クラッシュ・ウェスタン


リボルバーさん作

最終章

「ついた・・・」
クラッシュは要塞の前に立っていた。太陽はまだ高い。
「とりあえずどこか開いてないかな・・・」
クラッシュは要塞の周りを歩き回った。扉が一つだけ開いていたのでそこから入った。
「何だ?」
そこは大きなホールのようになっていた。
「やはりきたか。愚か者が」
スピーカーから声が聞こえた。ピンストライプだ。
「お前たちギャングの思い通りにはさせない!」
「いい心意義だ。いいか、此処の要塞は大きく分けて五つの部屋になっている。そこには世界各国から集まってきた最強のギャング達が待っている。彼らを倒し、俺の所まで来て、俺に勝つことができたら今回の話は無しになる。だがそれまでにお前がくたばるか、午前零時を過ぎたらお前たちの負け。つまりお前たちの村を襲撃、奴隷として扱ってやる。降参するなら今のうちだぜ」
ピンストライプがそう言った後、クラッシュの周りに五つの扉が表れた。
「わざわざお前が来るから用意してやったんだ。感謝しろ」
クラッシュは黙ったまま五つの扉を見つめた。
「行くぞ!」
クラッシュは元気良く一つ目の扉を開けた。
一つ目の扉、その中はコンテナなどの貨物がいくつか置いていた。天井にはクレーンでつるされたコンテナもある。恐らく貨物置場だ。
「お前がピンストライプの言っていた男か!」
どこからか男の声がした。
「どこだ!?」
クラッシュはそう言って、SAAを構えた。
「フン!」
いきなりクラッシュの前に何者かが下りてきた。見事な体つきをした男だった。
「オレ様の名はコアラコング!表の顔はハリウッドの一流スター。だが、裏の顔はアメリカ一のギャング団のリーダーだ!」
コアラコングはそう言ってクラッシュに近づいた。
「コアラコング・・・?聞いた事ないよ?」
「嘘を言うな!オレ様は有名な映画の悪役に毎回抜擢されているんだ!オレ様を知らないと言うとよっぽど映画を見ないんだろうな!」
「映画で儲けてたらギャングみたいな危険な仕事しないよね・・・」
「うるさい!とにかく、オレ様はお前を倒すように言われている。殴り合いの喧嘩か、それとも銃撃戦か?お前に決めさせてやるよ」
クラッシュは考えた。あの体つきの男相手だと素手でやり合っても勝ち目は無い。
「銃撃戦だ!」
「フン、いいだろう!さあ勝負!」
コアラコングはそう言ってコンテナの後ろに隠れた。そしてすぐにクラッシュの前に出てきた。背中に大きなタンクを背負っていた。
「え・・・その武器は・・・?」
「どうだ、M61バルカンだ!普通は固定して使用するもので、手にもって使うもんじゃあない。だがオレ様くらいの力があればこんなもの簡単に扱えるのさ!行くぞ!」
コアラコングはそう叫んでバルカン砲を乱射した。
「うわ!」
クラッシュは急いでコンテナの後ろに隠れた。
「隠れても無駄だ!こんなコンテナ、このバルカン砲にかかればすぐにぶっ壊してくれるわ!」
コアラコングはクラッシュの隠れているコンテナに向かって思いっきりバルカン砲を発射した。
こうなればコンテナが壊れるのは時間の問題だ。クラッシュはどうするか考えた。
「こうなったら・・・」
クラッシュはコンテナを撃つのに夢中になっているコアラコングに見つからないように覗き込み、SAAを放った。
しかしコアラコングに当たる前に向こうがクラッシュに気づいた。
「そこか!」
コアラコングはクラッシュのほうを向き、バルカン砲を発射した。
「そんな小さな弾丸、バルカン砲で撃ち落してくれるわ!」
コアラコングは笑いながらバルカン砲を撃ち続けた。
クラッシュはまたコンテナの後ろに隠れた。
「待てや!」
突然何者かの声がした。
「誰だ!?」
コアラコングは発砲を止め、声のするほうを向いた。

ダダダダダッ!

声のするほうから銃を乱射する音も聞こえた。
ガチャン!と金属の音がしたと思った瞬間、クラッシュとコアラコングの間にコンテナが落ちてきた。
「何だ!?」
コアラコングはコンテナの向こうに取り残されてしまった。
「危ない!」
クラッシュはコンテナから離れた。そして声のするほうを見た。
「兄ちゃん!!」
声のするほうに立っていたのは何とクロックだった。
「ここにおったか・・・」
「何でここにいることが分かったんだ?」
「お前の後をつけて来たんや。事情はココから聞いた。お前は早くピンストライプのところに行くんや!」
「でも、ピンストライプのところに行くにはこいつらギャングを全員倒さないと・・・」
「なら、ワテがこいつを倒す。まかしとけ!お前は他の奴らを片付けに行くんや。ワテもすぐに行くから!」
「分かったよ・・・」
「そうや。これ、お前に渡しとくわ」
クロックはポケットから黒い拳銃を取り出した。
「これは・・・ビロードさんの?」
「そうや。お前のSAAは威力不足かもしれん。ブラックホークはマグナム弾も発射できるし、威力は期待できるやろ」
「ありがとう・・・」
クラッシュはそう言ってドアを開け、立ち去っていった。
「さあガチムチコアラ!ワテが相手や!」
クロックはそう言ってシカゴタイプライターをコンテナに向かって構えた。
「ガチムチコアラじゃねえ!!」
コアラコングが叫び、物凄い力でコンテナを破壊した。
「オレ様の名はコアラコング・・・ってさっきの奴とは違うな」
「そうや!ワテはさっきの奴の兄や!」
「フン!どうでもいいわ!」
コアラコングはクロックの言葉を聞かずにバルカン砲を発射した。
「おっと危ない!」
クロックはコンテナの陰に隠れた。
「ふん!この弾幕の前では貴様は身を隠すことしかできないだろう!」
コアラコングはそう言ってクロックの元に近づこうとした。
「そう簡単に倒せると思ったらあかんで・・・」
クロックは呟いて静かにコンテナをよじ登った。コアラコングはコンテナの上までは見ていなかった。
「もうこれまでだぞ!!!・・・あれ?」
コアラコングはコンテナの陰を見たがそこにクロックの姿は無かった。
「どんだけ頭悪いねん。ワテの勝ちや」
コアラコングの後ろから声が聞こえた。クロックが後ろに回り込み、コアラコングの背中にシカゴタイプライターを突きつけていた。
「・・・」
コアラコングは武器を下ろし両手を上げた。
「どうするんや?負けを認めるんやったら撃たへんけど」
クロックは呟いた。
「・・・フン、その程度でオレ様を倒した気になるとはな」
コアラコングがそう言った瞬間、クロックに思いっきり肘打ちを喰らわせた。
「ガハッ!!!」
クロックは銃を手放し、後ろに吹き飛んだ。
「オレ様がそのくらいでビビッて負けを認めると思ったら大間違いだぞ!!」
コアラコングはクロックのシカゴタイプライターを手に持ち、真っ二つにへし折った。
「銃撃は飽きた!タイマンで勝負だ!!」
コアラコングはそう言ってクロックの元に近寄った。
「望む所やないかい」
クロックもゆっくり立ち上がって両手を構えた。
「行くぞおらぁ!!」
コアラコングは強烈な右ストレートを繰り出した。
「おっと!」
クロックはしゃがみこんで避けた。
コアラコングの右ストレートはコンテナに直撃した。直撃した箇所が思いっきりへっこんだ。
「まともに戦ったら勝ち目ないなぁ・・・」
クロックは次々と繰り出されるパンチを避けながらどうするか考えた。
「・・・あれは?」
クロックはふと右を見た。コンテナが高く積み重なっており、一番上のコンテナはぐらぐらと揺れていた。
「どこを見ている!?」
コアラコングが強烈なアッパーを繰り出した。
「よいっと!」
クロックは右に避け、高く詰まれたコンテナを背にした。
「来いや」
クロックはコアラコングに向かって手招きをした。
「テメェ!何ナメた態度とっとるんじゃー!!!!」
コアラコングはクロックの挑発にまんまと乗ってしまい思いっきりタックルをかました。
「やっぱアホやな・・・」
クロックはコアラコングをさっと飛び越した。
ドドン!!コアラコングはコンテナに直撃した。
「こんくらいで倒れると思うなぁー!!!」
コアラコングは再びクロックの方を向いたが、その瞬間ガタガタとコンテナが音を立てた。
「何だ!?」
コアラコングは上を向いた。それと同時にコンテナがコアラコングの真上に落ちてきた。
「ちょ・・・」
コアラコングは何もすることができず、落ちてくるコンテナの下敷きになった。
「力ばっかりやなくて、知能もつけたほうがええで。コアラコングさんよ」
クロックはコンテナの下敷きになって見えないコアラコングのほうを向いて呟いた。
「さ、クラッシュの奴を追いかけるとしますか」
クロックは扉からゆっくりと出て行った。

クラッシュはクロックの元を去り、二つ目の扉へと向かっていた。
「行くぞ!」
クラッシュは勢いよく扉を開けた。
「・・・?」
その部屋に入った瞬間気づいたこと。それは床がガラス張りだということだ。
ガラスの下には水が張っており、その中には巨大な生物が何匹も泳いでいた。
「お前がクラッシュバンディクーか。ただのガキじゃねえか」
突然どこからか声が聞こえた。クラッシュは声のするほうを見た。
「オレの名はポール。下で泳いでいるオルカ達のリーダー。そして、世界中の海をまたにかける最強最悪の海賊の船長」
クラッシュの目の前に巨大な白熊が現れた。
「海賊・・・?」
「そうだ。海にはもうオレ達の敵なんかいやしねぇ。ヒマでヒマで仕方なかった時にピンストライプの奴からグルにならねぇかって話を持ちかけられたんだ」
「そ、そうなんだ・・・」
クラッシュはポールの堂々とした態度に恐れていた。
「お前がクラッシュという保安官ならオレはお前を倒さなくてはいけない。ま、仮にお前がクラッシュじゃなくてもオレはお前を倒す」
ポールはさらに続けた。
「此処は環境がすこぶる悪い。オルカは環境に敏感な生物だ。今この下の水に入ったら例えオレでも気の立っているオルカに食い殺されるかもしれない。」
そう言った瞬間オルカ達がガラスを突き破ってジャンプをし始めた。
「なんと薄いガラスなんだろうな。こんなんじゃオルカはすぐに突き破ってしまう。お前の足元のガラスが割れるのも時間の問題だ」
ポールはそう言い終えると手に銃を持った。
「この銃は水平ニ連。散弾銃、ってところだ。一発でも当たればお前の体は吹き飛ぶだろうな。ハハハッ!」
ポールはクラッシュに向かって銃を構えた。
「さあ、お前をオルカの餌にしてやろう!!!」
クラッシュもSAAを構えた。
「此処で死ぬわけにはいかないんだよ!」
クラッシュが引き金を引こうとした瞬間、目の前に煙幕が広がった。
「煙幕・・・?」
クラッシュは何が起こったのかわからずオドオドしていた。
「コレは一体何なんだ!?」
ポールの声が煙幕の向こう側から聞こえた。どうやらポールもこの煙幕のことは知らないらしい。
「ポトルーズお手製の煙幕弾。やっぱり強いな・・・俺様もこの強さだけはすごいと思うわ」
どこかで聞いたことのある声がした。クラッシュは声のする方向を見た。
「よう、保安官。いや、クラッシュバンディクー」
そこにはポトリゲスがスコーピオンを持って立っていた。
「ポ、ポトリゲス!?」
「なんだよそんなに驚いて。俺様が来ちゃ悪いか?」
「何しに来たんだよ・・・」
「決まってんだろ。お前を助けに来てやった。ただそれだけ。どうせピンストライプのことだ。ここにいる馬鹿共全員倒せとか言われてるんだろ。この白熊の相手はこの俺様だ。お前は次の奴の所に行け」
「で、でも・・・」
「借り、返させてくれよ」
「え?」
「俺が捕まった時、村のやつ等だけじゃなくて俺様も助けてくれたじゃねぇか。その借り、返させてもらうよ」
「う、うん・・・」
「早く行けよ!うっとうしい・・・」
ポトリゲスはスコーピオンの銃口をクラッシュに向けた。
「分かったよ!・・・」
クラッシュはその場から逃げるように立ち去った。
「おい白熊!早く始めようぜ!」
煙幕がだんだん薄れていきポールの姿が見えてきた。
「お前、ピンストライプが言っていた裏切り者か」
ポールは落ち着いた声でポトリゲスに話しかけた。
「そうだ、てかそんなこたぁどうでもいい!行くぞ!」
ポトリゲスはスコーピオンを構え、乱射した。
何発もの銃弾がポールの皮膚に当たったがポールは一切動じなかった。
「スコーピオンみたいな小さな銃弾でオレを倒せると思うな!」
ポールはポトリゲスに強烈な体当たりを繰り出した。
「うお、危ねぇ・・・」
ポトリゲスは左にさっと避けた。しかしオルカの開けた穴に落ちてしまった。
「おらおらおら!!」
ポールは振り返ると水平ニ連を構えた。しかしポトリゲスはそこにはいなかった。
「ん・・・?」
ポールは下を見た。ポトリゲスが泳いでいた。
「やべぇ・・・」
ポトリゲスはどうしたらいいか分からず焦っていた。
ポトリゲスは水中を泳ぎ、上に上がろうとした。
しかしオルカがポトリゲス向かって突進してきた。
ポトリゲスはスコーピオンを撃ち放った。オルカの頭部に銃弾が当たり、少しひるんだ。
「ふぅ・・・」
ポトリゲスはその隙に床の上に上がった。その瞬間ポールが水平ニ連を撃ってきた。
「うおっと!」
ポトリゲスは何とか銃弾を避けることができた。
「さすがの瞬発力。ポトルーズ一優秀な部下なことだけはあるな」
ポールは呟き、引き金を引こうとした。だがポトリゲスはその前にポールの手をスコーピオンで狙い撃った。
「何!?」
ポールは手に持っていた水平ニ連を落とした。ポトリゲスはその水平ニ連を拾いポールに向かって構えた。
「確かにスコーピオンだったらお前の皮膚を貫通しないかもしれねぇ。でも、この散弾銃なら例えお前でも吹き飛んじまうんじゃねぇのか?」
「まぁ、確かにその水平ニ連だとオレでも危ないかもしれない。でも、その水平ニ連で撃たれたら、の話だけどな」
「は?」
ポトリゲスがそう返した瞬間、ポールは素早く左手を振り放った。
「クソッ!」
ポトリゲスは間一髪のところで避けることができたが水平ニ連を落としてしまった。
再びポトリゲスが水平ニ連を拾おうとした瞬間、今度はポールとポトリゲスの間の床からオルカが飛び出してきた。
「うぉ!」
ポトリゲスはその場に立ち止まった。オルカは再び水中に潜った。水平ニ連と共に。
「おやおや。オレの銃が落ちてしまった」
しかしポールは一切動じず、ポトリゲスに近づいた。
「どうやらポトリゲス。お前の負けが確定したようだな。ハハハハ!!」
ポールは左手でポトリゲスをなぎ払った。
「負けが確定だと?何を根拠に言ってるんだ?笑わせやがって!」
ポトリゲスは思いっきり高く跳び、ポールの背中に乗った。
「おい!何をする!?」
ポールはポトリゲスを降ろそうともがいた。
「お前の背中、でっかいから乗り心地がいいよ」
ポトリゲスはそう言うとポールの頭部に思いっきり銃弾を浴びせた。
「クソ、やめてくれ!イテテテテ!!」
さすがのポールも頭部に何発も銃弾が当たるのは耐え切れなかったようだ。
「グオオオオオォォォォ!!!!!」
ポールは雄たけびを上げ、暴れだした。
「どうだ、蠍の味は!?」
ポトリゲスはさっと背中から飛び降りた。
「貴様あああぁぁぁぁー!!!もう限界だ!!!!本気でいかせてもらうぞおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
ポールは大声で叫び、ポトリゲスにタックルをかました。
「グハッ!」
ポトリゲスはタックルを避けることができず、後ろに吹き飛ばされてしまった。
倒れたポトリゲスの上にポールが近づいた。
「まだまだあああぁぁぁ!!!」
ポールは倒れたポトリゲス向かって思いっきり左手で殴りかかってきた。ポトリゲスは右に転がり、何とか避けることができた。
ポールの左手はガラスの床を突き破った。
その衝撃に驚いたのだろうか。オルカの一匹がポールの真下の床を突き破ってジャンプした。
「うわっ!!」
ポールはオルカの体当たりによって真上に跳んでしまった。オルカはすぐに水の中に入った。
ポールが床の上に落ちてきた瞬間、その衝撃によりガラスの床が全て砕け散った。
「何だと!?」
ポトリゲスとポールは水の中に落ちてしまった。
「や、やめろ・・・オレは・・・泳げないんだ・・・」
ポールが呟いた。ポールは海賊のリーダーながら泳ぐことができなかったのだ。さらに、自身の体重のこともありその巨体はすぐに底に沈んでいってしまった。
ポトリゲスはすぐに扉の近くのガラスではない床に上り、オルカ達と恐らく息のないであろうポールを見た。
「とりあえず、俺様の勝ちってところだな・・・あいつが自滅して行ったようなもんだが」
ポトリゲスはスコーピオンがまだ使えるかどうかを確かめ、ポケットの中の葉巻とジッポを取り出した。スコーピオンに特に異常は無く、葉巻も奇跡的に湿っていなかった。
ポトリゲスは葉巻を銜え火をつけた。
「クラッシュの奴、まだくたばっちゃいないだろうな・・・ピンストライプのあの計画だけは阻止しないとまずいぞ・・・」
ポトリゲスは一息ついた後、部屋を後にした。

その頃、クラッシュは三つ目の扉の中にいた。
そこは緑が生い茂り、いろんなところに大きな木が生えている奇妙な場所だった。
「お前さんがクラッシュバンディクーかにょ〜〜〜!?!?!?!?」
部屋に奇妙な声が鳴り響いた。
「誰!?」
クラッシュは辺りを見回した。しかしどこにも姿は無かった。
突然、クラッシュの足元に銃弾が飛んできた。
「うわ!」
クラッシュはとっさに近くの木の陰に隠れた。
「アチキの名はリパー・ルーだにょ〜〜〜!!!世界一の科学者であるとともに世界一のスナイパー、そして世界を代表するギャングチームなんだにょ〜〜〜!!!」
再び部屋にリパー・ルーの声が鳴り響いた。
「スナイパーって、やめてよ・・・」
クラッシュは呟いた。今のクラッシュの装備はSAAとブラックホークのみ。この装備では遠距離戦、ましてや狙撃銃とまともにやりあうことなんて不可能だ。
「ここにはアチキのほかに五匹の天才スナイパーがいるんだにょ〜〜〜!!!アチキとこいつ等でお前を倒すんだにょ〜〜〜!!!」
リパー・ルーが叫んだ。
「どうしよう・・・」
クラッシュが悩んでいたその時、一発の銃声が鳴り響いた。
「ギャアーーーー!!!」
叫び声が響き、リパー・ルーの手下の一人が遠くの木から落ちてきた。
「え・・・?」
クラッシュは困惑し、銃声のした方を向いた。そこにはザジがチャーターアームズを構えて立っていた。
「ザジ・・・さん・・・?」
ザジは構えを解いた後、クラッシュの近くに寄った。
「クラッシュさん、私もあなたの手助けをします」
ザジはそう言うと再びチャーターアームズを構えた。
「は、はい・・・」
「ココさんにあなたが一人でピンストライプを倒しに行くと皆さんに伝えていたので恐らく他の方も来ると思います」
「そうですか・・・」
「あなたがピンストライプを倒すにはここにいる敵を含めて5つのギャンググループを倒さなければならない、そうピンストライプが言っていました。なので此処は私に構わず先に行ってください・・・」
「分かりました・・・」
クラッシュはそう言った後扉の方へ走っていった。
「私が彼等の手助けをするのもピンストライプの計画を阻止するため。それが天使である私の務めの一つ・・・クラッシュさんにピンストライプを倒してもらわないと、世界が大変なことになってしまう・・・」
ザジは小さな声で呟いた。
「にょ?クラッシュバンディクーじゃないのかにょ〜??」
リパー・ルーが喋った。
「あなた方の相手はこの私」
ザジはそう言ってチャーターアームズを撃った。叫び声とともにリパー・ルーの手下が木から落ちた。
「もんのすごい狙撃能力だにょ〜〜〜!!!でも、アチキに比べたらまだまだだにょ〜〜〜!!!」
リパー・ルーが叫んだ後、銃声が聞こえた。ザジはさっと木の陰に隠れた。
しかし、銃弾は気に当たった瞬間、物凄い爆音を上げた。そしてその爆発で木は木っ端微塵に吹き飛んだ。
「!?」
ザジはいきなりのことに戸惑った。
「どうだ、アチキの発明したニトロ入り銃弾だにょ〜〜〜!!!コレに当たればお前さんの体もさっきの木みたいに吹き飛んじゃうんだにょ〜〜〜!!!」
「ニトロ・・・当たったら大変だわ・・・」
ザジは呟いた。しかしその際も敵の居場所をしっかりと確認していた。
「あそこと・・・あっちと・・・あの木の上ね・・・」
ザジは己の感覚で次々と敵の居場所を突き止め、銃弾を撃ち込んでいった。
3体の手下が木から落ちていった。
「ありゃ!あとはアチキだけかにょ〜〜〜〜!?!?でも、お前さんにアチキの場所が分かるかにょ〜〜〜!?!?!?」
リパー・ルーは叫んだ。
ザジはリパー・ルーの居場所を探ったがどこにいるかが全くわからない。
「一体どこに・・・」
その瞬間、リパー・ルーの放った銃弾がザジめがけて飛んできた。
ザジは左右に避けても爆発に巻き込まれてしまうと考えた。
「仕方がない・・・」
ザジは黒いマントを脱ぎ捨てた。背中には大きな白い翼が生えていた。
ザジは翼を羽ばたかせ、空を飛んだ。地面に当たった弾丸は大爆発を起こした。
「にょにょにょ〜〜〜!?!?!?そ、空をとんでるにょ〜〜〜!?!?!?」
リパー・ルーは何が起こったのか分からなかった。
ザジは高い場所からリパー・ルーを探した。一番背の高い木の一番上にリパー・ルーはいた。
「そんなところにいたのね・・・」
ザジはチャーターアームズでリパー・ルーめがけて撃った。
「にょ!見つかっちゃたんだにょ〜〜〜!!!」
リパールーはそう言うとザジに向かって銃弾を放った。二つの銃弾は空中で衝突し、大爆発を起こした。
「・・・狙撃の腕だけは確かのようで」
ザジは物凄い速さで空中を移動しリパー・ルーの後ろに回りこんだ。
「にょ!?」
リパー・ルーが振り向こうとした瞬間、ザジはチャーターアームズでリパー・ルーを撃ち抜いた。
「にょにょ〜〜〜〜!!!」
リパー・ルーは叫びながら木から落ちていった。
ザジは地面に落ちたリパー・ルーにゆっくりと近づいていった。
「にょにょにょ・・・アチキがやられるとは思ってもいなったにょ・・・」
「私の本性を見せたのはあなただけです・・・残念ですがこのことを知った者を生かしておくわけにはいかないので」
ザジはそう言うと左手にワルサーP38を持ち、リパー・ルーに向けた。
「にょ・・・」
ザジはワルサーP38の引き金を引いた。

「次は四つ目か・・・」
クラッシュは四つ目の扉の前に立っていた。
「よし!」
クラッシュは勢いよく扉を開け、中に入った。
「うわ〜〜!」
クラッシュは悲鳴を上げた。何体もの二足歩行をしているトカゲが剣をもってクラッシュを取り囲んでいたのだ。
「お前ッサんが、クラッシュバンディクーかー!?」
細身のトカゲの男がクラッシュの前に出てきた。
「そ、そうだ!・・・」
続いて太ったトカゲの男が出てきた。
「兄貴、こんなネズミにこんだけの手下を用意すること無かったと思うよ」
「ソ、ソれもそうだな!ピンストライプの野郎が厳重に警戒しとけって言ってたからよっぽどの野郎が来ると思ってたゼ!」
クラッシュはこの人数相手にどうしたらいいか分からずオドオドしていた。
「おっと!俺たちの自己紹介をするのを忘れていたね、兄貴」
「ソうだった!俺は兄のコモド・ジョー!こいつは弟のモー!俺たちはアジア一帯をセッ制しているマフィアグループだ!」
コモド兄弟はそう言うと二人の剣を交差させた。
「マフィアまで集まってるんだ・・・」
「ねえ、兄貴。とっととこんなネズミ倒しちゃおうよ」
「いいゼ!いいか、クラッシュバンディクー!此処には俺たち兄弟と手下合わせて三十人いるんだ!お前ッサんには悪いが此処でズタズタに引き裂かせてもらうゼ!行くゾ!」
ジョーはそう言うとクラッシュに向かって剣を構えた。
「兄貴はがんばってよ。俺は後ろからサポートするから」
モーはそう言って後ろに下がった。
「・・・行くぞ!」
クラッシュがSAAを構えようとしたその時、何者かがクラッシュの頭を飛び越え、前に出てきた。
そして、ジョーに向かって銃を撃ち放った。
「ギョエー!」
ジョーは銃弾に当たってしまい、後ろに大きく吹き飛んだ。手下たちは何が起きたか分からず、怯んでいた。
「改造成功。いやー、散弾ってここまで吹っ飛ぶのか」
クラッシュはこの声に聴き覚えがあった。
「サトリ・・・?」
「そう。南サトリ」
南がクラッシュのほうを向いた。
「何で此処に?」
「暇だったから、街の奴らについて来てみただけさ」
南はそう言うと、散弾仕様の銃をしまい、新たな銃を二丁手に持った。
「新しく銃を改造してな、この銃の威力調べたいんだ。お前、どっか行ってろよ」
「え?」
「・・・助けてやるって言ってるんだよ」
南は呟いた。
「そ、そう・・・」
クラッシュは腰にSAAをしまった。
「行けよ」
南はそう吐き捨てるとコモド兄弟の手下たちに向かって二丁の銃を構えた。
「分かった・・・」
クラッシュは外に出て行った。
「さてと、まずは手下から」
南 はそう呟くと左手に持った拳銃の引き金を引いた。物凄い速さで弾丸が連続で発射され、次々と手下たちに当たっていった。
「ギャー!!」
手下はばたばたと倒れて行き、遂にはコモド兄弟だけになってしまった
「な、なんてやつだ・・・」
モーは南から離れた所から驚いた声で言った。
「デブ、こっちに来いよ」
南は腰に左手の拳銃を戻し、代わりに刀を持った。
「デブって言うなぁ〜!」
モーは逆上し、剣を構えて一気に南に近づいた。
「オリャ!」
モーは一気に剣を振り下ろした。南はそれを刀で受けた。
「デブのくせしてその程度の力しか無いのか?」
南はそう言うと右手の拳銃でモーを撃った。
「グハッ!」
モーは銃弾の当たった箇所を手で押さえ、その場でしゃがんだ。
「モー!大丈夫か!?」
倒れていたジョーが立ち上がり、モーに近づいた。
「大丈夫さ、兄貴」
モーはゆっくりと立ち上がった。
「あれ?、こっちの銃はかなり威力を高めに作ってたはずなんだけどな・・・」
南はそう言うと右手の拳銃を腰にしまった。
「てめぇ、そんなもん使わないで刀だけで戦えよ!」
ジョーが叫んだ。
「そうだそうだ!」
モーも続けて叫んだ。
「分かりやすい挑発だこと。いいぜ、どうせ刀だけでもお前等じゃ俺に勝てないだろうし」
南は刀を両手持ちに切り替えた。
「俺たち兄弟のコンビネーッション、受けてみろ!」
ジョーはそう言うとその場に突っ立った。
「兄貴、行くよ」
モーはそう言うとジョーの体を思いっきり回転させた。
駒のように回転しているジョーは物凄い速さで南に向かってきた。
「何だよこいつ・・・」
南はジョーから逃げ回ったが、ジョーもずっと南を追いかけてくる。
「兄貴、かっこいい!」
モーは遠くから二人の様子を眺めていた。
数十秒後、ジョーは急に止まった。
「オエ〜、さすがにきついゼ・・・」
ジョーは四つんばいになり、嗚咽を繰り返していた。
「・・・馬鹿だろ」
南はジョーにゆっくりと近づいた。
「失せろ・・・」
南は刀を大きく振りかぶった。
「モー、今だ!」
突如ジョーが大きな声を上げた。
「は?」
南は顔を上げた。モーがこちらに向かって走ってきた。
「奇襲ならでかい声上げるなよ。馬鹿か?」
南は呆れた表情で刀を構えた。
「トウ!」
モーは四つんばいのジョーを足場に大きく跳び上がり、剣を振り下ろしてきた。
「機動力のあるデブだ」
南はそう呟くとモーの剣を弾いた。しかし、落下による衝撃も重なってか、南は一瞬ひるんでしまった。
「行くゼ!」
その瞬間、ジョーが立ち上がり、南の腹目がけて剣を薙ぎ払った。剣は見事にヒットしてしまった。
「ちっ!」
南は後ろに下がると切られた箇所を左手で押さえた。
「ヘッヘッヘ!どうだ、兄弟のコンビネーッションは!」
二人は笑いながら南に向かって剣を構えた。
「・・・そろそろ本気を出させてもらおうか」
南は呟くと刀を構え、物凄い速さでジョーとモーの間をすり抜けた。
「何だ!?」
ジョーは何が起こったのか分からずその場でおろおろしていた。
「おい、モー!」
ジョーはモーのほうを向いた。そして凍り付いてしまった。モーがその場で倒れていたのだ。
「モー、大丈夫か!?」
モーはすでにぐったりとしており、息はほとんどしていなかった。
「腹の傷くらいで、この俺が死ぬと思うな。俺はお前等とは違う」
南がジョーに近づいて喋った。
「このやろう!!」
ジョーは怒りに狂いながら剣を振り回した。
南の体に次々と傷が付いていったが南は平然と立っていた。
「俺さ、妖怪なんだ。だからこのくらいの傷、どうってこと無いわけ」
南はそう言うと刀をジョーの腹に差した。
「ギャー!!」
ジョーはその場に倒れこんだ。
「こ、このくらいでコモド兄弟がやられると思うなよ・・・」
ジョーが虫の息で呟いたが、南は無視して右手に拳銃を持ち、マガジンの確認をした。
「お、散弾が一発残ってる。ちょうどいい」
南はマガジンをセットし、ジョーに向けて構えた。
「消えろ」
部屋に銃声が鳴り響いた。

クラッシュは五つ目のドアの前に立っていた。
「ここにいる敵を倒したらいよいよピンストライプと対決か・・・おいら何もしてないけど」
クラッシュはそう言いながら扉を開けた。
「ウェルカ〜ム!Mr.クラッシュ・バンディクー」
突然男の声が鳴り響いた。
「誰!?」
クラッシュは辺りを見回した。
「ここだよここ。ほら、上を向いて」
クラッシュは言われたとおり上を見た。二階部分のバルコニーから紫のスーツを着た男が手にグラスを持って立っていた。
「私の名はビスカント・デビル。リッチでダンディなマフィアのリーダーさ」
ビスカントはグラスにワインを注ぎながら言った。
「リッチで、ダンディ・・・なのかなぁ?」
クラッシュは疑問を抱きつつも腰からSAAを取り出した。
「おいおい!そんな物騒なもの取り出さないで欲しいね。せっかくのワインがまずくなるじゃないか」
ビスカントはワインをゆっくりと飲み始めた。
「・・・ねぇ、戦わないの?」
クラッシュはビスカントに向かって言った。
ビスカントはワインを飲んだ後、クラッシュの方を向いた。
「ああそうだった。キミは私を倒そうとしてるんだったねぇ。忘れてたよ。その件なら下の部下が何とかしてくれると思うよ」
「部下・・・?」
その瞬間、部屋のいたるところからビスカントの部下らしき男たちがサブマシンガンを持ってぞろぞろと出てきた。
「今回は一万人の部下の内、超優秀なヒットマンたち二十人を連れてきたんだよ。さ、私を倒せるものなら倒してみたらどうだい。それとも泣いて土下座するか?その位したら命くらいは見逃してやってもいいぞ。ハハハハハ!」
ビスカントは笑いながら黄金の拳銃を取り出した。
「いいだろこの銃。デザートイーグルさ。大口径だから一発でも当たったら体に大きな穴が開いちゃうねぇ。しかも全部純金製!ほしいか?ま、やるわけないけどな」
ビスカントはそう言ってクラッシュに向かって構えた。ヒットマンたちもサブマシンガンを構えた。
「ま、まずいかも・・・」
クラッシュはびくびくしながらSAAを構えた。
「ちょっと待った!!」
突然何者かの声が部屋に響いた。
「誰だ!?」
ビスカントは声のするほうを向いた。クラッシュもその方向を向いた。
「リサさん!」
そこにはリサがエアリアルマシンガンを構えて立っていた。
「クラッシュさん、遅くなってごめん」
リサがクラッシュに話しかけた。
「リサさんも来てたんですか!」
クラッシュが話した。
「当たり前でしょ。てかねぇ、元々私の目的はピンストライプの奴を倒すことなのよ」
「え?」
「私さ、この時代に住んでるんじゃないの」
「は?どういうこと?」
「私ね、未来からやってきたエルフの一人なのよ」
「え?え?ええーー!?」
「まぁ、当然の反応よね。未来ではね、ピンストライプの企み通りギャング達が暴れまくって世界は暴力で溢れ返っちゃってるの。そんな世界は誰だって嫌じゃない」
「う、うん・・・」
「だから、未来を変えるためには過去を変えなくてはいけない。過去の世界に行ってピンストライプを倒さないといけない。その役割を私がまかされたってわけ」
「そ、そうですか・・・」
「でもさ、私一人じゃピンストライプは倒せなかった。だから今回は私じゃなくあなたにピンストライプを倒してもらおうと思ってるの。だからさ、ここで死なれちゃ困るのよね」
「うん・・・」
「それに私の怪我を治してくれたときの借り、返さなくちゃね。さ、早く奴の元に行って!」
「分かりました・・・」
クラッシュはそう言って扉から出て行った。
「お嬢さん、長話は終わったかい?話し終わるまで待ってあげるなんて、優しいだろぉ?そう思わないかい?」
ビスカントが笑いながら喋った。
「うるせぇよこのおっさんが!大体何だよその紫のスーツ!だっせーしよぉ、それに部下にばっかり戦わせて自分は高見の見物ってか?男の癖に卑怯な真似しやがって!降りてこいよ!」
リサがさっきまでとは口調を変えて話した。
この人員じゃどう考えても私が負けてしまう。挑発に乗せてあいつと一対一の状況を作らないと、と思っての発言だった。
しかしビスカントの発言はリサの思いとは全く違った発言だった。
「卑怯で結構。本当に賢い奴はいかに自分の手を汚さずに勝てるかを考えるものなんだよ。お前等、女だからって手加減しなくていいぞ。ぶちのめしてやれ!」
部下たちが再びサブマシンガンを構えた。
「あらら、挑発失敗みたいね・・・仕方ないね」
リサはあきらめてエアリアルマシンガンを構えた。
部下の一人がサブマシンガンの引き金を引こうとした。が、リサのエアリアルマシンガンの銃口から弾丸が飛び出すスピードの方が速かった。
物凄い速さで飛んでいく銃弾は何人かの部下に直撃した。その中の十五人は銃弾が頭に当たり、その場に倒れこんだ。
「どう、このマシンガン。低反動で高威力。おまけに弾速はお前等のサブマシンガンの比じゃねぇだろ!」
生き残った部下たちはその場にサブマシンガンを捨て、代わりにナイフを手に持った。
「接近戦ねぇ・・・」
リサは呟いてエアリアルマシンガンをしまい、手に短剣を持った。
部下の一人がナイフを持って突進してきた。リサはそれを上手く受け流し、背中から掴み掛かって拘束した。そして残りの部下たちの方を向いた。
「これでも攻撃してくる?下手したら仲間にナイフが当たっちゃうかもね」
リサは喋りながら左手で短剣を持ち、つかんでいる部下の首に近づけた。そしてもう片方の手でワルサーP38を持った。
「あんな弱い部下などどうなってもいいわ!お前等、早く殺せ!」
ビスカントが叫んだ。部下もそれに応じるようにナイフを持って近づいてきた。
「・・・人でなし」
リサは呟くと右手のワルサーP38を構え、迫ってくる部下たちを次々に撃っていった。
銃弾は次々とヒットし、部下たちはバタバタと倒れていった。
そして遂には拘束している一人のみになった。
「ええい!お前等失望したぞ!!」
ビスカントは怒り狂いながら叫んだ。
「どこが優秀なヒットマンよ。これじゃあ人一人殺せそうもないじゃないの」
リサは喋りながら左手のナイフで部下の首を切り裂いた。部下は力が抜け、その場に倒れた。
「おのれ・・・!」
ビスカントが二階から飛び降りてきた。
「小娘一匹なんぞ私一人で十分だ!!」
ビスカントはそういいながらデザートイーグルをぶっ放した。リサは近くにあったいすの陰に隠れた。
「そんないす、このデザートイーグルにかかれば一発で・・・ってあれ?」
ビスカントはそう言いながら引き金を何回も引いた。しかし弾丸は出てこなかった。
「・・・ジャムった。弾詰まりだ」
ビスカントが呟いた。
「あらあら、運がないわね」
リサがビスカントにゆっくり近づいた。
「ゆ、許してくれ!この通りだ!」
ビスカントが叫びながらデザートイーグルを捨て、その場で土下座した。
「は?」
「お前さんの欲しいものならなんでもやる!金か?車か?高い服か?金銀財宝か!?」
ビスカントは頭を地面につけながら喋った。
「え、本当!」
「本当だ!なんでもいいぞ!!」
「えーとね、じゃあ・・・」
「じゃあ?」
「おじさんの・・・」
「私の?」
リサがワルサーP38を構えた。
「命!」
「えっ」
その瞬間、ワルサーP38の銃口から弾丸が飛び出した。

「・・・みんなが助けに来てくれてたなんて、思いもしなかったよ・・・」
クラッシュは小さな声で呟いた。
クラッシュは今最初のホールにいる。みんなが敵を倒してくれていたら何かが起こるはずだ。
しばらく待ってるとどこからかダルヴがやってきた。
「ダルヴさん!」
「おお、クラッシュか。どうだ、調子は?」
「うん、大丈夫。皆が助けてくれて」
「そうか」
その時、スピーカーからピンストライプの声が聞こえた。
「・・・今、五つの部屋のギャングの死が確認された。仲間がいてよかったな、クラッシュバンディクー」
「さぁ、ピンストライプ!早く決着をつけよう!」
「まあ急かすな。今目の前のゲートを開ける。そこに入れ」
ピンストライプがそう言うと、目の前にあった巨大なゲートがゆっくりと開いた。
「早く来いよクラッシュ」
ピンストライプの声が切れた。
「よし、行くぞ!」
「俺も行くぜ」
クラッシュとダルヴはゲートの中に入った。
ゲートの先には奈落の底。遠くにまた扉があり、その間には吊橋がかかっていた。
「と、とにかく行こう、ダルヴさん」
「ああ」
二人は扉に向かって歩いた。
扉まであと少しというところまで来た。その時、扉の上にピンストライプの姿が現れた。
「ピンストライプ!!」
クラッシュは叫んだ。
「技術の進化はすごいもんだ、リアルタイムの映像を映し出すことができるなんて」
ピンストライプの姿はモニターに写っていたのだ。
「この扉の先に、この俺がいる。クラッシュ、お前一人で来い。そうそう、もう一人の仲間にも暇つぶしを与えてあげるよ。行け!」
ピンストライプが叫んだ瞬間、後ろから何者かの気配がした。
二人は後ろを振り向いた。
「な、何こいつ!」
クラッシュはそこにいた敵を見て驚いた。何とクラッシュとそっくりだったのだ。しかし顔のパーツに一部違いが見られた。
太い眉毛、細い目付き、そして出っ歯。
「・・・こいつも、バンディクーか?」
ダルヴが呟いた。
「そう。そこにいるのはまさにバンディクーを改造して作られた生物。姿形をクラッシュバンディクー、お前に似せて作った通称、ニセクラッシュ!」
ニセクラッシュは雄たけびをあげた。
「ニセ・・・クラッシュ・・・?おいらの偽者?」
「そうさ、元々はお前の村にスパイとして送りつけるつもりだったのだが何せ知能が残念でな。だが、戦闘能力はずば抜けて高い。さあクラッシュバンディクー、早く俺の下に来い」
ピンストライプがそう言った後、映像が切れた。
「おいクラッシュ。俺の相手はこいつだそうだ。お前はとっととあの糞野郎を殺して来い」
「分かった!」
「いいか、お前は絶対にあいつを倒さないといけない。倒せなかったらこの世界は終わりだと思え」
「うん!」
クラッシュは扉に入っていった。
「改造か・・・俺もやつ等に改造されたんだよな。今回はあいつの抹殺がやつ等からの任務だったんだが、失敗ってことだな。帰ったら即殺されるんだろな」
ダルヴは呟きながら真剣を構えた。
「ヴゥェ〜〜〜〜」
ニセクラッシュは意味の分からない言葉を発した。
「・・・本当にお頭の残念な奴なんだな」
ダルヴはそう言うと剣を真上に振り上げた。
「馬鹿はとっととくたばれ」
ダルヴはおもいっきり剣を振り下ろした。しかし、ニセクラッシュはその剣の刃部分を両手でキャッチしたのだ。
「白刃・・・取りだと・・・!」
ダルヴは急いで剣を構えなおそうとしたが、ニセクラッシュの剣をつかむ力が強く、中々上手くいかなかった。
「ギョア〜〜〜〜!」
ニセクラッシュは奇声を上げ、ダルヴの手から剣を奪い取った。
そして、剣をその場に捨てた。幸いなことに橋の下には落ちなかった。
「うっとうしいことをするな・・・」
ダルヴは呟くと剣を拾い、構えなおした。その際にニセクラッシュは攻撃してこなかった。
「何だよこいつ・・・戦う気ないのか?」
ダルヴはそう言う言った瞬間、ニセクラッシュがその場でスピンを始めた。
「グルグル〜〜〜〜ヴゥァ〜〜〜」
ニセクラッシュはそういいながらスピンで突っ込んできた。ダルヴはその場でジャンプをし、ニセクラッシュの後ろに回りこんだ。
「隙しかないぞ」
ダルヴはそう言いながら回り終わったニセクラッシュの背中めがけ突きを繰り出した。しかしニセクラッシュはさっと避けた。
「は?何だよこいつ。背中に目でもあるのか?」
ダルヴはそう言うと剣を構えなおした。
ダルヴは今度は高速で剣を何回も振り払った。しかしニセクラッシュはそれをいとも簡単に避け続けた。
「危ない〜〜〜〜ヴェ〜〜〜〜」
ダルヴは剣で攻撃するのをやめた。剣だけではだめだ、ダルヴはそう思った。
「雑魚の癖に手間だけかけさせやがって」
ダルヴはそう言うと突っ立っているニセクラッシュめがけ突きを繰り出した。この攻撃は何とか当てることができた。
「突き〜〜〜刺さってる〜〜〜」
ニセクラッシュは再び剣を持って抜こうとした。その時、ダルヴは剣を離し、ニセクラッシュに近づき、首元をつかんだ。
「隙だらけ。この雑魚が」
ニセクラッシュはもだえた。さすがに首を絞められるのは辛いのであろう。
「その馬鹿面、もう見せるな」
等ルヴはそう言うと剣の突き刺さったニセクラッシュを持ち上げ、端の外に投げた。
「ギョエ〜〜〜〜!!!」
ニセクラッシュは悲鳴を上げながら奈落の底へと落ちていった。
「失せたか」
ダルヴは呟いた。
一息ついたその時、ダルヴの耳元に何者かの声が聞こえた。
「・・・任務失敗か、ダルヴ」
「あんたか。まぁ、そういうところだ」
「全く、お前の目的はクラッシュバンディクーの暗殺だっただろ。時間をかけまくった上に最終的には奴の手助けをするってどういうことだ!?」
「そんなに怒るなよ。悪いな、あいつ等に愛着がわいて、な」
「お前みたいな改造された生物が愛着だと?ヌハハハハハ!笑わせよって!とにかくお前みたいな役立たずはもういらん!こっちに戻ってきたら、分かってるだろうな?」
「処刑だろ。そのくらい分かってるさ」
「やけに潔いな。じゃ、皆で処刑用具を構えて帰還を待ってるぞ。ヌハハハハハ!」
ダルヴと何者かの会話は終わった。
「・・・あいつ等に処刑されるくらいなら、ここで死んだ方がマシだ。クラッシュ、お前と一緒にいた時間、楽しかったよ」
ダルヴはそう呟くと橋から身を投げ出した。

「ピンストライプ!やって来たぞ!」
クラッシュは扉の中に入った。そこにはピンストライプが立っていた。手にはスイッチのようなものを持っていた。
「ふん、お前のことだから仲間と一緒に来ると思っていたが、そこはちゃんと守るんだな」
ピンストライプがにやけながら言った。
「な、何がおかしい!?」
「馬鹿なものだと思ってな。お前が一人で俺を倒せるとでも思ってるのか?今までだって、仲間に助けられてばっかりだったじゃないか」
「お、おいらだって戦う時はちゃんと戦うさ!」
「口では何とでも言えるさ。さあ、時間がない。とっととケリをつけようじゃないか」
ピンストライプはそう言うと手に持っていたスイッチを押した。そして同時に地面が振動し始めた。
「何だ!?」
クラッシュは一瞬よろめいた。
「場所を移そうと思ってな、今屋上に向かっているところだ」
「屋上?」
「そうさ。このエレベーターで屋上まですぐさ」
しばらくした後、エレベーターは屋上に着いた。
屋上の床は鉄ではなく木でできていて、今にも崩れそうな勢いだった。
そして、ピンストライプの後ろには何か巨大な物体が置かれており、その上に布がかかっていた。
「突貫工事でな、ここらへんは木材で組み立ててるって訳だ。ま、お前くらいひょろひょろな奴なら十分支えられるから心配するな」
ピンストライプはそう言うと後ろの布を引っ張った。
「こ、これは・・・」
クラッシュは言葉を失った。布の中には何かの鉄の塊があったのだ。クラッシュは一目見てそれが兵器であることが分かった。
「そうか、お前はここで時代遅れな生活をしていたからこいつを知らないのか。こいつは今最も流行の兵器、その名もMi-24A、通称ハインドさ」
「ハインド?」
「そう。こんなごつい見た目にもかかわらずこいつはプロペラを回して空を飛ぶことができるのさ。しかもお前一人にはもったいないくらいの武装を装備している。まあ今回は機銃くらいしか使わないが」
ピンストライプはそう言うとハインドに乗り込み、エンジンを起動させた。
翼が回転し始め、辺りに大きな風が発生した。クラッシュはその場で踏ん張るのが精一杯だった。
「お前のシングルアクションアーミーなんかじゃこのハインドに傷一つつけることすらできないぞ。・・・さすがにマグナムレベルだとガラスにヒビが入るかもしれんが」
ハインドはゆっくりと離陸し、空に飛び上がった。
「あ、あんなのに勝てやしないよ・・・」
クラッシュはとりあえず物陰に隠れることにした。しかし辺りは何もなし。クラッシュは動く的と化していた。
「くらえぇ!」
ピンストライプが機銃でクラッシュを狙い撃ってきた。
クラッシュはひたすら走り回り、銃弾を何とか避けていった。
「と、とりあえず戦わないと!」
クラッシュは機銃の攻撃が終わったハインドに向かってSAAを構え、一発撃った。しかし銃弾はハインドの鋼鉄の機体に跳ね返されてしまった。
「さっきも言っただろう!そんな攻撃痛くも痒くもねぇぞ!」
ピンストライプはそう叫ぶと再び機銃で撃ってきた。
「危ないよ〜!」
クラッシュはまた走り回り、銃弾を避けた。
「素早さだけは高いんだな。お前相手機銃で十分だと思ってたがこいつもつかってやろうか・・・」
ピンストライプが呟いた。そしてハインドは空中で静止した。
「・・・何?」
クラッシュはSAAを再び構えた。
「ミサイル攻撃開始!」
ピンストライプの叫び声とともにミサイルが二発クラッシュに向かって飛んできた。
「うわ〜!!」
クラッシュは必死に逃げた。
一発が床に当たり、大爆発を起こした。その爆発に巻き込まれ、二発目も爆発した。
クラッシュはミサイルの直撃を避けることはできたが爆風で吹き飛ばされてしまった。
「いてて!」
クラッシュは床にたたきつけられた。その時、クラッシュが腰にしまっていたブラックホークがはずれ、床に落ちた。
「そうだ!ブラックホークなら何とか戦えるかも・・・」
クラッシュは起き上がり、ブラックホークを手に持った。
「チッ、まだ生きてやがったか」
ハインドが再び動き出した。
床はミサイルの爆発により燃え上がり始め、どんどんと崩れ始めていった。
「そこが崩れるのも時間の問題だな。お前はそのまま焼け死ねばいい」
ピンストライプはそう言うとハインドのコックピットをクラッシュのほうに向けた。その瞬間、
「これでどうだ!」
クラッシュがブラックホークを撃ち放った。マグナム弾はコックピットのガラス部分に直撃、ガラスは音を立てて割れた。
「マグナムだと!?ええい、こざかしい真似をしやがって!」
ピンストライプが怒り叫びながらハインドを動かした。
「もういっちょ!」
クラッシュは再びブラックホークを撃った。今度はプロペラの付け根部分に直撃した。
「お、お前、そこを狙うな・・・!」
ピンストライプがおどおどしながら叫んだ。その時、ハインドのプロペラ部分から煙が昇り始めた。
「もしかして、倒せた!?」
クラッシュはブラックホークの構えを解いた。
ハインドは左右にぐらぐらと変な動きをした。プロペラ部分の破損によって機体が不安定になり、墜落するのは時間の問題だった。
「こ、このままだと墜落する!まずいぞ・・・脱出しないと・・・!」
ピンストライプはそう言うとコックピットから飛び降りた。そしてパラシュートを開くと外にゆっくりと落ちていった。
ハインドは屋上部分にゆっくりと近づいた。
「屋上に墜落しちゃうよ!逃げないと・・・!」
クラッシュはあわててその場を後にしようとした。しかしクラッシュの周りの床は燃え、あたりは火の海と化していた。
「まずい・・・!」
そしてハインドは屋上に墜落。火に飲み込まれたハインドは大爆発を起こした。
「うわー!!!!」
クラッシュは爆発に飲み込まれ、気を失ってしまった。

・・・

・・・ここは・・・どこだ・・・?

クラッシュはゆっくりと目を開けた。
夕日が眩しい。クラッシュは光を手で遮り、辺りを見回した。
どこまでも続く地平線上には何も無くただ一つ何か山のようなものが見えただけだった。
「おいらは・・・生きてるのか?」
クラッシュは起き上がろうとしたが、体の至る所を怪我してるらしく、あまりの苦痛で無理だった。
「目が覚めたか・・・クラッシュバンディクー」
どこかで聞いたことのある声がした。
「誰だ・・・?」
クラッシュは呟いた。クラッシュの目線上に一人の男が現れた。
「ハインドの爆発によって要塞は破壊。俺の手下や他のギャングたちは瓦礫に埋もれて死んだよ。ああ、心配しなくていいぞ。お前の仲間なら無事だ」
「ピ・・・ピンストライプか・・・?」
落ち着いた声で淡々と喋る姿、それはさっきまで激戦を繰り広げたピンストライプだった。
「お前の仲間達はお前のことを必死で探しているよ。誰もこの俺が此処まで連れていたことを知らない」
「助けてくれたのか?」
「まあ、そんなところだな」
ピンストライプはそう言うとクラッシュに何か針状のものを突き刺した。
「うっ!!」
「痛み止めだ。お前じゃその程度の傷でも痛みで立つことすらできないんだろ?」
一瞬の痛みとともにクラッシュの体からさっきまでの苦痛が抜けていった。
クラッシュはゆっくりと起き上がった。
「何でおいらを助けた?」
「まだ決着がついてない」
「え?」
「確かにお前はハインドを破壊し、要塞も壊した。俺達の計画は塵になって消えた。その点ではお前の勝ちだと言えるだろう。だが、俺の出した勝利条件は何だった?思い出してみろ」
「・・・ピンストライプ、あんたを倒すことか・・・」
「そうだ。今、俺がお前を倒した所で別にどうなるってものでもない。それにお前が俺を倒しても、何の意味もない。どっちが死んでも無意味な戦い。だがな、俺はこの戦いをやらないのは納得いかない。それだけは俺のプライドが許さない。お前も俺を此処で倒し損ねるのは嫌なんじゃないのか?今まで戦ってきた相手を自分の手で倒したい。男なら誰しもそう思うものさ」
「・・・」
「お前がどうしても戦いたくないって言うんだったらやらなくたっていいんだぜ?お前は悪のギャング団ポトルーズのリーダー、ピンストライプを倒した勇敢な男として仲間に慕われるだろう。だがお前は俺を倒し損ねている。お前は一生嘘をついて生きることになる。それでもいいんだな?とにかく俺はお前に決闘を申し込むよ」
クラッシュは悩んでいた。無意味な戦闘はしたくない。この決闘に命をかけるだけの意味はあるのか?
だが本心ではこの手でピンストライプを倒したい。決着をつけたいとも思っているのだった。
悩みに悩んだ末、クラッシュは結論を口にした。
「その決闘、受けて立つ!」
ピンストライプはその言葉を聞くとゆっくりとうなずいた。
「ほぉ、お前のことだから逃げると思ってたぜ。度胸だけはあるもんだな」
「この戦いにピリオドをうたないとだめじゃん。やっぱり」
「だな。よし、そうと分かったら手早く勝敗を決めてしまおうぜ。お前の愛銃を持ちな」
ピンストライプはそう言うと手にS&W M500を持った。
「マシンガンのほうが好きだが、こういうときは拳銃に限るよな」
クラッシュも右手にSAAを握り締めた。
「おいらは絶対に負けない。おいらは絶対に負けない。おいらは・・・」
クラッシュは呪文のように何度も呟いた。こうでもしないと緊張でろくに銃を握ることさえできなかった。
「決闘って言ったらやっぱりあれだよな。お前、向こう向けよ」
ピンストライプがクラッシュにむかって言った。クラッシュは言われたとおりにピンストライプに背中を向けた。
ピンストライプもクラッシュと背中合わせになった。
「前に五歩歩いてバン、簡単だろ?当たれば死ぬ、当たらなかったら生きる、両方当たったら両方死ぬ。両方当たらなかったら当たるまで繰り返せばいい話だ」
ピンストライプがクラッシュにそう言った。
「分かった。五歩だね」
「五歩だ。お前のことだからやらないと思うが三歩目で振り返って撃つとかそんな真似はするなよ。男なら絶対しないだろうけどな。ハハハ」
ピンストライプが笑いながら喋った。
「ハハハ・・・ピンストライプの方がやりそうだけどね」
クラッシュは皮肉を言ってみたが内心こんな状況で笑えるピンストライプに恐怖すら覚えていた。
彼はこんな経験何度も積んでいるのだろう。そしてそれに何度も勝利してきた。
そんな奴にまともに銃を当てれないオイラが勝てるのか?クラッシュは今更ながらこの戦いを受け入れたことを後悔していた。
「俺だってやらねえよ。よし、おしゃべりはもう終わりだ」
ピンストライプが呟いた。
クラッシュは銃をいつでも撃てるように構えた。
「歩調を合わしやすいように一歩ずつ声を出していこうぜ」
ピンストライプが言った。
「ああ」
クラッシュもそれに答えた。
「行くぞ。1」
「1」
ピンストライプとクラッシュが前に一歩進んだ。
「2」
「3」
「4」
「5!」
夕焼け色に染まる荒野に乾いた銃声が二発鳴り響いた。

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