クラッシュバンディクー トレインレーサーズ 2nd STAGE


ふぇにーちぇさん作

第2話

バトル当日

クラッシュ達は夜の鹿児島本線を疾走していた。本州とは操作感が異なるために、慣れるまでにかなり苦労する。

クラッシュ「ひゃー、ブレーキがぜんぜん効かねえや。」
ココ「ドリフトに持ち込むのも一苦労だわ。」

とりあえず博多から小倉を一往復した。クラッシュとココはただの一往復だけでかなり疲れていた。距離が長いのもあるかもしれないが、それ以上に

ココ「ぜんぜん操作感がつかめない。」
浮間「そうだな。俺も一往復するから、助手席に乗ってみないか。何か分かるかもしれないぞ。」

言われるがままにクラッシュとココは浮間の運転する485系に乗った。すばやい加速で博多駅を出発、時速100キロにたどり着くまで30秒も無かった。
古賀、箱崎、とストレートばかりの区間を通過、問題はここからだ。速度が最高に乗った状態でのタイトな右コーナー。
浮間はクラッシュたちの思っているよりも早くブレーキを掛けた。タイミングだけじゃない。ブレーキの掛け方がまるで違う。
電車のブレーキは通常は、解除、抑速、1〜8、非常の11段階。こういうタイトなコーナーではノッチを8にしてブレーキを掛ける。
非常ブレーキは一番強いブレーキだが、一度掛けて、ブレーキを緩めようとすると、しっかり緩むまでに時間が掛かる。
なので通常は使わない。
浮間は、クラッシュ達が非常ブレーキで曲がるところを、8で曲がっているのだ。
もう一つ違うところがある。今までクラッシュ達は、例えばノッチを7にして曲がるところがあれば、一気に7までブレーキを掛けていた。
浮間はどうだ。同じ7ノッチでも一気に掛けることはしない。およそ2秒でゆっくりとブレーキを掛けている。

浮間「九州の路線は、こういう風にゆっくりとブレーキを掛けてやると、一気に掛けるよりも格段に効きがよくなる。覚えておけよ。」

ただの一度もミスすることなく往復した浮間の走りに、クラッシュ達は魅せられてしまった。

浮間の走りを見終わったときには、もうすでに大会の時刻が迫っていた。ホームはギャラリーでいっぱいだ。

ふぇにーちぇ「遅いですよ。浮間さん。もう始まっちゃいますよ。」
浮間「すまんすまん。軽く流してたら遅れてしまった。あと何分だ?」
ふぇにーちぇ「5分です。他の二人は指定のホームへ行ってしまいましたよ。さ、早く準備を。」

第二回戦 第一試合
チーム浮間 VS R200CLUB

第一走者 浮間 帝塚
第二走者 有谷 園田
第三走者 大鑓 元木

両者がスタートについた。ふぇにーちぇのカウントが響く。

ふぇにーちぇ「準備は良いかぁ?いきなりGO!」
全員「え、えぇ〜!?」
ふぇにーちぇ「オイオイ、スタートで遅れるなヨ。」
全員「当たり前ぇだろうがよ!!」

世界一テキトーなスタートで、2両が走り出した。最初は485系の浮間と、681系3000番台の帝塚のバトル。先頭に立ったのは帝塚の681系3000番台。

帝塚「ヤルかヤられるか、ガキの頃からケリはキッチリつけてきたんだよ。」

加速性能の差を生かし、帝塚の681は一気に離れていく。帝塚の車両は、列車の音ではない妙な音を響かせている。分かる奴には分かる。間違いない。

RB26・GT−Rエンジン――

浮間「野郎ぉ・・・」

かの有名なGT−Rと言う車に納められているエンジンだ。加速、最高速共に優れている。入手は困難なエンジンだ。
681は余裕の走りで浮間の485を引き離した。
箱崎を通過したのは勿論681。そして、クラッシュ達が苦戦した最初のコーナー。

多々良川コーナー

帝塚の681はコーナー手前で大きく減速した。

浮間「そこまで速度を落とすか。ドリフトは使わないようだな。って、それってモロGT−Rじゃん。」

R200CLUBの681は全員、アテーサETSと呼ばれる装置を装着している。難しい理屈は作者自身もよく分からないのだが、この装置を装備していると、ドリフトが出来なくなるんだとか。
車の方のGT−Rも、この装置を装着している。GT−R好きだな、オイ。
ドリフトの出来ない681を見て、浮間は少し笑った。

浮間「残念だが、この路線はグリップ走行だけじゃ攻略は出来ない。あんたの弱点、見切った!!」

多々良川を通過し、すぐにS時コーナーへ入る。やはり帝塚の681は大きく減速。この辺りから次の香椎駅まで、線路は二手に分かれる。
一時的に単線の状況ができるのだ。
単線でも浮間の485はすいすいとコーナーをクリアしていく。
対する帝塚は予想どうり、減速してもたついている。
香椎駅手前、右コーナー。両者合流ッ――

帝塚「うおぉ!?」

自分よりも圧倒的に速い速度で真横を通過する485を見て、帝塚は思わずビビってしまった。
どんどん離れていく赤い車体。

帝塚「このストレートで取り戻す。」

九産大前駅までほとんどストレート。コーナーもユルい。帝塚はブーストを上げ、追いすがろうと必死の加速。
追いつくのにそう時間は掛からなかった。そして一気に引き離す。
途中の中速コーナーで少し速度を落としたが、加速性能の差で何とかカバー。車間は開いていく。

浮間「ストレートは伸びがあるな。さすが、R200CLUB。だけどこの先は中低速コーナーが多くなる。気をつけたほうがいぞ。」

筑前新宮前の右中速コーナー。このコーナーは最初は緩いが、後半になって、カーブの半径が小さくなり、きついコーナーへと顔を変える。
大きく減速した681にまたもや浮間は追いついた。
だが、また長いストレートが現れ、離される。

浮間「思ってた以上の実力だ。このストレートで200キロオーバーまで持ち込む気だな。だが、先ほど言ったとおり、中低速コーナーゾーンに入ったんだ。次のコーナー、どうクリアする?」

帝塚、時速240キロから一気に減速。およそ600メートルのロングコーナーに備えた。
浮間、コーナーにオーバースピードで突っ込み、華麗にドリフトを決めようとする。だが、

ギャラリー「ダメだ!内側の681が邪魔でドリフトが出来ない!!ムチャだぜそれはァ!」

浮間は内側を走る681すれすれまで車体を寄せた。砕け散るバラスト。叫ぶギャラリー。
浮間の485が前に出た!空いたスペースに飛び込む!!

有谷「すげぇ!無理やりドリフトに持ち込みやがった。俺はあんな事出来ねぇヨ、浮間さん。」

間髪入れずに左低速コーナー。浮間は逆ドリフトで大差をつけようとする。

ギャラリー「内側に線路もないのにドリフトォ!?今度こそ絶対無理だ!!」

無理ではなかった。線路は、畝のように地面より少し盛り上がったところに作られている。ならばこの段差を利用すれば・・・

有谷「頭文字Dよりパクリ必殺!!溝落とし!!上手いぜ浮間さんッ!!」

その差は縮まらぬまま、浮間は千鳥駅でバトンパスに成功した。

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