YOCTO Kill Time(クランチ編)


ラリーZさん作

第1話 記憶喪失 −−Memory loss−−

今日も自由だ・・・
何をして一日を過ごそうか・・・

「・・・ん・・・あーー朝か・・・今日も一日始まったな・・・」
「おはよ。クランチさん。」
今俺に話しかけてきたのは、昔、コルテックスが俺を操っていたのを開放してくれたクラッシュ・バンディクーの妹、ココ・バンディクーだ。
そして、俺はクランチ。今はこうしてクラッシュたちと過ごしているわけだが、ちょいと前までは敵として戦ってたもんだぜ。
「さぁ、今日も一日頑張りましょう!」
このことばを聞くたびに、俺は助けられて自由なんだなと改めて感じられる。そして、俺を助けてくれた張本人である、クラッシュ・バンディクーを尊敬しなければならないのだが・・・
「じゃあ、朝ごはんの支度ができたので、お兄ちゃんを起こしにいきますね。」
「ああ・・・それだけど、俺が行く。」
「そうですか。では、よろしくお願いします。」
クラッシュに関しては普段から生活ているからわかるのだが、クラッシュを見るたびに俺は、ホントにアイツに助けられたのか?って思うぐらいだ・・・なぜなら・・・
「おーいクラッシュ、朝メシの・・・」
「グオーグオー・・・り・ん・ご・・・」
・・・寝相がひどい。
布団から体の8割程度出ていて、いつもリンゴの夢ばっか見ていて、寝言までリンゴだ・・・今はまだベットの上で寝ているが、ひどいときはベットから落ちながら寝ているときもあれば、鼻ちょうちんまで出ている時もある・・・
「はぁ・・・おい・・・起きろよ・・・」
「グオー・・・はっ!」
「起きたか・・・さっさとメシに・・・」
「ヤイ!てめえがオイラのリンゴを取ったな!!!」
・・・コイツ、寝ぼけてる・・・
・・・また、いつものことだな・・・
「てめぇ!リンゴを返さないと・・・」
「わかったわかった。リンゴを返すから、メシを食いにいこう。」
「やっほーじゃあ、先に行ってるね。」
・・・単純だ・・・
ま、そんなこんなで今日一日が始まったんだ。
これから、家の掃除をしたり、パトロールに出たり、腹筋をしたり、その辺を走ったりして、半日を過ごしたんだ。
あと、俺は健康マニアだから、ちゃんとトレーニングもしたさ。
おっと、なんだかんだで自由な一日が終わりそうだ。夕方のパトロールにでも行くか。
「あっ、クランチさん。パトロールに行くのですか?」
「ああ、そうだ。晩メシまでには帰ってくる。」
「そうですか、パトロール中にお兄ちゃんにあったら、帰っておいでって言ってくださいな。」
「おう!わかった。」
やれやれ・・・またか・・・じゃあ、今回のパトロールのコースはあのコースか。
「それからクランチさん。こんな話を聞いたのですが・・・」
「んっ?なんだ?」
「実は最近、また世界を征服しようと何か活動をしているってうわさを聞いたので、くれぐれも気おつけてください。」
またあいつらか・・・まぁ、それを警戒するだけで暇つぶしになるなぁ・・・
「わかった。気おつけていってくる。」
・・・とはいっても、あいつらの基地の近くに行かなければ、特に問題ないけどなぁ・・・
そう、あのハゲオヤジの基地にさえ行かなければ。
しばらく散歩していると、俺はふと思った。
「そういえば最近アクアクにあっていないなぁ・・・」
「あのさーアクアクってだれ?」
「ああ・・・アクアクってのは・・・って!お前!誰!!??」
ふと気がつくと、俺の独り言に妙に興味を持った少年がいた。
「俺の名前はマサヒロ。柚木マサヒロ(ゆうきまさひろ)が俺の名前だと、さっきそこでコルテックスとか言うハゲた科学者と頭をぶつけて思い出したんだ。」
・・・とりあえず、ツッコむ所はいろいろあるが、マサヒロと名乗る少年が自己紹介したので、俺もやっておこう。
「俺はクランチだ。」
「なぁなぁ、アクアクってヤツの話聞かせて。」
「その前に、お前について話が聞きたい。」
「じゃあ、何聞く♪何聞く♪」
・・・なんだ?コイツ?
妙になれなれしいぞ・・・
「わかったわかった。じゃあ、記憶喪失のことと、コルテックスのことを聞かせて。」
「オーケー。今朝、道端で倒れていて、気がついたら全く記憶がなかったんだ。何か大きな事をやるはずだったのに、記憶が飛んで忘れたのさ。で、途方にくれているときにお金が落ちてたので、それを拾おうとしたら、コルテックスってヤツと頭をぶつけたのさ。そしたら、名前だけ思い出したのさ。」
「ふぅん・・・」
俺にとってあまり興味のない話だった。
「じゃあーさーアクアクのことについて教えて。」
しかし、マサヒロから話を聞いた以上、話すしかない。
「アクアクって言うのは、木の仮面に乗り移っている精霊だ。アクアクのおかげで、いろいろと世界を守ってくれているんだ。」
「ふぅん・・・」
・・・どうやら、この話もマサヒロにとって面白くなさそうだな・・・
「じゃあ、俺行くわ。」
そういって、パトロールを再開しようとした時、マサヒロが独り言のようにこうつぶやいた。
「あっ!俺、さっきそれっぽいものを見たなぁ〜最初俺はただの仮面だと思っていたら、急に動き出して独り言のように『世界征服〜〜』とかいってたな。まさか、あの仮面とハゲオヤジが手を組んで世界を征服しだしたら面白いな〜」
・・・コイツ!!何を言っているんだ!!??
アイツのいっていることは絶対にデタラメだ!!絶対に嘘だ!!絶対に・・・絶対ってありえるのか?
まぁ、直接本人に会って話を聞くのが早いみたいだな。それに、世界征服に関する情報を手に入れただけかもしれないし、変なことを考えずにクラッシュを探しながらパトロールを続けるか。

少し歩くと誰かがいる気配がした。
「んっ?あれはクラッシュと・・・コルテックスか?!」
どうやら、ばったりと出くわしたようだ。
「まぁ、相手が相手だし、見物でもした後に、クラッシュと一緒に帰るか。」
どうせ一方的な試合が始まるのかと思いながら俺は見ていたのだが・・・
「なんだ・・・あの光は・・・コルテックスも新技を使ってるな。そして、クラッシュは・・・苦戦している!?」
俺はクラッシュを助けてやりたいという気持ちよりも、その戦いを見届けてやりたいという気持ちが強くなってしまい、一歩も動けなかった・・・
「クラッシュが逃げている所を、コルテックスは謎の光で攻撃して・・・ってその光がこっちに来たーーー」
俺が謎の光を浴びた瞬間、俺の首にかけていたペンダントが光を反射した。
「ん・・・急に光がなくなって・・・火?」
よく見ると、何かが燃えている。
しかし、その直後に雨が降りその火は消えた。
「いったい何が起こったのだ・・・あっ、クラッシュがコルテックスをスピンアタックで吹き飛ばした!」
どうやらクラッシュが勝ったみたいだ。そして、吹っ飛ばされたコルテックスの後を追って誰かが走っていった。
「いや〜なかなかの戦いだったな〜クランチ」
この声はマサヒロだった。
とにかく、こいつにあのことを詳しく聞いたほうがいいと俺は思った。
「オイお前、あのことで・・・」
「おおっ〜お前のペンダントいいな〜」
マサヒロは俺の話を聞く気がないみたいだ。
「オイ!俺の話を・・・」
「このペンダント・・・俺のさらにちょっと戻った記憶によれば、かなりの力がありそうだな」
また何を言っているんだ!?コイツ!!??
このペンダントが力を持っているだと!?ふざけるな!!
このペンダントは、この前遺跡をパトロールしていたらきれいな赤い石があったから、それを拾って家に持って帰って、自作で作ったペンダントだ!確かに見た目はそれっぽいが、パワーストーンに比べたら小さすぎる!それに、色だって違う!
「オイ!お前、デタラメ言うんじゃないぞ!!」
「クランチ、俺が言ったことが本当にデタラメだと思っているのか?ペンダントのことも、世界征服のことも。」
確かに、デタラメであるという証拠はない。
「お前の言っていることが嘘という証明は俺にはできない。だが、本当という証明もできない。だから、信じたくない。」
「あのさ、普通嘘つくなら俺が得するような嘘を言うぜ。それに、嘘でも本当でもわからないことは、本当である可能性はないか?」
確かにマサヒロの言うとおりだ。
仮に嘘だとしたら、くだらなすぎるし、嘘も本当も証明できていないものは、両方ありえる・・・
「・・・俺はお前の言うことは信じない。しかし、一つの意見として、お前の言うことを覚えといてやる。」
「正直に『信じる』って言えよ・・・俺は本当のことしか言ってないぜ」
「・・・フン!」
「・・・まあいいや。そろそろ俺はどっか行くぜ。今日はいい戦いも見れたし、記憶もちょっと戻ったし、いい一日だったな・・・」
俺は無言でマサヒロが歩き出す前に歩き出した。
マサヒロも別の方向に歩き出した。
それにしても・・・今日はなんだかもやもやする一日だ・・・とにかくクラッシュに帰るように伝えて、俺は・・・もうちょっとパトロールをするか・・・
そう思いながら俺はクラッシュの元へ駆け寄った。

TO BE CONTINUED...

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