幻の最高速


ふぇにーちぇさん作

第13話 恐怖の最高速

水曜日 辰巳PA――――

かなりの台数のロータリーサウンドが聞こえてきた。黄色のFD・鈴木正義を先頭に、ロータリーエンジン搭載車が何台も現れた。

白刃メンバー「き、来たぞ!」
原「うわぁ〜、自信ないよ、あたし・・・」
石田「・・・・・・」

白刃メンバーとは少し離れた位置で、吉川は様子を見ていた。すると、2番目にやってきた白いFDに目をやった。

吉田「え〜、マジかヨ〜」

白いFDから出てきたのは、吉田と同じ学校に通っている大川 櫻だ。ちょっと見ない間にこんなレベルの高いチームにいたのか。
ん、2番目にやってきたってことはチームの2番手?=副リーダー?

吉田「んなこたァね〜だろ。」

んなことあった。鈴木正義と並んで、白刃リーダーの石田に話しかけたのだった。副リーダー確定だ。
リーダー格同士で話し合い、ルールや走るコース・メンバーなどを決定する。

石田「話し合いの結果、ルールが決まった。各チーム7人が代表で走る。コースは新環状線でバトルごとに右回りと左回りを交互に走る。
先に辰巳に戻ってきた方の勝利。7戦中勝利数の多い方の勝ちだ。皆良いな!」
メンバー達「はい。」
原「では、走るメンバーを発表します。まず先鋒は・・・」

と、順に発表されていく。俺は5番目の走者だ。6番目は原 桐子。ラストは石田だ。
1〜4番目が読者に発表されていないのは、メインキャラでもないものが走るので地味な感じになりそうだし、作者も面倒だからだ。

石田「ふざけた作者の解説は気にしないで良い。相手側のメンバーも発表する。」
原「相手側先鋒は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・5番目は高島マサキ・車種はRX−8。6番目は大川 櫻・FD3S。ラストは鈴木正義・同じくFD3Sです。」
石田「午前2時から始める。気合入れていくぜ!」
メンバー達「オーーッ!!」

午前二時になりバトルが始まるが、1〜5番目のバトルは省略します。5番目の吉田はC1に入るまでに相手をぶっちぎってしまった。
そして迎えた第6戦。大川VS原。女同士の恐ろしいバトルだ。両者はバトル前の挨拶をする。

大川「ここまで2勝3敗ですね。どーですか?ビクビクしてるんじゃないですか?」
原「そっちこそ、本当は逃げ出したくてたまらないんじゃないの?」

石田「怖ぇーナ。女ってマジ怖い。」

原(あんな生意気なガキに負けたくない)
大川(あんなふざけた女に負けたくない)

2台は一斉に走り出した。PAの中でも全開だ。
まずは湾岸線を西方面へ。時間的に一般車は一番少なくなっている。
250キロ以上でのクルーズが続き、有明JCTからレインボーブリッジ経由でC1へ。
原のスープラが湾岸線で圧倒的リードを奪う。しかし、有明JCTの右コーナーでFDに大きく追いつかれる。

大川「直線じゃあそっちに分があるけど、コーナーではあたしの方が得意みたいね。」
原「コーナーは向こうのほうが速い。けど、ストレートで一気に突き放せる。」

かなり緩いが長い左コーナーを抜け、すかさず右コーナー、そしてレインボーブリッジ。
原のスープラはすでに100メートルほど差を広げてしまった。
レインボーブリッジを過ぎ、少々きつめの右コーナーをクリア。長いストレートを経て下りのS字。
スープラ先行で差は150メートル。ここからC1に入るので、原としてはこのリードを保っていたい。
浜崎橋JCTを直進し、首都高最難関・C1内回り銀座区間へ。

原「あたしの苦手な銀座区間・・・でも、ここを抜ければ直線の多い9号線。最後に勝つのはあたしね!」

汐留S字、左のコーナーに入った瞬間、2台は勝負に出るッ!

大川「相手が見えない・・・とにかく、追いつくしかないッ!」

トンネル内のS字コーナーを大川は数秒遅れでクリア。車速を60キロまで一気に落とし、一番キツイS字をクリア。
相手のテールランプが見えたッ!遅れは取り戻せている!

大川「よしッ!」

緩めの左コーナー、一つ目のそして橋げた。原のスープラは丁度橋げたの部分で一般車につまってしまったようで、大きく失速している。

大川「抜けるッ!」

FDが隙を見て追い抜く。二つ目の橋げた。
見事なラインでクリアするFDだが、スープラは焦ってアンダーステア(曲がりきれずにコーナーの外側に向ってしまうこと)を出してしまう。
FDは一気に差をつける。40メートル・・・50メートル・・・ッ!

原「大丈夫、この先の9号線で一気に抜き返してやるんだから!」

原は空色の80スープラに鞭を打つ。500馬力の加速は徐々にFDを射程距離に捕らえてゆく。
宝町ストレートをアクセル全開で疾走し、江戸橋JCTから9号線へ入る。
上り勾配つきのキツイ右コーナー。白いFDはスープラの射程距離から逃れる。
箱崎JCTまで一時的に4車線になる。運良く、一般車はいない。
2台は4車線目一杯に使ってキツイ左コーナーをハイスピードで駆け抜ける。

原「この右コーナーを抜ければ後はほとんどストレート。アンタとの差は大体30メートル程度。辰巳PAに戻る頃にはあたしが先にゴールしてるわね。」

一気に2車線になり右の中速コーナーを抜け、差は少々広まってしまったものの、その先に広がるストレートで差はどんどん縮まる。
20メートル・・・10メートル・・・
まさに追い抜こうとするところで左コーナーに突っかかってしまった。すぐに右。再び差は開く。

原「次のコーナーまでに抜き返してやる!」

原は直後のストレートで抜き返すことは出来たが、3連続の切り返しコーナーで再び抜かれる。

原「大丈夫!いけるッ!この程度の差、アクセル全開で抜き返せるッ!」
大川「クッ・・・逃げ切るにはスクランブルブーストしかないかナ!」

大川はスクランブルブーストを発動した。5秒間だけ、600馬力の加速で差を広げてゆく。
だが、5秒という時間で決定的な差は開くことが出来ない。600馬力はあっという間に消滅し、スープラは最後の追撃にかかる。

原「敵車の後ろについて空気抵抗を減らす『スリップストリーム』で十分抜き返せる。このバトル、もらったわッ!!」

50メートル・・・40・・・30・・・
空色の追撃機は標的を捕らえていく。

大川「真後ろについて空気抵抗を減らそうってことね。そうはいかないッ!」

25・・・20・・・10・・・
FDは追撃を逃れようとあがく。自分の真後ろに敵を置かないように逃げ回るが、スープラは速度を一気に上げる。

大川「ここまできたら、相手の進路を塞ぐしかないッ!!」
原「かぶせてこようったって無駄よ。ぶつけてでも道を開いて見せてやる!!」

8・・5・・1・・

原「いっけ――――ッ!!」
大川「させるかァー―――ッ!!」

ガツンッ・・・

スープラがFDのリアバンパーに接触!!原は瞬間的にハンドルを切り返しトドメを刺しにいく!!しかし――――ッ

原「嘘・・・」
大川「渋滞!?」

200メートルほど先に渋滞があった。2台はブレーキを踏み、失速。決着は付かなかった。
湾岸線への右コーナーで走り屋の車が事故ったようだ。つい数分前に事故ったようで、まだ情報は入ってきていなかった。
原と大川は事故ってしまった走り屋をにらみつけた。相当冷ややかな目だ。

走り屋1「うわっ・・・睨み付けてる・・・。」
走り屋2「こえ〜・・・」


辰巳PA――――

2台はゆっくりと戻ってきた。車から降りた二人はなんだか凄いかったるそうだ。

石田「浮かない顔だナ。どうした?」
原「渋滞ですヨ。最後の最後で決着がつかなくなるなんて・・・事故って無ければあたしが勝ってたのに・・・」

第6戦目は決着付かずの引き分けとなった。残るは石田と鈴木のリーダー同士の最終決戦。
勝敗や如何に?

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