YOCTO 野望進行中(コルテックス編)


ラリーZさん作

第3話 覚醒 --Wecken--

最悪な目覚めだった・・・
まったく眠りの爽快感がない・・・
いや、寝たのは確かなのだが、何かがおかしい。
ワシに何かが目覚めたような・・・そんな感じの悪い目覚めだった。
「コルテックス殿!コルテックス殿!」
エヌジンが朝早くからワシの部屋にかけつけてきた。
「コルテックス殿!昨日の実験の結果がウカウカ様です!」
どうやら、混乱しているみたいだ。
「エヌ・ジン、ちょっと落ち着け。」
そういってエヌ・ジンはその場に座った。
ちなみに、ワシの秘密基地はワシやエヌ・ジンのほかにも、ウカウカ様や、ワシと同じ世界征服に協力しているものたちが皆住んでいる。
研究員や作業員など、下っ端は近辺に住んでいたり、ここの大部屋で雑魚寝して過ごしているが、幹部クラスになると個室が与えられる。しかし、個室のほとんどが洋室であるのに対し、ワシとエヌ・ジンのみ和室だ。だから、畳の部屋のワシの所にうっかり土足で入り込むヤツも出てくるものだ。
「まず、ウカウカ様がいません。」
「何!?」
ウカウカ様は普段からワシ達にも行動が謎である。毎日のように朝早くから会議をやるかと思えば、いきなりどこかに出かけ、夜、部屋を見ると寝ているなんてことがざらにある。だからこの前、ワシは思い切ってなぞめいた行動をなぜするのかを問うてみたら、「それは、敵を欺く前にまず見方からって言うだろ!」の一言で返された。しかし、会議を必ず朝にやるのが慣例であるはずなのに、朝から出かけるなんて、何かあったのか?
「じゃあ、今日は会議はなしか?」
「そうなるでしょう。」
「よし!だったらヨクトの開発の続きだ!」
「それですが、これをみてください。これは、昨日、拙者があれから部屋に帰って夜遅くまでまとめたレポートですじゃ。」
そういってエヌ・ジンは数枚の紙をワシに渡した。
「おい・・・この結果なら、成功じゃないか!」
「そうでしょ。ついでにどの角度で発射すればいいかなどもまとめています。」
そういって、別の紙を見た。
確かに、角度の詳細とかいろいろ書いている。
「よし!では、いつこれを発射するかをき・・・」
「その前に、ヨクトの故障を何とかしないと。」
「ああ・・・あれか・・・」
ワシとエヌ・ジンはヨクトがある研究所に行った。
ワシらはヨクトのある所にやってきた。
「しかし、この故障はみた所簡単に直りそうですが、そうはいかなさそうですな。」
「そうだな。でも、漏電の修理はワシはあんまやったことがないぞ。」
「漏電の修理は、電気を流してどのあたりが漏れているかを確認するのが今回の場合は得策なのでは?」
「そうか。電気でも流してみるか。こんな感じで。」
そうやって、電気を流すジェスチャーをワシがすると、エヌ・ジンがしびれた。
「コルテックス殿!なにゆえ拙者に電気を流すのじゃ?」
「・・・へっ?」
ワシはさっきやったジェスチャーをもう一回やってみた。すると、エヌ・ジンはまたしびれた。
「コルテックス殿!ちゃんとやってください!」
「えっ?ワシは機材は何も持っていないぞ。」
「でも、拙者はコルテックス殿から電気が来ましたぞ。」
「・・・エヌ・ジン・・・まさか・・・」
ワシはエヌ・ジンに見えるように手を出し、その上にあるものをおいた。
「これは電気を通すと磁力が出る物だ。もし、ワシから電気を出す力があるなら、これらはくっつくはずだ。みておけ・・・」
そういってワシはさっきより弱い電流を出すように念じた。
「コ・・・コルテックス殿!くっついていますぞ!」
「おお・・ワシはついに覚醒したのか。」
「もっとほかにないのですか?」
「ほかに・・・ね・・・」
「例えば、炎とかどうでしょ?この手の超能力は炎・電気・氷の3種類を使えるのが基本ですし。」
エヌ・ジンはどこでその知識を手に入れたのか疑問に思ったが、ワシは炎を出してみることにした。
「ぬ・・・」
すると、手から小さな炎が出てきた。
「お次は氷をお願いします。」
「ぬ・・・」
今度も本当に氷が出てきた。
「すごいです!コルテックス殿!ほかになにかあります?」
「ほかに・・・う〜ん・・・」
そういってワシは少し頭を下げたすると、
「わ!コルテックス殿!光も出せるようになったのですか?」
「え?」
「この前、『ライトニングハーゲフラッシュ』とかいって太陽の光を利用して光線を出しましたでしょ。その技が太陽なしで使えるようになっていますぞ!」
確かに、ワシ達は研究所の中だ。ゆえに太陽の光を利用せずにライトニングハーゲフラッシュを打つことができた。
「さらにあるのじゃないですか?」
「・・・多分、これで最後だと思う。」
「しかし、威力がいまひとつですな。もっとこう、雷みたいな高威力のヤツが打てたらいいのですがね・・・」
「高威力か・・・よし・・・」
そういってワシは研究所の外にありったけの力で念じて雷を落とすようにしてみた。
その力が雷となり、地面を数センチえぐるほどの威力の雷を落とした。
「す・・・すごい・・・」
「こ・・・これ、ワシがやったのか・・・」
ワシ達は唖然とした。
「・・・しかし、なぜコルテックス殿は炎・電気・氷・光(ただし、頭から出る)を使えるサイキッカーに覚醒したのですじゃ?」
「・・・昨日、ヨクトの実験で漏電した電気がワシに当たっただろ?多分、その電気の中にヨクトウイルスがまぎれていたかもしれない。だから、マウスが6匹中4匹にしか効果が出なかったのも納得いくだろ。そして、特殊な条件化でヨクトウイルスを浴びたから、このように覚醒したのじゃないか?」
確かにそうだ。しかし、サイキッカーのワシはある日目覚めるとユンゲラーになったりはしないだろうな?
「コルテックス殿がサイキッカーになった上、ヨクトの実験が成功したとなると、もはや世界征服は成功したと同じですな。」
「いや、エヌ・ジン。成功という前に一つやっておかないとだめなことがある。」
「それは何ですか?」
「それは、散々ワシの野望を阻止したあのにっくきクラッシュ・バンディクーをやっつけないといけない。」
「でも、ヨクトがあれば、戦わずにして世界征服できるのでは?」
「いや、念には念をだ。しかも、今回はワシは絶大な力を持っておる。今回は絶対に勝てるぞ!」
「ま、負けたままじゃ嫌ですからね。それに万が一コルテックス殿が負けたとしてもヨクトがあるので大丈夫ですね。では、さくっと倒してからゆっくり安心してヨクトを修理しましょう。」
そういってワシとエヌ・ジンは研究所を出て、クラッシュを倒しに向かった。
「9時59分10秒・・・9時59分11秒・・・」
ワシはクラッシュが現れると思う所についた。
「しかし、クラッシュを倒すなら何でもしますね〜アヤツの散歩コースまで把握していますからね。第一、アヤツは脳みそが筋肉でできている癖して、散歩コースは毎日決まった所を通っている上に、ほぼ同じ時間帯に現れますからね。」
「9時59分58秒・・・9時59分59秒・・・10時!!」
ワシはクラッシュが現れたと思い、岩陰から現れた。
クラッシュは50mほど離れた所にいた。
「クラッシュ!今日こそ決着をつけてやる!」
「ア・・・結果見えてるのでパス。」
「そんなもん、やってみなくてはわからーん!くらえ!ライトニングハーゲフラッシュ!!」
「そんなもん。もう対策済みだぜ。」
そいういって、クラッシュはサングラスをかけ、軽やかな動きで光の当たらない岩陰に隠れた。
「フン。さすがはクラッシュだな。」
「感心している暇があるなら、逃げる準備をしたら?」
そういってクラッシュはバズーカー砲をかまえた。
いつものリンゴバズーカーだ。
「打つのか?クラッシュ。」
ワシの問いかけにかまわずにクラッシュはリンゴバズーカーを発射した。
「さて、散歩の続きでもやるか・・・」
「まだワシはやられていないぜ。」
ワシはリンゴバズーカーを構えたときに、目の前に氷の壁を張った。
バズーカーの玉はその壁にめり込み、そこ止まった。
「くそ〜ならばもういち・・・」
クラッシュがバズーカーを打つ寸前にワシは電撃波を出した。その電撃波はバズーカーに命中し、バズーカーを壊した。
「オイラのバズーカーが・・・ならば、オイラが直接ぶっ飛ばしてやる!」
そういってクラッシュはスピンアタックをしてワシに向かってきた。
「ああ、そうだ。」
クラッシュが近づいてきた時、さっき立てたばかりの氷の壁を倒した。
クラッシュは下敷きになった。
「ぐりゅううぅぅ・・・お・・・重い・・・」
「ククク・・・クラッシュよ。重いか?」
「重いし冷たい!さっさと助け出しやがれ!」
クラッシュは敵のワシに助けを求めてきた。
さすがは脳みそが筋肉でできていることはある。
「じゃあ、助けてやろう・・・ホレ。」
そういってワシは氷の壁に向かって炎を浴びせつつそこから離れた。
「コルテックス殿!なぜクラッシュを助け・・・」
エヌ・ジンがワシの不可解な行動に対して何かいいたくて岩陰から出てきた瞬間!氷の壁から突然爆発が起こった。
「ぐっふぁーーー」
クラッシュは吹っ飛んだ。
昨日のワシの展開と同じく吹っ飛んだ。
「こ・・・コルテックス殿。これは一体・・・」
「エヌ・ジンよ。あの氷の壁はさっきのあの壁だ・・・」
「さっきの・・・ああ!ひょっとして!?」
さっきの壁とは、クラッシュのバズーカーを受け止めた壁である。そして、弾がめり込んだ壁のことである。
「だからワシは一部分に炎を当て続けていた理由がわかっただろ。」
「いやはや、覚醒した力だけにたよらず、従来の柔軟な思考の切り替えにより勝利できた今回の戦い。エヌ・ジンはうれしゅうございます。」
「オイオイ。大げさの上にキャラ変わっているぞ。よし!ヨクトの前祝も含めて今から今回の勝利のお祝いでのみに行くか。」
「それいいですね。ではいきましょう。」
そういってワシとエヌ・ジンは飲みに出かけた。
ワシとエヌ・ジンは飲みに街にまで着た。しかし、ほとんどのところはまだ開店していなかった。
「コルテックス殿〜今は11時前ですよ〜この時間帯ではまだどこも・・・」
「おおっ!あそこがあいてた!」
ワシが見つけたのはバー『NANDEYANEN』だった。
「あっ!ここ知ってます。なんでも、凄腕のバーテンダーがいるって有名な所ですぞ。」
「でも、今はまだ午前だし、いないんじゃないのか?」
「まぁ・・・この後もやることあるし、ちょっと2〜3杯ほど飲みましょうか。」
そういってワシとエヌ・ジンはNANDEYANENに入った。

NANDEYANENはかなり落ち着いた感じだった。決してわいわい騒いで飲むような所ではないとワシは思った。
「いらっしゃいませッス。」
店には若いバーテンダーがいた。時間帯が時間帯なのでそのバーテンダー一人・・・いや、奥のカウンターに客の女性がもう一人いた。
「じゃあ、ワシらはこの辺でいいか。」
そういってワシはエヌ・ジンと並んで女性の客と反対側の端のカウンターに座った。
「なににされます?」
「じゃあ、焼酎をロッ・・・」
「焼酎水割り2つ」
「わかりました。」
ワシの意思を無視してエヌ・ジンが勝手に注文した。
「エヌ・ジン。ワシは焼酎をロックで頼むつもりだったのだが。」
「コルテックス殿。アンタは世界征服の絶好のチャンスを何回アンタの失態によってつぶしてきたと思うのですか。世界征服がうまくいったらいくらでも飲ませますから、ここは我慢しなさい。それに今回はクラシュを倒しただけの酒の上にまだ午前中なんだから自重してください。」
「ああ、わかった。だがな・・・」
ワシがエヌ・ジンに反論しようとエヌ・ジン側に振り向いた時、端にいたはずの女性がいつの間にかエヌ・ジンから一つあけた隣に座っていた。
「・・・ここは居酒屋じゃないってことわかってる?」
遠くから見ていたから詳しくはわからなかったが、近くで見るとその女性は丈の短い白いドレス姿だったが、足は全然露出していなかった。なぜならば太ももまで隠す非常に丈の長いブーツを履いていたからだ。そういえば、ワシの姪であるニーナはこの手には詳しかったな。確か、彼女はここまで丈の長いブーツはスーパーロングブーツと言っていたな。そして、ニーナに聞いただけなのでよくわからないのだが、アレはさしずめロリータファッションではないかと思う。しかし、ワシはそのあたりの知識に対しては疎いので全然わからない。そして、髪は非常に長かった。どうも、マンガとかアニメにできてきそうな女性だと思ったのがワシの第一印象だ。そんな彼女がワシらに対しての第一声は注意だった。
「ああ、悪い・・・しかし・・・」
おこられる理由はワシらはわかっているし、そのようなことをしていることも自覚している。しかし、大声で叫んでいるわけでもないし、離れているわけだからそれほど問題にはならないと思うのだが。
「・・・どうせ朝から酒飲む気楽なアンタ達とは違うのよ。私は。」
ワシはお前も同じだろとツッコミたかったが、我慢して聞いていた。
「・・・ま、ここであったのも何かの縁だから、私のことを詳しく話すわ。私は鍵卍セナ(かぎまんじ せな)5日ほど前に行方不明になった弟を探してここまで来た。いろいろ情報を手に入れ、この付近でかなり危ない仕事をさせられているって聞いたから、それでここにやってきた。それと、危ない仕事が世界征服じゃないかって不確かな情報を聞いたのだけど、それはなさそうだわ。だって、世界征服をたくらんでいる人がのんきなアンタ達だから。」
セナという女性はワシ達に事情を話した。しかし、事情と同時にワシらを侮辱する内容も含んでいる気がするのだが・・・
「それで、何でここにいるのじゃ?」
おお、ワシができなかったナイスな指摘をエヌ・ジンがした。
「・・・ここは私にとってなじみのある店だ。それと、朝食もかねている。カクテルを飲みながら。」
ワシは嘘ではないかと思い元々セナが座ってた所を見ると、確かに食事とカクテルを飲んだ形跡がある。
「しかし、バーに来て食事とは似合わないことするな。」
ワシもエヌ・ジンに続いてナイスな指摘をした。
「・・・それはお互い様・・・だろ。」
確かにそうだった。ワシらはバーで焼酎を、しかも、朝からである。
「はい。私の話はこれでおしまい。それではごきげんよう。世界征服ごっこの皆さん。」
そういってセナは店を後にした。
「・・・・・・・・・・」
「コルテックス殿、どうせすぐに見返せますのでお気にならさず。」
「・・・だな。だから今は2〜3杯ぐらいにしとくか。」
「・・・あっ、それでも飲む気なんですね。」
「はい。ご注文の品ッス。」
ワシ達は気を取り直して焼酎(水割り)を飲んだ。

飲んでる途中でワシはちょっと気が大きくなってしまったので、覚醒した力を利用してマジックをしてみた。
「ここに、空のコップがある。しかし、ワシが手をかざすと・・・ほら!空のコップに氷が入りました〜」
「さすが!コルテックス殿!」
「次に、さっきのコップにワシがもう一度手をかざすと・・・今度は水も入りました〜」
「お客さん。すごいッス。」
「最後に氷と水が入ったコップを逆さにすると・・・じゃーん!中身が落ちません!」
「え〜でも、中身が入れ替わったんじゃありません?」
「じゃあ、見て御覧なさい。」
「え〜と・・・ホントだ!中身はただの水と氷だ!バーテンダーさんもご覧ください。」
「え〜と・・・ホントッス。中身がそのままッス!すごいッス!」
「以上、ワシのマジックショーでした〜」
クラッシュを倒したときといい、今回といい、ホントに、頭のキレがワシはいいみたいだ。今回のマジックは、最初は氷の力を、次は氷の力と炎の力を併用して、最後は、コップを逆さまにしたときは氷の力、その後、エヌ・ジンたちにコップを渡す直前に炎の力を使った。よし!これは世界征服後の宴会で使えるな。
「しかし、ホントに上手ですけど・・・拙者たち、まだやることありますから、このぐらいにしません?」
「このぐらいって、お客さん、なにやってんッスか?」
バーテンダーがワシ達の会話に加わってきた。
「あっ、でもお客さんはマジックを見せてくれたので、俺はそのかわりといったらアレだけども、推理力をみせるッス。」
「ほーじゃあ、その推理力を見せてもらおうか。」
「そうッスね・・・実はお客さん達は発明家であって。今回開発中のヤツが完成すれば、それに関する世界中のシェアを征服する目前になって、この前買った宝くじが10万ぐらい当たって、開発中のヤツの前祝も含めて宝くじで当たったお祝いをしにここにきた・・・どうッスか?」
「うーん・・・もし、5点配分でこの問題が出て、その答えが今のだったら2点だな。」
と、ワシが言うものの、大筋はあっているのでちょっとあせった。
まず、発明家は完全に間違っているとしても、『今回開発中のヤツが完成すれば、それに関する世界中のシェアを征服する目前になって、この前買った宝くじが10万ぐらい当たって、』の部分なんかはおしい。正しくは『開発中のヨクトが完成すれば、世界征服できるその直前になって、この前覚醒した力でクラッシュを倒した。』である。宝くじと覚醒はともに偶然や奇跡の要素が絡んでいるので、かなり当たっている。開発中のところはほぼ正解だ。そして、『前祝』ってところは100%正解。コイツ・・・出きる!
「それより、何でそう思ったのだ?」
「発明家の部分はお客さんの衣装を見て判断して、あとは焼酎を作っている間、お客さんの話を聞いていたからッス。」
ふとワシとエヌ・ジンの姿を見ると、白衣を着ていた。これは、昨日のよくとの動物実験のときと全く同じ服装だった。そして、バーテンダーの推理は結局は盗み聞きか・・・期待してそんした。
「・・・見事な洞察力と耳を持ってるな・・・」
「いや〜お客さんにほめてもらうとてれるッス〜」
しかし、バーテンダーの顔は少し悲しそうだった気がした。
「コルテックス殿。あのバーテンダーはうすうす気付いていますぞ。ここはさっさとずらかるのがよろしいかと。もう、コルテックス殿は3倍も飲んでいますし。」
エヌ・ジンがワシにささやいてきた。確かに、そろそろ引き際であるとワシも思っていた。
「じゃ、ワシ達も帰るわ。」
「ありがとうございまッス。」
そういってワシ達は店を出た。

「コルテックス殿!今は重要な時期ですぞ!まだ油断はしてはなりませぬ。」
「ああ・・・わかってるが・・・な・・・」
「まぁ、浮かれるのはわかりますけど、この時点で計画を誰かに気付かれたら間違いなく計画失敗フラグになるじゃないですか。」
「ワシも4回も失敗しているからそのことはよくわかっている・・・しかし・・・腹減らないか?」
ワシ達は朝ごはんを食べていない上に今は11時40分だ。どこかで食事でもとって帰りたいと思うのだが。
「コルテックス殿!焼肉を食べましょう!」
おいおい、昼メシで焼肉かよ。キツイものがあるって・・・
「いや、そこの食堂で・・・」
「焼肉にいきましょう!」
・・・どうやら、エヌ・ジンは酒が入ると気が大きくなる人だ。ワシは黙って従うことにした。
時間は12時ちょっと過ぎた所。ワシ達は焼き肉屋に入った。
「ま・・・ライスと野菜と、脂身が少ない肉を中心に食べるか・・・」
そして、ワシとエヌ・ジンは同時に、
「ビールは禁止!」
といった。どうやら、お互い致命的に酔っているわけではなかった。
「ま・・・話しながら食べましょ。」
そういって、朝の分までワシとエヌ・ジンは食べた。
食べ始めてしばらくたった後、落ち着いてきたワシ達はこれまでにあったことを整理した。
「まず、一番重要なヨクトだが、ビームが少し漏れることを除けば発射準備も含めて完成だな。」
「そうです。つまりほとんど完成でありますが、まだ未完成でありますのじゃ。」
「次に、ワシの力だ。ワシは自由に炎・氷・電気・光を出すことができる(ただし、光は頭からのみしか出せない)」
「そうです。世界征服の計画にはうれしい誤算ですが、全く計画に影響がありませんね。ところで、使ってみて何か体長に変化がありませんか?」
「う〜ん・・・普通なら体力がなくなるとか、命が削られるとか、MPが消費するとかあるのだが、今のところ全くないな。」
「では、ここから昨日から起こった出来事を話しましょう。まずはマサヒロから。彼は拙者たち世界征服をたくらんでる人間と似たようなことをやっているといいましたね。」
「そして、ワシのヨクトの情報を外部に漏らした。しかし、4割ほど嘘があったが。」
「まぁ、つまりあっちが世界征服ごっこで、拙者たちがホンモノって所でしょうね。まぁ、マサヒロはいわゆる厨二病ですな。」
ちゅうにびょう・・・酔ってるせいかエヌ・ジンはワシのわからない言葉を使ってくる。
「・・・厨二なんだか週二なんだか知らないけど、つまりマサヒロはただの子供ってことだな。では、次にウカウカ様についてだ。」
「拙者たちも謎が多いとはいえ、規則的な生活をなされてるウカウカ様があんな不規則な生活を送っているのはおかしい。」
「確かに、ほぼ毎日欠かさず行っている会議を理由もなく中止にするのは確かにおかしい。そして『それは、敵を欺く前にまず見方からって言うだろ!』ってワシに言った。ひょっとして、ワシに頼らず何か世界征服の計画があるのではないのか?」
「だとしたら、エヌ・トロピーとか、部下数名を使うはずじゃが、今回は完全に単独での行動。精霊ばりの力を使ってなら納得なのだが・・・」
「まぁ、総じてワシらがヨクトで世界征服を成し遂げたら、ウカウカ様を見返せる上に謎も直接本人から聞いて解決。そういうことだな。」
「そうですな。では、最後にセナについて。彼女はなんだか、異常な雰囲気をかもし出していましたね。」
「行方不明の弟探し出すって言ってたけど、そのわりにはあの格好は変だな。」
「そうですな。マンガで言う所の薔薇水晶って所でしょうな。アレで眼帯つけてたらかなりそっくりなぐらい・・・」
ばら・・・なんだって?
エヌ・ジンはフリーな時間は時代劇を見るか、メカいじりをしているかのどちらかなのに、一体いつマンガを見てそんな知識を手に入れているのだろうか?
ワシは、ウカウカ様とかの謎よりも、エヌ・ジンのほうが気になる。
「まぁ・・・つまり、そんなマンガっぽい格好しているのに弟探しをしているのは確かに謎だ。しかし、世界征服には・・・」
「関係ないように見えて関係ありますぞ。彼女は『世界征服』といっています。いっそ、弟探しを手伝ってその世界征服の計画をつぶすってのは・・・」
「確かにそんな話があって、ワシもつぶすだけの力は持っているが、ワシ以外にそんな計画をしているところはないだろ。あるとしたらウカウカ様ぐらいだが、だったら、あっちを囮にすると考えればいいではないか。」
「そうですね。拙者たちが世界征服をやってるっていったら案外納得しましたからね。しかし、なぜ彼女は拙者達と会う前に事前に世界征服(みたいな危ない仕事)のことを知っているのでしょうかね?」
「・・・噂で流れているとしたらあまりもたもたはできないな。すでに数名には漏れているからな。マサヒロや、セナや・・・あのバーテンダーにも。」
「ついでにバーテンダーについても考えてみるか?」
「う〜ん・・・あの方の推理といっても、拙者達の姿と盗み聞きによる推理とはいえ、かなり的を得た推理でしたからね。」
確かにそうだ。全く無関係な人間があの程度の情報であそこまでこぎつけたのは少しおかしい。
「でも、所詮、偶然の領域じゃないのか?」
「だと思いますけど、セナがあのバーがなじみのあるところって言うが気になるのですが・・・」
「う〜ん・・・これも偶然の領域だと思うが、弟を探し出しているのにわざわざバーによっているのが気になるな・・・第一、食事ならもっと別の所があるし・・・」
ここでワシとエヌ・ジンは考え込んでしまい、黙ったしまった。
少したった後、エヌ・ジンが話し始めた。
「結局、まとめますと拙者達はいち早くヨクトを修理して、世界征服をすることが最善策ですな。」
「そうだな。酔いもさめてきたころだし、そろそろ行くか。」
ワシがそういった後、ワシとエヌ・ジンは立ち上がった。
会計をしている時時計が目に入った。13時か。これからだな。
ワシ達は店を後にし、研究所に向かって帰った。

TO BE CONTINUED...

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