幻の最高速


ふぇにーちぇさん作

第14話 新生FCの力を見せ付けろ

遂にはじまる。石田と鈴木のリーダー同士の対決だ。鈴木は挨拶がてら石田に話しかけた。

鈴木「コース、新環状線左回りで良いですね。」
石田「ああ。」
鈴木「それじゃ、お手柔らかに。」

不敵な笑みを浮かべながら鈴木は去っていった。石田は車に乗り込む前に、原に話しかけた。

原「な、何ですか?」
石田「・・・なんて言えば良いかな・・・その、・・・俺は・・・多分これが最後のバトルになると思う。」
原「えっ・・・」
石田「何故か分からないが、このバトルを最後にこの世界を降りなきゃいけない気がするんだ。」
原「・・・・・・」
石田「とにかく、それを伝えに来た。」

その頃、吉田は鈴木と話していた。

鈴木「君、速そうだね。どこのチームからの助っ人?」
俺「チームには入っていません。一人です。」
鈴木「へぇ〜。今までチーム戦はしたことあるの?」
俺「チーム戦って言うか、チームを相手にしたことはありますけど・・・」
鈴木「ほぉ。(間違いない。最近噂の黒いFC!)面白いな。もし良ければ俺と一戦交えないか?」
俺「良いですね。俺、最近強い相手バトルしてないんで。」

どうやらこのバトル、吉田も加わり三つ巴のスーパーバトルになりそうだ。
鈴木は副リーダーの大川に話しかけた。

鈴木「気になっているのか?あのFC。」
大川「えっ・・・」
鈴木「フッ。良いことを教えてやろう。あのFCもバトルに参加する。」
大川「えっ・・・!」
鈴木「どうするかはお前次第だ。」
大川「・・・・・・」

白刃メンバー「副リーダー、2台の準備が整いましたよ。カウントお願いします。」
原「・・・・・・」
メンバー「福リーダー?」
原「カウントはあなたがやって!」
メンバー「え、えっ、えぇぇぇ〜!」

原は空色のスープラに乗り込み2台の後ろに停める。さらに後ろに吉田のFC、大川のFDが並ぶ。

ロータリー7sメンバー「何じゃこりゃ!5台一斉にバトルするのかッ!」
原「中田君、カウントお願い!」
中田「お、俺ですか!?」
原「早くッ!」
中田「分かりました。」

息を呑むメンバー達。2チームでバトルするのに5台も参加するなんて思っても見なかっただろう。
表向きに見れば2対2対1の三つの勢力の戦いだが、実質的には・・・
石田VS鈴木のリーダー対決。
吉田VS大川の師弟対決。
そして原は石田の最後の走りを見守るようだ。
カウントが0になり、5台が一斉にスタートする。原のスープラは他の4台の対決に水を差さないよう、スタート直後に一番後ろに付いた。
一番最初は大きな左コーナーだ。

石田「このバトルは本当に最後になる気がする。」

直線に入り5台一斉に加速。一般車はほとんどいない。途切れない加速、そして途切れない音。
緩めの左コーナー、左・右・左の切り返しコーナー、5台はまるでランデブー走行をしているように走る。

鈴木「だが、これはバトルだ。約100キロの一般車の群れをその2〜3倍の速度で走りぬける。」

今度は右からのS字。長い直線の次は箱崎JCTの相当きつめの左コーナー。
吉田がギリギリまで遅らせたブレーキで5台の一番前に出る。石田、鈴木、大川、原と続く。

原「これが石田さんの最後のバトルになるなら、私は最後まで見守ってる。この目でしっかりと見届ける――――」

3車線の広い右コーナー。一般車のために右側2車線しか使えない。この先、左の分岐からC1外回りに入る。
上り坂のてっぺんから始まる左のヘアピンコーナー。この先は銀座区間。

大川「現在、時速150キロ、アクセル全開で加速中。一般車が60キロ暗いまで速度を落とすところを100キロ近くで駆け抜ける。」

吉田「一瞬のミスが命取りだ。」

宝町ストレートを下っていき、最初の橋げたを通る。
加速力を利用して鈴木のFDは石田のFCの前に出る。橋げた直前、石田はあまりにも遅すぎるタイミングでブレーキ!

石田「しまったッ!曲がりきれないッ!!」
原「石田さん!!」
石田「クッ・・・曲がれぇぇぇ――――!!」

石田はFCを無理矢理左に向け減速。幸いハンドルを切るのが早かったので、ガードレールの0.5ミリほどで接触を回避できた。


またそれか。だらしないな。


石田(チィ・・・)

石田は大きく失速し、前から4番目を走ることとなった。コーナーがキツイ区間にもかかわらず、石田はスクランブルブーストを発動する。
450馬力から550馬力。僅か100馬力の上昇だが、ストレートで徐々に3台を捉えつつある。


な、何故俺がレーサーを諦めなければならないんですかッ――――!?


僅か数秒程度のストレートで大川を抜かし、残りの2台を追撃にかかる。

鈴木「なんと言う加速だ!?ロータリーエンジンでその加速はありえないッ!!」

最もキツイS字コーナーで吉田のFCを捉える。

吉田「RX−7 FC3S。搭載されているエンジンは『13B−T 水冷直列2ローター』無改造で約200馬力。石田さんのは大きなチューニングを施しているため、確か450馬力と聞く。」

コーナーの立ち上がりで吉田FCと鈴木FDを追い抜く。

石田「後にボディをチューニング。圧倒的な剛性と軽量化を施し、一瞬も加速を逃がさないボディにした。」

トンネル内のS字で更に差をつける。

原「その加速の仕方は、例えるとするなら『光』。感覚的には約600馬力。450馬力なんてまるで嘘のよう。」

その白い光は一般車の陰に隠れる。

大川「スクランブルブーストで700馬力の加速のように見える。」

汐留S字で白い光は減速。しかし圧倒的な速さでS字をクリア。
残る4台の1秒ほど遅れてコーナーを立ち上がる。

原「石田さん、コースが違う!」

何と石田のFCはコースを変え、C1外回りの向った。何の躊躇も無い!

鈴木「フッ・・・そう来なくっちゃナァ!!」

5台全員進路変更 C1外回りへ――――


石田、鈴木、吉田、大川、原の順でC1外回りへ入る。一般車が少なく、常にアクセルを踏み続けている。
C1では考え難いほどのスピードだ。そのスピードで芝公園の連続S字コーナーに突っ込む。
5台はガードレールすれすれまで寄せるドリフトで一つ目のS字を抜ける。
特に石田は2センチまで近づくほど道幅を目いっぱい使っていた。

石田「ッ、ぁぶねー・・・」

死ぬような思いを一瞬しながらも次のS字へ。
やはり石田は誰が見ても危なっかしすぎるほど道幅を目いっぱい使う。

石田「次に左でこのS字は終わる!」

ブレーキで速度を落とし、ステアリングを左に切りながらアクセルを踏み加速。
そのとき――――

石田「うわッ・・・!」

外側の車線にトラックがいた。石田はあわててブレーキを思いっきり踏み付け、何とか回避。
トラックの方はあわてて回避しようとしたため、操作をミスり、横転しかけた。

大川「ちょッ・・・とぉ!」

原「・・・ッ!!(ぶ、ぶつかるッ!!)」

大川は何とか抜けた。しかしトラックは最後尾にいた原のスープラに襲い掛かる。

原(避けきれ・・・ナイッ!!)


あんま無茶すんナよ。お前みたいなかわいい女が死んだら俺も耐えられんからナァ――――


(どーすれば・・・アクセル?ブレーキ?それともステア?)


は〜っはっはッ!クルマ潰す事くらい誰でも一度や二度はあるさ!


(石田さん・・・ッ・・・ッ!!)


ま、お前が死ななかっただけいーさ。


(つぅ・・・ッ――――!!)


多分これが最後のバトルになると思う――――


原「あぁぁぁぁぁ!!」

思いっきりアクセルを踏みつけた。前進を始める車体。

抜けたッ!

トラックにかすっただけでどうにか抜けることが出来た。


あなたのクルマが失速したら


あたしのクルマも失速する


でも・・・

これが最後なら、なんとしてでも見届けます――――

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