DRIFT☆STREET


レッドゾーンさん作

第6話「NIGHTMARE ONENIGHT〜悪夢の一夜〜」

500キロのナラシ…
トリップメーターが表している数字は「250」
此処から戻れば丁度500キロだ。
「何とか間に合いそうだな…」
一時はどうなる事かと思っていただけに瞬佑はかなり安心した。
この後に訪れる悪夢のような出来事を知らずに…
もうすぐPM9:00…
ナラシを終えた瞬佑は湾岸に入った。
だがRは1台も出てこない。
不思議に思いながらも瞬佑は走り続けた。
だがRはまだ現れない。
とうとう横浜環状に入ってしまった。
すると、そこでようやく1台のRが現れた。
パッシングしてくる。
フロントウインドウにしっかりとチームステッカーが貼ってある。
「なるほど、湾岸は一番最後って訳か!いいぜ!受けてやる!!」
ギュォォォォォォォォォォン!!
一気にレッドゾーンまで吹け上がる2台のエンジン!
横浜環状を豪快に加速し抜けていく。
一般車はまだ少ない。
とりあえず瞬佑はクルマに無駄な負荷を掛けない走りをしている。
一方、Rのドライバーは…
(今FDを潰せば俺はチーム内でかなりの地位を獲得できる!)
功に焦ったRのドライバーは一気に勝負を決めに来た!
「アイツ…馬鹿か!?墓穴を掘りやがった!」
150キロ程の速度でコーナーを抜けるR…だが、その先には1tトラックが…
「うわあああああああああああああああああああああああああ!?」
グワシャァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!
思い切りトラックに衝突したR。
トラックは横転し、Rは原型を留めぬ無残な姿になってしまった。
この事故についての情報を取得した横浜環状の「MAXIMUM R」メンバーは全員横羽線に移った。
「…余計なマネしやがって…」
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『速報です!たった今、首都高速横浜環状線で乗用車と1tトラックが絡む大事故が発生しました。
乗用車から火災が発生。
現在消防隊が決死の消火活動に当たっています!
トラックに引火すれば更なる大惨事になりかねません!
現在火の勢いは全く衰えていません…』
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テレビでこのニュースを見ていた涼一…
「瞬佑…しょっ引かれるなよ…」
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ヒュィィィィィィィィィィン!!
無事に事故から逃れられた瞬佑。
「あっぶね〜…あと5センチもズレてたら間違いなく巻き込まれてたぜ…」
そう、ついさっきの事、瞬佑は横転したトラックと吹っ飛ばされたRの間を綱渡りの様にギリギリのコントロールで抜けたのだ。
極限の緊張感が起こした奇跡である。
恐らくもう一度同じ事をするのは無理だろう。
だが、これだけの事故が発生してしまったのだ。
確実に検問が配置される。
瞬佑も渋々横羽線に移動した。

現在横羽線に居る「MAXIMUM R」のメンバーは横浜環状で待機していたメンバーを含めて8人である。
そして、早速FDとRが遭遇した。
「MスペックのNurか…どんだけ金持ちなんだよコイツ…」
最高出力比較
FD3S:780ps
BNR34:920ps
2台は一気に全開にする…が、スペックの差は歴然である。
Rはまるでロケットの様に加速する!
「ゲ…ッ…何だよありゃあ…イカレてるぜ…何馬力出してんだよ…」
一瞬で駆け抜けていく2台に一般車は完璧にビビっている。
すると、前方にスピードガンを構えている警官が居る。
まずR…『302km/h』
FDは『300km/h』
「ダメだな…追いつけない」
あまりの速度に、警官も諦めてしまった。
FDは必死にRを追走するが、ジワジワ引き離されている。
「…ッ!!横羽線がこんなにハイスピードコースだと感じたのは初めてだ…」
300km/hも出せばクラッシュしない限りは逮捕される心配は無い。
ギュォォォォォォォォン!
Rは更に速度を上げる。
しかし、このR、実は欠点がある。
超高出力を生み出すエンジン本体に対して、冷却系の性能があまりに負けているのだ。
(あのR…音がおかしい…何故だ?)
現在、Rの水温・油温は共に110℃を超えている。
このままアクセルを抜かなければ確実にオーバーヒートだ。
だが、パワーを上げることのみに執着したRのドライバーは冷却系のチューンを全くしなかったのだ。
哀れな男だ。
この非常識な速度で走る事はそれだけでクルマの寿命を短くするのに、こんな些細な事に気づかなかった事により更にクルマを痛めつけているのだ。
更にこのR、セッティングの段階で燃調をかなり薄くしている。
燃調が薄いクルマはパワーを得られる代わりにブローの確立が格段に上がる。
そして…!!

ガラガラガラ…
Rのエンジンルームから異常な音が出ている。
しかもマフラーから白煙が出ている。
デトネーションだ。
燃料の異常燃焼により火炎が信じられない速度で伝達している。
このRB26は死んでしまった。
ピストンが溶け、エンジンはあっという間に破壊されていく。
更にノッキングを誘発し、エンジンは再起不能になってしまった。
しかもドライバーはパニック状態に陥り、クラッチを切る事も出来ず、エンジンロックが発生し、スピン。
一般車10台以上を巻き込む大事故を発生させてしまう。
流石に大量のRが一斉に湾岸に移動するのは不自然なので横羽線に居たR達は全員降りた。
だが既に検問が配置されていて、皆同じステッカーを貼っていたせいで事情聴取を受ける事になった。
瞬佑は湾岸に移動し、SAで休憩をした。
「ふ〜ぅ…なんでこんな立て続けに事故が起こるんだ?厄日かよ今日は…
身が持たねーぜ…こんなの…」
流石にこれだけのクルマがバトルしていたら事故が起こるのは必須である。
だが目の前で大事故が2件も発生してしまえば気が滅入ってしまうのもうなずける。
兎に角、色んな意味で疲れている瞬佑であった。

ガソリン補給とオイル交換を済ませ、あと数分したら湾岸に出ようと決めた瞬佑。
すると、PAにランエボが入ってきた。
一瞬、Rだと思ってビビッた瞬佑であったが、すぐにランエボだと分かり一安心する。
そしてランエボから涼一が出てきた。
「よお瞬佑、災難だったな」
「ったく…今頃ノコノコ出てきやがって…こっちは災難どころの話じゃ無かったってのに…」
「まあまあ、だから俺も心配して来てやったんだぜ」
「んで?出てきてどうするつもりだ?」
「お前と一緒にR軍団とバトルする」
「へぇ、そりゃ頼もしいな」
「そうだ、いい忘れてた。
ついさっきの事だが、川島からある情報を聞いた」
「川島が?どんなだよ」
「R軍団のリーダーが女だって噂」
(噂かよ…)
確かな情報だと思っていた瞬佑はちょっと拍子抜けした。
「あと、そのドライバーはどうやら俺らと同じ高校生らしいんだ…」
「ほぉ」
「あと…」
「待て」
涼一の言葉を瞬佑が遮った。
「なんだよ」
「どうやらその続きを話す必要は無くなったようだぜ」
「は?」
「そこに停まってるR、見てみろ」
2台のRが停まっている。
型式はBNR32とBCNR33だ。
共に「MAXIMUM R」のステッカーが貼ってある。
しかも32に貼ってあるステッカーの色は他のRのステッカーと違う。
どうやらこの32がチームリーダーのようだ。
そして…
「はは…冗談キツイぜ…川島の情報は正しかったようだな…」
「?」
涼一はまだその意味を理解していない。
「あの32のコクピット見てみろ…」
なんと32に乗っていたのは…!?
「き…木下ァ!?」
(どーすんだ?)
涼一が小声で話しかけた。
(逃げるか)
(あの二人メッチャこっち見てんだけど)
(…こうなったらバトルしかないか?)
(とりあえず売店を逃げ回るか?この売店けっこうでかいから上手くいけば撒くことも不可能じゃないかもしれないぜ)
(よし、リアル逃走中でも始めるか)
そうして二人はこっそり逃げ出した…が…
「なんで逃げるのよ」
優里は二人の肩を掴んだ。
(・・・・・・)
「あ、そうだ、バイト行かなきゃ」
「そうそう、俺も親父の手伝いしなきゃな」
二人はあからさまな言い訳をして逃げようとするが、
「逃げるな」
「ははははは…」
結局バトルは避けられないらしい。

33のドライバーが簡単な自己紹介的なものを始めた。
「俺は千田 耕次(せんだ こうじ)だ。
チーム内ではbQだ」
そして瞬佑達も簡単な自己紹介をして、優里がバトルのルール説明を始める。
「ルールは、ここから湾岸に出て、大黒線まで行くの、4台一斉に出るけど、1対1のバトルよ。
一生一敗の引き分けの場合、勝者同士が環状線で決着をつける。
いいわね?
それじゃあ早速組み合わせを決めましょ」
「俺はFDとやる」
「分かったわ、じゃあ私は涼一とバトルね。
じゃあコースにでるわよ」
こうして4台はコースに出た。
このバトルで瞬佑は思い知ることになる。
これまでの相次ぐ事故は、単なるこれからの悪夢のような出来事への序章に過ぎなかったと…
グォォォォォォン!!
今は大分一般車が少なくなっている。
ここは純粋に馬力勝負になる。
「…流石に33はすげぇな…あんなクソでかいボディなのにスイスイ曲がっていく…」
FDはオイル交換をしたばかりで、しっかり休憩もしている。
他の3人は大して走っていないので、4台ともベストコンディションだ。
そして海底トンネル…
3車線の内2車線をトラックが走っている。
残りの1車線は道路工事で塞がっている。
フルブーストを掛ければバリケードとトラックの間を抜けられそうだが、あまりにリスキーすぎる。
4台とも素直にブレーキを踏んで車速を落とした。
ここを強引に抜けた者は決して勇敢な者では無い。
ただ幼稚で無謀なだけの人間だ。
一般車を巻き込まないだなんだかんだ理屈をつけても暴走行為に変わりは無い。
この4人は自分達がどれだけ狂った行為をしているかを理解している。
だから無理に抜けたりはしなかった。
ギュォォォォォォォォ…
今、4台が東扇島にたどり着いた。
大黒線は目前だ。
ヒュイィン!
4台が必死に走っているところに1台のクルマが乱入してきた。
車種はZ33型のフェアレディZだ。
それを追うようにスープラ(JZA80)も乱入してきた。
2台は対立関係にあるようだ。
そして…この2台が大騒動を巻き起こす…
一瞬の出来事だ。
まずZとスープラがフルブーストで4台をごぼう抜きする。
前方にトラック2台。
焦ったトラックは急ハンドルを切って横転。
更に横転したトラックがもう1台のトラックに衝突。
2台は重なるように倒れてくる。
そして2台の真後ろにいるのは…涼一のエボだ。
まだトラックは完全に倒れていないので微妙に前進している。
そして咄嗟の判断で涼一はフルブレーキを掛け車速を落とした。
それにより、クラッシュは免れたが、同時に涼一の負けが確定した。
「クソ…ッ…後は任せたぜ、瞬佑!」
全てを瞬佑に託して涼一は湾岸を降りた。
バトルは瞬佑と耕次の一騎打ちになった。
先に大黒線に入った方が勝利だ。
現在、耕次が左、瞬佑が右にいる。
分岐で大黒線は左にあるのでセオリー的には圧倒的に耕次が有利だ。
だが…ここで大どんでん返しが起きた!
瞬佑はブーストを1・5に上げ、加速する。
ウオォォォォォォォォォォ……ン!!!!!
耕次はFDの加速する姿に気迫負けしてしまった。
そして瞬佑の勝利。
勝負はサドンデス戦に突入する。
3人は一度首都高を降りた。
そして瞬佑と優里は神田橋JCTに向かう。
ガソリン補給を済ませ、神田橋に到着。
そしてC1に入った。
ヴォォォン!ヴォォォン!
2回アクセルを吹かし、バトルが始まった。
最高出力比較
FD3S:780ps
BNR32:850ps
パワーの差は歴然としているが、ツイスティな環状線では露骨にパワー差が出ることは少ない。
キャキャキャキャ…
タイヤは換えてないので、大分グリップが落ちてきている。
4輪Sタイヤは寿命が短くてたまらない。
ヒュィィィィィィン!
ゴゥッ!!
激しい騒音を撒き散らし2台は環状を駆け抜ける。
(霞ヶ関トンネルが近い…パワー勝負じゃこっちは分が悪い…どうにかしてついていくしかないな…)
ストレートから再びコーナー地帯へ…
スリップストリームを上手く使って瞬佑は何とかついていっている。
そして…決着は一見どうって事無いS字コーナーで付いた。
S字を抜けようとした正にその時。
優里のRのタイヤが突然ブレイク。
側壁にヒットしてしまう。
コントロール不能のまま暴れるR…このままいくとトラックに衝突してしまう。
そうなれば10台ほどいる周りの一般車も巻き込んだ大惨事になってしまう!
その時、瞬佑が動いた!
頭で考えるより先に体が動いた。
瞬佑がとった行動は、Rを側壁とFDの間に挟んで無理やり速度を落とすというものだ。
かなり強引な作戦ではあるが、確実に速度は落ちている。
そして、78km/h程度まで落ちたところでRのコントロールが効くようになり、自走して降りる事が出来た。

2台は道の端にハザードを点けて停車した。
「速いわね瞬佑…負けたわ…」
「いや、お前も充分速かったよ…もう少しタイヤの状態が良かったら逆にこっちが負けてた」
「まあ、こっちには車重のハンデもあったからね…タイヤの磨耗が激しかったわ…ま、そんなの言い訳にはならないけどね」
こうして、慌しいR軍団騒動は幕を閉じた。
2人は、クルマを剛に預けて帰路についた…

ー第7話に続くー

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