crash obuzi runa


天照さん作

第1話

・・・ここはオーストラリア・タスマニア島。
のはずだった・・・。
あたりは濃い霧で覆われ、吸っていると気持ち悪くなってくる。
空は漆黒の雲で追われ、暗い雰囲気を撒き散らす。
・・・クラッシュの家。
大天才のココ・バンディクーが、愛用のピンクのノートパソコンで、この気圧について調べている、が、
しばらくたって、ココは深くため息をついた。
「・・・ダメだわ、データ不足よ。この霧についても・・・あら?出たわ、やっと・・・。」
そばにいた日本風のバンディクー、アテナ・バンディクーも、せっかく出たデータを見て暗い表情を浮かべる。
「ひどいですね、真っ白・・・。」
その真っ白というのは、データが何もないという意味ではない。
結果が出ても、霧を表示する白が、あまりにも多すぎるからだ。
その時だ。
ひたり、ひたりと、足音が外から迫ってくる。
頭は筋肉のスーパーバンディクー、クラッシュ・バンディクーが、
「あれ・・・もしかして・・・クロック兄ちゃん?」
その予想は当たっていた。彼とココの兄、クロック・バンディクーだ。
「兄ちゃん!」
クラッシュが駆け寄り、ソファーに座らせる。
「大丈夫だぜ!これくらい」
クロックからは意外な返答が返ってきた。
この霧は何日かで人を殺せるほど強力な霧なのに。
良く見るとクロックは、緑地に炎デザインの眼鏡を付けている。
「ああ、お前たちにも渡さないとなあ」
といって、クラッシュ達に謎の眼鏡を渡した。
以前はコルテックスにより作られたムキムキバンディクー、クランチが、
「おい、クロックよお、この眼鏡は何なんだ?」
と、問いかける。
「これは、俺が作った特殊なメガネだ!付ければ霧への体の影響もきかないし、もちろん霧も暗闇も見通せる!」
すでにクロックは冷静沈着状態だ。
アテナのはメタリックスカイブルーに、ラインストーンが張れる所に最初からピンクやオレンジのラインストーンが張ってある。
クラッシュのは青地に林檎デザイン。もぎたてデザインだが、どこかかっこよさがある。
ココのはメタリックピンクに、可愛らしいハートや星の飾り付き。とてもココらしい。
クランチのは黄色デザインに、シルバーデザイン付きで、かなり若い男らしい。
「霧はどうかなったわね。でも、誰が犯人か推理していないわよ?エヌ・オキサイドやネファリアス・トロピーかもしれないし」
ココが発言する。
そこにクロックが、ココに返答した。
「そうだな、まず表を立ててみようか・・・」
クロックは、白紙のマップを広げ、そこに今までのことを書きこんだ。
そして、
「おい、ココ、霧と暗闇の分析結果はどうだ?」
と、まだ冷静沈着モードでココに問いかける。
「うーん、霧の白が多いわ。」
「そうか・・・。」
クロックは静かにつぶやいた。
「空気を入れたいが、霧が多いしな・・・。眼鏡を付けていても、油断禁物だ」
その時だった。
「・・・!?まって!これって・・・強い酸性の霧だわ。自然発生はしてないわね。エヌ・トロピーもこんなのは使わないし、エヌ・オキサイドの可能性もないわね、自分が勝ったらその星を支配するって風にたくらむ以外はだいたいないもの。ということは・・・」
皆の脳が、いつものあの男と認識している。
そう、あの・・・。
「やはり、ネオ・コルテックス!?」
クラッシュが言った。そして、
「そうね、それ以外ないわ」
とココが言う。
「場所はどこですか?」
アテナが問いかける。
「ここから、ずーっと、北のほうから発信されているわ。秘密基地みたいね。」
「まずはそこに行くしかないな。」
クランチが大きく言う。
「ええ、では行きましょう」
皆それぞれ、自分の武器や必要なのをを装備して、目を北に向ける。
「目指すは北の秘密基地・・・。じゃあ行くか!」
クラッシュ達は眼鏡を付けて家を後にした。

・・・タスマニア島、北。
いくら先に進んでも、霧と暗闇しか見えない。
まるで一日中夜を体感しているようだ。
「今日はここでご飯食べて寝ましょう」
ココはそう言うと、通路の横の広い足場に、男子用の大きくて青いテントと、女子用の広めのピンクのテントを張った。
「私も手伝います」
アテナと二人で火を起こした。
たき火は少しずつ大きく燃え上がり、リュックから出した食べ物と皆の体を温めた。
「起きて、お兄ちゃん、今日のご飯はビフテキ串、雪見大福卵プリン味、ポテトサラダよ」
「飲み物は野菜フルーツジュースに、新鮮な水です」
クラッシュ達がテントから出た時には、二人が木箱の上に食べ物をセッティングしてあった。
「うん、ビフテキは野で食うと美味いな、さすがはココだ」
「ポテトサラダも美味だぞ、アテナ」
などと、男子からのコメントもよかった。
「よかったわ、皆たくさん食べてくれて。じゃ、私たちも、いっただっきまーす」
その後はキャンプファイヤーをした。
そして楽しさも残りわずか、夜の10時。
「お休み、皆さん」
「お休み、アテナ、ココ」
・・・女子のテントの中、短めのネグリジェにパジャマズボンのアテナと、普通の短いパジャマとパジャマズボンのココが、敵のパーティについて調べてみていた。
「うーん、コアラ・コングやピンストライプとか、強い敵がたくさんいるみたい。しかも前よりレベルが上のようね」
ココが言うと、アテナは、
「もっと分析してみましょう」
と言い、30分後、データを集められるだけ集め、睡眠した。

翌朝。
とはいえ、暗闇に霧に、日の光の少しも当たらないが。
アテナとココが朝御飯を作り、朝食を皆で済ませると、また旅に出た。
「二人ともよく眠れたか?」
とクランチが尋ねると、
「ええ。そういえば昨夜、敵のデータを集めたけれど、どれもレベルアップしているみたい。油断禁物よ」
とココから真剣そうな返事が返ってきた。
アテナも自分でティーポットとティーバックを取り出し、ティーを作りながら語った。
「そうね、正確なデータは定かだけれど、レベルアップをしているのは確かですよ」
というと、クラッシュ達の顔が悲しそうに歪んだ。
というとその後すぐに、
「はい、私の大好きなストロベリーティーが出来ましたよ。良い臭いでしょう?」
と言い、皆にティーカップを配り、カップの中にストロベリーティーを注いだ。
「うーん、いいね。林檎のティーもいいけれど、苺のティーも最高!」
クラッシュ達は喜んでいて、さっきの悲しい顔の面影はもうなかった。
「さ、残ったティーは暖かいタンブラーに入れて、よし!」
ココが、皆それぞれのタンブラーにアテナのストロベリーティーを注いだ。
「さあ、行こうか!」
そこに・・・。
「・・・誰だ?」
クロックが草むらを指差した。
見ると、草むらはかすかに動いている。
「私たちは何もしないわ、貴方は誰なの」とココが優しく言うと、しょうがない、と思ったのか、草むらから謎の少女が出てきた。
虚ろな瞳で、無表情。髪はセルリアンブルーのストレートロングヘアーに、白いカチューシャを付けている。
服なども純白系が主で、背中にはほんの少しだが、黒い羽根が見える。
左手には黒い日本刀らしき剣を持っていて、それと同時に純白のワンピースに小太刀を付けている。
「あまり話したくないけれど、私は、ネネシャ・ティルシス。シャムシエルとラミエルの血を引く、極めて稀な堕天使なの。前世は人間だったけれども、同種族の人間に裏切られ、死んでいた。それが今、何故か思い出して・・・。生き物すべてが嫌だけれど、一番に人間がものすごく、嫌いよ。今はいる場所がなくて・・・」
「ふうん・・・ネネシャ、それで私たちに何の用?」
「いる場所がないから、貴方達についていくわ。話はすべて、この耳で聞いた。一緒にコルテックスを倒しましょう」
「協力してくれてありがとう、いきなりだけれど」
ココがそう言ったそれきり、しばらくはネネシャは話さなくなった・・・。
そしてやっと、口を開いた時の言葉は、
「実はこの森、正しい道を通らないと、帰れないし、出られないのよ」
―――ッ!?
全員の目がネネシャの顔に向かっている。
皆はネネシャの顔を見て、びくともせず止まっている。
「・・・とりあえず貴方達のうちに戻りましょう」
ネネシャは、まるで病気にかかったかのように俯きながら言った。
「あ、ネネシャは眼鏡ないんだ!」
クラッシュ達はネネシャを連れて急いで家へ退却した。
・・・クラッシュの家。
ネネシャを空き部屋のベットに寝かし、眼鏡の話をし、眼鏡を渡すと、
「・・・ありがとうございます」
といい、しばらく黙りこんだ。
ネネシャの眼鏡は、氷のようなメタルブルーに、少々禍々しそうで神聖的な模様のキラキラシールが貼られている。
「さ、私たちもお風呂入って寝ましょ、もう9時よ」
ココとアテナは先にお風呂に入った。
浴室にて・・・。
クラッシュの家の浴室は、どこの家にも負けないほどユニークだ。
風呂桶には海で拾った貝殻が並べてあり、棚には、綺麗なレッテルの貼られたシャンプー、リンス、ボディソープ等のきらきらしたボトルが置かれてある。
どれも清楚な感じだ。
「ふぅー。疲れて汗びっしょり。」
「そうね。霧も暑かったわ」
お湯にバスバブルを入れた浴槽で二人で会話をしながら、40分後、二人が出てきた。
男性陣が入り終わり、ネネシャも顔を洗い、残り湯を洗濯に使い、就寝するが、その寝る前に・・・。
それぞれマイルームですることをする。
クラッシュのマイルームは、シンプルでも意外にボロな部屋。
ココのマイルームは、女の子らしいカワイイお部屋に、机の上にノートパソコンがある。
クランチのマイルームは、木の素材を使ったエコな部屋で、結構若者らしい。
クロックのマイルームは、かっこよく赤などの派手な素材が多い。
アテナのマイルームは、アジア風のベットなど、日本風の和風なお部屋。

その中、ネネシャは空き部屋で、物思いに耽った。
『あの人たち、何故か信用できそう・・・。私も守らないと』
そう思ったその瞬間、自分の背の羽根が、少し、やや薄い黒になってきた。
そして、頭に声が響く。
・・・汝に『愚者』の力を捧げよ・・・。
『うそ・・・。これが、あの「コミュ」・・・?ペルソナ使いでもないのに・・・。もしや、力だけじゃなくて私の意志も強くしている・・・?』
ネネシャは不思議に思いながらも、なぜか表情は柔らかくなっていた。

翌朝。
ココは髪を束ね、ベットメーキングをして、1階へ降りた。
アテナも朝食の目玉焼きを作り、居間でブラックコーヒーを飲んで一息ついた。
そこへ、ココが現れた。
「あら、おはよう、ココ」
「おはよう、アテナ。まだ霧はやまずに真っ暗。元気がなくなってきたわ」
といった会話をして二人で朝食を済ませた。
そこに「おはよう」等とネネシャと男性陣も来た。
アテナは髪をとかして桜のコサージュを付けると、
「やはり深刻な状態ね。家の番はメイドに頼みましょ」
「???」
アテナの言っていることが分からなくて、クラッシュとココは首を傾げた。
「ふふ、技芸族のティターニアさん、来て頂戴」
アテナはココが最初から気になっていた妙な菅を目線に向けた。
そして、管を手につかんだ。
すると、管が動き出し、するりと緑色の光が現れた。
光は生き物のようにうねりと動き出し、瞬き一瞬ほどの光を放った。
そして・・・。
中から悪魔が出てきたではないか。
エメラルドグリーンのドレスを着た美しい妖精やらだ。
「いやあ!」
ココはいきなり出てきたもんだから、驚いて伏せてしまった。
「落ち着いて。これでも私はデビルサマナーなのよ、皆ココ達を襲わないって言ったもの、ね」
ドレスの妖精は、
「ええ、私たちは、襲いませんわ。貴女と貴方は・・・ココさんにクラッシュさんと言ったわね。私は妖精の女王のティターニア。宜しくお願いいたしますわ」
ティターニアは挨拶をした。
「本当ですね」
ネネシャはアテナに少し興味を持ったようだ。
「さ、これがメイドの毛よ。擬態して、この家を守ってほしいの」
アテナは髪の毛をティターニアに渡した。
「ふふふっ」
とティターニアがいった瞬間、瞬き一瞬もない光が彼女を包んだ。
そして気がついた頃、ティターニアが変身してメイドが立っていた。
「さ、これで姿は完了ですわ。行ってらっしゃいませ」
メイドティターニアは皆を見送った。
「さ、私たちも行きましょ、みんなにも2本ずつ管を渡すわ、心配しないで。私には他の強い仲魔の管がある」
それぞれ管を渡し、皆、元気に家を飛び出した。

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