クラッシュ・ウェスタン


リボルバーさん作

第五章

クラッシュ、クロック、ココはアップルタウンの方角を向いてゆっくりと歩いていた。
夕日は西側に沈みかけていた。
「クラッシュ、ココ。日が沈むと何かと厄介やから早よう帰るぞ」
クロックは二人に呼びかけた。
三人はだんだんと歩くスピードを速くしていった。
日はどんどんと沈んで行く。
この荒野は夜になると辺りが闇に包まれ、どの方向を向いているかさえ分からなくなる。
また、砂嵐が吹き荒れ、上空の星座で位置を確認することすらできなくなってしまう。そうなってしまってはうかつに行動すると迷ってしまい、一生荒野から帰れなくなると言う噂まである。
三人は全力で走った。
「明かりはどうだい?」
何者かの声とともにうっすらと目の前に松明の炎が見えた。
クラッシュはその声で誰かがすぐに分かった。
「ピンストライプ!!!」
三人の目の前に松明を持ち、葉巻を銜えたピンストライプが現れた。
「ここは明かりが無いと迷うぜ。ほらよ」
ピンストライプはクラッシュに松明を渡そうとした。
「あ、ありがとう・・・」
クラッシュはピンストライプの手から松明をとろうとした。
「馬鹿め!」
ピンストライプはもう片方の手で葉巻を持ち、クラッシュの手に当てた。
「あちちちちち!!」
クラッシュは手を引っ込めた。
「俺がそんな親切にするとでも思ったか?」
ピンストライプは笑いながらそう言った。
「ピンストライプ!何故ここに!?」
クロックがシカゴタイプライターを構えた。
「ここはエアーズロック周辺の荒野。別名をHELL WASTERAND」
ピンストライプが吐き捨てた。
「地獄の荒野・・・そのままやん!」
クロックがつっこんだ。
「そんな余裕を見せてられるのも今だけだぞ。ま、あいつらに骨までしゃぶられるのがオチだろうけどな」
ピンストライプはどこかに去っていった。
「あいつらって何のこと?」
ココは2人に尋ねた。
「とにかく、早く町に戻ろうや・・・しまった!」
クロックが気づいたときにはもう遅かった。
物凄い風が吹き、砂が舞い上がったのだ。
「クラッシュ!ココ!」
クロックは叫んだ。
「クロックお兄ちゃん!」
クロックの元にココが近づいた。
「クラッシュはどこや!?」
クロックは周りを見渡した。しかし砂嵐が吹き荒れ、辺りは何も見えなくなってしまった。
「クロックお兄ちゃん、何か居る・・・」
ココはある方向を指差した。クロックはその方向を見た。
「あれは・・・フクロオオカミ!?絶滅したはずやぞ・・・」
フクロオオカミの群れはいつの間にかクロックとココを取り囲んでいた。
「ココ!ワテの後ろにおれ!」
クロックはシカゴタイプライターを乱射した。しかしフクロオオカミは弾丸を避けてクロック達に近づいていった。
「まずいな・・・」
クロックはさらにシカゴタイプライターの引き金を引いた。しかし弾丸は発射されなかった。
「しまった、弾切れやん・・・」
フクロオオカミの一匹がクロックに飛び掛ってきた。
「お兄ちゃんどいて!」
ココがクロックを押し倒し、フクロオオカミに跳び蹴りを食らわせた。
フクロオオカミは吹き飛んだ。
「悪いな」
「お兄ちゃんは早くリロードして!」
クロックはココの後ろでシカゴタイプライターのリロードを行った。
「ココ、下がれ!」
クロックがココの前に出て、シカゴタイプライターを乱射した。
弾丸がフクロオオカミ達に当たり、次々と倒れていった。
「ココ、今のうちにクラッシュを探すで!!」
「でもこんな砂嵐でどうやって探すのよ!?」
「努力や」
「・・・」
クロックとココは辺りを懸命に探した。しかしクラッシュの姿はなかった。
「おらんな・・・」
「どうするの?」
「もしかしたら上手く町に戻ったかもしれへん。ワテらも街に戻るぞ!」
「うん・・・ってどうやって?」
「・・・努力や」
「・・・」
クロックとココは荒野をさまよい続けた。

一方クラッシュは、フクロオオカミの群れに追われていた。
「こっちにこないで〜〜〜!!」
クラッシュは一目散に逃げ続けた。
しかしフクロオオカミの群れもクラッシュを追い続けた。
「もうやだよ〜〜〜!!」
クラッシュは後ろを向いてSAAを一発撃った。しかし簡単に避けられてしまった。
「はあ・・・」
クラッシュはまた逃げ始めた。逃げに逃げまくった。
「もうこないで〜〜・・・あれ?」
クラッシュは後ろを向いた。いつの間にかフクロオオカミの群れはどこかに行ってしまっていた。
「良かった・・・ってここどこ!?」
クラッシュは完全に迷っていた。四方八方全く同じ風景だった。
「・・・」
クラッシュはその場に座り込んでしまった。
無言のまま朝を待とうとしていた。
「あれは・・・光?」
遠方にうっすらと何かの光が見えた。どうやら火が燃えているらしい。
クラッシュは無意識にその方向に歩いて行った。
しかしその光は消えてしまった。
「あーあ・・・」
クラッシュは倒れこんでその場で寝てしまった。
やがて、東の空からゆっくりと太陽があがってきた。
「ふうぁ〜・・・」
クラッシュは目を覚ました。
「・・・なんだここ・・・」
クラッシュの目の前には巨大な鉄の壁が建っていたのだ。
「ここは何なんだ・・・」
クラッシュは立ち上がりSAAを構え、辺りを見回した。壁にはいくつもの穴が開いていた。
正面には巨大な扉があった。
「要塞・・・?」
「そうだ!」
突然要塞の方から声が聞こえた。
「保安官、いや、クラッシュバンディクー!何故此処に来た!?」
クラッシュはその声の主が分かった。
「ピンストライプか!?」
「よく分かったな。此処は我等ギャングたちの要塞!どうだ、エアーズロックを改築したんだ!」
「我等・・・?」
「そう、俺達ポトルーズと世界中のギャングたちが今宵、この要塞に集合する!」
「何だと!?」
「全員各地で最強と言われているギャングたちだ!」
「一体何を企んでやがる!?」
「我等ギャングたちが世界統一をするのさ。夢のある話だろ?そう思わないか?」
「世界統一・・・?」
「我等ギャング達が世界を支配する。この世でギャング達が最高位となる訳だ。貴様等のような庶民どもは我等の奴隷となり扱き使ってやるよ。感謝しな!」
「そんなことさせるもんか!!」
「いい度胸だ。だが、この要塞には一切近寄ることはできないだろうけどな!」
ピンストライプがそう言った瞬間、壁の穴から固定式の機銃が顔を見せた。
「いいことを教えてやる。今日の夕方六時、此処にギャング達が全員集結する。そして午前零時、貴様らの村を奇襲する」
「何!?それだけはさせないぞ!!」
「命が惜しければそれまでに全員でオーストラリアを去るか、この要塞を破壊するかのどちらかだな。まあ、両方無理だと思うけどな。総員、銃撃開始!」
ピンストライプの掛け声と共に銃撃が開始された。
クラッシュは急いでその場を立ち去った。
「はぁ、はぁ・・・」
クラッシュはなんとか街まで戻ってくることができた。
クラッシュは街の住民全員を村長の家に呼んだ。
全員は一体何の騒ぎかとざわめいた。
「皆さん、聞いてください!」
クラッシュは全員に呼びかけた。周りが一気に静まった。
「今日の夕方六時までにこの村を捨てなければいけません」
いっせいに全員が騒ぎ出した。
「どうしてなんだよ!」
「意味わからねえよ!」
「ふざけるな!!」
全員がそう叫ぶ中、クラッシュは喋り続けた。
「ポトルーズと世界中のギャングたちがこの街を襲撃しに来るんです。それまでに皆さんはこの街から逃げないといけない訳です!皆さん!今から荷物を持って港に行きましょう!」
全員は一瞬黙り、一斉に自分たちの家に戻っていった。
「お兄ちゃん、それ本当!?」
ココがクラッシュに近寄った。
「そうだよ、ココ。とにかく早く荷物をまとめて。船はウォーラスさんがきっと持ってるから」
クラッシュはそう言って家から飛び出した。
「待って!どこに行くの!?」
「おいらはあいつの悪事を絶対に食い止める!心配するな!」
クラッシュはSAAの弾を途中で取り、街から出て行ってしまった。
「お兄ちゃん・・・」
ココは心配そうにその背中を見送った。

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