平和推進探偵団(ブリオ編)


ラリーZさん作

第2話 決意 --Entschlossenheit--

もやもやとした気持ちを抱えたまま私は仕事を続けた。
とにかく行動だ。何かをやるしかないと私は思い続けていた。
気がつくと、仕事を始めて3時間が経過した。
「あっ・・・終わりだ。」
ちょうど客も引いているときだし。上がらせてもらいましょう。
それにしても、今日はちょっと調子が悪かったな・・・やっぱり、このもやもやを何とかしないとな・・・
私は従業員室に戻って帰る支度をすることにした。

従業員室に帰ると誰もいなかった。
「あれ?ジョーはトイレかな・・・」
私は椅子に座って冷静に考えた。
とにかく情報がほしい。情報を手に入れるには・・・
「そうだ!リラ・ルーだ!早速アイツに電話して・・・」
私は携帯電話を取り出し、リラ・ルーに電話をした。
電話は、4回目のコールで出た。
「あっ、リラ・ルーか。」
「そうでっせ。ブリオはん。」
「仕事はどうなのか?」
「今仕事終わったさかい。これから家に帰ることろや。そっちは?」
仕事がないことを聞いて、私はリラ・ルーを調べさせることを決めたのだが、世界征服のことについて言うべきなのか・・・
「リラ・ルーよ。これからコルテックスの基地に向かってくれ。」
「何でですの?」
「わけは帰ってきたときに話す。とにかく、光線が打てそうな機械を探してくれ!」
電話を切った後、誰かが後ろにいる気配を感じた。
「おっ。終わりか。おつかれさん。」
ジョーだった。いつの間に現れたのだろうか。
「あっ、そうですじゃ。もう帰るところや。」
リラ・ルーと住んでいるせいか、ちょっとテンパルとへんな言葉遣いになってしまう。
「ところで、あっしは世界征服のネタをしいてれいるでやんすが、これは客に使ってもいいかな?」
どうやらジョーは接客モードにはいっているらしい。
自分のことを『あっし』、語尾に『やんす』をつけているときはそうだ。そして、そのときに話し話はいたってまじめなことだ。
「せ・・・世界征服?」
「そうでやんす。『動く仮面』が、ウイルスを撒き散らして世界をのっとる計画でやんす。」
驚いた・・・私が知っていることと大体同じことをジョーもしっている。
でもおかしい、
まず、こんな情報が世界征服関連に一切かかわってもいないジョーが知っているということ。次に、犯人が漠然としているが、知っているというところ。そして、『光線』を言っていないところ。」
「ジョーよ。『動く仮面』っていったいなんじゃ?」
「正しくは、『動く仮面ら』といったほうがいいかもしれないでやんす。だって、会話をしているような話を聞いたからでやんす。でも、あっしは事実しか客に話さないたちでやんすから、『動く仮面』としか話さないでやんす。なぜなら、『動く仮面』をひとつしか見なかったからでやんす。」
「『動く仮面』が二つ!?どこでそれを知った?」
「だから、二つとは限らないでやんす。それに、あっしはバーの閉店時間後、家に帰ろうと摩天楼を見えるところを歩いていたら、そんな声がしたのを聞いただけでやんすから。ぜんぜんわからないでやんす。」
ジョーの言っていることは・・・何なんだ?
『世界征服』の部分では一致しているのだが、全然内容が違っている。
この場合、
1.私の情報が間違っている。
2.ジョーの情報が間違っている。
3.ジョーはネタのために嘘を作った。
4.実は私もジョーも正しい。
5.実は私もジョーも間違っている。
1.2なら、割とありえそうだ。しかし、私としては、2であってほしい。なぜなら、ジョーが本当ならば、複雑すぎるからである。
3の場合はどうか?2とほぼ同じことなのだが、ジョーはくだらない話ばっかするが、決して嘘はつかない。なので、これはない。仮に私に嘘をつくとしても、何のためにだ?そして、嘘をつくジョーはなんの得があるのだ?
4.5の場合は・・・5だと最高だが、4だと最悪だ。とにかく、この二つはまずないと思っていいだろう。
「で、ブリオよ。アンタが知っている情報をいうでやんす。」
さて、どうするか・・・
「私の知っていることはすべてジョーが知っていますですじゃ。しかし、『ヨクト』って言葉がキーワードらしいですじゃ。」
私は思い切って『ヨクト』以外を嘘をつくことにした。
まぁ、『ヨクト』が何かわかればジョーも私の知っていることが大体わかるだろう・・・
「そうか・・・まぁ、このネタが事実であることがわかったでやんすから、大収穫でやんす。」
「ヒャッヒャ・・・ところで、もう仕事にいかないとやヴぁいのでは?」
「おお・・・そうだった・・・では、行って来るでやんす。」
ジョーはそそくさと店に行った。
私も、家に帰ることにした。

家に帰って、リラ・ルーと私の料理を作って、テレビを見てゆっくりしていた。
私は今日手に入れた情報を整理することにする。
まず、最初に世界征服の情報を手に入れたのは、店の常連であるオキサイドからだった。
アイツの言っていることは『ヨクトの大きさまでにしたウイルスを光線により地球にばら撒き、世界を征服する』といった話だった。それと・・・
「記憶喪失の少年の話もあったな・・・」
独り言のように言ってみたが、これは関係ない・・・のか?
続いての世界征服の情報は、ジョー店長からだった。
彼は、『動く仮面(ら)が、ウイルスを撒き散らして世界を征服する』だった。
オキサイドと違うところは、全体的に情報量が少なく、誰がやるのかがわかっているところだ。
一番の問題は、やるやつが単独かどうかが問題だ。
単独なら話は早い。『動く仮面』で考えられるのは、アクアクとウカウカしかない。ホントはもう少しいるかもしれないが、アクアクとウカウカぐらいしかこんなことはできない。そして、リラ・ルーがコルテックスの基地に忍び込んで、光線を撃てる機械を見つけれたら、間違いなく、ウカウカが『動く仮面』であり、コルテックスたちが世界征服をすることになる。つまり、『ウカウカと、その仲間たちがヨクトの大きさのウイルスを光線で撒き散らして世界征服をする』ってことになる。これなら、2つの意見に異なるところがあってもそれらは同じ情報源であることが証明できる。
しかし、ジョーが言うには、『動く仮面』がひとつではなく、2つであるといってた。
この場合だと、リラ・ルーが見つけられなければ、証明ができるのだが・・・こっちのほうが解決は難しいぞ・・・
そして、2つの情報源がともに正しく、別のところからきている場合はどうだ?コルテックスは単独で世界征服をたくらみ、アクアクとウカウカが手を組み、世界征服を狙っている。もし、そうだとしたら大変なことになる。このケースを証明できるのは・・・
・・・イカン。ちょっと冷静さを失っている。なに、探偵みたいに私は考えているのか・・・
そういえば、調査をしているもう一人の探偵、リラ・ルーに電話をしてみよう。大体1時間ぐらいたったな。
あたりは日が沈んで暗くなったころ。私は電話をした。
電話は2回なった後に出た。
「おう。リラ・ルーか。そっちはどうだ?」
「へぇ。基地を出て少し離れたところいるんや。」
なぜか、リラ・ルーが息苦しそうだ。
「どうした?リラ・ルー」
「すんまへん。家に帰ったときに詳しく話しますんで。ブリオはんはちゃんと夕飯の支度をして待っててもらえますか?それも、ワイのご飯は温めておいてや。」
「わかった。じゃあ切るぞ。」
まさかとは思うが、リラ・ルーは基地に入ったのはいいが、途中で見つかって逃げてる最中に私は電話をしてしまったのか?だとしたら、無事逃げ切ってくれ・・・
私は、いつでも戦える準備をして、かつ、リラ・ルーのリクエストに答える準備もした。
30分後、リラ・ルーは帰ってきた。
「よかった・・・何とか逃げ切ったんだな。」
「逃げ切った?ブリオはん。ワイは基地に入っている間、誰にも見つかりまへんでしたで。」
「じゃあ、なんで電話に出たときはあんなに息切れしてたのだ?」
「あれは、ランニングをしている最中に電話がかかってきたからや。それより、メシを食いながら話しましょうや。」
私とリラ・ルーはご飯を食べることにした。
「で・・・基地に侵入してどうだった?」
「それがや。入ったのはよかったけど、どこに何があるかワイにはわからなかったんや。」
「そうですか・・・」
「まぁ、ワイも類まれなる直感を調べて、一番上の階の奥の部屋を見てみたら・・・あったんや。ブリオはんが言ってた光線を撃てそうな機械が。」
「そんなに簡単に見つかったのですか。」
私はコルテックスのずさんなヤツであると再確認した。
「よし!じゃあ、何で私がそんな探偵みたいなことをさせたのかを・・・」
「まってくらはい。ブリオはん。この話には続きがありますねん。」
「続き?」
「まず、基地から出た際に、誰かがワイを見たような気がしますねん。」
「見つかったのか?」
「いや・・・なぜか知らんけど、見た相手が上空のような気がしたんや。これは単なる『気のせい』やと思ったんや。そして、その後、ランニングをしてたら、ブリオはんから電話がきたんや。」
そのランニングは走って逃げてるだけだろ!といいたいが、私は我慢した。
「じゃあ、私は話をするぞ。」
「まってくらはい。まだ話には続きがありますねん。」
続きならば、私が電話をした後だ。いったい何を話すのだ?
「電話を切った後、ワイはさらにランニングを続けたんや。そしたら、少年がワイの目の前にきて・・・」
少年という言葉に私は食いついた。
「その少年はどんなんだった?」
「ブリオはん落ち着いて。その少年は実に変わっていたヤツであって、『動く仮面が仮面の仲間をつくって、宇宙からウイルス発射計画をたてていやがる。』って独り言のように言い出したんや。」
「待ってくれ!意味がよくわからん」
「だって、ワイも意味がわからへん。だって『動く仮面』といえば、ウカウカとアクアクでっしゃろ。それが手を組んでウイルス発射計画だなんて意味がわかりまへんよ。なんとなく、ブリオはんはコルテックスがまた世界征服をたくらんでいるかどうかの探りをワイに頼んだのは薄々わかったけど、あの言葉を聞く限り、計画が2つあることになってまへんか?」
そうだ・・・計画は2つになっている・・・これは、最悪のケースだ。
私は今にも倒れそうだが、リラ・ルーがさらに話を続けるので、必死にこらえて話を聞くことにした。
「で、ワイはその少年の言葉が気になって話しかけたんや。『あーアンタ誰や?』って聞いたら、『俺はマサヒロ。柚木マサヒロ(ゆうきまさひろ)が俺の名前だ・・・ってもう、三人にも言っちまったよ。』って答えたんや。」
「ヒャッヒャ・・・その三人が今回の鍵を握っているやつらだったりしてな。」
気をしっかり持たせるため、あえて私はふざけたことを言ってみた。
「そうでんねん。ワイと後二人とマサヒロで世界征服を・・・って、ドアホ!」
「ヒャッヒャ・・・ノリツッコミとは、腕を上げたな。リラ・ルー」
それでいい・・・それで私は何とか話を聞き続けれそうだ。
「そんなんおいといて、話を続けますさかい。んで、マサヒロと名乗る少年の自己紹介を聞いた後、ワイはうっかり『基地にある光線機械知ってまっか?』って言ってしまったんや。そしたら、『えっ!お前、宇宙にでも行ってきたんか?』ってマサヒロは言い出したんや。」
・・・!!??
もう、私は何もかもわからなくなった。そんな私を差し置いて、さらにリラ・ルーは話を続けた。
「そしてワイはさらに話したんや。『マサヒロはん。嘘ついたらあきまへんで。』っていったら、マサヒロは『実はな。地球上で似たような世界征服をたくらんでいるやつがいるって聞いて俺は最初嘘だと思って調べていたら・・・お前の情報により、ホントだとわかったぜ。』って言い出したんや。」
私には、何がなんだかわからなくなってきた・・・
そんな私をおいといて、さらにリラ・ルーは話を続けた。
「その後、ワイは嘘かどうかを確認するため、『そうでっか・・・ほな、世界征服にはどんな風にしてやるんか教えてくれまっか?』って、具体的な質問をしてみたんや。そしたら、『宇宙から、ヨクトにまで小さくしたウイルスを光線として地球に発射して、生物の大半を殺して、残った生命力の強いヤツを奴隷とする。これが計画だ。』って言ったんや。ワイはかなり具体的だったから、思わず信用してしまったんや。」
・・・私は、思わず声を上げそうだった。
この計画・・・まさしく、オキサイドが言ってたことと一致している。
そして、話の流れから、犯人はコルテックス以外の誰かということになる。
仮に、コルテックスが犯人だとしても、2つとも計画をし、ウイルスにまで手を出すアイツの実力からして、阻止は・・・
・・・もう、私の思考は停止した・・・
・・・なんだ?まだ声が聞こえる・・・
「そのあと、ワイは、マサヒロの言葉を信じてこう言ったんや。『ワイは地球での征服は信じていたが、宇宙からの征服は信じていない。しかし、マサヒロはんはこの逆や。この場合は・・・』『もちろん、両方あるってことだな。嘘さえついていなければ。』って言った瞬間、ワイは『じゃあ、あんさん嘘ついているんか?!』って聞いたけど。マサヒロは『嘘ではないぜ。この地球には2つの脅威があるってことを忘れるなよ。』って言ったんや」
・・・・・・・・・・
「で、最後にワイはマサヒロに『あんさんは世界征服にどんな形で関係してるんや?』って聞いたんや。そしたら、『わりぃ。俺はまだその辺の記憶は戻ってない。ってか、知っててもそれは教えれねぇだろ。』って言ってどっか言ったんな。これでワイの報告は終わるってブリオは〜ん。聞いてましたか?」
・・・誰か私を呼んでいる。
リラ・ルーか?リラ・ルーは話が終わったのか?
ならば次は私だ。そう思い、最後の力を振り絞って思考を再開させ、口を開いた。
「リラ・ルーよ・・・その少年は嘘を言っていない。なぜなら、記憶喪失はホンモノだからじゃ。それに、地球に二つの脅威があることは間違いない。なぜなら、私もそれらしきことを聞いて、それでリラ・ルーに偵察に行かせたのじゃ・・・」
「ブリオはん!顔色悪いでっせ!」
無理もない。もはや私は気力でしゃべっているからだ。
「リラ・ルーよ。明日オフだろ。今から徹夜して阻止をする計画を立てるぞ!」
「ブリオはん!計画を立てるのはええのやけど、今日は寝ましょ。一日寝たら何かいい案が出るさかい。それに、ブリオはん体調悪ですし・・・」
そうだ。私はショックを受けて体調が悪い。
地球征服の計画が一つならまだしも、二つあるわけだからだ・・・
本当なら、ショックで数日間寝込んでいたいけど、そういうわけにはあかない。
「・・・わかった。リラ・ルー。今日はもう寝て、明日万全のコンディションで対策を考えよう。」
「そ〜ゆ〜ことなら、もう寝る支度をするさかい。一秒でも睡眠時間を増やして、体力を回復させましょうや。」
少したって私は布団にもぐりこんだ。
「絶対に、二つとも阻止してやる。例え、あいつらと関わってでも、私の楽しい日々は終わらせない!」
私は独り言のように決意を述べ、眠りについた・・・

TO BE CONTINUED...

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