「う…うん…何となくだけど…」
「何となくか…まあいいだろ、だからとにかくそれっぽい13シルビアの情報得たら教えてくれ」
「分かった」
交渉(?)は成立した。
そうこうしている内に0時になった。
2人は東京に戻っていった。

ー翌日ー
最近は凶悪犯罪も減っていって出動する事も滅多に無かった。
警察が必要ない世の中になるのが一番良いのかも知れない。
瞬佑はそんな事を思っていた。
「それにしても暇だな〜」
何か物足りないと言いたそうな表情で涼一が言った。
「まあ平和なんだからいいじゃん、寝る暇無いほど忙しくなったらそれも嫌だろ?」と、瞬佑。
「…それもそうかもな…」涼一も納得したようだ。

ー昼休みー
昼食を終え、しばらく暇…まあ元々暇だった訳だが…
瞬佑はC1(外回り)に向かった。
ヴォゥン!キャァァァァァァァ!!
勿論開かれるのはドリコンなんだからドリフトの練習をしなければ意味が無い。
それも見た目が地味なゼロカウンターではなくそれなりのアングルを付けた、しかもそこそこ速いドリフトでなければ駄目。
中々難しいところだ。3週してガソリンが無くなって来たのでサービスエリアを探して入っていった。
ガソリン入れて小休止。駐車場にクルマを停めて売店に入った。
5月末にもなれば充分に暑い。
売店の中はクーラーが効いていて涼しい。
缶コーヒーを1本買ってクルマに戻ろうとした時…
ピシャッ!
ポツポツポツポツ…
ザァァァァァァァァァァァァ…
雨が降り始めた。
「そっか…もう梅雨か…」
季節の移り変わりを実感した。
そして雨が降って、重大な事に気がついた。
「ヤバ…呑気な事言ってる場合じゃねぇ…Sタイヤじゃウェットロード走れねーぞ!」
そう、溝の少ないSタイヤはドライな路面ならガッチリ食いつくが、少ない溝は濡れた路面に於いては逆に仇となりスリップしまくるのだ。
もしドリコン本戦が雨ならマトモに走れたものじゃない。
それまでに純正タイヤを用意しなければ…
そして瞬佑は高速を降りてタイヤ屋に向かった。
タイヤを購入して持ち帰った。
狭い車内に入れて持って帰ったせいで車内がゴム臭くなるは燃費悪くなるわで(ちなみにFDは燃費悪いのでマイナスにマイナスを重ねる感じになった)踏んだり蹴ったりだ…ただでさえガソリン代高いのに…
家に帰った頃にはもうガス欠寸前だったのでガソリンスタンドに向かった。
『ハイオク 380円』
「リッター380円か…値上げしすぎだろ流石に…」
嘆きながらもガス欠じゃシャレにならないので諦めた。
ちなみに来月からリッター400円になるらしい。
どうするつもりだ政府!!
そんな事を思いながら帰っていった。

ー翌日ー
まあ大きな事件も無いので例によって一課は暇を持て余している。
そして瞬佑は昨日2回もGSに寄った為財布の中は真冬である。
「なー瞬佑〜、どっか行かね?」
やる事なくてなんかダルそうな感じで涼一が言った。
「俺金ねーから」
即答だった。
「そんな金使う事あったのかよ?」
瞬佑は昨日の昼頃、約五万円ほど持っていた。
「タイヤの購入と給油」
「ああ…」
まあタイヤも合成ゴムなので石油の影響で価格高騰している。
給油でも(2回の給油で)約一万八千円かかった。
まあそんな感じで五万円が一気に消える事もうなずけるだろう。
暇なのに行くところも無い。
最悪の状況かもしれない。
「預金の方は?」
財布が空でも預金はあるだろうと思った涼一はそう質問した。
「無理だ、13が見つかった時に金無かったらシャレになんねーから」
瞬佑にそう返され、「そうか…」と諦めた。
そして昼休み…
ザァァァァァァァァァァァ…
雨が降っていた。
もう本格的に梅雨に入っているようだ。
「じゃあ俺、C1に行ってくる」
「おお、頑張ってこい」
今日は涼一がC1に向かった。
「いーよなランエボは…4駆だから雨でも安定してるし…」
駆動方式の違いを改めて思い知った瞬佑であった。
まあ雪道ではないからまだマシなのだが…(FRは雪道に最も弱い駆動方式とされている)
正に冬でなくて良かったという感じである。
ー翌日ー
5月も終わり6月に入る。
梅雨真っ盛りである。
ドリコンまであと20日を切った。
13はまだ見つからない。
はたして本戦に間に合うか…
やる事も無く、近くのコンビニで棒アイスでも買いに行こうと思ったその時!
ピリリリリリ…ピリリリリリ…ピリリリリリ…
着信だ。
相手は優里だった。何か13に関する手がかりを手に入れたのか…?そう思いながら電話に出た。
『瞬佑!今荷物まとめて寮を出ようとしたら寮の前の大通りでゼロヨンやってる集団がいたわ!』
ゼロヨンと聞いて瞬佑は…
「ゼロヨン?んなモン東京でも毎日のようにやってるだろ」
『そうじゃなくて!そのゼロヨン集団の中にそれっぽいS13があったの!』
「マジ!?その13、カメラでとって送ってくれ!俺は今すぐ大崎と合流してそっちに向かう!」

ー5分後、東名高速ー
ヒュィィィィィィィィィン…ボゥン!!
「どうだ?確かにその13か!?」
車内で大崎にさっき届いたメールを見せた。
「…ああ間違いない!エアロもホイールもマフラーも全てそのままだ!」
「そうか…じゃあもっと飛ばすぞ!!」
そう言って瞬佑はシフトノブを5速に叩き込んだ。
5速6千回転弱でやく300km/h…だが一般車が邪魔で再びシフトダウン。
とにかく全速力で京都に向かっている。
京都に着いて高速を降り、寮に向かおうという時、瞬佑は全開通った道を大きく反れて走っていった。
「おい赤島!寮までの道と違うんじゃねーか!?」
「こっちのが渋滞が無くて速い!」
「でもダートだぞ?大丈夫か!?」
「へーきへーき!悪路はそこそこ慣れてる!」
ザザザザザザザザ!!
ダートを豪快なドリフトで駆け抜けている。
低ミューの路面であまり飛ばせないが確かに渋滞は無くて快適に走れている。
「よし、此処で元の道に戻る!」
右に進路を変えてダートを抜けた。
その後はすぐゼロヨン集団の所だった。
「すげぇ…ホントに近道だ…」
「な、言ったろ?」
「5!4!3!2!1!GO!!」
キャァァァァァァァァァァァァァ!!
2台のクルマが同時に発進し、約400mの距離を駆け抜ける。
10秒足らずのレースだ。
その参加車両の大多数がNOSを積んでいる。
中には調整不足でブローする車両もあった。
「すげーな…首都高じゃ絶対見れねーぞ…」
大崎は少し興味を持って見ている。そんな大崎に瞬佑が…
「感心してる場合か!13探してるんだろ?」
「あ…そうだった…」
「しかし困ったな…このゼロヨン…参加台数は少なく見積もっても150台はあるぞ…」
確かに、これだけの数の車両があれば特定は難しい、同じ車種で同じ色のクルマだってあるだろう…どうすれば…
2人が悩んでいると…パトカーがやってきた。
「ん?警察?何で警察がいるんだ?」
複数台のパトカーから警察が出てきて…ゼロヨン参加者達は…
「おい!なんで警察が出てくんだよ!ストリートレースはとっくに合法になった筈だ!まさか今さらそんな事も知らずに来たんじゃねーだろーなぁ!?」
この参加者を始めに他の参加者も…
「そうだ!いいとこなんだよ!邪魔すんな!」
「ふざけんな!帰れ!」
などの大ブーイングが起きた。
この暴動になりかけの状態で警察は…
「我々が来たのはそっちじゃない。実は近くの解体屋で盗まれたクルマが此処にいるという情報が入った」
少し離れた場所で警察の言葉を聞いていた2人は…
「盗難車が…?まさかその盗難車が例の13シルビアじゃあ!?」
瞬佑は13が盗難車なのではないかと推測し、優里に電話を掛けた。
「優里、お前の所から例の13見えるか?」
『うん、見えるよ』
「リアにナンバープレート付いてるか?」
送られてきた写真は横からの物だったのでリアにナンバーが付いているかどうかは分からなかった。
『ナンバー…あっ!付いてない!」』
優里のその言葉に瞬佑は確信した「間違いない、その盗難車はS13だ!」
そしてその言葉に反応した大崎は…「ホントか!?だったら彼女に合流すれば…」
「分かった、聞いてみる」そう言って再び通話を始め…
「優里、今何処に居る?」
『寮のすぐ前だよ、でもクルマが沢山あるから歩きで来ないとキツイと思うよ?』
「ああ分かった、今そっちに向かうから待ってろ!」
そして会話を終え、
「大崎、今すぐ寮の前に向かうぞ!」
「オーケー」
2人は走って寮の前に向かった。

「瞬佑!此処!」
「ああそこか!」
やっと優里と合流する事に成功した。
「瞬佑…あれ…」
優里は13の方を指差した。
そして瞬佑は、「…確かにナンバー無しだな…」
そして向こうの方でも…
「おい、アイツのクルマ、ナンバー付いてねーぞ」
「ホントだ…まさかあれが盗難車じゃあ…」
周囲が騒ぎ出し警察まで来た…
そして焦った13のドライバーは…なんとライフル銃を取り出した!
「!?…逃げろ!コイツ、ライフル持って…」バン!!
言い終わらないうちにその男はライフルで撃たれてしまった。
「う…うわぁぁぁ!?ホントに撃ってきたぁ!!」
「うるせぇ騒ぐな!!殺すぞ!!」
周りの人間全てが人質と化した状態で警察は手も足も出ない。
「アイツ…キレてるぜ…下手に刺激したら何するか分かんねーぞ…」
すると、13の男は突然前方に発砲した!
「うわっ!?」
ロクに武装していない警察はなんとか回避したが…
キャァァァァァァァァァ!
その隙にクルマを発進させ逃げられてしまった。
「マズい!逃げやがった!」
瞬佑は急いでFDのところに戻った。
真剣に追跡する気だと理解した大崎は優里のRに乗った。
そして瞬佑はFDに乗り込み、犯人を追った。
犯人との差およそ9車間。
2台とも高速に入った。
東名高速の2車線部分。
道幅が狭くあまり飛ばせない。
4速9000回転をキープしたままオーバーレブしないように気をつけている。
キャキャキャ…
右に左に一般車をかわし、走り続ける。
そして首都高エリア突入!
横羽に入って思い切り飛ばす。
ヴォォォォォォォォォォォ!!
ギリギリまで引っ張って5速に上げる。
こうしてEgのトルクバンドを外さずに速く走っている。
無論、水温と湯温にもキチンと気を配っている。オーバーヒートなんて論外だからだ。
芝浦まで来てC1入り、内回りより上級者向けとされている外回りを駆ける。
C1はストレートが殆ど無い。その為800馬力近いパワーを持つ2台は全然上まで持ってこれていない。
基本3速までで走っている。
スピードの乗るエリアではたまに4速に入れるが殆ど3速で頭打ち走行をしている。(レブリミットギリギリでの走行は悪い印象を与えるが下手にシフトアップするとトルクバンドを外して遅くなってしまう場合があるからだ)
「チッ…こういうの嫌いなんだよな…」
瞬佑はあまりいい気分では無かった…というより頭打ちはドライバーも金縛りに遭っているような気分でとても気持ちの良いものでは無いのだが…
キャァァァァ…スキール音が鳴り響く。
ヴィィィィィィィィン!!悲鳴のようなEg音が鳴り響く。
「まだか…霞ヶ関…」
霞ヶ関のあたりには直線が1箇所だけある。
C1でそこだけは200km/hオーバーでの走行が可能だ。
仕掛けるポイントは絶対に外せない。
まだか…まだか…
パワーは完全に向こうが上だ。仕掛けるタイミングを間違えれば離されてしまう。
そして…「来たぁぁぁぁ!!」
瞬佑の方が早めに減速してコーナーを曲がった。
13よりも内側に着いている。
キッ…キキ…タイヤは滑り出すか滑り出さないかのギリギリの状態だ。
ラインが苦しいため13が離れる…だがその先は直線!
コーナー出口でアウトに寄せて13より若干早く加速体制に移った。
そして…ゴクッ!
4速に上げる。7000…8000…9000…5速に上げる!
そしてさらに8000回転まで上げたところで…
「行けェェェェェェ!!」瞬佑はステアのスイッチを押し、スクランブルブーストをONにする。
ブウォォォォォォォォォォ!!!!!
Egは唸り声を上げるかの様に鋭く回る!
ブーストメーターが赤く光る。
スクランブルブーストは警告音が鳴るまでの短時間しか出せない。
5速9000回転ジャスト300km/h!遂に赤坂ストレートでの300km/hを達成した。
この追い上げに犯人はかなり焦っているようだ。
走りで動揺しているのが分かる。
フラフラしていて危なっかしい。
果たしてどうなるのか…!?

(あの13…かなり動揺しているな…!クルマの動きが見るからに危なっかしい…少し距離を置いて走った方が良さそうだな…)
瞬佑は13から約2車間分置いて走っている。
走りも、今までギリギリの状態で走っていたのが前で何があっても対応できるように安全マージンを取って走っている。
一方、S13の方は動揺しているせいで自分のラインを走れていない。
ブレーキのタイミングもコーナー毎に早すぎたり遅すぎたりでかなりムラっ気のある走り方だ。
いつクラッシュしてもおかしくはない。
瞬佑の判断は正しい。限界走行は言い換えれば余裕の全く無い走りだ。
周りに気を配る余裕も無いのに前で何かあれば巻き込まれてしまう。
公道での走りでは全開はあってはならない…だが相手は全開だ。
そして…神田橋JCT付近…
13先行のFD後追い…FDは一定の間隔で付いていく。
連続コーナー後の分岐で銀座方面へと向かう。
そして螺旋状のコーナーで…
「!?」
キャァァァァァァァァ!!
13がハーフスピン状態になる。
(ハーフスピンか…かなり焦っているな…)
その後左に出る所でS13は完全に右を向いている。
逆ドリフト+サイドブレーキでクルマを無理矢理左に向けるが、その後は直線の為また右に向ける…いわゆる「タコ踊り」になってしまった。
(とっちらかりやがった…もうアイツにはこれっぽっちの余裕も無い…!!)
そして勝負はクランク後のコーナーで着く!
「クソ…ォ!!コレでどうだぁぁぁ!!」
遅すぎるブレーキでコーナーに突っ込む13…
「ダメだ!その速度じゃ行けない!」
瞬佑は咄嗟に引いた。
キャァァァァァァァァ!!
オーバースピードで突っ込んだ13はスピンしてしまった。
「はい14時45分、銃刀法違反及び窃盗、傷害の現行犯で逮捕」
スピン後あっさりと逮捕されてしまった男であった。
その後直ぐに大崎に電話を掛けた。
「大崎、ライフル男は逮捕した。13はフロントを多少擦ったけど大して壊れてない、安心しろ」
「分かった、今どの辺だ?」
「C1外回り、銀座のクランク後のコーナーだ」
「オーケー、今すぐ行く」
S13は無事回収され、剛のガレージに向かった。
「ふーん、この13をね…検切れ車か…まずシートとマフラーとサスをノーマルに戻して、Egの整備だな…よし、まずEg降ろすぞ」
剛はそう言ったが大崎は反論した。
「ちょ…Eg降ろすって…どうやって走れって言うんですか?」
大崎のこの反論も剛にとっては想定内だったらしく、直ぐに返答した。
「SR20DETならウチのガレージにまだある、それを代わりのEgとして載せて車検を通す、その後またこのSR20DET改ツインターボを載せれば良い話だ」
「分かりました…」
キチンとした答えが返ってきたので大崎も納得した。
「とりあえず簡単な調整とかするから明日取って来い」
剛がそう言い、全員帰っていった。
「…さて…と、明日って言っちまったし全速力でやんないとな」
そしてEgを降ろす作業に取り掛かったその時、ガレージのドアが開いた。
「?誰だ?…って…なんで此処に!?」
意外な人物が入ってきた。

そして電話が着たのは夜中の2時。わずか半日で作業が終わったらしい。
ガララララ…
「随分と早いですね、剛さん…」瞬佑も一緒に来て(というよりタクシー代わりに夜中突然起こされて)そう言って入ってきた。
そして剛の所に来た意外な人物とは…なんと鉄だった。
「って…!?警部!?なんで此処に!?」
驚く瞬佑に剛はこう答えた。
「あー、俺も驚いたよ…でも警部が手伝って…っていうか実作業の95%以上を警部がやった訳だからもう俺が手伝いって感じだな…
まあ警部の協力が無ければこんな早く終わらなかった訳だ」
「へぇ〜…警部ってそんな凄いメカニックだったんだ…」
まだ驚きを隠せていない瞬佑であった。
そして鉄は…「まあな、20年前くらいにストリートレーサーが大量検挙されただろ?そん時に使われたパトカーは俺がチューニングしたんだ」
「へぇ…」
調整が終わったので早速大崎は仮ナンバーを付けて車検を通しに行った。
そして見事車検に通ってナンバーの取得に成功した。
これでS13シルビアは大手を振って公道を走れる。
大崎が戻ってきた時、Egは既に完成していた。これも鉄の協力あってこそだ。
それから暫定セッティングを始め、所要時間は24時間に満たなかった。
だがこのセッティングはあくまでも暫定的なものなのでこれから煮詰めていく事になる。
早速C1でセッティングを開始した。
涼一、剛、優里の3人が協力している。瞬佑は箱根に最近有名になったS15シルビアがいるとの情報を掴み、そちらへ向かっている。
ー箱根ー
ヴォゥン…ヴォゥン…瞬佑は頂上にクルマを停めてそれらしい15がいないか探している。
S15は2台あった。
何やら言い争っているようだ。
「おい!俺と勝負してどっちが真のシルビア乗りか証明してみろ!」
「…下らん…お前じゃ勝負にならん」
「なんだと!?ごたくはいいからとっととスタートラインにクルマ並べやがれ!」
冷静な方の男は渋々バトルに応じ、スタートラインにクルマを並べた。
白と黒…対照的な色だ。
「いいか?俺がアクセルを5回フカしたらスタートだ!」
「あいよ」
バトルが始まると瞬佑は近くの走り屋に声をかけた。
元々地元なので顔見知りも多い。
「…ん?瞬佑か、久しぶりだな」
「ああ、バトルしてるみたいだがあの2台どうなんだ?」
「あー、黒の15に関する情報は何も無い」
「へぇ…不気味なクルマだな…」

ゴォォォォォォォォ!!
キャァァァァァァァァ!!
現在、白の15が先行している。
だが黒の15があえて白い方を先に行かせてる感じだ。抜こうと思えば何時でも抜ける…そんな余裕のある走りをしている。

「白の15は通称『光の弾丸』だ」
「ほぉ、大層な通り名だな…速いのか?」
「全然…抜かれるとキレて正に弾丸のように直進してクラッシュする奴だから」
「…よく生きてるな、そいつ…」
「まったくだ」

「ようし、このまま行けば勝てる!」
白の15の男がそう確信した時…!?
「甘い!」
キャァァァ!!
『白』の男が気付いた時、既に『黒』の男は抜きに掛かっていた。
バックミラーから完全に消えて…
死角をつかれた『白』の男は為す術も無く抜かれてしまった。
「何!?…クッソォ!ナメるなぁぁぁ!!」
ヴォォォォォォォォォ!!
蛇行路で『白』の男は無謀にもスクランブルブーストをONにし、フルスロットルをかます…が、そんな無茶な戦法が通る筈も無く路肩に乗り上げクラッシュ。…で済めばどんなに良かったか…白いシルビアは勢いを全く衰えさせずにガードレールに突っ込み、そのままガードレールを突き破って落下してしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
下の道路に叩きつけられる15…そこに『黒』の男が来た。
「さ…最悪だ!避けてくれぇぇぇ!!」
「チッ!このヘタクソがぁ!!」
キャァァァァァァァァァ!!!
左車線は吹っ飛んだ15が塞いでいる。
そこで右車線に出るようにマシンをスライドさせかわした。
『黒』の男、完全勝利である。

ー白のS15クラッシュ地点ー
「あーららー…150km/hでダイビングか…こりゃあ修理しろって言われても無理だな」
ギャラリーが集まってきた。
S15のドライバーは既に病院に搬送されている。
「見ろよ、外装はグチャグチャ…ロールケージも全く役立ってない…Egも死んでるなこりゃ…」
もうクルマかどうかも分からない状態になったシルビア…このまま間違いなくスクラップ場行きだ。
直に規制線も引かれるだろう。
瞬佑はその場を立ち去り、黒のシルビアを追った。
「御殿場あたりで遇えるか…?」
あれだけの走り屋だ。聞けば何か知っている者もいるかもしれない。
御殿場周辺で聞き込みを開始した。
その後10分くらい聞き込みをしたところ…
「ああ…そのシルビアなら箱根か…いなけりゃ大垂水にでも行けば遇えるぞ」
大垂水峠…瞬佑はそのコースがあまり好きではない。
道幅が狭くて走りにくいったらありゃしない(それでも埼玉なんかの峠よりはいくらかマシだが…)
「まあわざわざ埼玉行って正丸なんかでバトル…なんて事がない分マシか…」
と言って大垂水に向かった。
自販機でコーラを買い、S15が降りてくるのを待っている…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
途中で帰って敢え無かったら元も子も無い。
ヴォ…ヴォヴォヴォ…ォォォン…
微かにエキゾーストが聞こえる。
Egまでは特定できない…だがREでない事は確か…ボクサーエンジンでもない…さっき箱根で聞いたシルビアのEg音…SR20からの換装はしていないようだ…
ヴォォォォォォォォォォォン!!
「来た!SR20の音だ!」
ヴュイン!!!!
瞬佑の前を黒い15シルビアが駆け抜ける!そしてスピンターン…
もう一本走る気だ…
「この絶好のチャンスを逃す手はねぇ!」瞬佑はそう言って飲みかけのコーラをドリンクホルダーに置き、クラッチを繋いで発進する。
ヒュィィィィィィィン!!
「…1台追ってくる…REの音だ…少なくともさっきの15ほど楽な相手ではないな…着実に差を詰めてくる…」
ガコ!ビュィィィィン!!
「頼むぜFD!ドリコンも近いんだ!ブローしたらシャレになんねーぜ!」
ヴォォォォォォォォォ!!ピシュィン!ブローオフバルブが抜ける音…ターボ車の音だ。
タービンは正常に回っている。
右中速コーナーを越えてシルビアのテールが見えた!
「よっしゃぁ!追いつけ!!」
もうすぐ追いつく…一気にアクセルを踏み込むが…
「そろそろ本気で行くか」
シルビアは、今までの走りは何だったのかと思いたくなるほど狂ったように加速していく…
そしてあっという間に瞬佑の視界から消えた。
「…上手かったな…アイツ…よくあの湾岸仕様の足であそこまで曲がれたもんだ…」
チギられた瞬佑は…
「くっそ〜…なんだよあの速さ…今までは全然本気じゃ無かったって事かよ…」
追っても追っても追いつけそうに無いので諦めてアクセルを抜いた。
ハザードを点けて路肩に停車し、残りのコーラを全部飲んだ。
「あ〜…ギリギリまで追い詰めたつもりなんだけどな〜…仕方ねぇ、C1行って13のセッティング手伝うか」
そう言ってC1外回りに向かった。
まだセッティングは続いていた。
一番最初に気付いたのは優里だった。
「あれ?瞬佑…箱根で例の15について調べてたんじゃ…」
「ああ、あの後大垂水でぶっちぎられた」
「ええ!?そんなに速かったの?その15…」
「ああ、っつーか速いなんてモンじゃねぇよあのクルマ…俺が追いついた時なんか実力の2分の1も使ってなかったぜ多分…」
キャァァァァァァァァァァァァァァ!!
大崎が戻ってきた。
「ん?赤島か?いつ来た?」
「今来た」
「そうか」
会話の間にも涼一と剛はセッティングを変えていた。
「なあ赤島…次のセッティングを試す時さ、テストバトルの相手になってくれないか?」
「テストバトル?別にいいけど」
「大崎、次はこれでやってみてくれ!」
涼一に呼ばれクルマを取りに行く大崎。
「じゃあコースはこの芝公園JCTからスタートして1周だ」
「OK」
「よし、行くぞ」
キャァァァァァァァァ!!
激しいスモークを撒き散らし2台がスタートを切る。
ヴォォォォォン!!ヴォォォォォン!!
2回フカす。軽快な音だ。
「すげぇ回ってるな…パワーもとてもSR20だなんて信じらんねー…800psオーバーは伊達じゃねぇって事か…」
C1では考えられないような速度で駆け抜ける2台。
その辺を走っている雰囲気系の奴は…
「うわ…アイツらバカかよ…C1で最高速バトルでもやる気か…」
ヴォォォォォォォォォ…ピシュゥン!
もうすぐにでも1週してしまいそうな勢いで走る2台…
「うぉ…コーナーで無駄にリアが出る…このセッティングはダメだな…」
そしてー
「ダメだ!どのセッティングもしっくりこない…」
大崎は焦りを隠せていなかった。
まだ瞬佑にも勝っていない。その状態でS15を下せるのか…!?

ドリコンまであと5日…
13のセッティングはまだ決まらない。
中々難しいクルマのようだ…
瞬佑はあのS15を探している。
箱根を探して御殿場行って大垂水まで…だが未だにあのクルマは見つからない。
ドリコン練習の為にC1に来ているのかと思いC1に行くと…
「!?…いた!」
霞ヶ関JCT付近であの15に出くわした!
「よぉし…今回は首都高だ!逃がしゃしねぇぞォ!!」
キャァァァァァァァァ!!
瞬佑は一気にアクセルを踏み込み、加速する。
15の横に並ぶ。
「…コイツぁ…この前のFD?まさかあれからずっと俺を探していたのか…!?」
15もバトルのサインに応じ、バトルが始まった。
ヴォゥン!ヴォゥン!ヴォゥン!!ヴォォォォォォォォォォォ!!!
内回り…霞ヶ関を何km/hで抜けられたかで赤坂ストレートでのトップスピードが決まる。
220km/hで抜けられれば一般車の動き次第では300km/h出せる。
ストレート後は左低速コーナーからそのままC1で走る。
だがその後は前回同様瞬佑は15にぶっちぎられて終わった。

「…来たな…」
15の男はPAで瞬佑が来るのを待っていたようである。
「おっ、15発見!」
FDを停めると、15の男が歩み寄ってきた。
瞬佑もクルマから出て、会話を始める。
「中々良い腕だったな」
「良い腕…か…ぶっちぎられた後に言われても嬉しくないような…」
「…俺は『清水 陽一(しみず よういち)』だ。そっちは?」
「『赤島 瞬佑』だ」
お互い名乗った後…陽一は、
「早速だけどお前のクルマにアドバイスしたいところがある」
「?」
瞬佑は何か分かっているのかと困惑するが、素直に話を聞く事にした。
「まあアドバイスと言っても1箇所しかないけどな、そのクルマには…
そのFDはパワーがありすぎる。
峠とかC1とかでトライするとコーナーで結構手こずるだろ?
それはパワーが有り余っているからだ。
お前のFDのパワーはどんくらいだ?」
FDの馬力を聞かれ瞬佑は、「780馬力」と答える。
「780…か…やはりありすぎる。
湾岸だって常時300km/hオーバーなんてあり得ない。一般車があるからな。
それよりも湾岸では280km/h前後を大事にした方がいい。
第一300km/hなんてギア比を思い切り最高速寄りにすれば500馬力…いや450馬力あれば出るんだ。
多分680馬力もあれば充分だ。試してみろ。
俺は時間がないからここで帰らせてもらう。
ドリコンの時にまた会おう」
そう言って陽一は帰ってしまった。
「680馬力で充分…か…」
その後瞬佑も帰った。

ー翌日ー
この日は瞬佑も13のセッティングに付き合っている。
「あれ?涼一は?」
瞬佑が来た時、まだ涼一は来ていなかった。
「うーん…なんだろ?いつもはもう来てる時間なのに…」
優里も少し疑問に思っている。
その時、ランエボが来た。
だがエボZではない…エボ\だ。
「ん?何だ?あのエボ\…」瞬佑が不思議そうにエボを見ていると中から涼一が出てきた。
「涼一ィ…なんだよそのエボ\…今までのエボZはどうした?」そう聞かれ涼一は…
「ああ、コイツは俺のショップの新しいデモカーだ」
「デモカー…か…でも何で今更エボ\なんだ?」
「金が無い」
「ああ…だから]じゃなくて\買ったのか…」
そんな会話をしている内に大崎が戻ってきた。
「どうだ?今のセッティングは」
戻ってきた大崎に早速聞いてみる剛。
「ええ、大分様になってきました」
「そうか」
そして涼一と共に基本はこのセッティングのまま細部を変えていくという作業に取り掛かった。
「大分進んできたみたいだな」
戻ってきて休んでる大崎に瞬佑が声をかけた。
「ああ、でもやっぱ手に余ってるっていうか…乗りこなせてないよ、全然…」
『パワーがありすぎる』…大崎の『手に余っている』という言葉を聞いた瞬佑はふと陽一の言葉を思い出した。
既にパワーは680psまで下げている。
「なあ大崎、俺のFD…少しイジったんだ。乗ってみないか?」
「ああ…」
ヴォォォォォォォ!
環状線に飛び出していくFD。
「…なんか、速度の割りにスイスイと曲がるな、このクルマ…」
「ああ、本当にパワーを下げただけで此処までバランス良くなるとは想わなかったよ…でもやっぱパワー感無くなってる気がするな…ドリコン前に700psくらいまで上げるか」
PAに戻ってきた時、既にセッティング変更は終わっていた。
「次は大幅な変更はしていないが、ハンドリングの特性を変えてみた。
今まではコーナーで無駄にリアが出るって言ってたよな、で…色々他の場所イジっても改善されなかったから今回は弱アンダーのセッティングにしてみた」
剛が今回の変更点を説明した。
「分かりました、今までどおり1週して戻ってきます」
キャァァァァァァァァァ!!
「あと4日…か…間に合うかな…俺も大崎も…」
13の弱アンダーセッティングはそこそこ上手くいった。
オーバーが出やすいFRは弱アンダーの方が良い場合もある。
勿論アンダー気味なのでしっかり基本が出来ていないとまともに曲がらないが…
大崎ならそんな心配も無いだろう。
「やっぱ俺にはポルシェよりこっちのが合ってるらしいな!」
環状をスイスイ駆け抜けて行き、今までで最高のタイムを叩き出した。
「ようやくその13をモノにしてきたらしいな」
戻ってきた大崎に剛が言った。
「ええ、このセッティング良いですね」
「だろ?」
大崎の13はもう完成に近くなっている。
FDはパワー感の不足を補うために簡単なパーツ交換で少し馬力を上げたがどうもセッティングが上手くいかない。
オーバーステアというよりもハーフスピンが頻繁に起こるようになった。
アンダー気味のセッティングではドアンダーしか出なくなっている。
どうしたものか…
タイヤのグレードを上げてみたが今度はドリフトが出来なくなってしまった。
コレではドリコンで優勝できる筈が無い。
今度は720馬力まで上げる事にした。
剛のガレージに預けて明日を待つ事にした。
ー翌日、6月14日ー
ドリコンまであと3日。セッティングもいよいよ大詰めだ。
明日からコースは整備の為封鎖されC1でのセッティングは不可能になる。
つまりセッティングは今日中に終わらせる必要がある。
コース封鎖の知らせを受けた参加者が一斉にC1に来てセッティングを始めた。
その結果焦って事故を起こす者が続出し事故渋滞が出来てしまった。
コース整備前に既にC1でのセッティングが不可能になってしまった。
仕方なく一向は横浜環状に移動した。
何故新環状ではなく横浜環状なのか?理由は新環状はC1も通るからである。
事故渋滞を確実に避ける為の横浜環状行きである。
大崎は昨日決めたセッティングで本番に臨む事にした。
そして瞬佑の720馬力仕様FDのセッティングもようやく上手く行った。
残り2日は瞬佑達が本業の方で忙しくなって走り込めなかった。
という訳で横浜環状で走りこんでいるのは大崎と優里だけである。
ちゃんと長距離の走行に耐えられるか確かめる為に新環状右回り→湾岸下り→横浜環状右回り→横羽下りのルートでの走行を行ったが特に問題は無かった。
ー6月17日ー
遂にドリコン当日。
瞬佑達の方も特に大きな事件は起きなかったのでこの日は暇だ。
エントリーを済ませてその後開会式。
一番最初に走るのは優里だ。(2順目)
その次6順目で涼一と剛。
あと柳斗も参加するらしく8順目。
そして最終10順目で瞬佑、大崎、そして陽一が入っている。
各順で3位以内に入った者が次の出走メンバーとして再び抽選でブロックを決める、というルールだ。
またサイドブレーキドリフトは減点対象になるようだ。
勿論スピンは論外。あまり角度を付け過ぎたドリフトも駄目。
丁度良いところが重要らしい。
5分後、1順目が走り出した。
キャァァァァァァァァァァ!!
1順目のクルマが激しいスキール音を鳴り響かせ発車する。
それを見た後瞬佑は携帯を取り出した。
周りを見ると他の参加者達も携帯を取り出している。
その様子をみて優里が聞いた。
「ねぇ瞬佑、みんな携帯なんか取り出して何してるの?」
その質問に少し驚く瞬佑。
「え?お前新聞のラ・テ欄見てねーの?」
「いや…新聞自体取ってないし…」
「ふぅん…今日このドリコン、テ○東で生放送されてんだよ」
この答えに優里は生放送よりむしろ放送局に反応した。
「何でテ○東なの?」
「さあ?作者がよくテ○東の番組見てるからじゃねぇの?」
「…」
まあ要するにワンセグで見てる訳である。
ー芝公園付近ー
3台がコーナーに突っ込む。
2台は上手くクリアしたが1台はコーナー出口でオツリを貰ってしまった。
『おおっと!ゼッケン92番、オツリを貰ってしまった!コレは痛い減点だ!』
実況もありというかなり本格的な大会の様だ。
芝公園から霞ヶ関JCT…トンネルの後は赤坂ストレート。
このストレートからのブレーキングバトルが見ものだ。
勿論このストレートをチンタラ走るなどと言うのは論外である。
ヴォゥン!ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ!!!グァァァァァァン!!
一気にフルスロットルで駆け抜ける3台!(道幅の都合等で同じ出走番でも前半と後半に分かれている)
『ああっ!ゼッケン83番!ブレーキングが遅すぎる!』
「チクショォォォォォォォォ!!!!!!」
ガッシャァァァァァァァァァァァァァァン!!
ゼッケン番号83番のSW20は26km/hオーバーで壁に刺さってしまった。
『83番クラッシュ!失格です!』
1順目は全員走り終わったが、12人中8人がクラッシュ・スピンする結果となった。
どうしても焦ってしまうようだ。
1順目終了から5分。優里は32のエンジンを掛けた。
「じゃ、行ってくるね」
「ああ、頑張れよ!」
送り出したのは瞬佑ではなく涼一だった。
瞬佑はFDの中でものっそい眠そうにしていた。
2順目が発車すると、涼一はFDに歩み寄り、瞬佑に話しかけた。
「おい瞬佑、寝るな」
「何だよ…寝たっていいじゃねーか…眠いんだからさ…」
「脇役が寝るのは勝手だがこの小説の作者は主人公が寝ると絶対手を抜くからな」
「例えば?」
「2順目から9順目まで全部はしょって10順目まで飛ばすとか」
「確かにありそうだな…」
「だろ?だから寝るな」
そして涼一は瞬佑をクルマから引きずり出した。
ー神田橋JCT付近ー
此処から幾つかの連続コーナーがやってくる。
あ、ちなみに審査をどうやってやるかは、コースのあちこちに仕掛けられたカメラの映像でやっているという設定です。
2順目のクルマはみんなシルビアに180SX等のFR車。
4駆の32は優里だけである。
更にGT−Rはインプやランエボと違ってアテーサE−TSというスライドによって前輪のトラクションを調節するシステムがある。
サーキット等では強力な武器になるがドリフトには不向きだ。
その辺をどうするのか…

ーギャラリー席ー
暇を持て余している瞬佑と涼一。
仕方ないので何か話している。
「なあ、GT−Rってドリフトできんのか?」
瞬佑が言った。
「まあドリフトに向いてるクルマじゃあないな。
E−TSもそうだけど兎に角重いからタイヤが直ぐにダメになる」
涼一は即答した。
確かにそれが常識である。
「でも、重量は軽量化で何とかなるし、秘密兵器も組み込んであるからな、あの32には」
秘密兵器…意味深な言葉だ…

ー再び神田橋付近ー
FR車軍団は軽々とドリフトする。
だがサイドの使いすぎで減点となるのも多かった。
そして優里も突っ込む!しかもブレーキングドリフトをするつもりだ!
大多数の観客は普通のグリップ走行になると信じた…が…!
32は普通にドリフトした!
しかも降りっ返しも完璧だ。
その様子を見た瞬佑。
「なるほどね…秘密兵器の正体が分かったよ…」
螺旋コーナーから銀座方面へと向かう2順目のメンバー達。
優里はその螺旋コーナーでも完璧なブレーキングドリフトを決めた。
で、観客席。
「涼一、その秘密兵器ってのはE−TSコントローラーだろ?」
さっき思いついた答えを言った瞬佑。
「正解〜!その通り、常識で考えればドリフトは困難なクルマだがE−TSコントローラーでフロントに掛かるトラクションを制限してやれば結構楽になるからな」
そして2順目終了。
優里はぶっちぎりで1位になった。
そして瞬佑は当たり前っちゃあ当たり前な事を言った。
「っていうか作者!俺が寝て無くても結局微妙に手抜きしてるじゃねーか!」

すまない…(汗

とりあえず2順目が終了した。
「3順目って誰かいたっけ?」
「メインキャラは一人もいないぞ」
「じゃ寝るか」
「だから駄目だって…」
「別にいいじゃん、6順目までメインキャラの出走は無いんだからさ」
「ま、それもそうか…」
という瞬佑と涼一のどうでもいい(?)会話は置いといて3〜5順目ははしょりますw(ぁ
「コイツの手抜き癖はどうにもならんな…」と瞬佑。

ホントにはしょって6順目…は
「飛ばすなよ」と、これは涼一。
(ってかコイツらさっきから誰と話してんだ?)と、剛の疑問。
そして6順目がスタートしt
「しつけーんだよお前は!まだスタートしてねーっつの!!」
…正直暫く放置してたからネタ切れ激しいんだよねorz
「大丈夫かコレ…中途半端なトコで終わらせたりしないよなコレ…」不安になる涼一。まあ当然っちゃあ当然だが…
今度こそカウントダウンが始まる。
5,4,3,2,1…GO!
キャァァァァァァァァァァァァ!!
剛のRがトップでスタートする!(ちなみに剛のクルマは第1部で出てきたあの34R。)
涼一は3番目あたりにいる。

ーギャラリー席ー
瞬佑はスタート時の様子を中継で見ていた。
そして異変に気づいた。
(ん?…何だアレ…)
モニターには何か線の様な物が映っていた。
しかも赤い。
(まさか…赤外線?)
今まで見えていなかったのが急に見えたのはタイヤのスモークのせいだろう。
だが明らかにクルマは赤外線らしきものに触れている。
気のせいなのか…それともまだ触れても何も起こらないように設定されているのか…
(カメラは回ってねーな…)
カメラが回っていない事を確認するとFDに乗ってスタート地点付近に向かった。
そしてスタート地点付近。
瞬佑は周囲にスプレーを撒いた。
確かに赤外線はあった。
だが爆弾とかそういう類の物は見つからない。
ケーブルらしき物が繋がっている…
それは周回方向に繋がっていた。
(此処からだと…設置に最適な場所は…何処だ?…C1はバイパス多いから道路を崩落させるならポイントは幾つかある…
…!?千代田トンネル付近!赤坂ストレートはかなりの見せ場だ!)
確信した瞬佑は再びFDに乗り込んで爆弾が仕掛けられている(と思われる)ポイントに向かった。
(あそこに仕掛けられている筈の爆弾…
どんなタイミングで爆発するのか分からんが被害を出すなら出走メンバーが通るタイミングに合わせるのがベターだろうな…)
必死にFDを飛ばして赤坂ストレートまで向かうが…既に爆弾は爆発していた…
横転しているクルマが1台。剛の34Rでも涼一のエボ\でもない様だ。
爆発で吹っ飛ばされ横転したクルマを見て呆然としていた涼一は、瞬佑に気付いた。
涼一はパニックになりかけてる。
「赤外線装置に気付けなかったのがいけなかったな…」
炎上している道路を見て瞬佑は呟いた。
「そうだな…この小説も一応サスペンス物ってなってるからな…
そういう系の作品は主人公の行く先々で確実に事件が起きるという現実では有り得ない仕様になるってのに…」
涼一は少しずつ落ち着きを取り戻していつものメタ発言をするようになった。
そこで見覚えのあるクルマが来た。
R32とGC8とS13とS15。
陽一が一番最初にクルマから出てきた。
「安心しろ、ポンプ車呼んできた。多分そろそろ来ると思うぞ」
消火活動は結構早く終わりそうだ。
皆が安心した時、ポンプ車が来た。
ホースを構える。
皆は安心しきっている。…が、剛が異変に気付いた。
微妙に。本当に微妙にだがポンプ車と違うところがある。
あれはポンプ車じゃない…だとすると!?
「マズい!みんな逃げろ!!」
大声で叫んだ。
周囲は普通じゃない雰囲気を察知して一斉にクルマに乗り込んだ。
ポンプ車から発射された液体は水ではなかった。
消化剤でもなかった。
黒い液体…発射されたのはガソリンだった。
ガソリンを注がれた火は更に激しく燃え上がった。
路面は熱に耐えられず変形し、崩落した。
全員の避難が終わっていたため、怪我人は(横転したクルマに乗っていたドライバーを除いて)1人も出なかった。
死者は0人。
不幸中の幸いと言うのか。
そして偽ポンプ車を呼んだ張本人は…
「うん、いい感じに燃えてるな!コレ見てると警察の無能さが良く分かる!これなら上手く行くな!」
そう言った後やってきたヘリに乗り込んだ。
「アイツ…」
瞬佑はショックを受けた。
C1ドリコンはこの爆破の為に行われたのか…と。
でなければあれだけの装置は用意出来ないだろう。
今思えばコース整備と称して通行止めにしたのも爆弾と赤外線装置の準備の為だったのかもしれない。
完全にハメられた。

『C1高速都心環状線崩落』

翌日にはどの新聞にもこの事件の事が大々的に書かれていた。
陽一は指名手配犯になった。

ACT.3 完

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