DRIFT☆STREET-The Driving Ace-


レッドゾーンさん作

ACT.7「決着」

FDは廃れた地下駐車場へと入って行った。
(やっと着いたか…FDは何処に隠そう…)
敵に逃げられた場合、隠す場所が遠すぎると厄介だ。
かといって建物の入り口近くに置いても壊されてしまう危険がある。
とりあえず駐車場の広さを確かめるためにグルグル回ってみた。
見たところそんなに広くはなさそうだ。
角から角まで走っても恐らく10秒程度で済むだろう。
なので駐車場の入り口近くに置くことにした。
出口の方は前もってところどころ崩れかけている事を確認している。
入口から逃げる可能性の方が高い。
(さて…終わらせるぞ…)
ガチャリ…バタン…ガチャッ。
クルマから降り、きちんと施錠して入口に向かう。
油断してると撃たれるかもしれない…
だが誰も配備されていないようだ。
結局内部に入るまで誰にも出くわさなかった。
護身用の非殺傷銃を構えながら内部に入る瞬佑。
中にも人の気配は無い。
階段は崩れてるしエレベーターも機能していない。
事務室の様な部屋があったので入ってみる。
すると…予想通り、いた。
陽一が。
「テロ集団のリーダーはやっぱりお前か?」
淡々とした口調で瞬佑が言った。
「ああ。まさか此処まで来るとは思わなかったよ」
これまた淡々とした口調で返す陽一。
「お前が何処かの情報屋と組んでるっていう情報はあったんだがな…まさか俺たちに居場所を掴ませず行動するとは…流石と言っておこう」
陽一が続けるが…本心から言っている訳ではなさそうだ。
此処に来て社交辞令か?
「そりゃあ皮肉のつもりか?まだ何か企んでんだろ?」
瞬佑もそれを読みとったらしく、軽く挑発するように返した。
「どうだろうな?」
今の言葉は明らかに瞬佑をおちょくっている。
だが追い詰められているのに余裕の表情だ。
陽一にはまだ策があるに違いない。
瞬佑はとりあえず警戒する事にした。
「まあ此処まで来れた褒美と言っちゃなんだが…教えてやるよ、例の兵器の爆破時間。どうせ24時間以内って事しか知らないんだろ?」
図星だ。
「…ああ」
とりあえず嘘を吐くメリットも無かったので正直に返答する瞬佑。
「答えは…今から約2時間だ」
「…まあそのくらいだろうなとは思っていたが…」
今から止めるとなるとあまり時間が無い。
「まだ2時間ある。これも此処まで来れた褒美と思ってくれていい。お前の質問を3つまで受け付けてやる」

(質問3つか…まあ3つした後殺しにかかってくるって考えるのがベターかな)

3つ目の質問の後に気をつける事にして、瞬佑はまず1つ目の質問をぶつけた。
「じゃあ1つ目だ。鉄警部はどうした?」
これは今瞬佑が最も気になっている事の一つだ。
多分陽一たちを追っていたのだろうが…何かマズい事でもあったのだろうか?
「奴は俺が部下を差し向けて始末した…が、奴の事だ。本当に始末で来たかどうかは怪しい」
陽一が即答した。
どうやら本当に始末出来た自信がないらしい。
最悪の事態を想定して動くなら警部の協力は無い物としなければならない。
続いて…
「じゃあ2つ目の質問だ。何故今回のテロ計画を企てた?」
これについてもかなり気になっていた事だ。
C1を爆破するなんて普通じゃ考えられない。
それに続くテロ計画も単なる破壊願望でやったのなら一発ぶん殴ってやりたいところだ。
「まあ簡潔に説明するのは難しいところだが…『人間』が嫌になった…とだけ言っておこう」
少々曖昧な説明だ。
だが深く突っ込んでも答えてはくれないだろう。
時間も少ない。
ここで無駄話をしている余裕はない。
ならさっさとこの膠着した状況を終わらせるのが良いだろう。
「最後の質問だ。お前はこの状況からどうやって逃れようとしている?」
此処でどう出るか?下手すりゃ殺されるかもしれないが、言ってしまった以上後戻りは出来ない。
「面白い質問だな…まあどうするかと言われれば…こうするんだよ!」
言い終えると同時に陽一は銃を取り出し、瞬佑に向けた!
「!?」
引き金が引かれ…!!
バンッ!!
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
鉛玉が瞬佑に向かう!!
発砲の瞬間、瞬佑は後ろに跳んだ。
その結果…頭を狙って撃たれた弾は心臓に当たった。
「…っ!!」
瞬佑が倒れる前に陽一は動き出した。
キュルルルルルルルル…ヴォゥン!!
クルマに乗り込み、エンジンを掛ける!
だが、そのクルマはS15ではなくランエボ]だった。
陽一は一度クルマを瞬佑の横に停めた。そして…
「兵器を止めるスイッチは俺が持ってる。停めたきゃ俺を捕まえてみるんだな」
と言い捨てて去って行った。

その直後、瞬佑が起き上った。
キンッ…
弾丸が地面に落ちる。
こうなる事を想定して防弾ベストを着ていたようだ。
(痛てぇ…アバラ何本か逝ったか…?けど…んなの気にしてる場合じゃねぇ!!)
急いでFDの所へ駆けていく!
そして乗り込み、エンジンを掛ける。
予想通り陽一は入口から外に出たようだ。
キャァァァァァァァァァァァ!!
激しいスキール音を響かせ、勢い良く駐車場を飛び出る!
そして車内に載せてあった無線機を起動する。
「聞こえるか!?こちら赤島!!」
繋いだ相手は例の情報屋だ。
『ああ聞こえてる。GPSで奴の居場所をキャッチした。お前の端末に送る!』
直後、端末に黒点が表れた。
「よし…何かあったらまた連絡する!」
プツン。
通信が切れた。
そして…別の周波数に掛けなおす。
「もしもし!?聞こえるか!?」
今度の相手は、以前瞬佑に謎の戦車の運転を依頼した自衛隊員だ。
自衛隊にも協力を要請していたらしい。
『聞こえてる!戦車を回して欲しいのか?』
応答があった。
「湾岸線下り…大井のコーナーの先を戦車でロードブロックして下さい!!」
『分かった!1時間以内に手配させる!!』
プツン。
(残り1時間…意地でも着いて行くぜ!!)
ギュィィィィィィィィィィィン!!
甲高いロータリーサウンドが人気のない路地に響く!

一方…陽一は…
(俺の『意志』と奴の『意志』…どっちが強いかはこの2時間で決まる…!)
キャァァァァァァァァ!!
プシャァァァァァァ!!
グォォォォォォォゥン!!
一般道を器用に縫うように走る陽一。
意地でも逃げ切るつもりだ。
一般車はビビってフラフラしている。
並大抵の腕ならフラついた一般車に思い切りオカマ掘っていただろう。
だが勿論の事そんなミスはしない。
――残り1時間50分――

再び瞬佑サイド…
(クソ…っ!奴のルートが読めない…っつーかアイツは逃げれば良いだけだから当然か…俺は湾岸に誘い込まなきゃならないしな…)
それを考えれば陽一の方が圧倒的に有利だ。
だがほんの少しずつではあるが差は縮まっている。

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