DRIFT☆STREET


レッドゾーンさん作

最終話「LEGEND DRIVER」

あのバトルの翌日、瞬佑は剛のガレージに向かっていた。
FDを返す為に…
あのバトルで走り屋を辞める事を決意したからだ。
返せばこのFDには二度と乗れない…まだ迷いもあったが、一度決めた事だ、もう変更はしない…
FDとはこれでお別れだ。
ヒュィィィィィ…
瞬佑は、せめてもの思い出作りというか何と言うか…湾岸を走った。
そして、結果はコースレコードを大幅に塗り替えることに成功した。
計測はされていないが故に、幻のレコードになってしまったが…
ー剛のガレージー
「そうか…分かった」
瞬佑は全ての事を剛に話した。
「お前の走り屋辞めるって選択、間違ってないだろう…
俺らは自分達がやっている事がどんな事か…とうに理解してる…
でも決断できない…それは俺らの弱さでもあるのか…
お前は強いよ…自身の行為にキチンとケジメつけられた…
もう、こんな馬鹿げた事はしねーんだろ?」
「はい…」
瞬佑は一言で答えた。
「だったら…FDの事も…俺と、このガレージの事、全て忘れて真っ当に生きろ!」
その言葉を聞いた後、瞬佑はガレージを出て帰路に着いた…
ー3ヵ月後ー
もう2月だ。
「…そういやそろそろ文化祭だなー」
思い出したように呟く瞬佑。
「ま、参加する気は更々ねーけどよ(笑)」
「はは、高校最後の文化祭も思い出0か!(笑)」
警察が本格的に検問を配置しだした事で、首都高の走り屋はいなくなった…
この時期にトライなんてしたら絶対逮捕される。
こうして走り屋は消えた…
「紅の悪魔」が去って3ヶ月…色々な事が変わったようだ。
涼一の家のショップは、走り屋の消滅に伴って客が激減して危うく潰れるところだった。
そしてやむなく修理専門の店になった。
剛も、訪れる客がいなくなってガレージを畳んでどこかへ行ってしまった。
FDを返した後の瞬佑は、少し遠出をする時は原チャリを使っている。
そのおかげでクルマが無くても足に困る事は無い。

ー更に1ヵ月後ー
3月…卒業の月だ…
卒業式前日…
「なあ涼一…」
「なんだ?」
「8月からさ…随分と色々な事があったな…」
「だな…あの騒がしい時が嘘みたいに静まり返っちまった…」
…2月も終わって空っ風も無くなってきた…
高校卒業の後は皆それぞれの道を歩んでいく…
ほのかに寂しい気持ちも抱えながら、卒業式を迎えた…
体育館に3年生と、保護者、在校生代表が入ってきた。
いつも広く感じる体育館も、この日は狭く感じる…入学式の時以上に…
「これより、箱根第3高等学校、第96回卒業証書授与式を始めます」
1年の終わりというのは、何となく中途半端な感じがする。
また明日も学校があるような…そんな終わり方な気がする…
この卒業式で涙を流した生徒はあまりいなかった。
卒業した後の進路はまちまちだ…正に…「それぞれの道」…
1ヵ月後…
瞬佑は今、ファミレスでウェイターをしている。
涼一は、ショップを継いで倒産しないように奮闘中だ。
優里は、大学に進学した。授業が終わった後は本屋でバイトしている。
柳斗は、免許取るための頭金貯める為に稼ぎの良い仕事を探している。ようやく3つに絞れたところらしい。
そして、同月…驚くべき出来事が起こった。
「…仕事ねーと暇だなー…あ、もう夕刊来てるか?」
そう言って新聞を取ると…驚愕の記事があった。
「は!?う…嘘だろ!?」
『公道レース、合法に』
「おいおい…折角警察が取り締まり強化してたのは何だったんだよ…」
『公道特別法の登場によって法廷速度が改正されて、事実上公道レースは違法から合法になったと言って良いだろう。』
ピンポーン
「ん?何だ?」
玄関を開けると、そこに居たのは涼一だった。
「おお、涼一か!久しぶりだな!」
「ああ、元気してるか?」
「まあな」
「あ、そうだ、お前に見せたいモンがあるんだ、とりあえず俺のエボ乗れよ」
「…?…あ…ああ…」
ヴォォォォォ…
瞬佑が連れてこられた先には、なんと剛がいた。
「やっぱ来たか…」
その言葉に対する瞬佑の質問は…
「やっぱって…あの法律の事があったからって事ですか?」
「ああ」
そして瞬佑を更に奥へ連れて行くと…そこにはFDがあった…
ヘッドライトはリトラクタブルから固定式に変わって、ウイングも2段ウイングに変わっていた…
ボディカラーも、紅色からもっと明るい赤へと変わっていた。…が…
間違いなくあのFDだ。
「こっから先は、言わなくても分かるな?」
「は…はい!!」
そして瞬佑は、半年近いブランクがあるにも関わらず、僅か1週間で首都高の伝説に返り咲いた。

DRIFT☆STREET  完

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